高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者 作:ピロッチ
そして、仮校舎に戻った大洗戦車道チームは次の相手であるアンツィオ高に備えて
作戦会議に臨んでいた。
「さて、次の相手はアンツィオ高である!相手の車輌はP43Bisが1輛、
セモヴェンテ75/46が3輛、そしてM16/43サーリアノが6輛である事は
既にIS学園から情報提供済みである!
前回の相手のサンダース、そして前々回の相手の聖グロリアーナと比較すれば
ハード、ソフト面共に遥かに与し易いのは事実だが、それ故に策を弄する事は明白!
また、サーリアノの高機動とセモヴェンテの極端な低車高故の低視認性は
今度の試合場の様に起伏の多い地形では4強の主力よりも危険度は高い!」
次の試合場は山岳地帯である事は既に両校共に通知を受けている。
そしてアンツィオ側の車輛は最も車高の高いP43bisでも224㎝しかなく、
サーリアノは丁度2m、セモヴェンテに至っては175㎝しかない。
全て大洗側で最も車高の低い聖王の230㎝を下回っているので、
隠れる場所の多いであろう試合場では見付け難さは一つの武器となるだろう。
「よって、相手の策が如何なる物かを見破る必要が有る。
そこであんこう号装填手秋山優花里には今一度潜入任務を行って貰う事になる。
アンツィオ高へ潜入し、相手の作戦の概要を掴むべし!」
「分かりました!それなら、もう一人同行させたい人が居るのですが。」
「え?えーと、それは誰なんでしょう?」
「ちょ、西住ちゃん、素が出てる、出てるから!」
不意にそう返されて素を出してしまい、杏にツッコまれるみほ。
「(IS学園の一時離脱の動揺、抑えきれてないんだなぁ…。)」
「カバ号のカエサルさんです。相手の副長と旧知の仲だそうで、
もしかしたらその縁で何か情報を得られるかも知れません。」
「ああ、そうなんですか。じゃあ、カエサルさんにも同行をお願いします。」
かくして、優花里はカエサルこと鈴木貴子同伴でアンツィオの学園艦に潜入するのであった。
静岡県清水港 学園艦専用泊地 アンツィオ高校学園艦
「これが『ローマよりもローマ』『動くイタリア』とも評される
アンツィオ学園艦…看板に偽りはなかったですね。」
この異名が示す通り、この学園艦は観光名所として客からの人気も高く、
常に多くの人が出入りできる仕様になっていた。
「そうだよ。まあ、設備の維持費が高くて万年財政難みたいなんだけどね。」
当然その観光名所を再現した施設の維持費は高い。学校の財政には相当負担になっている。
「で、それを補うのが…あれだよ。」「ああ!屋台が一杯!」
貴子の示す方向には、多くの屋台とそれを目当てに集まる観光客が並んでいた。
「考えてみれば、今は世間一般だと夏休み中。相当の書き入れ時と言った所ですね。」
今回彼女達は夏休みでやってきた観光客に扮しカメラ片手に学園艦を歩き回っているが、
優花里はアンツィオの制服を持ち込んでおり、こっそり着替えて潜入するつもりだ。
「確か戦車道部は普段のこの時期、コロッセオ型訓練場にいるみたいですね。
本格的な情報収集に入る前に、取り敢えずあの屋台で食事にしましょう。
ほらあの屋根、どう見ても『戦車道部員がやってますよ』って丸わかりです。
もしかしたら何か聞けるかも…。」
優花里の言う通り、その鉄板ナポリタンの屋台は
屋根がセモヴェンテDa75/18の形をしていたので、
戦車道部員が関わっているのが丸分かりだった。
「それもそうだね。よし、そうしよう。すいませーん、鉄板餡掛けナポリタン2つ!」
「あいよ!」
と、こんな感じで本格的な行動前に食事にする事に。
「にしても、名物がある所って良いですよね。
こっちは名物と言ったらあんこうとしらすと干し芋位ですから。」
「ご当地キャラのあらいっぺも…『見る人が見れば』な見た目だからなぁ…。」
「まあ、ちょっと前にデビュー30周年とかで町全体で祝ってた
船橋の『梨っぽいアレ』位とは行かなくても…
もうちょっと、なんかさぁ…とは思うんですけどね。」
「はい、鉄板餡掛けナポリタンお待ちぃ!」
「「早っ!!」」
予想外の早さに驚きつつも、取りあえず代金を払い早速食す事に。
「へえ、ここのは卵入りなんですね。」
「おうよ、ウチの高校は栃木が本拠地だけど、隊長が名古屋生まれでね!
その縁で名古屋の名物だった卵入りナポリタンと餡掛けスパがここに持ち込まれたのさ!」
「(隊長?やっぱりビンゴだね。)取りあえず食べてみよう。…おお、これは美味い!!」
「このソース、見た目はトマトソースだけど胡椒味で結構辛いのが却ってイケますね。」
ナポリタンも餡掛けスパも日本生まれとは言え、
やっぱり欧州きっての美食の国に縁のある学園艦の屋台だけ有って味は本物だ。
優花里も貴子もあっという間に完食すると、キッチンを担当していた女生徒が声を掛ける。
「お客さん、そんな速度で食べるなんてまるでサーリアノみたいだな!」
「サーリアノ?ああ、そう言えば今年の春に誰かさんが送って来たんでしたっけ?」
「そうそう、あれは良いよね!去年まで使ってたCV33より30km/時も速いから、
前の試合なんかうっかり相手を追い越して、
後ろから弾を喰らいそうになったりとかしたんだよな!」
「前の試合……もしかして、選手として出場してたんで?」
「そりゃもう!ウチは副長の唐井紗良実、競技ネームはペパロニって言うんだ。
もしかして戦車道部に興味あるのか!?」
「まあね。戦車道部員なら話が早いや。ここの生徒の
もし会ったら『鈴木貴子が来た』って言えば、向こうは分かってくれるから。」
「あー、うん。本人に会ったら伝えておくよ。
そうそう、この後戦車道部員が次の試合への出発前の全隊集会がコロッセオであるから、
良かったら見に来ちゃどうだい?」
「へえ、それは部外者が見られる物なのか?」
「そりゃそうさ、秘密兵器のお披露目もあるからな。」
「秘密兵器…?」
「えーと、秘密兵器って…秘密にしておくから秘密兵器じゃないんですかね?」
「ありゃ?そうだったっけ?まあ良いや。そう言う訳で全体集会はX時からだから、
もう少ししたらここも一時閉めるから、続きは向こうでのお楽しみって事で!」
「「(成程ね、この女生徒は料理の時にしか頭が働かないタイプなんだ。)」」
貴子と優花里が思った事は全く同じだった。一方その頃IS学園の者達は…
アメリカ合衆国 ワシントン州 ヤキマ郡 ヤキマ市郊外
そこは総面積13万㌶超を誇る米国陸軍の訓練場「ヤキマトレーニングセンター」。
主に火砲や戦車の実験や訓練に使われ、その広大さから、防衛軍の前身の旧自衛隊も
毎年の様に合同訓練に部隊を派遣する米国きっての巨大訓練場だった。
そして、国家代表操縦者及びそれに準ずる国直属のIS操縦者が一堂に会して行う
毎年恒例の日米合同IS訓練もここで行われる。
IS学園の戦車道部員もここで新装備の訓練の為、
急遽米国海兵隊が派遣した現役将校の下で訓練に勤しむ事となった。
その演習場に先行して入ったなのはと束、そして千冬の三悪魔が
キャンパス地で覆われた何かの前で何事か会話している。
「それで?本当なら『レギュレーション違反の筈なのに何故か使える』ISー4に替わる
新装備が完成したって話だけど…何を作ったの?」
「言っておくがウチはIS学園だ。
名前にISが付く車輌以外は装備として認めないのが暗黙の掟…。
勿論、その大前提はクリアした上での話なんだよな?」
「むほほほほほほほっ!その点は抜かりは無いよ!
さあ聞いて驚け、見て戦け!これが決勝戦でぶつかるであろう
黒森峰もしくは青森のプラウダ高と戦に備えて新造したIS学園の新装備だよーん!」
束の声で無人ISが「新装備」を覆っていたキャンパス地が取り外し、
その姿を明らかにした。
「こ、これは!」「デカっ!今まで一夏達が乗っていたのより更にデカいぞ!」
そこに置かれていたのは傾斜装甲と曲面装甲を巧妙に組み合わせた、
ISー4より更に大柄な5輛の戦車だった。
「これが我が校の新装備『■■■■』か…。」「これ、レギュレーション大丈夫なのだろうな?」
「そりゃもう!何しろこいつは『コレで全部揃えれば手軽に最強チームが作れる』
と誰もが認める位強力な車輌だけど、世界のどの国もカタログスペック通りの再現が出来なくて
皆匙を投げた代物だからね!でも、この束さんなら完全な復元再現が可能!
いや、更に性能を強化させる事だってできるのさ!むほほほほほほほほほほっ!」
束が製造した『新装備』。後にその全貌が明らかとなった時、
対戦相手はその存在を知って激怒し、実物を見た観客は震え上がり、
観戦していたしほとライバルの千代は憤慨し、
そして実際に相対した全ての者が恐怖に怯えたという。その正体は、未だ謎のまま…。