現在のIS世界大会の優勝者・アリーシャ・ジョセスターフによって指名手配された新川絆。彼は凡ゆる面で危機に瀕していた。千冬が告げた「世界の玩具」という意味、篠ノ之束の目的を知る為に。
同時刻、織斑一夏は中学時代からの悪友・五反田弾に自身の正義を伝えられ、どうしたらいいかを考えていった。
「お、おい大丈夫か!?」
「ハァハァッ…。ちょっとだけ座らせてくれるか?」
一夏との談義の後、入ってきた男性はずっと呼吸が荒く、何かに追いかけられたという感じに見えた。
「親父!水をくれ!」
「分かったが、あまり長居させるなよ。」
「長居って、何がだよ!」
そう言って、俺はコイツに水を飲ませる。男性らしき唇をしながら、肌は白い。なんだ、外で何があったんだ。
「俺は…新川絆。って言っても、TVに映ってる彼とは同姓同名なだけだがな。」
「そ、そうか。…なぁ、アンタの身に何があった。」
「それは…。」
『ISへの抵抗運動が活発的になり、世界は混乱を強いられています。』
その言葉を聞いた時、俺は目を疑った。ISの抵抗運動?どういう事だ。そんな事、一部でしか…。そう思った時、俺の目に映るニュースの映像は…男性たちが抵抗運動をしている映像だった。
「うぇ……。」
「…君は抵抗運動には参加しなかったのか?」
「いや、するも何も…俺には関係ない事だし。」
「ははっ。確かにな。」
そう告げるフードを深く被る男。だが、その笑い声は諦めた様な、何も変えられないと分かってる様な無力な人に見えた。
「逆に聞くが、アンタは…何も思わないのか。こんな運動が無意味だって。」
「無意味でも動く奴だっている。でも、それに効果があるかと言われて、肯定も否定も出来ない。結果は誰かが動くしか意味がないんだ。ただ、この抵抗をしても、アイツらは離したくないさ。愉悦感、男性より強い自分、平等に変われば、私たちは必要なくなる。それは嫌だ。という恐怖。…難しかったか?」
「いや、意味は分かるんだ。ただ、なんでこんな状況になったんだろうなって。」
「…わからないな。」
「そうか。」
答えを求めても、彼は何も告げない。そりゃそうだろうな。何も分かる筈ない。なのに、俺は…。
「お兄ちゃん?」
「あ、蘭。すまん、お客さんの看病頼めるか?」
「え、なんで私が…。」
「お願いだ!少しだけでいいんだ。」
「…分かったけど、名前を教えてくれる。」
「新川絆。それが、俺の名前だ。」
そう告げるコイツを見て、蘭は驚いた顔をする。
「え、ニュースに出た…。」
「あ、違うんだ。新川さんは同姓同名なだけで、ただの別人なんだよ。」
「…ほっ、そうなんだ。」
そう安堵する蘭を見た新川さんは…少し顔を背いた。何を感じたのかはわからない。だけど、俺は前向きに…良かったなと言った。
「━━ああ、そうだな。」
そう告げる彼の声は、震えていた。嬉しいんだろうな。と思いながら、蘭に看病を任せる。
「新川さんは何かしてたの?」
「…何を?」
「いや、トレーニングしてるから、職業でもしてるのかなって。」
「…現役高校生さ。ただ、ちょっと停学してて。」
「ふーん。大変なんだ。」
自室で、私は彼の看病をしていた。彼の傷ついた手を包帯に巻きつける。はぁ、一夏さんだったら良かったのに。そう思いを馳せた。だけど、その顔を隠そうとしたのに。新川さんは私の想いを見透かした様に言う。
「好きな人でもいるのか?」
「デリカシーなっ、セクハラですか?」
「いや…ただの疑問。…そうだよな、これでもセクハラになるか。」
「もう、冗談ですよ。そうですね、好きな人って言っても、今は離れ離れなんです。」
「恋人なのか?」
「積極的ですね…。まぁ、恋人というより好意を向けてるんです。なのに、彼、何も向けないし。私の好意を気付いてないっていうか?鈍感過ぎて呆れますよ。」
そう話すと、新川さんは少し笑顔を向けた。顔を見せない条件でも、表情は見える様なフードの位置。信用されてるのだろう。
「どうして、好きになったんだ?」
「そうですね…イケメンで優しくて…私を助けてくれた王子様って感じです。」
「一目惚れか…いいな、それは。」
「え?どこがですか。実りませんよ?」
「いや、恋をするのをな。俺もしてみたいよ、恋を。」
そう笑う彼、私は少し彼の事を少し知れた。彼は優しい。だけど、何か諦めてると言うか、大人の様に感じた。自分を他人として見てるというか。自分は他人として見て、他人を知ろうとする芸風というのか。
「新川さんは…友人が好きなんですか?」
「違うよ。ただ、家族くらい、大事なんだ。同列じゃない。けど、手に溢れる程、忘れたくない記憶で、関係なんだ。」
そう告げて、身体を起こす。その姿は私より歳が4つ上の様に見えた…大学生の様な人だった。…でも、私には一夏さんがいるし…。
「蘭って言うの?」
「え、は、はい。」
「その恋は実るかもしれない。そう信じるなら、行動に移してみたらどうだ?」
「で、でも、迷惑とか…。」
「別に今じゃなくていい。落ち着いた頃に、言えばいいさ。」
「…そうですね。」
そう告げて、新川さんは離れていく。…分からない。なに?この気持ち。忘れたくない、離れたくないと思う程に、私は…。
━━彼の諦めた心を癒したい。
「どうした、蘭?」
「お、お兄ちゃん!?ノックはしてよ!」
「あ、ああ。すまん。新川さん、もう行く気ですか?」
「そうだな…もうここに泊まる必要はない。」
彼は歩いていく。その目に映るのは諦めじゃない。目的に向けた一直線の目。
…違う!私は…一夏さんが。
相反する想いが私の中に動いて、苦しくなってきた。
「蘭、一応病院向かう可能性あるし、ついていくか?」
「う、うん!」
私は彼を追う。同姓同名なのかという疑念、そして…この想いを知るために。
━━次回予告━━
「お前の様な異物がいるからだ。」
「今は逃げるしかない…!」
『なんで、俺たちを助けたんだよッ!!』
『Nonber_03 自己の正義、世間の正義。』