高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者 作:ピロッチ
フェアプレーを全てに優先する戦車道を掲げるサンダースは
連合チームが無線工作を多用する事を知り、「無線工作には無線工作で対抗すればフェア」
と言う理屈で無線傍受機を持ち込む。しかし、この事実をラウラの潜入工作で
事前に察知した連合チームはわざと無線を混線させて無線工作と錯覚させ、
つられたサンダースは直ちに無線傍受を開始する。
果たして連合チームは、どう対抗する気なのか?
視点・サンダースフラッグ車・T28アリサ車
『アリサ、ナオミ、もう少しで立て籠もり予定地の谷間よ!Hurry Up!』
「「イエス・マム!」」
『アリサ、例の装置の展開はどうなってる?』
今回のサンダース側フラッグ車担当はアリサが指揮を執るT28。
その車内には無線傍受用の専用機材を満載していた。
「装置は正常です。早速傍受を開始します。」
『全車、進撃目標正角95にある道路を南下してジャンクションへ!
敵はジャンクションを北上してくる筈なので、通り過ぎた所を左右から包囲!』
装置から聞こえてきたのはみほの指令。それを聞き、アリサはニヤリと笑う。
「ふふ…無線傍受されているのに気付かないなんて……。この試合、私達の勝ちね。
隊長。敵はジャンクション左右に伏兵の構えです。
囮を北上させて、本隊はその左右から包囲させましょう!
後は谷間の前を通る様に誘導して105㎜弾でドカンとやるだけです!」
『OK,無線傍受は上手く行ったみたいね。…こんな事本当はしたくないんだけどね。』
「でも無線工作する向こうが悪いんです。何はともあれこれで条件は五分。
隊長の言う『フェアプレーを全てに優先する戦車道』が成り立つって理屈なんですよね。」
『まあね。』
ケイも言葉の端々から本当はやりたくない感ありありの態度が見え見えだが、
アリサの言う通り互いに無線工作を仕掛け合えば条件は五分。
無線工作を使うなら逆に無線工作を使われても文句は言えないのだから、
全ての責任は連合チームにある。
「副長、これ本当に大丈夫なんですか?」
しかし、やはり後ろめたいのか装填手の女生徒が不安な表情でアリサに尋ねる。
「何よ、隊長がOK出したんだから言いっこなしでしょ?」
「そうじゃなくて、社会人チームにパーフェクトゲームで勝った人達が、
こんな簡単な策に引っかかるとは思えないんですが…。」
「これで負けたら反省会…と言うか、下手したら副長は戦犯扱いかも…。」
砲手の一言で車内の空気が一気に凍りつく。ここまでグレーな行為に走って負けよう物なら、
サンダース名物の恐怖の反省会確定である、発案者のアリサも責任を追求されかねない。
その事をアリサ車の乗員達は不安がっていた。
「だ、大丈夫よ!そもそも、OKを出したのは隊長なんだから、
負けた時の責任は、隊長が取ってくれるわよ!」
しかし、この時点でサンダースは詰みが決まっていた。何しろ、みほの出した指令は…
全くの嘘っぱちなのだから。
視点・大洗・IS学園連合隊長車「あんこう号」
『三方から2輛ずつ来てるの、まんまと引っかかったの!』
「…いよいよ、このマニュアルが真価を発揮する時が来たんだね。」
『その通りでス。これで向こうの傍受は無意味になりまス。それでは鮟鱇1、命令ヲ。』
マニュアルの作者であるキンガの声で、みほが次の命令を下した。
『
視点・サンダースフラッグ車・T28アリサ車
『Tas szakasz, Sztálin szakasz, támadjátok meg az ellenséges főhadiszállást!』
「え?ちょ、え?」
『『『『『
「は?え?何?」
突如聞こえた意味不明の声に困惑するアリサ。立て籠もり予定地点に到着し、
これで腰を据えて敵情収集に移れると思った矢先のこの意味不明の声に大混乱だ。
『ちょっとアリサ、ジャンクションの近くに誰も居ないって連絡が来たんだけど?!』
ここでケイからも無線で傍受した内容と実情が全然違うと連絡が。
「どう言う事なの…?」
視点・大洗・IS学園連合隊長車「あんこう号」
「矢張り解読はされてないね。これでもう向こうは何が起きるか分からなくなるよ。」
「そうだね、だってここからの日本語の指令は全部出鱈目。
本当の指令は全部…ハンガリー語なんだもん。」
つまり、みほはキンガが作ったハンガリー語での命令マニュアルを使って
味方に指令を下していたのだ。ハンガリー語は欧州ではその名も高き高難度言語。
サンダース側にネイティブが居ない事が分かっている以上、まず解読は不可能だ。
当初は携帯を無線の替わりとする事を計画したが、
公式戦のルールブックには何故かご丁寧に携帯の使用禁止という規則があったので、
それなら盗聴されても問題ない外国語を使えば良いと言う事で
キンガと言うネイティブが居るハンガリー語に白羽の矢が立ったのだ。
そして、この対策が見事に刺さったサンダース側は面白い様に弄ばれる事に。
視点・サンダースフラッグ車・T28アリサ車
『敵に発見された!全車散開!フラッグ車は南下して森林地帯に逃げろ!
みほの偽指令を聴き、アリサはニヤリと再び笑う。
「また何か変なのが聞こえたけど…敵フラッグ車は南下して森林地帯…貰った!」
その瞬間、彼女は試合の勝利を確信した。
「ジャンボ3、ジャンボ4、敵フラッグ車は南下して森林地帯に逃亡!追いかけて!」
『『イエス、マム!』』
まんまと騙されたアリサの見当違いの指令でキメラ・ジャンボが2輌南下。
そして、ジャンボ3、4の車長が潜望鏡から周囲を見回すと…
「ん?今何か光った様な…。」
気付いた時にはもう手遅れ。そこは予め隠れていた聖王小隊に三方から狙われていたのだ。
「ワッザ?!」
「撃てぇぇぇい!!」
杏の号令で3両のイシュトヴァーンが斉射。
高速徹甲弾がジャンボ4の比較的装甲が薄い車体側面に命中し撃破判定。
それを見たジャンボ3は慌てて本隊に無線で一報。
『こちらジャンボ3!Holy kingの待ち伏せ一斉射撃を受けている!ジャンボ4がやられた!』
「はぁ?!」『何?!』『ワッザ?!』
『3対1じゃとても敵わない!退却する!』
視点・大洗・IS学園連合 聖王小隊隊長車「カモ号」
「ちっ、逃げる気だな!もう一丁!」
数で不利になると途端に弱腰になるのがサンダース、
ジャンボ3は早速後退して逃げ出す。アヒル号が砲撃するが、防盾に直撃し貫通には至らない。
「くっそ、仕留め切れない!」「この!」
残るレオポン号とカモ号も続けて射掛けるが、
当たらなかったり当たっても防盾に弾かれ、貫通判定にならない。
「こっちも反撃だ!装填急げー!」「了解!…了解しても、二度手間はキツイ!」
ジャンボ3も反撃しようとするが、キメラ・ジャンボの無理矢理な改装の弊害がここで出る。
確かに英国製ファイアフライの例もある様にM4に17ポンド砲を搭載可能だが、
史実ではその為に砲塔に大がかりな改装を要したのだ。
しかしサンダースには時間が無かったので、1試合使えれば良いと言う事で
強引に17ポンド砲をポン付けした事で、実包を一遍に装填出来無かったので
仕方なく弾頭と薬莢を別個に積む羽目に成り、連射速度が大きく低下していたのだ。
「ヤバい、早く仕留めないと本隊の背後を衝かれる!」
しかし、聖王小隊が駄目でも見逃さない者がここに居る。
「ソイヤッ!」
別の方角から飛んできた砲弾が逃げるジャンボ3の車体後面を直撃して
貫通撃破の判定を出す。
「ンアーッ、ヤラレター!」
「あっ、倒した!」「え?一体どこから……あっ。」
ジャンボ3が思わぬ援護射撃の正体を探すと、
遥か向こうからこちらに砲を向ける一両の戦車が。
「ISー4…三千里5㎞一撃必殺スナイプの悪魔…。」「OMG…」
視点・サンダースフラッグ車・T28アリサ車
『ちょっとアリサ!傍受した無線の内容と実際の動きが全然違うじゃないのよ!』
「えーと、何か日本語と意味不明な言葉が聞こえてきて…」
『は?』『意味不明な言葉?』
「ま、まさか…無線傍受がバレたのかも…。」
『おバカ!!!折角用意したカウンター・メジャーなのに!
何やってるのよー!!』
『そう言う事はもっと早く言え!』
「ヒーン!!!」
『もーう!!生き残ったキメラ・ジャンボ全車、直ちに本隊近辺に集結せよ!!
無線傍受がバレたわ!もうこうなったら籠城戦よ!どうせ向こうはこっちのフラッグ車が居る
ここに来ないといけないんだから、105㎜で迎え撃ってる隙に背後を衝いて終わりよ!』
視点・観客席
「……ナンデスカコレハ?T28が何かを打ち上げたと思ったら、
急に動きがグダグダになりましたが。」
「大方、無線を傍受する装置か何かを展開したのだろう。
連合チームは矢鱈無線工作を多用すると聞いて、無線工作には無線工作をぶつければ
フェアプレーになると考えたのかもな。」
「とても無線傍受してる動きとは思えないグダグダ振りですが。」
「恐らくは最初から無線傍受される事を想定して何らかの対抗策を用意していたのだろう。
…どうやらこの試合もみほは1輛も落とさず勝つだろうな。」
「4強の一角がこんなに簡単に手玉に取られるなんて、
やはり慣れない事をしたツケが回りましたね。
と言うか、このままだと我々にもそれが向けられるんですけど。」
「寧ろそうして貰わないと困る。その時は正面切って受けて立つだけだ。
どの道今から対鬼皇流対策をやっても却って混乱するだけだ。今のサンダースの様にな。
ならば西住流のお膝元として黒森峰の戦車道をぶつけるのみだ。」
そう語るまほは何故か嬉しそうであった。
原作で規制されていない携帯の使用が規制されている理由は、
作中の舞台が2043年と原作より31年未来にずれた事で、
過去に携帯を無線の代用としたチームがあり、これは流石にズルが過ぎると
そう言う行為への対策として連盟が措置を採ったという解釈を採りました。
その割に無線傍受を規制していないと言う事は…つまり、そう言う事です。
尚、今話でみほが使ったハンガリー語は全てグーグル先生に英語から翻訳して貰いました。