高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者   作:ピロッチ

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 遂に始まった大洗・IS学園連合の決勝トーナメント。
1回戦の相手は4強の一角、サンダース大付属高。
連合チームが多用する無線工作への対抗手段として、
無線傍受装置を持ち込んだ事を掴んだ連合チームは、果たしてどう対処するのか?


第41話  まずは小手調べです!

視点・観客席

 

 試合開始の号砲が鳴り響くと、巨大モニター前に集まった観客達が一斉に歓声を上げる。

その観客の中には彼女達の姿も有った。

 

「とうとう始まりましたね。」

 

「ああ、思えばこうして観客として試合を見るのはコレが初めてだな。」

 

 黒森峰女学園の制服姿の女生徒、まほとエリカである。

 

「しかし、先日の知波単戦は勝ったとは言え、満足のいく戦いではありませんでしたね。」

 

「確かにな…勝つには勝ったが半数以上をやられるとは…

向こうが五式中戦車(チリ車)試製新砲戦車(甲)(ホリ車)に加えⅥ号E型(ティーガーⅠ)を持ち込んで来るとはな。

だが、何より目と成るべきVK30.02(DB)(プロトパンター)が本調子を出せなかったのが痛かった。

お母様…筆頭師範もあの試合内容に相当御不満の様子だ。次の継続高戦では挽回せねば。」

 

「ええ、しかもⅥ号E型は地味にKwK43に換装してましたね。

それにしてもプロトパンターの主機をHL230に換装したのは間違いでした。

今は主機をHL210に戻して、肥後重機にチューンアップを依頼中です。

それに、プロトパンターにKwK42は取り回しが悪いのでもっと砲身の短い

KwK42プロトタイプに換装しました。」

 

「それが一番だな。これで乗員達も名誉挽回できそうだ。」

 

「しかし、何故MB507ディーゼルに換装しなかったので?」

 

「私も同じ事を学園上層部に提案した所、新たに軽油を調達する事を渋ってな…

『燃料を他の車輌と揃えれば安く済むのでは無いか』と言う事でディーゼルは却下された。」

 

「……まあ、言われてみれば尤もですね。」

 

「何はともあれ、連中には勝って貰わねば。」

 

「それも、パーフェクト勝ちを決めて貰わないと…ですよね?」

 

「そうだ。みほは自分の流派に相当自信がある様だが、

今年立ち上げたばかりのチームで完封出来る程黒森峰は甘くない事を示さねば。

これは西住流対鬼皇流云々ではない、我々が勝ちたいから勝つ。

…家元にも筆頭師範にも既にそう宣言してある。

何としても直接対決出来る所まで進んで貰わねば。」

 

 

 

 視点・サンダース隊長車T29

 

一方その頃、サンダース側ではある問題が発生していた。

 

「ちょっとアリサ、ナオミ、もっと速度は出せないの?!

6マイル(9.6km/時)しか出てないじゃない!」

 

『これで精一杯でーす!』『すまない、2号車も以下同文だ!』

 

 T28を谷間に立て籠もらせ、フラッグ車の存在でおびき出す予定のケイだったが、

T28の予想以上の鈍足さに呆れていた。

 

「予定なら7マイル半(12km/時)は出せると思ったのに…

予想の8割がやっとなんて、これじゃ良いカモだわ。

KwK43対策とはいえニッパチを投入したのは判断ミスだったかも…

兎に角最短ルートで突き進むわよ!早くしないと見つかって袋叩きに遭うわ!

17ポンド砲搭載型M4A3E2(キメラ・ジャンボ)の皆は予定を変更!

先行して敵を見張り、もしやって来たら私が良いと言うまで時間稼ぎして!」

 

『『『『『イエス・マム!』』』』』

 

 

視点・大洗・IS学園連合タシュ2号車「ウサギ号」

 

「それにしても、この防護服があって良かった~。」

 

「ホントだよ!無かったら今頃蒸し風呂で熱中症起こしてるって!」

 

 東側の偵察を任されたウサギ号では、通信手の宇津木優季と操縦手の阪口桂利奈が愚痴る。

何しろ試合会場は夏真っ盛りの南方の島、高温多湿の環境下の戦車は正に走るサウナである。

しかし、それも競技用防護服が無ければの話だ。東雲特車製の競技用防護服には

熱中症や冬期の低体温症対策で冷暖房が完備されており、車内がこんな状態でも

クーラー作動中の室内同然の環境で行動可能なのだ。しかし、彼女達に涼んでいる余裕は無い。

 

「止めて!何か動いたのが見えた!」

 

 車長ハッチから身を乗り出して辺りを見回していた車長の梓が停車を命じ、

双眼鏡で動きのあった辺りを見回すと森の向こうの丘にキメラ・ジャンボが3輛。

 

「見付けた!此方兎1、進撃目標正角*178、キメラ・ジャンボ発見、数3!」

 

『了解、相手は火力も装甲もタシュの一枚上手、正面からの撃破は困難につき手出し無用。

但し側・後面を晒したら隙を突け。』

 

「側・後面を晒すまでは攻撃無用、了解しました。」

 

 キメラ・ジャンボから距離を取ろうとすると、別方向から4輛のキメラ・ジャンボが現れた。

 

「此方兎1、新手のキメラ・ジャンボが接近中、数4、こちらに接近しつつ有り!」

 

『了解、直ちに救援に向かう!こちら鮟鱇1、ウサギ号が進撃目標正角78にて敵主力発見!

鉄人小隊と聖王小隊は前線を受け持ち、族長小隊で側面を衝く!直ちに行動を開始せよ!』

 

『『『『『了解!』』』』』 

 

『兎1は兎に角居場所を知られない様に立ち回れ!』

 

『はい!』

 

 

 

視点・大洗・IS学園連合ISー4・1号車

 

鉄人2(キンガ)、サンダースの行動はどう思う?」

 

『時間稼ぎですネ。T28を谷間に立て籠もらせる為ノ。』

 

「同感!でもD-25Tじゃジャンボを正面から抜けないの!

履帯を吹っ飛ばすか砲口を潰すのが精一杯なの!聖王小隊、こちら鉄人1!

ISー4の主砲ではキメラ・ジャンボを正面から射貫けない!

履帯を破壊するか砲口を潰すのがやっとにつき、鉄人小隊は壁と成るので、

攻撃はそちらに一任する!尚、敵は防楯越しでは射貫不能!

砲塔前面の防楯の無い箇所と車体前面を狙え!」

 

『『『了解!』』』

 

「よーし、砲撃用意!装甲は抜けずとも援護射撃は喰らわせてやるの!

弾種榴弾!装填、急っそげぇー!」

 

「弾種榴弾、了解!」

 

 箒に榴弾を装填させ、履帯を吹っ飛ばす構えだ。いくら重装甲のキメラ・ジャンボも

動けなくしてしまえば、簡単に弱点を衝いて仕留められよう。

 

「そーれっ…よし、装填!」「そぉい!」

 

 キメラ・ジャンボの足下に叩き込んだ榴弾は履帯に直撃して大爆発。

派手に履帯が千切れ飛び、擱座したキメラ・ジャンボにトドメとばかりに

聖王小隊がKwK43の高速徹甲弾を車体にぶちかまし、貫通、撃破判定を喰らわせる。 

 

「ヒィ!もう1輛やられた!」「これが今年出来たばかりのチームの連携?!」

 

「やっぱ強い!隊長が時間稼ぎしろって言ってたけど、稼ぎきれずに全滅するかも!」

 

「兎に角ここは逃げよう!全員バラバラに逃げれば

探してる内に隊長が予定地点に到着するかも!」

 

 出鼻を挫かれたサンダースは忽ち及び腰になって逃げ出す。

全国一の戦車保有台数が自慢のサンダースだが、それ故敵に数で劣る事に慣れておらず、

7対10で戦う羽目となった上、接敵して十数秒で1輛喰われて慌てふためく。

このままでは1輛あたりの戦闘力で勝る独戦車にボンボコやられ捲った史実を再現しかねない。

(大洗・IS連合は洪・ソ戦車を使っているが。)

 

 

 

 視点・サンダース隊長車T29

 

『隊長ーっ!早速1輛やられました、後何分掛かるんですか?!』

 

「ファッ?!あと5分で予定ポイントに到着するから、もうちょっと粘りなさーい!

ってかキメラ・ジャンボの正面装甲ならDー25T相手ならそれなりに堪えられる筈でしょう!

それも木が邪魔になってる状態で何でやられるのよ!」

 

『その木の間をピンポイントで縫って履帯に射ち込んで来てるんです!

今は全車バラバラに退却して、何とか時間を稼いでます!』

 

「Oh ジーラフ!…じゃなくてJesus!」

 

『たいちょー、もうアレを投入しましょう!

これじゃ谷間に着く頃にはキメラ・ジャンボが全滅ですって!』

 

「絶対ダメ!アレは向こうが無線工作を使った時の対抗策の予定でしょう!

向こうが無線工作をしたと確認が取れるまではダメ!」

 

『工作なら、もう仕掛けてきてますって!』

 

「え?!」

 

『混線してるんですよ、互いの無線が!』

 

 ずっと無線機に囓りついていたアリサと違い、

T29には専属の無線手がいないので、ケイは気付かなかったのだ。

 

『敵が…ラバ…に逃…た…だが無…の…波数…掴ん…。後…1……つ仕…め…ば…』

 

「Wow…本当に仕掛けてきたわね。OK…時は来た。You use it!」

 

『イエス・マム!無線傍受機…展開開始!』

 

 

 

視点・観客席 

 

「流石の物量自慢のサンダースも、数の優位が無ければあっという間に弱腰ですね。」

 

「折角寄贈された大元帥(パーシング)を強化改装に回すからよ。

まあ、そうでもしないと同じ4強に対抗出来ないからだと言えばそうなのだろうけど。」

 

 モニターを見ながらそんな会話をしているのは、連合チームの前の試合相手である

聖グロリアーナのダージリン、アッサム、オレンジペコの3人。

彼女達も観客としてこの試合を観戦に来ていた。

 

「こう言う時にピッタリのジョークがあるわ。米国大統領が『我が国には何でもある』

と自慢したら、他国の記者からこう問われたわ。『地獄のホットラインも有るのか?』と。」

 

「どう言う意味でしょう?」

 

「……ケイったら、連合チームのやり方に相当憤ってるみたいね。」

 

「?」

 

 

 

視点・大洗・IS学園連合ISー4・1号車

 

「お師様、相手との無線を混線させる事に成功。サンダース側が通信傍受機を展開しました。」

 

「よし。鮟鱇1はどこに?」「進撃目標正角90に。」

 

「よし、シャル、その方向に向けて進め。」「ウィ・マム!」

 

 早速あんこう号を発見し、みほにサンダース側が無線傍受を開始した事を連絡した。

 

「予想通りですね。こちらの無線工作への対抗策として用意した例のアレか。」

 

「無線工作に無線工作をぶつければフェアプレーになるという理屈なのだろう。

だが無意味だ。これで逆に相手を混乱させてやる。」

 

「ええ、キンガさんが作ったメモに従って…ふっふっふ。」

 

「奴等が用意した対抗策が、逆に奴等の首を絞める事になるとは予想もしてないだろう。

さあ、大反撃の時間だ!」

*1
地図に碁盤状に割り振った区画の番号。

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