高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者 作:ピロッチ
装備劣悪だった各校は息を吹き返し、今年の全国大会は
大盛り上がり間違いなし!しかし、その裏で泣きを見る連中がいた…
2043年度、戦車道履修校に「戦車道を極めし者 般若仮面」を名乗る
何者かの名で大量のAFVが寄贈された一連の騒動は後に般若騒動と呼ばれている。
寄贈の実行犯は後に東雲特車の共同出資者篠ノ之束とセシリアが
「自費で調達した車輌を各校に寄贈した」と明言した事で真相ははっきりしている。
この騒動の結果、練度優秀なれど劣悪な装備のせいで競技意欲を維持できず、
各地で引退者が相次ぎ人気低迷が続いていた戦車道に活気が戻り、
この年の全国大会は何と30校を超える参加校が集った
日本の高校戦車道歴代最大規模の大会となった。
同年から導入された近代的安全対策もあって競技の安全性が
飛躍的に向上した事もあり、後世、この騒動は戦車道関係者から
好意的に見られているのだが、その裏で、泣きを見る者も居ない訳では無く…。
神奈川県横須賀市 横須賀港学園艦専用泊地
そんな訳で、ここにアークロイヤル級空母型の学園艦が停泊していた。
その名も「聖グロリアーナ女学院」。神奈川県を本拠地とし、
日英のハーフや英国系の移民の子孫、及び英系大企業や良家の令嬢が通う
名門校である。
また、この学校は西住宗家が住まう熊本県に本拠を置く「黒森峰女学園」、
長崎県を本拠とし、米系移民や日米ハーフの子孫が集う「サンダース大付属高校」、
青森県に本拠を置く露系移民や日露ハーフの子孫が多い
前回大会優勝校「プラウダ高校」と並ぶ高校戦車道の4大強豪校の一角でもある。
そんな名門校の戦車道部上級生用クラブハウス「紅茶の園」のドアを
ノックする女生徒が一人。
「入りなさい。」「失礼致します。」
ノックして入室を命じられたのは現隊長のダージリンこと
この学校の戦車道部では、隊長や副隊長及び小隊長等の幹部級部員及び
それらの候補生には紅茶に因んだニックネームが与えられる習わしがあり、
周囲からの信頼と憧れの的となっている。
「田尻凜、お呼びにより参りました。」
そこに居たのは4人の女性。しかし、彼女達はここの生徒では無い。
既に卒業して社会人となったOGと大学部の生徒であった。
彼女達の正体はアールグレイの名で前隊長を務めた大学部所属の
そして残る3人は高等部戦車道部の主力装備、
マチルダ会・チャーチル会・クルセイダー会の代表である。
そして、その4人共が相当機嫌の悪そうな顔をしていた。
「待っていたわ、空いている席に座りなさい。」
命じられるままダージリンが着席し、早速こう切り出した。
「随分と、ご機嫌宜しからざるご様子。」
「当たり前でしょう!聞いたわよ。
私達歴代の部員が今まで使ってきた車輌を中等部に譲り渡して、
自分達は代わりに
止めに
「はい。丁度本日その旨を報告させて頂く積りでしたが…お耳がお早かった様で。」
「一体全体、何処にそんな資金があったのよ!」
「そもそも、どうして何の相談も無しにこんな大がかりな装備更新をするの!」
「大体、歴代の部員が今まで使ってきた車輌を捨てるって事は…
『私達に払う敬意は無い』と公言したと受け取られても
文句は言えない行為と分かってるのでしょうね?」
「凜、まさか予算の計上でズルでもしていた訳じゃないでしょうね?」
この学校は所謂お嬢様学校。生徒達のルーツでもある英国との提携や
卒業生の経済支援により財政的には裕福な方である。
しかし、同時にこの卒業生達は学院、特に戦車道部にとっては厄介な存在でもある。
と言うのも、彼女達が在学時代に乗っていた戦車に合わせて組織されている
OG会の三大勢力であるマチルダ会・チャーチル会・クルセイダー会は、
部活動の資金を提供する代わりに学園艦の運営方針への介入権を有し、
特に最大勢力のマチルダ会に至っては戦車道チームの車両編成にまで
干渉可能な程の権力を有していた。
「滅相もありませんわ。まあ、何の相談も無しに車輌を更新したのは
こちらの落ち度でした。先輩方がお怒りになるのは分かります。ですが…」
ダージリンは机の上に一枚の名刺を置いた。
「凜、それは?」
「今回の車輌を寄贈して頂いた方の名刺です。」
そこに書いてあったのは…
『株式会社東雲特殊車両 共同出資者兼筆頭株主 セシリア・オルコット』
「セシリア・オルコット…?先輩方、この名前に御心当たりは?」
灰田がOG会の3人に問いかけると、どうやら3人は心当たりがあるらしい。
「オルコット…?あああっ!!まさか…?!!」
「ISの英国代表候補生でオルコット伯爵家の次期当主の…セシリア嬢?!」
「はい。この度導入した車輌は、オルコット伯爵家からの頂き物です。」
「「「「えええええええええええええええええええええええええ??!!!」」」」
その一言で、たちまちOG会とアールグレイは大混乱。
「ちょ、待ってまってマッテ待ってまってマッテ!!!」
「じゃあ何?本国の大貴族様直々の寄贈って事?!」
「と言うか思い出したわ!!オルコット伯爵家って
私のパパが社長やってる会社の親会社のオーナーよ!!」
「はぁ…御存知の方と言う事で宜しくて?」
「ま、まあね…面識は無いけど、御両親を少し前に亡くされて、
今年のクリスマスイブを以て襲爵なさる正真正銘の大貴族様よ。」
「凜、アナタいつの間にそんな方と交友を?」
「いえいえ、私もミス・オルコットとお会いしたのは
車輌の寄贈に立ち会った際の1回きりでして…
それでミス・オルコットからの言伝ですが、
『今回の寄贈に関して、OG会の皆様が何か異議申し立てが御有りの場合、
自分に直接申し立てて欲しい』と仰っておりました。」
「ええええええええええ…」「文句があるなら聞いてやるって訳ぇ?」
「うーん、まあ一応、言うだけは言ってみましょう。」
「はぁ…そうですか。」
と言う訳で、名刺に書かれていた連絡先に早速OG会が連絡を取る事に。
『はい、東雲特殊車両のオルコットです。』
「もしもし、お初にお目に掛かります。私は神奈川県横浜市の
聖グロリアーナ女学院戦車道部のOG会、マチルダ会代表の○△□と申します。」
『その様子ですと…高等部への車輌寄贈の件で?』
「はい、後輩の田尻から知らせを受けまして…
何故我々に何の相談もせずにこの様な事を?
私共はともかく他のOG会メンバーは『無視された!』と憤る者が後を絶たず…」
『うーん、同じ英国に起源を持つ方々の末裔の皆様が為された苦労を、
後世に残すのは如何な物かと、と言うのがそもそもの発端でして…。
折角高性能な装備とそれを導入できる資金源が有るのに、
使わないのは持ち腐れとなりましょう?』
「それは分かります。でも、その様な事をしたら確かに大会での成績は
簡単に高められるでしょうが、ハード面ばかりに目が行って
ソフト面が疎かになる事を我々は危惧しておりまして。」
「それでは史実の戦争とやっている事が同じになってしまうのでは?
私共は戦車戦ごっこをしているのでは無く、
あくまで武道として戦車道を嗜んでいる身ですから、
安易に物優先に傾倒して心身の育成を省みない行為はちょっと…。」
「『勝てば良い』では九州の『あの御家』の亜流に成り下がってしまいます。
私共は黒森峰戦車道部ではなく聖グロリアーナ女学院戦車道部を作りたいのです。」
しかし、セシリアが返した回答はOG会の思いもよらぬ物だった。
『武道…?はて、ワタクシは戦車道とは「祭儀」であると聞きましたが?』
「「「「………………はぁ?」」」」
『実はワタクシ、弊社社長の篠ノ之の直弟子に当たる方から
ISの稽古を付けて頂いているのですが、その方から
「戦車道とは■■■■■■■■■、■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■する祭儀なり」
と教わりまして。』
セシリアはIS一筋なので、戦車道に関しては全くの素人である。
彼女が得た戦車道の知識はなのはから聞かされた戦車道概論だけであり、
なのはの概論をそのまま声に出しているに過ぎないのだが、
OG会に与えたショックは大きかった。
「……………えーと、仰っている事がまるで意味が分からないのですが?」
「その篠ノ之社長の直弟子と言う方は、その…何と言うか…
とても個性的な物の考えをなさる御方とお見受け致しますが。」
「そう言った発想というか定義付けはちょっと前代未聞というか…
理解不能、意味不明の部類に入る物でして、とても受け入れ難いのですが。」
『はあ…そんな物なのでしょうか?
実は皆様が仰った九州の「あの御家」の方にも直弟子の方が直接語った所、
たちまち腰を抜かして半泣きで逃げ出したと話しておりましたが。』
「「「「……………( ど う 言 う 事 な の ? )……………。」」」」
余りに訳の分からない理論を並べ立てられたOG会は、
そのカオス振りに何かもう、どうでも良くなってしまった。
「そ、そうですか…はあ…そう言う事でしたら、そう言う事なのでしょう。」
「畏れ多くも王室より伯爵の爵位を賜った御家の跡取りともあろう御方に
お骨折りを頂いた上そこまで仰られては、これ以上申し上げる事は御座いません。」
「ですが、今後は日戦連なり何なりの組織を
中継して当方にも話を付けて頂きたいので、そこだけは何卒。」
『はぁ…気を付けます。』
と、言う訳で通信はここで終了。精神的にどっと疲れた
OG会三人衆とアールグレイは肩を落として紅茶の園に戻るのであった。
「先輩方、如何でしたか?」
「何かもう…何が何だか分からないわ。」
「流石倍率一万倍を突破したエリートと言うべきなのか、もう発想が意味不明よ。」
「正に世界一の難関校の生徒だったわ…全然何を言っているのかもう訳ワカメ…。」
「……………??????????」
「まあ良いわ。受け取った物は仕方無いから、今年からはそれで戦って良いわよ。」
「但し、あれだけの車輌を受け取ったからには、ちゃんと結果を残して貰うわ!」
「そうそう。仮にも4強の一角を担う我が校がこれだけの車輌を揃えたのだから、
最低でもベスト4までは進んで貰うわよ!もしそこまで進めなかったら…。」
「来年度以降、OG会にアナタの居場所は無いと思いなさい!」
「…全力を尽くしましょう。」
「じゃあ、今日はもう下がって良いわよ。」
「はぁ…では失礼致します。」
こうして、ダージリンは退室し、
早速受け取った新装備の慣熟訓練に戻るのであった。
本作では学園艦は外国からの移民の子孫や
ハーフが住まう自治区の性格も兼ね備えた動く都市であり、
また、ガルパン世界のネームドキャラ、特に各学園の生徒に
日本人なのに日本人離れした容姿の生徒が多いのは、
法的に日本人なだけで実態は移民の子孫或いは
ハーフだからという解釈を取っています。
原作未登場のAFV紹介 その2
44M イシュトヴァーン
44Mタシュをベースに試作されたと言われているハンガリー製試製駆逐戦車。
史実では4話で挙げた通り、歴史研究家の想像上の車輌とされ、
実在を裏付ける記録、文書の類いは一切見つかっていない。
※下記の数値は作中世界でのみ通用する数値で、史実と同一とは限りません。
寸法 車体長6.8×車幅3.45×全高2.3㍍
機関 ヴァイス・マンフレート製 V型8気筒ガソリンエンジン
「ZーV8Hー4」×2 合計520馬力
最高速度 45㎞/時
重量 36㌧
乗員 4名
武装
主砲:71口径88㎜砲「8.8㎝ KwK43」×1
機銃:8㎜機銃「ゲバウアー 34/40AM」×1
装甲(単位:㎜)
防盾 120
戦闘室 前面 側面 後面 天板
120/50/ 100/20
車体 前面 側面 後面 天板 底板
120/50/75~100/20/20
本作での変更点
束がブダペストで奇跡的に残っていた設計図と発注書の最後の1枚を発見。
ハンガリー国防省もまさか存在していたとは!とてんやわんやになる程の
大騒ぎとなったが、本物である事を認める国防大臣直筆の認定書と写しを
日戦連に提出し、正式に競技使用可能車輌の1種として認められた。