高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者   作:ピロッチ

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第50話  準々決勝、決着近しです!

視点・アンツィオ高セモヴェンテ隊・Da75/46カルパッチョ車

 

「あああっ!あのパーソナルマークは…たかちゃん?」

 

 サーリアノ隊と合流すべく退却中のセモヴェンテDa75/46のハッチから

後方を伺っていたカルパッチョが族長3号車のパーソナルマーク「振り返るカバ」に気付いた。

彼女は旧知の貴子(カエサル)がネットでのプロフィール画像に

このマークを使っているのを知っていたので、族長3号車が彼女の乗車だと察したのだ。

 

 そして、75/46はサーリアノより軽量だが元々の最大出力が200馬力にも満たず、

なけなしの部費で何とか250馬力まで出力を増強出来たが、

それでも舗装路で40km/時がやっとだと言う事に気が付いた。

つまりどう考えても今から逃げたのでは間に合わない。となれば、やるべき事は一つ。

 

「此方カルパッチョ、セモヴェンテは全車反転し、ここに留まって応戦せよ!」

 

『『『え?!』』』

 

 セモヴェンテ3輛は退却せず、正面攻撃に打って出る事に。

 

「ドゥーチェ、セモヴェンテは今から逃げても間に合わないし、背後から撃たれ放題です!

でも、セモヴェンテには当たり所次第で族長を正面から倒せる弾が有る。

つまり…此処で踏み留まれば敵フラッグ車を仕留めて逆転勝ち出来る可能性が有ります!」

 

『『…あっ!』』『確かに…それならこのまま逃げるよりは!』

 

「そう言う訳で、ここはドゥーチェだけ退却してサーリアノ隊と合流して下さい!」

 

『…良いだろう、後は任せた!』

 

 ここでセモヴェンテ3輛は反転。

P43bisだけでサーリアノ隊と合流するべく退却を続行する。

 

 

 

視点・大洗フラッグ車・44Mタシュ「あんこう号」

 

『あ!セモヴェンテだけこっちを向いた!』

 

『何だい、向こうの隊長は?味方に戦わせて自分だけ逃げる気か?』

 

「いえ、この状況なら妥当な判断です。背後を射てない駆逐戦車は退却中は完全に無防備。

まして相手が同数なら、逃げずに正対した方が生存率が上がります。

何よりセモヴェンテの75㎜砲は距離と当たり所次第で族長を正面から倒せる

独国製高速徹甲弾が使えるので、そこに賭けたと考えるのが一番です。

つまり…向こうは私を集中して狙って来る。」

 

 セモヴェンテが退却せず正対したのを見たみほは、

それが捨て駒ではなく逆転勝ち狙いの正面攻撃と即断した。

同時に、向こうの標的が自分=あんこう号唯1輛だと見て取った。

 

『つまりまだ諦めて無いって事か!なら急いで仕留めなきゃな!』 

 

「そう言う事です。申し訳ありませんがカバ号とサメ号は前に出て壁役を!

あんこうは後方から援護射撃!相手は族長の主砲なら1発当てれば倒せる程度の装甲しか無い!

しっかり狙って、一撃で仕留める気で迎撃せよ!」

 

『『了解!』』

 

 

 

視点・アンツィオ高セモヴェンテ隊・Da75/46カルパッチョ車

 

「セモヴェンテ各車、族長の弱点は防盾の下半分と車体前面中央部!そこを狙って撃って!」

 

『『Si!』』

 

 族長の車体前面中央部は同車で最も厚い120㎜だが、

反面傾斜角は75度と垂直に近く、斜面効果補正は無いも同然。

そして75/46の主砲は独国製の75㎜砲弾が使用可能であり、

今回10発積み込んだ高速徹甲弾40型なら理論上は1km先からでも貫通は可能だ。

 

 また、族長の防盾は蒲鉾型なので下半分に当てれば砲弾が下向きに跳弾し、

20㎜しかない車体前面の天板に当たって貫通判定が出る可能性も有る。

これだけ薄ければ通常の徹甲弾でも貫通し得るので、狙う価値は十分と言えよう。

 

「いかな正面装甲100㎜とは言え、族長の80㎜砲の貫通力は大元帥(パーシング)の90㎜砲とほぼ同等。

一発でも直撃を受けたら終わり…兎に角撃たれる前に撃つ!セモヴェンテの低車高を活かせ!」 

 

 75/46は最厚100㎜の重装甲ながら重量16tに満たない小型軽量が売りだが、

小型軽量とは言い換えれば車内が狭いと言う事なので、乗員は3人しかおらず、

操縦手こそ専任だが、車長は砲手、無線手は装填手も兼任しなければならない。

 

「史実だから仕方無いとは言え、この前改装したバソットの様に

P26/40ベースのシャシーを使った初期設計案だったら、

もう1人位乗れたからこうは成らないのに…。」

 

 

視点・大洗隊長車・44Mタシュ3号車「カバ号」

 

「良いか、さっき隊長の言った通り、セモヴェンテは族長の主砲なら正面から一撃で倒せる!

カバ5(おりょう)、あの地面の盛り上がった所に移動しろ!

それでえーと、何て言ったっけ…そうだ、ハルダウンだ!

ハルダウンで車体を隠しながら戦え!」

 

「応!」

 

 戦車道業界における駆逐戦車への対処法として最もポピュラーなのは

射界に限りが有る点を衝いて大きく左右に動き回る事だが、距離が離れ過ぎている場合や、

後方にフラッグ車等やられてはならない者が居る場合はこの限りでは無い。

 

 だが、幸いな事にこの地点には小規模とは言え族長が隠れられる程度の隆起した地点が有る。

そこに身を隠し、砲塔だけを出すハルダウンの構えで応戦する事に。

族長の主砲俯仰角は-9°~+20°。ハルダウンで戦うには十分だ。*1

 

 

視点・アンツィオ高セモヴェンテ隊・Da75/46カルパッチョ車

 

一方、セモヴェンテも3輛共稜線に隠れて身を守りながら、

各車の車長がハッチから顔を出して様子を伺う。

 

「副長!向こうの族長が地面の盛り上がった所に隠れちゃいました!

砲塔の上半分だけ出してこっち見てますよ。」

 

「これじゃ弱点が全部隠れて、隙が無いですよ。どうするんですか?」

 

「族長の主砲、俯角は何度まで取れる?」

 

「今調べます…出ました!ー9°まで取れるみたいです。

こっちのー12°よりは小さいみたいですけど…」

 

「それだけ俯角が取れるなら、下手に顔を出した瞬間即狙い撃ちで瞬殺は必至か…。

止むを得ない、ここは睨み合いを続ける。これでこっちのフラッグ車を逃がしつつ、

相手フラッグ車含む3輛を釘付けに出来た。当分はこの状況を維持する。

後はドゥーチェから合流完了の連絡が来たら遮二無二突撃!

フラッグ車に集中攻撃を仕掛ける!」

 

「「Si!」」

 

 図らずもフラッグ車の足止めに成功した形になったアンツィオだが、

肝心の数の上での主力、サーリアノ隊はと言うと…

 

 

 

視点・大洗女子学園聖王小隊・44Mイシュトヴァーン「カモ号」

 

「会長、何かどんどん距離が離れて行くんだけど?!

こっちは出力全開だから、もう速度上げられないよ!」

 

「わーってるよ!離される前に吹っ飛ばす!聖王小隊、通常徹甲弾込めろ!」

 

『『応!』』

 

 どうやら大洗側は逃げるサーリアノ隊に距離を引き離されている様だ。

当然だろう。族長も聖王もP43bisより重く、

いくらチューンアップで出力を900馬力まで増強したとは言え、

無舗装地帯では50km/時がやっとなのだ。一方サーリアノは同条件でも60km/時で走れる。

常時トップスピードで走り続けている訳ではないとは言え、それだけの速度差があれば、

10分も走り続ければ1マイル以上は引き離される。

サーリアノ隊が結構距離が離れている段階で総攻撃に気が付いて逃げ出した事も有り、

既に双方の距離は2kmを超えている。早く仕留めないと振り切られて追撃は失敗だ。

 

「徹甲弾、入った!」「よーし、内膅銃射撃訓練の成果を見せてやれ!撃ってぇーい!」

 

 杏の号令一下、聖王が反撃。早速カモ号の一発がサーリアノの1輛を吹っ飛ばす。

 

『ギャーッ!』「あ!2号車もやられた!」

 

「ビビるな!反撃だー!兎に角足元を狙って、履帯をぶっ壊してやれ!

そうすりゃ後続の族長と玉突き起こして脱落だー!」

 

当然、サーリアノからも引っ切りなしに反撃が飛んで来るが、

どうも左右に揺れながら逃げているのか上手く照準出来ていないらしく、命中はしなかった。

但し、地面に着弾して起爆した成形炸薬弾が小石や土砂を巻き上げるので

操縦手の視界が遮られ、安心は出来ない。

 

「うわ、わっ…!」

 

「会長、向こうは装甲が貫けないと分かって足元を狙ってます!」

 

「こりゃ一発でも履帯に当たったら、ハンドルを取られて

後ろの族長小隊と玉突き事故は避けられない、そうなったら大変な事になるよ!

トラ1に小隊の速度を落とす様に言っといて!」

 

そして後続の族長B小隊は…

 

「あああ、前に聖王小隊が居るから攻撃出来ないー!

これじゃ何もしないで終わっちゃうよぉ!」

 

『アリクイ1、今は我慢して下さい!さっき仕留めた1輛の様に

追いかけっこに我慢出来なくなって横に逸れた車輌を狩るのが今本小隊がやるべき事です!』

 

 前方の聖王小隊が邪魔でサーリアノ隊に攻撃出来ず、只管ついて行くので精一杯だった。

族長4号車「アリクイ号」の車長猫田舞(ねこにゃー)が焦るが、

小隊長の小梅が押し留める。

 

『そんな事より、もう少し車間距離を取らないと危険です!

向こうは足回りの破壊を狙ってきました!万一当たったら玉突きになります!

小隊、速度落とせ!今は聖王小隊が訓練の成果を発揮するのを信じましょう!』 

 

「「ヒェーッ!」」

 

 こんな感じで大洗側はサーリアノの逃げ足の速さに若干梃子擦っているが、

一方のサーリアノ隊はもっと悲惨だった。

 

 

 

視点・アンツィオ高サーリアノ隊・M16/43サーリアノ ペパロニ車

 

『うわっ!3号車も喰われた!』

 

「何やってんだ!こっちはまだ1輛も倒せてないのにもう半分やられちまったぞ!」

 

「せめて左右に揺れるの止めて下さーい!」

 

 何たって2km以上離れて居るのに、向こうだけ一方的に弾を命中させてくるのである。

砲弾の初速が圧倒的に上なので当てやすいのは確かだが、簡単に狙われない様に

互いに左右に揺れながら走っているので、相当照準がやり辛い筈なのだが。

 

「ちっくしょー!2km離れてるんだぞ!なんで簡単に当てられるんだよ?!」

 

『そう言えば、今年の予選リーグで5km先のフラッグ車を一発で仕留めた

怪物が現れたとか何とかって言ってた様な…。』

 

『って、それ今戦ってる大洗と連合組んでた連中だよ!例のIS学園の!』

 

『きっとそいつが鍛えたんだ!だから、これだけ離れてても当てられるのか!』

 

「早く振り切らないと、このままじゃ全滅だ、ドゥーチェー、早く来てー!」 

 

 で、その肝心のドゥーチェはと言うと…

 

 

視点・アンツィオ高フラッグ車・P43bis

 

「急げー!早く合流しないとサーリアノが全滅だー!」

 

「ドゥーチェ、これ以上速度が上がりませーん!」

 

 P43bisはアンツィオ側唯一の重戦車。

伊語で重いを意味するペサンテのPを冠するだけにその重量はサーリアノの2倍以上だ。

しかし、主機はサーリアノと同じ500馬力のディーゼルである。

セモヴェンテDa75/46よりはマシだが、最大速力は舗装地で50km/時がやっと。

束のチューンアップで全車が70km/時出せる大洗側や

それをも振り切るサーリアノにはとても敵わない。

 

「こんな事なら、セモヴェンテをチューンアップする資金で

タボチャ(過給器)買っときゃ良かったかなぁ…。」

 

『サーリアノ5号車、砲塔正面を貫かれた!戦闘不能!』

 

「げっ!」

 

 6輛居たサーリアノは既に4輛やられたと言うアナウンスが流れ、

アンチョビは慌ててサーリアノ隊に呼び掛けた。

 

「此方アンチョビ!サーリアノ隊で生き残ってる奴は街道から逸れて森に入れ!

然る後フラッグ車と合流して、分度器作戦を発動する!」

 

 直後、サーリアノの1輛に高速徹甲弾が命中。これで残るはペパロニ車唯1輛。

 

『ひーっ、4号車もやられた!もうムリだ、脇に逸れて逃げろー!』

 

 これでアンツィオの残存車輌は半分に。

しかも内3輛は相手フラッグ車を釘付けにする為動けない状態だ。

そこでセモヴェンテ隊を軸に大回りする「分度器作戦」で相手フラッグ車の背後を取り、

挟み撃ちで一発逆転を狙う構えだ。しかし、この作戦には唯一の問題がある、それは…

 

『あの副長、分度器作戦って何でしたっけ?』『…全然分からん。』

 

 貴重な上級生枠が分度器作戦が何なのか理解していない事だった。

*1
但し、相対する75/46はー12°~+22°まで俯仰角を取れるのだが。




原作未登場のAFV紹介 その3・改

P43bis・アンツィオカスタム

東雲特車から寄贈されたP43bisの主機を
サーリアノ・アンツィオカスタムと同一品に換装し、
変速機を調整して何とか50km/時で走行可能になった。

※下記の数値は作中世界でのみ通用する数値で史実と同一とは限りません。

寸法   車体長6.15×車幅3.04×全高2.24㍍
機関   ハリコフ機関車工場製 V型12気筒ディーゼルエンジン
     「Vー2ー34・フィアット製デッドコピー品」500馬力
最高速度 50㎞/時
重量   33㌧
乗員   5名

武装
主砲:53口径90㎜砲「Da 90/53」×1
機銃:8㎜機銃「ブレダ M38」×2

装甲(単位:㎜)
防盾  100
砲塔   前面 側面 後面 天板
    100/50/50/20
車体   前面 側面 後面 天板 底板
  50~80/50/50/20/20
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