高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者 作:ピロッチ
全国一(去年度まで)の資金力を誇るマンモス校に相応しく、
投入車輌も大半に相当のカスタムを施して試合に臨む様子だ。果たして…
その日、朝練前の朝礼でサンダース側の隊長のケイが
連合チームの無線工作対策に無線傍受機の投入を決断した事を表明したその時…
「(…ほほう、サンダース側は『フェアプレーの為に』無線傍受の可能性有り…か。
一方的に無線工作を行うのは不公平だから、互いに無線工作を行えば条件は五分になる…
理屈は合っているが、慣れない事をする物ではないぞサンダースよ…。)」
乗員達に紛れて、今回の潜入工作を担当するラウラが変装して
サンダースの制服姿で紛れ込んでいた。
勿論、特徴的なアイパッチは外して市販の貼合式眼帯に替えてある。
「(さて…今回の投入車輌と作戦は把握した。後はさっさと逃げ出すのみ…。)」
そうしてラウラは朝練に入る他の隊員達に紛れ、
事前に入手した学園艦見取図の通り、戦車道チームの倉庫から艦内に逃げ込むと、
帰りは師と仰ぐなのはに連絡し、彼女の専用機ヤマトの遠隔部分展開機能で
展開された大型マニュピレーターに乗り、
そのままテレポートで帰還したのであった。
大洗女子学園戦車道チーム臨時校舎・会議室
「それでラウラ、相手の情報は何処まで掴んできたんだ?」
「安心するが良い旦那よ。録画・録音がしっかり出来た事を今確認した所だ。
今データを複写して…出来た!コレで皆にも見えるだろう。」
早速ラウラが持ち帰った映像及び音声記録が
会議用のPCに転送され、一同に公開される。
「成程…2回戦は双方共に比較的弱体のマジノ女学院かアンツィオ高の勝者なので
ファイアフライで何とか出来そうだから、私達の相手は一度きり使えれば良いからと
無理矢理17ポンド砲を搭載した
ここにT28×2輛と隊長車のT29を加えた10輛を投入すると。
で、
T15E1を搭載したキメラ大元帥への改修中か…。」
「どの道ここで勝とうが負けようが、来年以降はキメラ大元帥が
わらわら襲いかかって来るのか…。まさしく4強の一角に相応しい偉容ですね。」
流石は戦車マニアだからか、優花里は対戦相手の事ながら何となく嬉しそうだ。
「とは言え、若干マシに成ったとは言え、
やはり元が元なので脚の遅さはどうしようも無いみたいだな。
特にT28の16km/時は開けた所に出るのは自殺行為ものだ。」
「で、それを補うべく谷間に陣取って側面を塞いで、
後方は味方が固める事で強固な正面装甲でこちらの攻撃を凌ぎ、
攻め倦ねている隙に残りの味方で背後を衝いて挟撃殲滅する方針なんですね。」
「そして…一番の問題が…これか。」
『「向こうが無線で工作をした事が確認出来次第、対抗策として」よ。
一方的に無線で工作するならアウトだけど、互いに無線で工作し合うなら条件は五分。
これならサンダースの戦車道には触れないと言えるわ。』
再生されたのはサンダース側隊長のケイの声。
フェアプレーを全てに優先する戦車道を掲げるサンダースにとって
連合チームが多用する無線工作はアンフェア以外の何物でもない。
だが、止めろと言って聞いて貰えない事も分かっている。
ならば無線工作には無線工作で対抗すれば条件は五分になり、
フェアプレーが成り立つと言う理屈なんだろう。
「こっちの気も知らないで…私は『便利だから』『勝ちたいから』なんて
薄っぺらい理由で工作してる訳じゃ無いの!」
「「「「「え?!」」」」」
憤るなのはに一斉に驚く一同。
「…何なの、一夏く~ん?」
「いや…その…本気で勝つ為にやってるんだとばかり思ってました。」
「あぁ~~~~~~~⌒*(◎谷◎)*⌒~~~~~~~ん?」
「ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
「我等は天下のIS学園、世界一のエリート校たる我等がこんな
ルールの穴を衝き捲ったセコい戦いに邁進すれば、
日戦連は嫌でもルールの近代化、公正化を進めない訳にはいかなくなる。
これもまた、日本戦車道の発展に繋がる貢献の一つなの!」
「な、成程…」「流石お師様です!」
「……………(本当かなぁ?)」
疑問を気安く口に出さない。それが、なのはとの上手い付き合い方だとみほは覚えた。
「それでは、コレを元にこちらも作戦を考えよう。」
かくして、連合チームも作戦会議を開始する。
「兎に角サンダースは前回の相手だった聖グロ以上に鈍足高火力重装甲が
強調されたチームですね。それも、条件付きですが無線傍受で
こちらの進撃ルートを看破してくる可能性がありと…。」
「それなら、逆手に取るだけなの!」
「逆手に?どうやるんです?」「ふっふっふ。ウチがどういう所か忘れてないかな?」
「………………あっ(察し」「え?そ、それって…」
「安心するが良いの!メモを用意するから、それに従って動けば良いの!
それよりも、今後の事に関わるもっと重大な報告があるの!」
「…何でしょう?」
「私がISの日本国代表操縦者に内定した事は予てより伝えていたけど、
先日、正式に防衛省から任命状が届いたの!」
「「「「「おおお~!」」」」」
なのはからの朗報に感嘆の声を上げる一同。しかし、この直後歓声は悲嘆に変わる。
「よってこの試合終了後、私は渡米して日米合同演習に参加する必要が出てきたの!
と言う訳で、私は準々決勝と準決勝には参加出来ないの!」
「なのはサンだけじゃ有りませン。私共も装備更新の為、
一時的に戦線離脱をしなければ成らず、この試合を勝ち残った場合、
次の2試合は皆さんだけで戦って頂かなければならないのでス。」
「「「「「ええええええええええええええええええええええええええええええ?!!」」」」」
何とこの試合終了後、なのはのみならずIS学園側が全員一時戦線離脱してしまうのだ。
「ウチの最強戦力がぁああああああ!」「どぼぢでぇぇぇ!!!」
「終わったぁああああああ!!大洗の進撃はここで終わってしまったぁああああああああ!!」
一瞬で失意と落胆と絶望の声が上がる。しかし、唯一人だけそうでは無かった。
「落ち着いて下さいっ!」
言うまでもなく、声の主はみほである。
「私の…いや、私達の立てた鬼皇流はなのはさんが居なくなった位で
負ける様な出来損ないの流派じゃありません!例えなのはさんが居なくなったとしても、
その抜けた穴をどうにかするのが、家元である私の役目です!
だから、何も嘆く事はありません!皆さんがやって来た訓練は、
その位で負ける様な半端な訓練では無かった筈です!」
「「「「「…はっ!」」」」」
「そうだ…私達は本当は一校だけで戦わなきゃいけない所を
定数割れだからって日戦連のお情けで連合の許可を得た身の上…。」
「今こそ、IS学園の助けが無くなってもやっていける所を見せて、
『鬼皇流は高町なのはあってこそ』なんて偏見を持たれない様に
私達が矢面に立って頑張らないと!」
「会長の言う通りだ!いつまでもIS学園におんぶに抱っこじゃ居られない!
今こそ大洗の我々が、しっかりしなければ!」
「「「「「おおおおおおおおおおーっ!!!」」」」」
一斉に鬨の声を上げる大洗側の生徒。みほの言葉で何とか心持ちを立て直せた様だ。
「皆の士気が何とか保てた様で何よりなの!
兎にも角にもこの試合は我々も戦うから、心して臨むと良いの!」
「それじゃ、作戦はいつも通り…。」
「うん、『相手の作戦を逆手に取り、隙を作らせてそこに全火力をぶちかます』。
鬼皇流の基本に基づいて、今回もがっちり型に嵌めて勝つ!
それじゃ午後から試合会場への移動を開始するので、
その前に各車の最後の確認をしましょう!」
「「「「「応!!」」」」」