高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者 作:ピロッチ
長崎県に本拠地を持つ4強の一角、サンダース大付属高。
向こうも既に強豪扱いの連合チームが相手と知り、互いに悲嘆の声を上げる始末。
そして、帰りに喫茶店でまほとエリカとまたも再会したみほ一行だったが、
みほが変貌しつつある事にまほもエリカも動揺を隠せない様子だ。
そして、仮校舎に3人が戻ってきた時、留守番していた杏と
風紀委員長のソド子こと園みどり子が出迎えた。
「ああ、お帰り西住ちゃん!また4強と戦うんだって?」
「え?は、はい。今度の相手は長崎のサンダース大付属です。」
「そっか…それでね、重要な話が有るんだ。」
「重要な話?」
「また機甲科への移籍希望者が5人程現れたんだ。今回は皆未経験者なんだって。
内2人は大洗から、残りは長野からの転校生なんだって。」
「で、大洗側の機甲科への移籍希望者は私達風紀委員の新入りでね。
西住さんの戦い振りを見て是非って。それで、その子達の紹介をさせて欲しいんだけど。」
「アッハイ。そう言う事なら是非合わせて貰えませんか?」
と言う訳で、早速5人の新たな移籍希望者がみほの前に連れて来られた。
「それじゃ、まず風紀委員の子から自己紹介して貰うわ。」
「はい。私は風紀委員1年次の
「同じく、風紀委員1年次の『ゲヘ奈』こと
それぞれ「メギ恵」「ゲヘ奈」と名乗る新入りの風紀委員だが、
この2人、否、既に機甲科に所属しているゴモ代、パゾ美共々彼女達は
ソド子と瓜二つの容姿をしている。しかも、身長も全く同じだ。
「…えーと、風紀委員の皆ってやけに背格好がそっくりなんですけど、
血縁関係とか…有るんですか?」
「いや、そう言う訳ではないんですけど…」
「後…このヘアスタイルは大洗女子学園風紀委員のユニフォームみたいな物でして…。」
「成程、そうなんですか…。」
「それじゃ、次は転校生組に自己紹介して貰おう。」
次に、長野から来たと言う転校生トリオの自己紹介に移る。
転校生の1人は大きなリボンと黒ストッキングが特徴で、
残る2人は今時の女子高生風の出で立ちだ。
「我が名は
鬼皇の武名に惹かれ、転校を願い出た次第なり!」
「同じく元楯無高校2年次の
元いた高校は戦車道が10年前に無くなっていて、
しかも今年度一杯で同じ県の高校と合併するので、無事機甲科を再建して、
廃校を撤回させて見せた大洗の皆さんの元で戦車道をと転校を願い出ました。」
「同じく元楯無高校2年次の遠藤はるかです。私は共に戦車に乗ってと言うより、
マネージャーとか裏方としての仕事で皆さんに役立ちたくて付いてきました。」
「そうだったんですか。ウチは今も人手が足りなくて来る者拒まず状態なんで、
こちらこそ、是非宜しくお願いします。唯、車輌は新しく発注しないといけないんで、
今大会への出場は出来るかどうかはちょっと明言できませんので、そこはご理解下さい。」
「是非も無し。」「それは仕方のない事かと…。」「まあ、そう言う事なら…。」
「ま、まあ兎にも角にも他の部員にも紹介して、
その後適切な役目を判断した上で基礎訓練から始めます。」
「分かりました。」「では、宜しくお願いします。」「委細承知した。」
かくして、新たな仲間とマネージャー候補が大洗にやって来た。
この件は早速みほからIS学園側に伝えられ、
なのはから束に彼女達へ支給される車輌製造が依頼された。
尚、彼女達に支給される車輌、仮称「ムカデ号」は人数の関係上駆逐戦車とされ、
束の意向により、44Mイシュトヴァーンとは別の車輌となる予定との事だ。
一方その頃、連合チームの次の対戦相手であるサンダース大付属高の学園艦では…
「God damn it…よりによってあの『デモニック・エンプレス』と
1回戦でやり合う羽目になるなんて思っても無かったわ…。」
「去年のベスト4進出校はルール上初戦でかち合う事が無い様に配慮されてるけど、
これは流石に籤運次第だからね…。」
隊長のケイ、副長のアリサ、そしてもう一人の副長格ナオミ・マツウラを始めとする
戦車道チームのメンバーが頭を抱えていた。
「何と言っても、会社1個丸ごと使って情報封鎖してるのが最悪過ぎるわ。
学園艦に行っても情報が得られないんじゃどうしようも無いし、
会社の所有地には勝手に入れない。
分かってるのは、IS学園側にデンジャー過ぎるスナイパーが居る事ね。
3マイル以上先への狙撃を一発成功させるモンスターが居る時点で、
並みの作戦は全部潰されるのが痛すぎるわ。」
「でも文句を言っても始まりませんよ。それに東雲特車から新装備として
次の試合には間に合いませんけど、これと2回戦に勝てば大元帥を装甲強化型の
T26E5仕様へ改修出来ます。これに火力強化型のT26E4の主砲T15E1を搭載した
キメラ大元帥が揃えば、もう怖い物無しです!」
「そうね。本当は彼女達ともそれで戦いたかったけど、時間が無い以上しょうが無いわ。
で、その替わりとして1~3軍からかき集めた
大元帥の
搭載した17ポンド砲搭載型のキメラ・ジャンボが7輛と
ニッパチが2輛に隊長車としてT肉が1輛…今回はコレで行くわ。
これならやられメカのM4も多少は渡り合えそうね。
で、エンジンのチューンアップはどうなってるの?」
「次の試合で使う分は全部完了してます。キメラ・ジャンボとニッパチは600馬力、
T肉は900馬力まで引き上げられました。これでキメラ・ジャンボとT肉は
ニッパチも何とか
「OK、私はT肉、ナオミとアリサはニッパチ、
残りの皆はキメラ・ジャンボに乗って貰うとして…問題はどう戦うかね。」
「今度の試合場は南方の島丸ごと1つ使う事になってるわ。
森林地帯が多いから視界がそこまで広くないのが幸いね。で、コレがその地図ね。」
「兎にも角にも、今回使う車輌の正面装甲の堅さに物を言わせて、
只管正面切っての射ち合いに持ち込まないとどうしようも無いわ。」
「そうね、ニッパチの脚の遅さも考えると、機動戦に持ち込まれたら一堪りも無いわ。
ましてや、東雲特車の大株主直属のチームなら、どんな魔改造をしたか分かった物じゃない。
少なくとも、聖王が不整地で30マイル超出せる事が分かってるけどね。」
「あ!試合場のここに有る谷間、ここに入り込めば横に回られずに戦えそうですね。」
「成程ね。背後を味方が背中合わせに成って塞げば、まず遅れは取らないわ。
…問題は、連中の実力なら私達が此処に入り込んで戦うだろうと
予想を付けてそうな気がする事ね。脚は向こうが圧倒的に上、逆に入り込まれたら…。」
「その時は、正面からぶち抜くだけさ。その為のニッパチだろう?
隊長のT肉とニッパチの105㎜砲なら高速徹甲弾を使えば
1km以上先からでも聖王を倒せるじゃないか。
しかも、その距離なら向こうのKwK43を正面から跳ね返せる。
流石に鉄人は抜けないけど、こっちも抜かれる事は無いし、
族長は言わずもがなってね。」
「それもそうね。なら、連中がこの谷間に入り込む事は無いか…。
でも足りないわ、後もう一手…。」
サンダース側は連合チームの脚の速さに打つ手が浮かばない様だ。
しかし、ここで副長のアリサがケイにこんな提案をした。
「たいちょー、いっそ無線でも傍受しちゃいます?」
「What?」
「私、今ルールブックを最初から目を通したんですけど、
ルール上も無線の傍受は禁止する項目が無いんですよ。
ルール上禁止されてないなら、やっても反則には成りませんよ。だから…やっちゃいます?」
「アリサ!言いたい事は分かるけど、これは戦車戦ごっこじゃなくて戦車道よ?
そんな手段はサンダースの『フェアプレーを全てに優先する戦車道』には存在しないわ。」
「…向こうはそうは思って無いみたいですよ。これ、聖グロの隊長から聞いたんですけど、
聖グロの連中、試合中に互いの無線をわざと混線させて『フラッグ車が故障した』って
偽情報を掴まされて集まった所を伏兵で一網打尽のボッコボコにされたんですって。」
「Really?…もし事実なら相当アンフェアな事するじゃない。」
「しかも、例の社会人リーグ優勝チームが相手の時も、
無線から『タカサゴ』とか言う曲を流して何故かキレた向こうの隊長が
直属の中隊ごと突っ込んできた所を前にいた別の中隊の車輌の履帯を
ぶっ壊して衝突事故を起こさせて何輛か喰ったみたいですよ。」
「うわぁ。」「ひっど…。」「最低ね…。」「…………………。」
アリサがダージリンから聞いた話を聞いたサンダース側一同はドン引きだ。
フェアプレーを全てに優先する戦車道を掲げるサンダースと
ルールの穴を衝く事を躊躇わないIS学園…否、鬼皇流は相性最悪と言っても良い存在だった。
「そういう訳で、無線での工作を躊躇う連中じゃ無いですよ。
それとも今から向こうに『無線を使っての工作は止めて』ってお願いでもします?」
「……全然聞き入れられる気がしないわ。
OK、裏取り次第、明日朝一でどうするか発表するわ。」
この後ケイがダージリンに確認を取った所、ダージリンもアリサにその話をした事を認めた。
そして翌朝、朝礼でケイがアリサの案に対する決断を発表した。
「さて、昨日のアリサの提案だけど…裏が取れたわ。」
「やっぱり。…で、やるんですか、隊長?」
「…やるわよ。やりたくはないけどね。」
「マジすか?!」
「但し条件を付けるわ。『向こうが無線で工作をした事が確認出来次第、対抗策として』よ。
一方的に無線工作するならアウトだけど、互いに無線で工作し合うなら条件は五分。
これならサンダースの戦車道には触れないと言えるわ。」
「アイ、マム。じゃあ、私のニッパチに装置を積み込んでおきますね。」
かくて禁断の扉を開けてしまったサンダース。この決断の吉凶は、誰も知らない。