高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者 作:ピロッチ
調査依頼の結果が西住家に伝えられる時が来ました。
熊本県某所 西住宗家私有地 戦車道訓練場
「撃てーっ!!!」
セシリアの声で12.8cm PaK44の砲声が訓練場に響き渡る。
砲口の僅か50m先には砲塔ハッチからマネキンが身を乗り出した
PaK44の照準はマネキンに向けられている。
直後、マネキンに着弾した競技用砲弾が炸裂。
しかし、爆煙が晴れるとマネキンは健在、傷一つ無い。
「こ、これは?!」「信じられん…128㎜弾の直撃を跳ね返すのか!」
立ち会った日戦連の関係者や西住流及び西住流と双璧を為す
東日本最大流派「島田流」の関係者は驚愕するばかり。
「如何です?128㎜砲の直撃すら物ともしないこの防護装置で
戦車道長年の課題は遂に解決致しましたわ!」
「……素晴らしい!!」
感嘆の声をあげるのは西住流次期家元で筆頭師範のしほ。
「戦車道長年の課題がこの様な形で解決するとは夢にも思いませんでした。
家元も喜びましょう。当流はこの防護装置の普及に協力を惜しみません!」
「無論、我が島田流も以下同文です、出来る限りの協力を致しましょう!」
島田流家元にしてしほ長年のライバル、
この防護装置に感心しきりの様子だ。
この日は以前セシリアが児玉理事長に語った、
外部視察中の流れ弾、跳弾から搭乗者を守る防護バリア発生装置を初め、
東雲特車製の競技用機材のお披露目会だ。
「それは何よりです!国内二大流派の協力を得られれば、
防護装置の普及は成ったも同然。こちらこそ、何卒宜しくお願い致しますわ!」
「それで?篠ノ之博士の使いの方はまだ何か持ってきたのでしょう?」
「それは勿論。こちらをご覧下さい。」
そう言ってセシリアが手を叩き、持って来させたのは何かの銃だった。
「これは…銃?」
「如何にも。こちらは旧軍が昭和初期、実際に射撃訓練に用いた
訓練用内膅銃の再現版で御座います。今回お持ちしましたのは、
西住家のお膝元、黒森峰戦車道部が主に装備するドイツ版となります。」
各銃には対応する戦車砲の型番が記され、砲毎に銃身の長さが全て異なっている。
「今回持参致しました訓練用内膅銃は、主にドイツ国防軍が使用していた
7.92×57㎜弾と同型の競技用機銃弾をそのまま使用して、
銃身長、装薬量にライフリング等の調整を行い、
各種戦車砲の弾道特性の完全再現に成功致しました。
これさえ有れば、最早高価な砲弾を訓練で消費する必要はありません、
遥かに安価で大量生産が効く競技用機銃弾で目一杯射撃訓練が可能となれば、
日戦連にとっては大幅なコストカットになる上
各校の部員達の射撃練度の向上に役立つ事間違いないかと。」
「それは有り難い!砲弾の製造費は当連盟の悩みの種だったから、
より安価な機銃弾で代用できる上、練度向上も促進出来るとあれば言う事無しだ!」
「今回はドイツ版だけですが、今後は各国版も鋭意製造させて頂きたく。」
「も、勿論だとも!!いや、近年の燃料代値下げで多少は楽になっていたとはいえ
ここまで梃子入れして貰えれば、日本戦車道の近代化はもう目の前だ!!
いや目出度い目出度い!!」
実は九州の西方に広がる大陸棚の海底には埋蔵量何と1000億バレルの
巨大油田が眠っており、15年前、韓国との大陸棚協定が期限切れとなった事で
ここの利権は日本が独占。海底油田の採掘プラントを建てまくり、
プラントが稼働開始した2030年代には日本は堂々の産油国となり、
当分は石油に困らない国となっていた。
「お喜び頂けて何よりです。所でミセス・ニシズミ、お話が。」
「何です?」
「こちら、以前我が校に御依頼されていたワタクシの同級生と
貴家とのDNA鑑定の結果報告書になります。」
「拝見しましょう。」
しほが報告書を見ると、そこには西住家となのはは
全くの他人であると明記されていた。
「良かった…彼女は当家とは全くの無関係、赤の他人だったのですね。
これを見れば家元も安心するでしょう。」
「御納得頂けて何よりです。只…件の生徒、ミス・タカマチですが…
実は弊社社長篠ノ之の直弟子にあたる方でして…。」
「…えっ?」
「篠ノ之は相当貴家を疑っておられる御様子…
そちら様のご都合の宜しい時で良いので、御事情をお話頂ければ…。」
「お気持ちだけ受け取っておきましょう。御社には無関係な事です。」
それとなく事情の説明を求めるセシリアだったが、しほは取り付く島もない。
「そうですか…。そうそう、そのミス・タカマチは我が校に
戦車道部の創設を計画しておりまして。」
「戦車道部を?倍率1万倍を誇るIS学園の生徒がISを差し置いて
戦車道を態々学ぶ理由がありませんが。」
「それだけ、篠ノ之とミス・タカマチは本気だと言う事です。
篠ノ之の為人は広く世間に知られている通りです。
何をするか分からない御方ですので、十分に御気を付けを。それともう一つ…
下の娘さんの通学先、今学期一杯で廃校になる可能性があるとか。」
「……………はぁ?!!」
「何でも、以前向こうにお伺いした際、
今年の戦車道全国大会で優勝しないと廃校にすると
文科省学園艦教育局と言う所から脅し紛いの通達を受けたと、
生徒会長のカドタニという方から聞きまして。」
「で、ではあの子は、みほは…。」
「はい、廃校から学校を護る為、その生徒会長と協力して
廃部になっていた戦車道部を再建して、自ら部長を務めていらっしゃるそうで。」
「何て事?!!」
「弊社もかの学校に般若仮面の名において車輌を寄贈しました。
般若仮面は依怙贔屓はしませんが、冷遇もしませんので。」
「そんな…あの子は実力はあっても戦車道には不向きな性格で、
去年あんな事があって戦車道から身を退いて、普通の人生を歩みたいと
戦車道の無い高校を選んで茨城くんだりまで出て行ったのに…。」
「あの件に関しては意見は人それぞれですので、ワタクシは立ち入りません。
ですが、廃校の件は仮にも中央省庁の決定ですので、いかな二大流派と言えども
覆し様は無い物かと…。では、ワタクシ共はこれにてお暇させて頂きます。」
こうして、セシリア他東雲特車の者は立ち去っていった。
「文科省…余計な事を!!!」
残されたしほは寝た子を起こした文科省に憤りながら、
Ⅵ号戦車E型の車体に拳を叩き付けたのであった。
一方その頃IS学園では…
「さて、こちらもいよいよ人員集めに入る必要があるの!!」
般若仮面に扮して色々と工作していたなのはだったが、
いよいよ本格参入の為、人員確保計画を発動する構えだ。
「1組の専用機持ちは全員参加で良いとして…顧問は…
千冬先生は茶道部だから、山田先生を名目上の顧問として据え付けるか…
残る人員は…1クラス3人動員できれば、十分なんだけどなぁ…」
等となのはが考え事をしていると…。
「あ、あの…1組のミス・タカマチですカ?」
「おや、どちら様?」
と、ここでなのはに声を掛ける者が。
振り返るとそこにいたのは1年生を示す青リボンのブロンドの生徒。
その見た目からして、恐らくは東欧系だろう。
「ワタシ、1年3組のコヴァーチュハーズィ・キンガです。
ハンガリーから来ましタ。」
「こ、コヴァ…コヴァーチュ…ハーズィ…?」
「はい、私の名字はコヴァーチュハーズィでス。
アナタに関する噂を聞いて、確かめたくて声を掛けましタ。」
「噂。」
「ミス・タカマチはIS学園で戦車道部を創部しようとしているとカ。」
「よく知ってるの!確かにその通りだけど、何処でそれを知ったの?!」
「1組で専用機を与えられた方達が、よく話をしているのを聞きましタ。」
「成る程ね…、それで?まさか、入部希望者とか言わないよね?」
「そのまさかでス。戦車道部を創るのなら、是非入部させて下さイ。」
「!」
キンガと名乗るその女性徒、何と戦車道部創設への協力を志願してきたのだ。
「それは歓迎するの!!でも何で?」
「ワタシ、中学時代は戦車道部で全国制覇した事がありまス。
でも、ISの操縦適性が国で一番だったので、IS学園へ行けと
国から命令されてここへ来ましタ。」
「そう言う事か…それで、戦車道もまだ捨てきれなくて
私の噂を聞いて声を掛けたと…。」
「そう言う事でス。手伝わせて下さイ。」
「勿論!所で、私は未経験だけど実際の試合ってどういう物なの?」
「私の母がPCに実際の試合の映像記録を残しています。
それを見れば大体分かると思いまス。」
そんな感じで、「IS学園戦車道部創設委員会」を発足したなのは。
この時、キンガの母のPCから借り受けた映像記録が、
後に戦車道その物にとんでもない物を齎す事に成る。
内筒銃は本当は内「月唐」銃と書くのは内緒だ!
今回初登場のオリキャラ、キンガのフルネームでピンと来た人は
なぜ彼女が戦車道を嗜んでいたのか納得するでしょう。
原作未登場のAFV紹介 その4
セモヴェンテ Da75/46
イタリア初の溶接仕上げのAFV。史実では降伏後に
11輛(13輛とも)だけドイツの発注で生産された。
※下記の数値は作中世界でのみ通用する数値で、史実と同一とは限りません。
寸法 車体長5.1×車幅2.88×全高1.74㍍
機関 フィアット製 V型8気筒ガソリン
「15TB M42」192馬力
最高速度 35㎞/時
重量 15.7㌧
乗員 3名
武装
主砲:46口径75㎜砲「アンサルド C.A.Mod.1934」×1
機銃:7.92㎜機銃「グロスフスMG42」×1
装甲(単位:㎜)
防盾 100
戦闘室 前面 側面 後面 天板
100/70/45/15
車体 前面 側面 後面 天板 底板
50/45/25/15/15
本作での変更点
搭載機銃をイタリア製の8㎜機銃「ブレダM38」から
史実で実際に換装されたドイツ製7.92㎜機銃
「グロスフスMG42」に換装。