高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者   作:ピロッチ

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 グループリーグ1位通過を決めた翌日、大洗・IS学園連合の決勝トーナメント壮行会と
地元の戦車道後援会再建祝いを兼ねた宴会が大洗ホテルで開かれた。
この大宴会はIS学園側も参加し、地元大洗町で獲れた海産物を主とする食材が振る舞われ、
翌朝には磯前神社に郷土の民謡「あんこう音頭」に合わせて踊るあんこう踊りを奉納し、
戦勝を祈願したのであった。


第37話  抽選会、そして再会再びです!

 そして8月初日。この日は戦車道全国大会の決勝トーナメント抽選会当日である。

各グループの勝ち残りである以下の17校16チームの代表が集結し、

決勝トーナメント1回戦の割り当てを決定する。

今回の抽選会にはみほ、優花里、沙織の3名が参加した。

 

グループA             グループB

・サンダース大学付属高校(長崎)  ・黒森峰女学園(熊本)

・マジノ女学院(山梨)       ・BC自由学園(岡山) 

 

グループC             グループD

・プラウダ高校(青森)       ・聖グロリアーナ女学院(神奈川) 

・ベルウォール学園(広島)     ・大洗女子・IS学園連合(茨城・東京)

 

グループE             グループF

・継続高校(石川)         ・西呉王子グローナ学園(広島)

・ビゲン高校(新潟)        ・ギルバート高校(大分)

 

グループG             グループH

・メイプル学園(北海道)      ・アンツィオ高校(栃木)

・知波単学園(千葉)        ・中立高校(長野)

 

 そして壇上に上がったみほが抽選箱から番号を引いた。

 

『大洗・IS学園連合チーム、8番!』「「「「「OMG!!!」」」」」

 

 大洗・IS学園連合の決勝トーナメント最初の相手はサンダース大学付属高校。

初戦でぶつかると決まった瞬間、サンダース側から一斉に悲嘆の声が上がる。

無理も無い。今や大洗・IS学園連合は黒森峰、プラウダと並ぶ3校目の優勝候補として

その名が全国に轟いているのだ。

 

「うわぁ…完全に引かれてるよ、仕方ないけどさ……。」

 

「ねぇ、サンダース大付属高って強いの?」

 

「はい。優勝候補の1つ『4強』の一角です。」「ま、また4強なのぉ?やだもう~!」

 

「初戦から強豪ですね。東雲特車からの寄贈がなかったら勝算は無かったですよ。」

 

「ま、まあ向こうもリアクションから見て私達と同じ心持ちなんじゃないかな…。」

 

 

 

 かくして抽選会が終わり、みほ達は帰路に就く前にケーキでも食べて来ようと

戦車喫茶「ルクレール」へ寄ったのだが…

 

「御免……、また強い所と当たっちゃった。」

 

 申し訳なさそうに沙織に詫びるみほ。

 

「仕方ないよ、あれは籤運だもん。

そうそう、サンダース大付属って4強の一角なんでしょ?何処が強いの?」

 

「うーん、強いって言うか資金力が凄い高校なんです。日本一戦車保有台数が多くて、

チーム数も一軍から三軍まであるんです。でも安心して下さい。

公式戦は二回戦まで参加可能車輌の数は10輛までって決まってるし、

全部フラッグ戦だからどのチームにも勝機はあるんです。」

 

「そっかぁ…それで、何処の国の車輌を使ってるの?」

 

「主に米国ですね。主力はM4(シャーマン)シリーズを使っている所なんだけど、

今年からは般若騒動で寄贈されたM26(パーシング)を投入し出したみたい。」

 

「やっぱり、向こうも東雲特車からもっと強い戦車を受け取ってるんだね。

『贔屓も冷遇もしない』スタンスがガッツリ牙を剥いてるよぉ…。

ねえみぽりん、それより全国大会ってテレビ中継されるんでしょ?

ファンレターとか来ちゃったらどうしよう?」

 

「えーと、生中継されるのは決勝戦だけなんですけど。」

 

「……そっか、じゃあ、決勝に行ける様に頑張るしかないね。

ほら、ケーキ来たみたいし、みぽりんも食べて食べて!」

 

「あ、うん。」

 

 そう言い、注文したケーキが一同の元に運ばれた時。 

 

「…また会ったわね。元副隊長…いえ、鬼皇流家元。今日は保護者同伴じゃないんだ。」

 

 そこにいたのはまほとエリカ。抽選会に黒森峰代表として赴いていた。 

 

「お姉ちゃん、エリカさんまで…。御免、私は席を移動するから

沙織さんと優花里さんはそのままケーキ食べてて良いよ。」 

 

 そして、みほはまほとエリカの席まで移して話の続きに入る。

 

「グループリーグの抽選会以来だな。

まさか1輛も損害を出さずに全試合に勝って1位通過してのけるとはな。」

 

「まあね。ねえ、これでも去年の決勝での私の判断は

間違ってなかったと認める気は無いの?」

 

「そ、それは…。」

 

「正直に言うと、姉としては認めてやりたい。だが、西住流に属する者としては…。」

 

「そうよ。それに、まだ黒森峰が負けた訳じゃないわ。

直接対決で勝って、どっちが正しいかはっきりさせてやるんだから!」

 

「うん。言うと思った。じゃあ……エリカさんも三千里農高と同じ目に遭ってみる?」

 

「「…………!」」

 

 突如、三千里戦後に両親や家元のりほに見せた攻撃的な雰囲気を纏うみほ。

グループリーグ戦で見せた謎の声とは明らかに違うが、その本質は同じだった。

 

「知ってるよね?私達が三千里にどう勝ったかは。

勝つ事こそ全てなら、あの一撃必殺が戦車道の理想型だって認めるって事だよ?

…お母さんから何も聞いて無いのかな?

 

お母さんはアレを直接見せられて、もう勝利至上主義を捨てちゃったよ。

『あんな味気ない物を完成形と掲げていては、戦車道が衰え滅ぶは時間の問題。

そんなのは余りに沙門しく、惨め過ぎる。』ってね。」

 

「そんな、筆頭師範が?!じゃあ、今後の西住流は…。」

 

「……確かにお母様はお父様と家元同伴で直接見に行っていたな。

そうか…西住流も変革の時が迫っているのか…。」

 

「そりゃ、5㎞先に一発で当てられる超人狙撃手を連れて来られたら、

誰だってそうなっても文句は言えないわ。

でもあの一撃必殺はIS学園側の隊長あっての芸当でしょ!

結局大洗は実質何もしてないじゃない!」

 

「うん。今はね。…でもあれが何時迄なのはさんだけの専売特許だと思ってるの?

私達が東雲特車から送られた訓練用内膅銃でどれだけ射撃訓練を積んでるかは分かってるよね?

それに、黒森峰だって昔は他校に一撃必殺で打ち負かされた事が有るんだよ。」

 

「はぁ?!」「どう言う事だ?!」「西住輝鳳。」

 

「「………!!」」

 

「私ね、その人の養父だった人に会ったの。

その人は今大洗で木工芸屋をやってて、つい最近地元戦車道後援会の理事に成ったんだ。

私達のお母さんの父方の伯父さんなんだけど…」

 

「つまり大伯父にあたる方…か。居た事すら知らなかった。」

 

「でもびっくりしたな、まさかお母さんに妹が居たなんて。

しかも世界一の戦車道家だったんだよ?生涯54戦全勝。

それもいつも5輛だけで戦って54勝中53勝は味方は全員無事。

それで、その仲間をやられた試合の相手は旧自衛隊の10式戦車1個連隊で、

最後には殲滅してみせた鬼みたいに強い人だったんだって。」

 

「「ブホッ!」」「うわ!汚っ!」

 

 まほとエリカは一斉に珈琲を吹き出した。

 

「ゲホッ、ゲホッ!ちょっと待って!何よその滅茶苦茶な戦績!!

いつも5輛で戦って仲間をやられた事が1試合しかないってどう言う事?!」

 

「しかもたった5輛で現代戦車1個連隊を殲滅だと?!

いやそもそもお母様は一人っ子の筈、妹が居たなんて聞いた事が無いぞ!!」

 

 テーブルを拭きながら、みほの言葉に突っ掛かる2人。

 

「当たり前じゃん。輝鳳叔母さんはもう20年も前に亡くなってるし、

高校に入る前に大伯父さんと特殊な養子縁組をしたから、

血縁上はお母さんの妹だけど法律上は従姉妹って事になったんだって。」

 

「そうだったのか…。それならお母様は一人っ子と言う事になるな。」

 

「で、その叔母さんが高校生だった20年前、今ウチのコーチやってる

茂武姉妹が隊長だった頃の黒森峰がフラッグ車を叔母さんに一撃必殺でやられて

10連覇を潰された事が有るんだよ。

 

それと、私が戦車道から一度身を退く位に責められたのは、

私が第二の輝鳳叔母さんに成るかも知れないって事でその芽を摘もうとしてたんだって。

実力って意味じゃ無くて、仲間をやられた事が無い事が誇りだった叔母さんの口癖を

私が知らずに口走っちゃったのが西住流の年寄りの人達のトラウマを呼び起こしたみたい。」

 

「たったそれだけの理由で?!…御免なさい、

もう私西住流の年寄り達が信じられなくなって来たわ。」

 

「だ、大丈夫だよ!お母さんがこの大会が終わるまでに代替わりして、

その時に全員追い出すって約束してくれたから。」

 

「本当か?そうか…もうお母様も変わってしまったのか。

だがどうやってあの古老達を叩き出す気だ?」

 

「ふふっ、もう既にお母さんには誕生日プレゼントとして大伯父さんの名前で

『究極兵器』を送ってあるんだ。アレが公開されれば、もうお祖母ちゃんだった人も

周りの年寄りも皆今の立場には居られなくなる最高の切り札だから、期待してて良いよ。」

 

「「…………………………………………………………………………………………………。」」

 

「何はともあれ、あと4回…あと4回ああやって勝てば、

お姉ちゃんもエリカさんももう認めない訳にはいかなくなる。そうだよね?」

 

「くっ…。」

 

「そんな事はさせないわ!アンタがどんだけパーフェクトゲームで勝ちたくても、

私達に勝ちを譲る理由なんて無い!必ず勝って黒森峰の誇りを取り戻してやるわ!」

 

「出来ると良いね。…鬼皇流があんな物だと思ってるなら永遠に叶わないけど。」

 

「みほ…最近、随分言葉が挑発的になって来たな。」

 

「うん。何と言うか、こっちの方が生き易いと言うか…楽なんだ。」

 

「楽って…アンタ向こうでどんな生活送ってたのよ?」

 

「特に変わった事はしてないよ。唯、マニュアルを少しずつ暗記する位かな?

輝鳳叔母さんの戦い方を文章に纏めた例のマニュアルをね。」

 

「……そのマニュアル本、戦車道史上に名前が残る宝物になりそうだな。

…おっと、こうしてはいられない。悪いが時間が押しているので

私達はもう帰る事にする。エリカ、行くぞ。」

 

「はっ、はい。」

 

 そう言って席を立つ2人、エリカは思い出した様にみほに言う。

 

「ねえ、一回戦はサンダースと当たるんでしょ?

あそこは『フェアプレーこそ正義』な気風だから、

今迄みたいな戦車道のイメージダウンになる様な戦いをして、精々嫌われない事ね。」 

 

「そっちこそ、一回戦は突撃フェチの知波単学園が相手でしょ?

火力もスピードも段違いに強化されてるみたいだから、

精々回り込まれてからの突撃で突破されない様に気を付けてね。」

 

「……本当に人が変わったのね。世界一のお嬢様高校と手を組んで、

アジア一の大富豪まで味方に付けて金の力で無理矢理戦車道に乗り込んで、

それ所かあんな滅茶苦茶な方法で売名までして…戦車道に対して失礼とか思わない?

戦車道のイメージダウンになる学校は参加しないのが全国大会の暗黙のルールだったのに、

それすらすっかり忘れてるのね。」

 

「覚える価値なんか無いよ。

強豪校に都合の良い様に大人が示し合わせて作った暗黙のルールなんて。」

 

「強豪校の隊長がそれを言うの?まあ良いわ…サンダースはT28を使う気よ。気を付けなさい。

 

「……?」

 

 そうしてエリカはそのまま店を去って行った。

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