高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者   作:ピロッチ

34 / 53
 グループリーグ最終戦、4強の一角聖グロリアーナ女学院戦に臨む大洗・IS学園連合。
既に双方決勝トーナメント進出が決まっている消化試合だが、
万一の再戦時互いの実力を測る為に手は抜けない。ましてや、試合場は大洗町その物。
再建された後援会に勇姿を見せる為にも、この試合も落とす訳にはいかないのであった。


第34話  大洗夏の陣、前編です!

「それでは、大洗・IS学園連合対聖グロリアーナ女学院の試合を始めます、一同、礼!」

 

「いよいよ序盤の山場ですね。実質エキシビションなのが本当に救いでした。」

 

「私達は町の北端・茨城県大洗水族館(アクアワールド)前から、

聖グロは町の南端・日本原子力研究開発機構(JAEA)・大洗研究所前から、

それぞれ出発だね。作戦はさっき言った通り、相手を■■■■に引きずり込んで…」

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■、

向こうを大混乱させてやりましょう!」

 

「「「「「応!」」」」」

 

この日の試合会場は大洗町全域。町の全ての道路は封鎖され、

町民は一人残らず事前に学園艦に移動してそこに設けられた特設会場で試合を観戦する。

また、戦車道全国大会の規定に基づき試合会場の物品が試合で破損した場合、

日戦連及び最大手スポンサーの東雲特車が補償する事になっており、

町民もそれが分かっている事から、嫌な顔をする者は一人もいない。 

そして双方のメンバーが車輌に乗り込み、準備が整った所で試合開始の号砲が轟いた。

 

 

 

視点・聖グロリアーナ女学院隊長車・A43(ブラックプリンス)

 

「試合開始の号砲…とうとう、始まってしまいましたわね。」

 

「そうですね。あの、ダージリン様?

紅茶のカップから手を離しませんか?手が震えて零し捲りですよ。」

 

「あ、あららららどうしましょう?どんな走りをしようとも

一滴たりとも紅茶を零したりしない筈の私とした事が、この様な事で紅茶を零すなんて…。」

 

「ねえダージリン、作戦は定例通りの浸透強襲戦術で宜しくて?」

 

「ええ、この試合が消化試合でしかない以上、この際勝敗は二の次三の次と割り切り、

今の聖グロリアーナが鬼皇流にどれだけ通用するかを試す戦いとしましょう。」

 

「その割にはやっぱり怯えてるんですね。

まあ、私も流石にあんな人(なのは)がいたら怖いですけど。」

 

「ペコ、こんな格言を知ってる?『人間の偉大さは恐怖に耐える誇り高き姿にある』。」

 

「それ、昔の漫画のセリフですよね?確か○ョ○ョの何たらとか言う。」

 

「…ギリシャの歴史家プルタルコスの言葉なんだけど。

まあ良いわ。ローズヒップに指令を。『チャレンジャー小隊は先行して前線を偵察せよ。』」

 

「了解、隊長車からチャレンジャー小隊へ、『先行して前線を偵察せよ。』」

 

 

 

視点・大洗・IS学園連合隊長車「あんこう号」

 

「あ!試合開始の号砲が…いよいよ始まりましたね。」

 

「うん。鮟鱇4(沙織)、全隊に指令。

『こちら鮟鱇1、聖王小隊は事前に指定した待ち伏せ地点に向かえ。

鉄人小隊は我が校本部まで先行せよ。フラッグ車はゴルフ場の林に潜伏。

残る族長小隊は作戦の準備にかかれ!』」

 

『『『『『了解!』』』』』 

 

 今回のフラッグ車、タシュ2号車(ウサギ号)を海沿いのゴルフ場の林に残し、

あんこう号以下なのは車、キンガ車が南下。

 

『こちらウサギ号、所定の場所に到着した。これより潜伏する。』

 

 程なくウサギ号が所定の場所に到着したと連絡が来る。

 

『こちら鉄人1、鉄人小隊はこれより学園本部前への移動につき、別行動を取る。健闘を祈る。』 

 

「『了解。到着後は指示有るまで待機せよ。』鮟鱇3、弾薬を込め、弾種AP!」

 

「了解、AP込めます!」

 

鮟鱇5(麻子)、退き射ちの体勢に入るので、いつでも逃げられる様に車体を北に向けて下さい。」

 

「了解した。…ルールとは言え超信地旋回が出来ないのは不便だな。」

 

 

 

 

 

視点・聖グロリアーナ女学院偵察小隊・「チャレンジャー小隊」隊長車

 

「ヒャッホーイ!流石ミーティアエンジン!」

 

 一方、町の南側からはローズヒップ率いる聖グロ側の眼を務める

A30(チャレンジャー)3輛の小隊が本隊に先んじて北上していた。

 

「リミッターを解除したA15(クルセイダー)には及びませんが信頼性はこっちが上、

しかも整備部のチューンアップで安定して40マイル(64km/時)出せるお陰で

安心してかっ飛ばせますわ!」

 

 彼女達が元々乗っていたA15は史実でそれだけの速度を出すには

リミッターを解除する必要があったが、その結果

「連続36時間重大な故障が発生せず稼働すれば奇跡」と言われる程故障を頻発する始末だった。 しかし、A30は史実では設計こそ色々と問題はあったが配備先だった機甲偵察連隊で

機械的信頼性が高く評価されていた車輌。まして百年先の、それも最高の工作精度で製造された

ミーティアエンジンはチューンアップにより700馬力まで出力を上げられて尚快調その物だ。

 

 しかし彼女達は気付いていなかった。そんなに調子に乗って飛ばしている場合では無い事に。

 

 

 

大洗町中部 ひたちなかエネルギーロジテック大洗マリンタワー展望台

 

「フン、既に我等の手の上だと言う事に気付いていないとはな…。」

 

 ここは高さ60mに達する大洗町のランドマーク、

ひたちなかエネルギーロジテック大洗マリンタワー(以下、大洗マリンタワー)だ。

その最上部の展望台に一人佇む小柄な影。IS学園側の副隊長補、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。

ラウラは今回このタワーの展望台から聖グロリアーナ側を索敵する任務を与えられていたのだ。

 

「(まあ、我等と同じ事を考えていた事は褒めてやろう…。

尤も、プロを相手にしたのが運の尽きだがな。)」

 

 彼女の足下でエビフライめいて縛り上げられているのは聖グロリアーナの制服を着た女生徒達。

聖グロリアーナ側も展望台からの索敵を行うべくA30に2人乗る装填手の内1人を3輛分、

計3人を索敵役として送り込んでいたのだが、そこに待ち構えていたのがラウラだった。

いくら戦車道部員で3人居るとは言え、女子高生が独陸軍特殊部隊の現役将校に敵う訳がなく、

ラウラの存在に気付く間もなく1人ずつ意識を奪われて呆気なく縛り上げられ、

目隠しと猿轡までされて仲良く床に転がされていた。

 

「さて、後はここに硬貨を入れてと…。

(『ルール上禁止されていない』か…今この場でこれ程便利な言葉は無いな。)」

 

 ラウラはこの日の試合に備えて持たされた硬貨を展望台の有料TV望遠鏡に入れ、

望遠鏡を作動させる。試合中ずっと作動させられる様に、硬貨は数万円単位で用意されていた。

 

「(よし、動いた。さて、敵は何処だ…? 居た!)

A30×3輛、全速で前進中か…。『こちら鉄人3、鮟鱇1、聞こえるか?』」

 

『こちら鮟鱇1、鉄人3、感度良好なり。』

 

『了解。今天守閣(大洗マリンタワー)に登った。早速だが敵先鋒を発見。数、A30が3輛。

現在国道51号線、町立南中学前を北上中。以上。』

 

『了解した、そのまま敵本隊を捜索せよ。以上。』『了解した。』

 

「(作戦は順調だな。後は本隊を捜索し、敵の場所と進路を伝え続けるのみ。)」

 

 

 

視点・聖グロリアーナ女学院偵察小隊・「チャレンジャー小隊」隊長車

 

「あ、敵です!」「やーっと見付けましたわ!」

 

 とうとう国道51号線上で接敵した両チームの先鋒、

あんこう号と3輛のA30が戦闘に突入する。

 

「「撃て!」」

 

 500mまで近付いた所で両者同時に砲撃開始。

射ったのは互いに通常徹甲弾同士だったが、聖グロ側の17ポンド弾は

防楯に直撃するも、防楯+砲塔正面装甲の計200㎜の装甲で止められた。

逆にA30の車体正面は傾斜のない3.5インチ(89㎜弱)の垂直装甲だったので

80㎜徹甲弾の直撃で貫通撃破判定が下り、

クランベリーこと倉部絵里(クラベエリ)が指揮する1輛が撃破されてしまった。

 

「しまった、クランベリー車がやられた!追撃を!」

 

鮟鱇2()、鮟鱇3、徹甲弾にて連続射撃!鮟鱇5、直ちに北上!

敵先鋒をおびき寄せつつ大洗高校下交差点で51号線を下り県道2号線へ!

鉄人3から、本隊も51号線を北上していると連絡が来ました!急いで!」

 

「「「了解!」」」

 

「「あっ、逃げる気だ、逃がすか!」」

 

 事前に退き射ちの体勢を取っていたので、あんこう号はそのまま全速で撤収。

残る2輛のA30は弾種をAPDS弾に替えて追い掛けようとした瞬間。

 

「甘ぁい!!」「隙有リ!」

 

 ここで大洗女子学園本部前の木々を薙ぎ倒してISー4が奇襲を敢行。

 

「げぇ!」「伏兵!!」

 

数百mもない至近距離では外し様がない。残るA30をそれぞれ一撃で仕留め、

呆気なく先鋒を葬り去ってしまった。しかし、運の悪い事に聖グロ本隊の視界に入ってしまう。

 

 

 

 視点・聖グロリアーナ女学院隊長車・A43

 

「くっ、仕掛けて来ましたわね…チャレンジャー小隊は全滅か…。

ならばこちらもお相手してさしあげましょう!」

 

 そう言うとA43と6輛のA41(プロト・センチュリオン)が一斉にISー4に17ポンド砲を射掛ける。

放たれた17ポンド徹甲弾7発の内4発が直撃、ガインガインと轟音を響かせるが、

流石の重装甲で片っ端から貫通を防ぎ切った。しかし、中の人間にとってはそれ所では無い。

 

 

 

視点・大洗・IS学園連合 鉄人小隊2号車

 

 

「「アイエエエエエエエエエーッ!!」」

 

 2号車の一夏とセシリアが初めての被弾に同時に悲鳴を上げる。

 

「な、何だ今の…凄ぇ音したぞ!」「ちょっ…まさか直撃しましたんですの?大丈夫ですの?!」

 

「2人共落ち着いて下さイ!!何の為にカーボンライナーと防護服で身を固めてるのですカ?!

正面を向けている限り、17ポンド砲でこの戦車は射抜けませン!!」

 

 副長のキンガが一喝して何とか落ち着かせるが、直後になのはから指令が下る。

 

「鉄人2、退却!このまま路肩を下り、飯沼街道に出て商店街を通る!!続け!!」

 

エールテム(了解)!」

 

 しかし、1号車操縦手のシャルが何故か尻込みして動きが鈍る。

 

「シャル、何をしてるの?!早く路肩に下りるの!」

 

「なのはさん!!前方にソーラーパネルが…これ、下りたら踏み潰しちゃいますよ!!」

 

「構わないの!!!全部ぶっ壊してでも進むの!!

戦車道競技でぶっ壊した物品の弁償は日戦連と東雲特車持ちだから、気にせず走るの!!!」

 

「う…ウィ・マム!!!」

 

 なのはの檄でシャルも覚悟を決め、国道51号線の東側の路肩に下り、

ソーラーパネルを破壊しながら突き進む。

 

 

 視点・聖グロリアーナ女学院隊長車・A43

 

「くっ…通常徹甲弾では効き目無しか…流石は『戦車道七不思議』の一つ、

『何故か使えるISシリーズ』の片割れと言った所ですわ。

しかし逃がしはしません!一旦下がり、県道2号線経由で

大洗駅前ロータリーで集結します!全車続きなさい!!」

 

『『『『『『了解!!』』』』』』

 

 

 

視点・大洗・IS学園連合隊長車「あんこう号」

 

「ふう…まずは順調か…。」「上手く逃げ切れたな。」 

 

 作戦の第1段階成功に安堵するみほに、操縦手ハッチから麻子が顔を出す。

 

「それにしても、この防護バリアが有ると安心感が違うな。

流れ弾も誤射もこれ一つで完全に防ぎきれるとは便利な物だ。」

 

「篠ノ之博士のお陰だね。お母さんもこの装置を見せられた時は

真剣に喜んでいたってオルコットさんも言ってたし。」

 

「そうか。そこまで安全対策を素直に賞賛出来るお袋さんが

去年の西住さんのした事は褒めたくても褒められず責めるしか出来なかった…か。

こんな事は今年で必ず終わらせないとな…。」

 

「うん。でも、それももう実現は間近だよ。

…お母さんも今年の誕生日プレゼントはきっと喜んでくれるだろうな。

(曾祖母ちゃん…有り難うね。これで西住流は生き返る。本来の姿を取り戻せるよ。)」

 

 7月29日はしほの誕生日。みほはその日に合わせて何かを送る算段らしい。

 

「なあ…一つ聞きたいんだが、もしこのバリアが故障したらどうなるのかな?」 

 

「うーん、オルコットさんの話だと、今年から競技用車輌の火器と砲弾に

バリアと連動した安全装置を装着したから大丈夫なんだって。

もし防護装置の不作動を確認したら安全装置が作動して、

トリガーか発射ペダルが動かなくなる上に、

砲弾も雷管が発火しなくなって射撃が出来なくなるんだって。」

 

「そ、そうか…。」

 

 いよいよ市街地で本格戦闘に突入する双方。

既に3輛を喰ったとは言え、相手は連合王国最後の歩兵戦車とMBTの始祖。

車輌の戦力も乗員の技量も今までの中戦車や巡航戦車とは比較にならない強敵。

勝負の行方は、未だ見えない。

 




原作未登場のAFV紹介 その19

A43 歩兵戦車ブラックプリンス・聖グロリアーナカスタム

 A22チャーチル歩兵戦車の拡大強化版、ブラックプリンス歩兵戦車に
ミーティアエンジンのカスタム版を搭載した聖グロリアーナ仕様のカスタム版。

※下記の数値は作中世界でのみ通用する数値で、史実と同一とは限りません。

寸法   車体長7.7×車幅3.442×全高2.7㍍
機関   ロールス・ロイス製V型12気筒ガソリンエンジン
     「ミーティア・聖グロリアーナカスタム」600馬力→700馬力
     (史実:ベッドフォード製 水平対向12気筒ガソリンエンジン 350馬力)
最高速度 17.7㎞/時→40㎞/時
重量   51㌧
乗員   5名

武装
主砲:55口径76.2㎜砲「QF17ポンド砲」×1
機銃:7.92㎜機銃「ベサ機関銃」×2

装甲(単位:㎜)
防盾 152
砲塔  前面 側面  後面 天板
   152/95/102/25
車体  前面 側面  後面 天板 底板
   152/95/ 51/25/25

 本作での変更点

 史実で一時換装が計画されたミーティアエンジンを最初から搭載。
これを聖グロリアーナの整備部がチューンアップした事で最大出力は史実の2倍に達し、
変速機の伝達効率にも手が加えられ、最高速度は一気に倍以上に改善された。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。