高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者 作:ピロッチ
その頃、カエサルこと鈴木貴子はアンツィオの戦車道部副長、
カルパッチョこと軽羽根日向と接触する為、コロッセオ型訓練場を探索していた。
「うーん、やっぱり役職持ちの部員だからそうそう手が空かないのかな?
大洗からの使用車輌開示の使者って名目で直接乗り込めば良かったのかも…。」
等と呟きながらうろついていると、ペパロニの声が。
「あ!居た居た!おーいカルパッチョ、例の人こっちに居たっすよ!」
「見付けた?分かった、今行く!」
その声に合わせて現れたのは貴子のお目当ての相手、カルパッチョこと軽羽根日向だ。
「おーっ!ひなちゃん!久しぶり!」「たかちゃん、久しぶり!」
「今日は観光で来たの?」
「それも有るんだけど…次の試合相手って…ウチだよね?
ほら、大洗も今年から全国大会に参加してるからさ。」
「あっ…そういえばそうだったね。それじゃ、たかちゃんも…。」
「まあね。…何に乗ってるかは秘密だよ。」
「ああ、うん…まぁそうだよねぇ。敵同士だもんね。」
「それで、今度の試合で投入する車輌一覧を渡す様に頼まれたんだよね。
はい、これが使用車輌一覧だよ。」
そう言ってカエサルがカルパッチョに一枚の文書を渡す。
「44Mタシュ×6 44Mイシュトヴァーン×3…?
あれ、タシュが6輛に増えたけど、今まで居たISー4は…?」
「それがね?実はIS学園の人達、向こうの隊長が今度国の代表操縦者に任命されて、
米国の代表操縦者との合同演習に行ってるんだって。
で、他の人達も車輌更新で付いて行って、その訓練も米国でするみたい。」
「じゃあ、次の試合は大洗だけで相手するって事?」
「そう成るね。まあ、本当なら独力で戦わないといけないんだから、
寧ろこっちの方が本来の大洗らしく…なるのかな?」
「そ、そうなんだ…。」「で、ひなちゃんは何に乗る?」
「…教えない、教えない、絶対教えない。」
「それ何のCM?ま…まあ試合で敵同士になったとは言っても、
今までの関係が終わるわけじゃ無いからさ。」
「勿論だよ。」
と、ここで貴子のスマホのアラームが鳴る。
電車の時間の予定に合わせて自分で事前に設定していた物だ。
「あ!ヤバい、これ以上居たら電車に遅れるかも。
悪いけど、今日はこれで帰るよ。続きは試合当日ね。」
「あ、うん。気を付けて帰ってね。それじゃ。」
かくして、貴子は訓練場を去って行く。しかし彼女は帰り際に何かの声を聞いて居た。
「良いか、このマ…ロニ作…はお…等の絵の…前がこ…作…の成否…左右……!
…した…真に出…るだけ…実…作れ!」
「「「「「Si!!」」」」」
「???」
そして、優花里と貴子は合流して大洗の臨時校舎に帰還。
それを待っていた様に、みほ達が集まって作戦会議を開く。
「P26/40のシャシーを流用して、OTO版バソット自走砲を1輛調達、
セモヴェンテDa75/18は車体拡張の上主砲を換装してDa75/34に強化して来たか。
但しそれらは準決勝以降に投入し、私達との試合ではあくまでマジノ戦と同じ編成で挑むと。」
「そうですね。弾薬も成形炸薬弾EPSシリーズを調達したみたいです。
M42、M43共に横から喰らえば族長、聖王共に一撃死は必至です。
それと、何かの板が大量に積まれているのをちらっと見かけまして…。」
「私も妙な言葉を聞いたな。『絵の腕前がナンダカンダ』とか言っていたんだけど…。
はっきり聞いた訳じゃないから自信は無いんだけど…
多分向こうは『マカロニ作戦』って呼んでるみたい。」
「マカロニ作戦…何かの板…絵の腕前…まさか…?」
「西住ちゃん、何か分かったのかな?」
「これは私の推測なんですが…書き割りで作った偽物で誘き出すなり迂回を誘うなりして、
此方の行動ルートを絞り、待ち伏せ地点からセモヴェンテで狙撃を仕掛ける…
今度の試合の場所は隠れる所が多いから、そう言う作戦にはうってつけの地形ですし…。」
「ああ、私達も似た様な手段で社会人チームをだまくらかし、
背後から集中砲火を浴びせて大混乱に陥れるという戦法を用いた経験があるからね。」
何しろ今彼女達が居る臨時校舎はそうやって元居たチームに勝った結果、
向こうがパワハラ問題が発覚して無期限活動休止に追い込まれたのを
パトロンである親会社の許可を得て間借りさせて貰って使っているのだ。
「自分達が考え付く事は他者も考え付くって奴だね。」
「成程ね…中身が空っぽの偽物で釣り出すからマカロニか。
こう言うのを言い得て妙って言うんだな。」
「去年までは豆戦車と突撃砲で戦っていたアンツィオが真面な戦車と駆逐戦車を揃えると
こうなるのか…ですがアンツィオの人達は、自分達が持っている戦車の特性を
まだ活かしきれて居ないみたいですね。」
この試合から参加する副長補佐の小梅は速くもアンツィオ側の欠陥を見破った様だ。
「どう言う事かな?」
「最高速度70km+/時、逃げ足だけなら第三世代MBT並みのサーリアノが
脚を止める等、
だって装甲は厚い所でも35㎜ぽっちしかないんだから、
脚を止めての射ち合いなんて絶対出来ませんよ。」
「おお…。」「確かに。」「となると、対策はどうなる?」
「それでは、『動いていないサーリアノは全て偽物と見做せ、
セモヴェンテとP43は探りで1発射っても良い』と言う事にしましょう。」
「それが良いね。」
「それとですね。西住殿から頼まれた例の物、不肖秋山優花里、確かに揃えて参りました。」
「おお、ちゃんと買えたんですね!」「え?何を買って来たのん?」
「こちらに成ります!」
そう言って優花里と貴子がテーブルに置いたのは…
「こちら、全部員とコーチの分のアンツィオ土産となります!いやー、驚きましたよ。
この日の為にお土産用の資金は10万円用意してきたんですけど、
全員分買っても半分も掛からなかったんです!」
つまり、こう言う事である。で、6桁の金なんて何処に有ったのかと言うと、
実は彼女達は東雲特車にバイト社員として雇われており、きっちり給料を受け取っていたのだ。
「肝心の中身ですが、鉄板餡掛けナポリタンと一ダースのマルゲリータです!」
「おお、それは良いですね。今日の夕食はそれにしましょう!」
「それと、領収証切ってもらったんで、後で代金割り勘で徴収しますね。」
「「「「Oh…。」」」」
かくして試合場への移動に備え、早速腹拵えの支度を始める一同。
そんな彼女達の背後にあるTVからは、こんな内容のニュースが流れていた。
「次のニュースです。今年5月に傷害容疑で逮捕された薄田社戦車道チームの元監督、
古馬塚宗繁容疑者に関し、証拠不十分を理由に不起訴処分が下った事が番組の取材で
明らかとなりました。古馬塚容疑者は今年創設された高校生だけの流派、
鬼皇流の旗揚げ戦の際、同チームに10対30のハンデ戦でパーフェクト負けを喫した事で
指導力に問題有りとされ、親会社である東雲特車の意向で監督及び同社副社長を解任され…」