高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者 作:ピロッチ
続出する高校戦車道。しかし、喜んでばかりも居られない。
その裏で泣きを見る高校はまだまだ存在する。
そして、高校以外の組織にも思わぬとばっちりが飛んで行く。
横須賀で聖グロリアーナのOG達がセシリアから
なのはの訳の分からない理屈を聞かされ大混乱しているその頃…
ここ清水港にも般若騒動でこれから泣きを見る者達がいた。
「いいいいいいいやっほおおおおおおおっ!!!」
ここはアンツィオ高の隣に停泊するコロッサス級空母型学園艦。
静岡県に本拠を持つ「県立
学園艦の一角で歓声が上がった。
「やったよタマちゃん!!遂に三千里が日戦連に加盟して、
全国大会の参加資格を手に入れたんだよ!!」
「やったねマルちゃん!全国デビューだよ!」
声の主は戦車道チーム隊長で三年生のマルコと
彼女の同級生で副隊長のタマである。
「いやー、まさかアタシ等が居る内に
同好会を部に拡大出来るなんて思わなかったよー。」
「ホントだよ!」
この三千里農高、学校で飼育している家畜や農作物を県内で販売した収益や
本拠地の静岡県が内陸県の学園艦から受け取った泊地の使用料の一部を運営費として
県から支給されている事からかつては国内屈指の裕福な学園艦であり、
アンツィオ高とは停泊場所が隣同士のよしみで学園祭には同高の生徒が
出店を開いて出稼ぎに来る等交流も盛んだった。
だが学園艦という閉鎖空間の悲しさか、畜産科の家畜や農産科の野菜が
伝染病で全滅する事態が続き、近年は財政がお寒い限りであった。
おかげで機甲科も有るには有るのだが、全国大会参加資格の最低基準である
5輛以上の戦車を保有するという条件を満たせず、長らく同好会止まりであった。
そんな三千里農高に降って涌いた様な般若の救済である。
「しかし世の中にはお金持ちが居るもんだねぇ。
戦車を8輛も寄贈してくれるなんてさ。お陰で既存の4輛と合わせて
ナウエルを12輛も揃えられたんだ。笑いが止まらないよ!」
マルコの視線の先には米製M4シャーマンを左右から圧縮した様な外観の
腰高な戦車が12輛。アルゼンチン製の中戦車にして秋山優花里の推しの戦車、
ナウエルDL43である。
「そうそう!今までは戦車を使い回して訓練してたけど、
もうそんな事しなくて良くなって、各班個別に車輌を使わせられるから、
訓練も効率良くなるし、集団での連携とか、もっと複雑な訓練も出来るから
これでやっとスタートラインに立てたって感じだね!」
とまあそんな感じでマルコとタマが悦に浸ってると…
「マルコ!日戦連加盟が嬉しいのは分かるけど、
戦車を並べて悦に浸ってる暇があったら、練習試合でも組んできなさい!」
マルコを急かす様な苛立った様子の声が。三千里農高のOGで、
戦車道部のコーチを務めるマルコの姉サキコである。
「うへぇ…姉ちゃん、もうちょっと喜びに浸らせてよー!」
「はいはい、そう言うの良いから!何の為に部に昇格したのよっ!
こういう時は他校との練習試合を組んで、実際の試合がどんな物か見るのが一番よ!
お隣さんのよしみで、アンツィオ当たりなんかどう?こんな事言うのも何だけど、
あそこならチュートリアル替わりにさくっと勝てるからお勧めよ。」
「アンツィオかぁ…あそこも万年財政難で戦車道部も消滅寸前だったんでしょ?」
「そうそう、現隊長が何とか建て直したけど、
向こうの主力は8㎜機銃2挺で装甲は最厚15㎜のL3/33、
こっちは全部75㎜砲で装甲は最厚80㎜のDL43…。
どうやったって、負けっこないわよ。」
「うへへへへへ、こりゃ一方的な苛めですなぁ~。」
「そういう訳よ、『我が校の戦車道同好会の部への昇格記念に一試合お願いします。
そちらが勝てば我が校が今年収穫した野菜の半分を貴校に進呈致します。
その代わりこちらが勝った場合は今年の学園祭はボランティアで出店して下さい。』
位の事を言えば向こうはノって来るから、しっかり戦ってきなさい。」
そんなこんなで機甲科の教務主任経由で校長に
「同好会の部への昇格記念」の名目でアンツィオとの練習試合の申請を行い、
アンツィオ側は条件も含めてこれを了承。
早速ルールに従い互いの使用車両を開示したのだが…
「「な、な、な、なんじゃこりゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
試合前日の昼に届いたアンツィオ側の使用車輌を見たマルコとタマは大絶叫。
何しろそこに記されていたのは…。
「P43bis×1、セモヴェンテDa75/46×3、
M16/43サーリアノ×6?!!
ちょっと姉ちゃん、どこが主力はL3だよ!!
聞いてた話と全然違うんだけど?!!」
「はぁ?!ちょっと見せてみなさいよ!……ゲゲェーッ!!!
あの子達いつの間にこんなの揃えたのよ?!……ハッ、まさか?!」
「例の般若仮面から、車輌を寄贈されたのはウチだけじゃ無い…みたい…。」
予想外の展開に顔が引き攣るマルコ。
「姉ちゃん、今年も三千里は財政カツカツかなぁ…。」
「あ、諦めちゃ駄目よ!!タダメシよタダメシ!!ウチの生徒が学園祭で
タダでイタ飯を頂けるかどうかがアンタに掛かってるのよ!!」
「いや、もっと言う事があるでしょ…。」
そして試合当日…
「ハーッハッハッハッハッハッハッハ!!!見ろ三千里の諸君!!
これぞ新生アンツィオ戦車道部の主力達だ!!」
般若仮面から寄贈された主力車輌を並べてご満悦のアンチョビ。
一方の三千里側はすっかりドン引きしていた。
「うわぁ…向こうノリノリだよ。」
「アンツィオと言えば、『ノリと勢いだけは何処にも負けない』
事で有名だからねぇ…」
「どうだ、ウチの新装備は!!凄いぞー、強いぞー、デカいぞー(昨年比)!!
ウチのドゥーチェはなー!これを貰ったのが嬉し過ぎてイッちゃったんだぞー!!」
「ば、バカ止めろペパロニ!!そう言う事を大声で言うなー!!(げんこつ)」
「あいとわ!!」「はぁ…」
「あ、うん…そうなんだ…。」「は、は、は、は、は、は…」
「般若仮面の大馬鹿野郎ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
マルコの血の叫びは、試合場の片隅で空しく木霊するのであった。
「それでは、アンツィオ高校対三千里農業高校の練習試合を始めます、一同、礼!」
「マルちゃん、作戦は?」
「兎に角フラッグ車を見つけて袋叩きしかないよ!それかP43bisを潰そう!!
間違いなくそいつが隊長車だから、頭を潰して統制を乱してから虱潰しだ!
皆の頑張り次第で、学園祭にタダでイタ飯を出して貰えるんだ!
こうなったら当たって砕けろだよ!!」
「「「「「おおおおおおおおおーーーーー!!」」」」」
その後の試合展開は一方的だった。整地なら最高速度70㎞/時+を叩き出し、
それまでの虎の子P26/40と同じ34口径75㎜砲を搭載した
サーリアノ6輛をペパロニが率いて三千里側を遠巻きの砲撃で挑発。
追いかける三千里側を急加速で引き離して物陰に隠れては射ち、
射っては逃げるで分散を誘い、連携を崩した所で指定した狙撃ポイントにおびき寄せ
カルパッチョ率いるセモヴェンテ小隊が1輛ずつ46口径75㎜砲でズドン。
一方のナウエルは整地でも40㎞/時がやっとの上、
確かに主砲は75㎜砲だが、その砲の制式化は何と1909年。
日本が明治末期だった頃のドイツ製旧式野砲を改装した
30口径75㎜クルップ砲では貫通力がまるで足りない。
それでも装甲が最厚35㎜しかないサーリアノは一発当てれば何とか出来るが、
只でさえ練度不十分な上全高2mしかない超車高短で物陰に隠れ易く、
おまけに逃げ足の速いサーリアノには中々当てられない。
深追いしよう物なら重量僅か16㌧ながら最厚100㎜の装甲を持ち、
更に車高短なDa75/46とかち合い、
自慢の80㎜の正面装甲も呆気なく貫通撃破判定を喰らう始末。
そうこうしている内に止めとばかりにアンチョビ自らP43bisを押し立てて
サーリアノと共にフラッグ車への正面突撃を敢行。こちらも最厚100㎜に達する
P43bisの正面装甲はナウエルの75㎜砲など物ともせず、
逆にP43bisの53口径90㎜砲は一発でナウエルを真正面からKO可能。
これが意味する所はつまりこういう事である。
「三千里農高フラッグ車撃破確認!そこまで!勝者、アンツィオ高校!!!」
「「「「「
「や、やっぱりこうなるのね…。」
「三千里の諸君、対戦
今年貴校が収穫した野菜の半分を我が校に差し出して貰おう!!」
「チックショーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
と言う訳で、三千里農高戦車道部のデビュー戦は
「般若仮面の救済が自分達だけだと勘違いして調子に乗り、
お隣さんにアンティルールで試合を挑み完封負け」という散々な結果に終わり、
哀れその年収穫した野菜の半分をアンツィオに差し出す羽目となったのであった。
一方その頃舞鶴では…
京都府舞鶴市 学園艦専用泊地
「ザッケンナコラーーーーーーーーーーッ!!!」
岡山県を本拠地とする中高一貫校「BC自由学園」のベアルン級空母型学園艦に
ヤクザスラングの怒声が響き渡る。
この学校、元々は山梨に本拠地を持つ仏系移民と
日仏のハーフの末裔が集う「マジノ女学院」が
酒造科のワイン作りの原料となる葡萄を栽培するべく創立した
BC高校と自由学園という2つの分校だったが、
両校の学園艦が老朽化した際に新しい学園艦を建造することになった際、
行政側の指摘によって強引に統合された経緯を持つ。
その結果、BC組と自由組が対立したまま一つの学園艦を共有する事と成り、
いつしかその派閥争いは甲板前部に住まい、
中等部から進学して貴族階級の様に優遇されている「エスカレーター組」と、
甲板後部に住まい、高等部から新たに入学してきた所謂平民階層の様な
「受験組」の対立へと変貌し、双方は艦中央部を壁で隔てて仲違いしていた。
で、そんな状態のBC自由戦車道部訓練場で
ヤクザスラングを学園艦中に響かせたのは誰かと言うと、
戦車道部副隊長の一人、エスカレーター組のリーダー格の金髪娘、押田ルカである。
「どうしてお前等だけシャールG1Rを貰えて、我等は何も貰えないんだ!!」
「別に良いじゃないか!!そっちはもうARL44を持ってるのだろう!!」
で、ルカと言い争っているのはもう一人の副隊長で
受験組リーダー格の色黒娘、安藤レナである。口論の理由は極めて簡単である。
先日例によって般若仮面の名の下にBC自由学園にもシャールG1R中戦車計5輛が
寄贈されたのだが、その際般若仮面側はこの事を受験組にだけ知らせていたのだ。
無理も無い。レナの言う通りエスカレーター組は既に装甲最厚120㎜、
65口径90㎜砲を備えたARL44重戦車を装備しているのだから、
わざわざ戦力強化する必要がない。
「それならそれで、何故我々に今まで知らせなかった!!」
「知ってどうする!!まさか取り上げる積りだったのか?!!」
「そんな訳あるか!!」「信じると思うか?!!」
で、レナとルカは傍らに向き直って同時に一言。
「「隊長/マリー様!何とか言ってやって下さい!!!」」
声を掛けられたのは副隊長コンビの言い争いを唯一止められる
隊長でエスカレーター組出身のマリーこと
そんな彼女は何をしているのかというと…
「またつまらない事で言い争って…
人がケーキを楽しんでる間位静かに出来ないの?」
供回りの一人、
「つまらないで済む問題ですか?!この卑しい犬っころが
アナタに何の連絡もなしに勝手に戦車を受領したんですよ!!」
「誰が犬っころだ!!それならお前等は蛙食いだろ!!」
「はぁああああああああああ?!!誰が蛙なんぞ食うか?!」
「じゃあカタツムリ食いだ!!いい加減食堂に定食を置け!!」
「そんな物置けるか!!大体私に言ってどうする?!!」
とまあこの二人が犬猿の仲なのでチーム自体の統制も問題があり、
全国大会でもかつてはベスト4常連校の一角と謳われた強豪高も
近年では一回戦負けが続く等すっかり落ちぶれ、
折角のARL44も宝の持ち腐れ状態となっていた。
と、副隊長が延々と言い争っている所にもう一人のマリーの供回り、
マリー車砲手の
「マリー様、アナタ宛にお届け物があるとかで…
とんでもないサイズのトレーラーが来ていますが。」
「私宛に?何かしら?」
「兎に角こちらまでお呼び致しましょうか?」
「分かったわ、そうして頂戴。」
そう言うと、マリーは徐に立ち上がってその場を離れる。
「「マリー様、どちらへ?」」
「私宛のお届け物が来たみたい。
受け取りに行くから押田と安藤も付いてきなさい。」
「「は、はぁ…。」」
そして…
「ど、どうも~。般若仮面の使い第2弾で~す…。」
「あああっ!!君はこの間のIS学園の!!ま、また来たのか?」
そこに居たのはIS学園の
以前レナ率いる受験組にシャールG1Rを引き渡す際の護衛として来ていた。
「まあね。この前こっちに来た時、ここの隊長さんが専用車に
ルノーFTー17を使っていると聞いて、そんな古い車輌を使う程
車輌に困ってるのかって事で見かねた般若仮面が
新しい隊長車を寄贈するって事だから、受け取って貰うわよ!」
「えええええ…。」「べ、別に車輌に困ってる訳では無いんだが…。」
「あら良いじゃ無い、減る物じゃないし。良いわ、見せてくれるかしら?」
「むっふっふ~。それではご覧あれ…出でよ…『FCM F1』!!!」
鈴音の声でトレーラーから降ろされたそれは、全長10mを超える怪物だった。
その巨体には前方に備えた砲塔の後方にもう一つより大型の砲塔を備え、
片側だけで20個を数える大量の転輪が並ぶ。
その名は「FCM F1」。かつてドイツのジークフリート線突破用に開発され、
モックアップ完成までこぎ着けながら、その後のドイツ軍侵攻により
闇へと葬られた超重戦車が、遂に100年の時を超えて
このBC自由学園の学園艦甲板に姿を現したのであった。
「「「「「………………………………………………………………………。」」」」」
この余りにもデカ過ぎるお届け物に、マリー含めBC自由学園側は
全員目が点になっていた。
「
「こ、これが我が校の新隊長車…。」
「つーか、デカ過ぎるだろ!!何㌧あるんだよこれ!!」
「聞いて驚きなさい、何とびっくり145㌧よ!!
何しろ車体も砲塔も前後左右一律120㎜の装甲で固めてあるんだから!!」
「「「「「ひゃ、145㌧?!!!」」」」」
このFCM F1、史実では前面120㎜、側・後面100㎜、
総重量139㌧の計画だったが、開発中に計画を監督する委員会が装甲を
全周120㎜に増厚する事を要求しており、今回BC自由学園に寄贈した車輌は
その要求に従って設計されている。
「ARL44が50㌧だから、ほぼ3倍ではないか!!」
「えーと、後この戦車9人乗りだから、乗員も今の内に確保しておいてね!
と言う訳で、確かに引き渡したから、大事に使ってね!!仲良く使ってね!!」
呆然としているマリー達を尻目に、鈴音はさっさとトレーラーに乗り込み、
学園艦に横付けした輸送船へ向けて走り去るのであった。
「ど、どうしましょう…?」「使えばいいんじゃない?」
「いやあの…そもそも大き過ぎて置き場にも困るのですが。」
「あら、置き場が無いのであれば、創れば良いじゃない!」
こうして新たな隊長車となったFCM F1だが、
このデカブツがまあ兎に角毎日の様に騒動を引き起こすのであった。例えば…
「ギャーッ!!!まためり込んだー!!」
何しろ総重量145㌧、ARL44ほぼ3輛分である。
訓練中にグラウンドが重さに耐えかねて陥没し、車体がめり込むのは当たり前。
「い、急いで引き揚げろー!!」
こうなるともう大騒ぎである。ルカの号令で
3輛のARL44がワイヤーで引っ張りながら、後方からもう1輛のARL44で
押し出し、数十分かけて辛うじて引っ張り上げる。
「マリー様ぁ!!やっぱりこいつグラウンドじゃ真面に走れませんって!!
舗装路を走らせましょう!!」
「仕様が無いわねー。」
「後、この穴何とかして下さい!!普通科の子が大迷惑ですよ!!」
この様に、とてもグラウンドを走らせられるサイズでは無く、
程なくグラウンドへの乗り入れが禁止となり、
舗装路で行軍訓練をする事となったのだが…
「マリー様、凄いですよ!!今まで使ってたFTー17は
頑張って足回りを強化しても20㎞/時が精一杯でしたけど、
今36㎞/時出てます!!!全速力のARL44と並走できますよ!!」
「まあ!それは移動が楽で何よりね!!」
この超重戦車、史実では550馬力のエンジンを2基搭載し、
最高速度は24㎞/時を予定していた
(今回寄贈された装甲増厚版は20km/時)のだが、
実際はご覧の通り、相当パワーアップした様で楽々30㎞/時を超えている。
まあ無理も無い、実際に建造した東雲特車を率いているのは束である。
束直々のチューンアップにより、
整地なら何と2倍の40㎞/時で走行可能になっていた。
『隊長、これより艦中央の大通りに入ります。付いてきて下さい!』
先導するレナのシャールG1Rに続き、コンクリート舗装の戦車用通路から
石畳で舗装された中央の大通りに入ったFCM F1。すると…
ベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキ!!!
「あら?何か変な音が聞こえるわ。」
足下から何かが砕ける様なイヤ~な音が聞こえてくる。
『マリー様、ストップストップ!!車を今すぐに止めて下さい!!!』
此処で後方を付いてきたARL44に搭乗するルカが
慌てた様子で無線で停止を呼びかける。
「え? 祖父江、車を止めなさい!!」「はい!」
操縦手の祖父江に停車を命じ、ルカに事情を問いただす。
「押田、一体どうしたの?」
『マリー様…ハッチを開けて後ろをご覧下さい。』
「…えっ?」
砲塔ハッチから身を乗り出し、振り返ると…
「あああああああああああああああああ~~~~~~~~~~~~~~~!!!」
哀れエスカレーター組居住区大通りの石畳はぐっちゃぐちゃのヒビだらけに。
「あ、あの…マリー様?」
「何かしら…?」
「機甲科の教務主任がお呼びです…。後、押田副長と安藤副長もご一緒に。」
「「「ガビ~ン…。」」」
この後、3人は機甲科の教務主任にめっちゃ怒られた。
こうして、BC自由学園はFCM F1をまともに走らせられる様に
学園艦のインフラを整備する羽目となり、その費用で学園の財政を傾かせ、
とんでもない厄介者を受け取ってしまったマリーは
赤字隊長という有り難く無い渾名を頂戴する事となったのであった。
とまあ、この様に般若仮面からの寄贈で泣きを見る学校も
少なからず存在する訳なのだが、こんな物はまだ可愛い方である。
何しろもっと洒落にならない事態に陥っている所が有るのだから。
東京某所
「全く、あの東雲特車は何を考えているのやら!」
ここは戦車道スポンサー企業の連絡会「
略してPTAの本部である。
そのPTAが今一番頭を悩ませているのが、束率いる東雲特車である。
「その通り、昨今の東雲特車の大盤振る舞いと傍若無人は目に余る!」
「こちらには一切何の接触もせず、勝手に日戦連と交渉して
機材製造企業の指定を受けたのを良い事に、後先考えずに車輌をポンポン創って!
それを!只で!学校に配ってるそうじゃない!」
何が気に入らないのかというと、東雲特車はPTAに加入せず、
勝手に日戦連と交渉して許可を取ったのを良い事に、
独断で車輌や機材を製造して各校に提供しているのだ。
「まあ嫌味ったらしい!おまけに『戦車道を極めし者 般若仮面』なんて
可愛げ0%のマスコットまで創り出すなんて、相当暇なのでしょうね!!」
「『快適さ』?『優良装備』?そんな物が戦車道に必要だと思ってるなんて!
戦車道の観客は少女達が苦労して一致団結して成長する所が見たいのであって、
強い戦車を快適に乗り回す所なんか二の次三の次で結構なのに!!」
なのはが聞いたら即⌒*(◎谷◎)*⌒化は免れない発想である。
「このままでは、我々は完全にお払い箱にされてしまう!!
日戦連は当組織の解体を検討し始めたとか…!!」
「PTAを解体?!!!そんな事をしたら、
東雲特車による戦車道の私物化は必至ですわ!」
「しかし、東雲特車の筆頭株主はイギリス人の貴族らしい。
下手に関わると国際問題は免れん…。」
「それ所か、その貴族はIS学園の生徒だそうだ。
当人の合意なき干渉厳禁の学校にいるとなれば…」
「それに国内二大流派の西住流と島田流は東雲特車の安全装備に関しては
歓迎の意思を示している。両家の怒りを買えば我等が捨てられよう。」
「何よりあそこを率いているのはあの篠ノ之博士だ…
個人の資産がこの国の防衛費を凌ぐ*1とも言われるアジア一の大富豪。
資金力は圧倒的に向こうが上、もしバレたら何をされるか…」
「だがこのままでは我々はお役御免にされてしまう…
その前に何とかして東雲特車と日戦連を切り離さなくては!」
「だがどうする?」
「幸い奴等が車輌を大盤振る舞いしたお陰で今年の高校全国大会は
参加校が30を超える歴代最大規模となるらしい。
それに便乗して国中の主要企業にPTA参加を募集しよう!
その上で参加してくれた主要企業を押し立てて日戦連に
『PTA非加入企業の機材を使用禁止にする』事を提案すれば…。」
「PTAに入るか、戦車道から撤退するかの2つに1つと言う訳か。」
「PTAに加えてしまえば後はこちらの物、いくら金を持っていようが、
我々と同じ1票しか持たない一企業の枠に嵌められる。
それなら、今まで通り運営してATMにしてしまえる。」
「「「「「それだ!!!」」」」」
こんな感じで水面下で陰謀を企てるPTA。
だが、そんな事ばっかりしていて大丈夫なのか?
篠ノ之束という女が持っているのは金だけではないぞ?
自衛隊は防衛軍に拡大再編され、防衛費は年30兆円前後まで増額している。
第1話冒頭の注意書き通り、遂にオリジナルの高校が登場です。
尚、なぜ岡山が本拠のBC自由学園学園艦が舞鶴に居るかというと、
瀬戸内海に学園艦が入れないので、舞鶴の専用泊地を使用しているから
という解釈です。
原作未登場のAFV紹介 その3
P43bis
P26/40の後継を目指したイタリア製重戦車。
史実では'43年の春に1輛だけ試作車が完成した。
※下記の数値は作中世界でのみ通用する数値で史実と同一とは限りません。
寸法 車体長6.15×車幅3.04×全高2.24㍍
機関 フィアット製 型番不明のV型12気筒ガソリンエンジン 480馬力
最高速度 45㎞/時
重量 33㌧
乗員 5名
武装
主砲:53口径90㎜砲「Da 90/53」×1
機銃:8㎜機銃「ブレダ M38」×2
装甲(単位:㎜)
防盾 100
砲塔 前面 側面 後面 天板
100/50/50/20
車体 前面 側面 後面 天板 底板
50~80/50/50/20/20
本作での変更点
史実試作車の主砲は42口径90㎜砲だったが、
53口径90㎜砲の搭載計画が有ったとする文献を束が確保した為、
主砲はそちらに変更。