高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者   作:ピロッチ

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 グループリーグ最終戦、4強の一角聖グロリアーナ女学院戦に臨む大洗・IS学園連合。
大洗町のランドマークである大洗マリンタワーに人を送って
索敵をするのではないかと予想し、こちらもラウラを派遣して聖グロ側の偵察要員を無力化。
難なくマリンタワー展望台を制圧し、展望台の望遠鏡で索敵に成功。
先鋒隊のA30(チャレンジャー)小隊を3輛全て撃破して市街地へ逃げ込んだ。
対する聖グロ側は残りの7輛を駅前に集結させ、強襲浸透作戦を続行する構えだ。


第35話  大洗夏の陣、後編です!

大洗女子学園 学園艦甲板 町民用特設観覧席

 

 その頃、試合会場となった大洗町の町民は学園艦の甲板に設けられた

特設の観覧席で試合を観戦していた。聖グロ側の先鋒を破った事で

大洗側も熱気が上がってきた様だ。

 

「おお、大洗側は3輛倒したのか?!幸先が良いなぁ!!」

 

「うんにゃ、何輛倒してもフラッグ車ってのを倒さないと勝負が付かんらしいぞ。」

 

「はえー、あのデカいのを倒さんといかんのか。…倒せるんかの?」

 

「分かってねえなぁ!それをどうにかするってのが、戦車道の醍醐味ってもんよ!」

 

 こんな感じで観客の町民は口々に感想を口に出すが、その中にこの男も。

 

「おお、ここにいたかサコさん!探したよ!」

 

 後援会理事長を兼ねる地元商工会の会長に声を掛けられたのは、

数日前後援会再建の挨拶に来た後援会理事にしてみほの大伯父、菊池左近次だ。

 

「いやしかし、まさかワシ等が生きてる内に

大洗に戦車道部が再建されるとは思ってもみなかったな!」

 

「ああ、そうだな。もしかしたら、あの子の遺志がそうさせたのかも知れん。」

 

「そうかもな。あんな形とは言え、

サコさんの姪孫ちゃんがこっちに来てくれるなんて予想もしなかったよ。

しかし大丈夫かな?どうもあの子、自分でオリジナル流派を立てたせいで

家族から相当憎まれてるんじゃ無かったか?」

 

「そうらしい。まあ、あの子は義妹(りほ)はもうどうにもならんが、

(しほ)の方はまだやり直す余地があるとは言っていた。

もしかしたら、あの子がこの大会で良い成績を上げれば、親子が仲直りできるかもな。」

 

「だと良いな。まあ、今はともかくこの試合を見届けようや。

お宅の姪孫ちゃんがあの子の血を引いてるなら、

きっとあっと言わせる作戦でこの試合も勝ってくれるさ!」

 

「そうだな。見届けようじゃ無いか。」

 

 

視点・聖グロリアーナ女学院隊長車・A43

 

「で、大洗駅前まで何とか逃げ込めた訳だけど…。現在の戦力は7対10。

このまま待ち構えてもKwK43持ちの聖王がいる以上ジリ貧は必至。

不利は承知で打って出るべきかしら?」

 

「向こうの地元で市街戦をやる事になりますね。まず勝ち目は無さそうなんですけど。」

 

「それを補う為にマリンタワーに人を派遣したんですが…

皆連絡が取れなくなってます。もしや向こうも同じ事を考えていたのでしょうか?」

 

「確かにIS学園にはそういう事が得意そうな生徒がいるそうね。

噂じゃ、現役軍人が生徒として入り込んでるとも…。」

 

「現役軍人?!よく参加の許しが下りましたね。日戦連も高戦連も何も言わなかったので?」

 

「それもこれもオルコット嬢の威光なのでしょう。日本戦車道の最大手…

否、実質唯一と言っても良いスポンサー企業の筆頭株主。

しかも大会規模を例年比の2倍増させてみせた実績ある企業の筆頭株主となると、

その発言力が如何程の物かは考えるだけでも恐ろしいわ。」

 

 ダージリンの言う通り、東雲特車の日本戦車道への貢献は

最早国中の戦車道関係者が今世紀一杯頭が上がらなくなるレベルであり、

その貢献度を以てすれば自分の母校の学籍を持つとはいえ、

現役の士官を競技に参加させる事は容易かろう…そう考えるのは当然の事であった。

 

「何はともあれ、この試合がフラッグ戦であるからには

フラッグ車の隠し場所を予想して急行し、仕留めさえすれば逆転勝ちできる…。

さて、何処に隠す?」

 

「考えられるのは…県道2号線を通った先のキャンプ場か…磯前神社裏の森林?」

 

「でもどっちを通るんです?海に近いサンビーチ通りか、

きらめき通り経由で磯浜さくら坂通りか…。」

 

「…ここは1輛毎に別ルートを通りましょう。一列縦隊では格好の餌食。

そして、タワーから見られている可能性を考え、古墳群を影に出来るかも知れない

県道2号線以北を通ってキャンプ場へ向かいます。全隊に通達。

各車は県道2号線より北側を互いに隣接する路地を通り、

援護し合いながらキャンプ場へ向かいなさい!」

 

『『『『『『はい!』』』』』』

 

 

視点・大洗マリンタワー展望台

 

「むっ?敵が分散して北上している?」

 

 当たり前だが、聖グロ側の行動はマリンタワー展望台から索敵していたラウラに見破られる。

 

「あの辺りを通られると、磯浜古墳群が邪魔で見辛くなるな。

(しかし、現地の展望台を利用しての偵察行動が罷り通るとは随分穴がある競技なのだな。

如何にルール上禁止されてないとは言え、これではこの試合もワンサイドゲームになるやも。

或いは『この程度の事は実戦ならやって当然の行為』だから禁止しようがないのか?

何はともあれ…)」

 

 ラウラは持ち込んだ無線機で再度あんこう号に連絡を入れる。

 

『鉄人3から鮟鱇1へ、敵は磯浜古墳群より北側をキャンプ場へ向けて進撃中。

途上の斎場裏に隠れたアヒル号に警告の要あり。』

 

『了解。アヒル号に直ちに連絡する。

鉄人3は注視を厳とし、敵方がアヒル号に気付いたら直ちに連絡せよ。』

 

『了解。予定通り敵の無線機を入手せり、これを利用して敵をゴルフ場に引き入れる。』

 

 

 

 視点・大洗・IS学園連合隊長車「あんこう号」

 

『こちら鮟鱇1、家鴨1(典子)聞こえるか?』

 

『こちら家鴨1、感度良好!』

 

『現在、敵勢が斎場近辺を通過し、キャンプ場に向かいつつ有り。』

 

『了解。隙を突いて、敵隊長車のA43を狙げ…』

 

 そこまで聞いて近くを通る敵隊長車への狙撃命令だと思った典子だったが、

みほからの指令は全く違っていた。

 

『狙撃の必要なし、徹底的に隠れ、やり過ごせ。』『え?!』

 

『万全を期するべく、敵車輌全てを罠に嵌める。ここは徹底的にやり過ごせ。

万一敵が見付けた素振りを見せたら、直ちに鉄人3が通報する。

その時は全力で五反田方面へ逃走せよ、ルートは家鴨1の自由裁量とする。』

 

 みほからの指令は「確実に罠に嵌める為、兎に角隠れ続けて、やり過ごせ」。

 

『りょ、了解…でも鮟鱇1、フラッグ車が直近を通った場合は…』

 

『その時は、直ちに狙撃せよ。』『了解。アヒル号、隠蔽を続行する。』

 

 

 

 視点・聖グロリアーナ女学院隊長車・A43

 

「隊長、間もなくキャンプ場です。」

 

 A43操縦手がキャンプ場への到達を告げる。

 

「分かったわ。全車集結次第突入するわ。ペコ、APDS装填。」

 

「了解、APDS装填します。」

 

「(ここまでは順調ね。大洗側の反撃が来ないのは予想外だったわ。

向こうは何を考えているのかしら?)」

 

 その答えはすぐに「判明した。」ここでA43の通信手が何かの音声を拾ったのだ。

 

「んん?何か聞こえた様な…。」

 

『………ちら……鱇1……ラッグ車……近…つつあり…ルフ場を…って北へ…却せよ…。』

 

「?!! 隊長! ドンピシャです!敵フラッグ車、ゴルフ場を北へ逃げつつ有り!」

 

「…ビンゴね。でも何故分かったのかしら?」

 

「どうも無線が混線してるみたいでして…。相手の無線の会話が聞こえてきたんです。」

 

「混線?この期に及んでそんな事で行動を見破られるとは…。

社会人リーグ優勝チームをも完封する噂の高校生家元も思わぬお粗末を働いたみたいね。

何にしても運が良いわ。…各車長にハッチを開ける様に伝えなさい。」

 

 集結した6輛のA41の砲塔ハッチが開き、各車の車長が顔を出す。

 

「今、双方の無線が混線していると報告がありました。よってここだけ直接命令を下します。

全車はこれより隊長車に続きゴルフ場を北上!最北端に逃げ込んだであろう

敵フラッグ車を追い詰める!(これならもしかしたら…もしかしたら勝てるかも…。)」

 

「「「「「「了解!」」」」」」

 

 A43を先頭に、6輛のA41がゴルフ場に突入する。

この時点で、既に決着が付いたも同然と知らないで…。 

 

 

 

視点・大洗マリンタワー展望台

 

「矢張りそう来ると思ったよ。これで7輛共ゴルフ場に引きずり込めた。」

 

 つまり、こう言う事である。聖グロ側が持ち込んだ無線機から

使用している周波数を見破り、互いの通話が聞こえる様に仕向けて混線に見せかけて

フラッグ車がゴルフ場を通って北に逃げようとしていると誤認させたのだ。

これで嫌でも聖グロ側はゴルフ場北端に移動する筈。

鬼皇流に取って何処に向かうか分かっている敵の隊列など、怖くも何ともない。

 

「(まあ、我等がこんな手を使ったからには、いずれ近い内にこの手の無線を使った

欺瞞工作、精神攻撃の類は規制されるだろうな…。

これはあくまでモータースポーツであって女子向けの軍事教練ではないと

言い張るのならばの話だが。)

さて、後はお師様とミホ・ニシズミの手並み次第だ。まあお師様なら間違いは無かろう。」

 

 

 

 視点・大洗・IS学園連合隊長車「あんこう号」

 

「とうとう、この時が来たね。」

 

「うん。向こうは全車一斉にゴルフ場を北上してるって。」

 

「情報収集のルートを全部封鎖され、おまけに展望台を占拠されて行動が筒抜けの可能性有り、

そんな状況で勝ちの光がちょっとでも見えたとしたら、

4強の一角もこんなに呆気なく罠に嵌まっちゃうんですね。」

 

「そうだね…でも、私達がこれだけの事をして暴れ続けたら、

来年以降は確実に日戦連が規制を掛けてくる筈だよ。」

 

「そうですね。誰かがルールの穴を只管衝き続ければ、それも当然の結果かと…。」

 

「仕方ないか。所で、ウサギ号は今何処に?」「県道108号線の高架下に避難させたよ。」

 

「なら良いや。…敵の先鋒が所定の場所まで来たみたい。

それじゃ手筈通りに…。行動開始!」

 

「「「「「「了解!」」」」」」

 

 

 

視点・聖グロリアーナ女学院隊長車・A43

 

『………ちら……兎1…鮟…1…方…履……断…現……急……中…護…む…。』

 

「……履帯破断?ダージリン様、敵フラッグ車が履帯破断したみたいです!」

 

「チャンスよ!これで勝てる!」

 

 敵フラッグ車が走行不能に。今の内に詰め寄って倒してしまえば…。

しかし、ダージリンはここで何かがおかしい事に気が付いた。

 

「いやおかしい…これだけ長時間混線に気付かない筈が………!!!

拙い!騙された!!

 

「射てぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええ!!!」

 

 ダージリンが罠に嵌められた事に気が付いた瞬間、

みほの号令一下、ゴルフ場の林に隠れていた族長小隊と鉄人小隊が一斉に飛び出し発砲した。

 

『ンアーッ、ヤラレター!!!』

 

『このタイミングで伏兵の一斉攻撃を?!』

 

『そんな馬鹿な!こちら側がフラッグ車間近に迫るギリギリまで引きつけたと言うの?!』

 

「全部罠だったのね!兎に角退却するわ!直ちに反転退却!!生き残った車輌も退却を!」

 

「はい、反転します!!」

 

 ダージリンは直ちに操縦手のルフナに退却を命令。残った車輌にも退却を命じるが…

 

『ギャーッ!!ワイヤーで進路を塞がれた!!』『いつの間に?!』

 

何と元来た道を引き返すと木にワイヤーが。

事前に準備して通り過ぎた所で一斉にワイヤーを張り詰めたのだ。

 

「な、何でいつの間にこんな罠が…。」

 

「こうなったらゴルフ場外縁の林を突破して、祝町いささかりんりん通りに脱出よ!」

 

 だが、それも連合側の策略通りであった。

トラップはそちら側に逃げる様に仕掛けられていたのだ。当然、通りに出た所で

磯前神社、斎場裏、個沼川川岸の林に隠れていた聖王小隊が挟撃。

残りの車輌を一斉射撃で仕留めたのであった。

 

「そこまで!聖グロリアーナ女学院、フラッグ車撃破判定!勝者、大洗・IS学園連合!!」

 

 こうして大洗・IS学園連合は聖グロを破り、Dグループを全勝で1位通過してみせた。

全ての試合をパーフェクトゲームで優勝しようとするみほの願望が叶うまで、あと4勝。

 




原作未登場のAFV紹介 その20

A43 巡航戦車チャレンジャー・聖グロリアーナカスタム

 A27クロムウェルの車体を延長して17ポンド砲を搭載した。
シャーマン・ファイアフライのせいで偵察役に回され、
生産台数も制限を掛けられるなど日の目を見なかったが、
足回りの信頼性はそれなりに好評だった。

※下記の数値は作中世界でのみ通用する数値で、史実と同一とは限りません。

寸法   全長8.03×車幅2.908×全高2.775㍍
機関   ロールス・ロイス製V型12気筒ガソリンエンジン
     「ミーティア・聖グロリアーナカスタム」600馬力→700馬力
最高速度 64㎞/時
重量   33㌧
乗員   5名

武装
主砲:55口径76.2㎜砲「QF17ポンド砲」×1
機銃:7.62㎜機銃「M1919A4」×1

装甲(単位:㎜ 小数点以下四捨五入)
防盾  102
砲塔   前面    側面 後面 天板
    102/   40/40/20
車体   前面    側面 後面 天板 底板
  57~89/28~51/38/20/10
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