ドラゴンボール~兄より優れた弟は存在する!~ 作:ナッパにウィッグを。
──悪いがそれは神の領域を超えている……。代わりにマスクを用意した。ではさらばだ。
ちくしょぉおおおおおおおおおおお!
・とあるラディッツの記録
ジリ……ジリ……と間合いを計りつつ二人の戦士が円を描くように足を運ぶ。
片方は大きな黄色の眼で、もう片方は額の目を見開いて、お互いを睨み間合いを計る──。
(……ケヒャ……オレが負けることは万が一にも無いだろうが……こいつらは厄介な術を使う……油断は大敵だな)
先程まで指先一つで殺せる二つのゴミのような存在に苦戦させられたのだ。
それゆえ、そのゴミとは桁違いに強いであろう眼の前の男を前にメダマッチャは油断しないよう努めていた。
(──ふむ。存外に慎重に動く……)
こういう手合いは己の力を過信して殴りかかると思っていた天津飯は、こちらの一挙一投足を冷静に見つめてくるメダマッチャに少し驚いていた。
(こういう手合いは力押しをしてくるかと思ったが……しかし……ならば──)
「どうした……かかってこないのか? ──威勢がいいのはその目玉だけのようだな」
あまり天津飯自身は好まないが、武闘家として時には言葉での挑発をすることもある。
この挑発に相手が乘ればそれは明確な『隙』となる。
挑発に怒り狂い拳を奮ってもよし、あるいは──。
「そんな安い挑発にのってたまるかぁ! 格下からかかってくるのが礼儀だぜ!」
(──格下か……油断はしていないが……侮りはしていると……ならば!)
天津飯の挑発に乗らなかった。そこに付け込む隙を見出した男は動く。
「……そうか、では遠慮なくッ」
その言葉が終わるか終わらないうちに赤い気を瞬時に纏い、メダマッチャの懐に天津飯は拳を突き立てていた。
「ガ……ッ……あ……あ……!?」
「──打ち崩させてもらう!」
侮っていたことにより疎かになっていたメダマッチャの身体に、天津飯の拳が雨霰の如く降り注がれる。
「いいぞ、天津飯! そのまま消し去ってしまえ!!」
「流石は鶴仙流一番と言われたワシの! ……も、元弟子ぞ!!!」
その赤い気を纏った拳にメダマッチャはなすすべがなく防御姿勢を取り──。
(い、いやおかしい……いくらコイツが頑丈であったとしてもすでに致命的なダメージを与えているはず──なのに……なぜまだ動ける!?)
──そして、その防御の隙間からニヤリ……と笑みを浮かべた。
「!?」
途端に背筋に冷たい予感が走り間合いを取った天津飯は、赤い気がいつの間にか離散していることに気がついた。
(な……馬鹿な、界王拳が解除されている……!? それにやけに身体が──重い……!)
何かを徐々に吸い取られている感覚に、ついに膝をついた天津飯を見て、メダマッチャがさも愉快げに話し始める。
「ケヒャヒャ……あの一撃が続くようならオレも駄目だったぜ……だが! 肩を見てみろ!!」
「!? なっ──なんだコイツは──!!」
天津飯の肩には小さなメダマッチャがしっかりと抱きついており、気色の悪い笑みを浮かべていた。
「あの一撃のときにそれとなくくっつけて置いたのさ! そいつはお前の生体エネルギーを吸い尽くすまで離れないぜ! だんだん身体が重くなってきただろう?」
(そうか……だからオレの攻撃が段々と通じなくなっていき、そして界王拳が解除されたのか……!)
「ぬ、抜かった……だが取りさえすれば!」
「おっとさせねぇぞ……シュー! シュー! ハッ!!」
メダマッチャが変わった呼吸をしながらまるで印を結ぶような動作をすると、その背中から新たにミニメダマッチャが2体、まるで浮かび上がるように出てきた。
「なっ──!」
(さ、さらに二体だと……! あ、あれにくっつかれたらま、まずい……!)
「その絶望顔が見たかったぜ! さぁ更にくっつけ!!」
何か打開策は無いか──天津飯がそう考えたときだった。
近付いてくるニヤニヤと笑みを浮かべる醜い生き物が天津飯に抱きつこうとした刹那──。
──天津飯がかつて憧れていた背中が、その間に割って入ってきた。
「ぐおっ……! て、天津飯……早く……!」
「あいだだだだだ……! て、天津飯はやくしろ!」
「つ……鶴仙人さま……た……桃白白さま……!?」
かつて袂を別れた自分自身の師たちが、その身を盾にメダマッチャの分身に抱きつかれていた。
鶴仙人も桃白白もわかっているはずだ、この分身体であっても天と地ほどの戦闘力の差があり、決して勝てないことを。
(なのに……なぜそんなことを……!)
「……ケヒャヒヒ! 雑魚は雑魚とつるむのがお似合いだな……だが邪魔なんだぜぇ? おいお前達、そいつらはそのまま締め殺しちまえ!!」
「がが……ぐ……!」
「て、天津飯……!」
ギリギリと軋むような嫌な音がする中、天津飯はわざと隠れるように指示していた気配に対し叫んだ。
「──ここで叩き込む……頼むぞチャオズ!」
──天津飯はそう叫びながら、肩の分身体を掴み、無理やり握りつぶした。
「だ、ダブルどどん波!」
同じタイミングで飛んできた二本の光線が、鶴仙人と桃白白にくっついていた分身体をあっけなく亡骸に変えた。
「天さん……! ボクやったよ!!」
「な、なんだ……!?」
その一連の速さにメダマッチャは反応できず、ただただ戸惑うことしかできない。
「鶴仙人さま! 桃白白さま! ご無事ですか!?」
「し、死ぬかと思った……もっと早く助けんかい!」
「そうだぞお前ら! 寿命が縮んだだろーが!」
「天さん、ふたりとも無駄に元気そう!」
「「おいチャオズ!!」」
半ば弛緩した雰囲気が漂う中、天津飯は未だに呆然とした様子のメダマッチャへと向き直った。
「……もっと周りを確認するべきだったな……まぁオレも師匠たちが身を挺してくれるとは思わなかくてひやりとはしたが……」
「く……くそ……! くそくそくそ!! これでもくらえ!!」
内心取り乱しているメダマッチャは、がむしゃらに連続して気弾を放ちまくった。
だが照準があわず、避けずとも当たらない気弾を前に、天津飯は静かに立っていた。
「そんな薄い弾幕でオレに当たると思うな! 弾幕とはこうするんだ……四妖拳!」
ボコォ! という効果音とともに天津飯の背中に生えた二つの腕。
計四つの赤い気を纏った人差し指がメダマッチャへ照準をあわせたとき、彼はこれから何が起きようとしているのか察した。
「…………いくぞ!」
「ま、待っ──」
「マシンガンとどん波!!」
その技名のように、光線の弾がメダマッチャに降り注ぐ。
(お、オレがこんなところで──)
みるみるうちに彼は穴だらけとなり、その命も穴が空いたのであった。
「ふん、なかなかやるようになったではないか天津飯……しかもワシを囮にするという非情なことまで身につけおって……」
ここぞとばかりに『ワシが育てた』面をする鶴仙人と桃白白になんとも言えない表情のまま天津飯は答えた。
「そ、それは先程も申し上げた通り、師匠たち自らが勝手に……」
「──じゃ、じゃかあしい! だが……」
がなりたてようとした鶴仙人だが、ふと天津飯に背を向けると、少し震えが混じった声で問いかけた。
「まだ──師匠と呼んでくれるのだな……」
「はい──道を違えたとはいえお二人はやはり私とチャオズの師匠です!」
──そうか。
「ふ、ふん! ならば特別に破門を無かったことにしてや──」
「あ、それは間に合ってますのでお気遣いなく」
「……や、やっぱりろくな死に方せんぞ!!」
◇◇◇◇◇
「さっきまでの勢いはどうした! まさか雑魚と呼んだ相手に足がすくんだりしないよな?!」
「だ、黙るダボ…………お、オレが、まけるはずがないダボ!」
二人の戦士の姿は、誰が見ても有利不利がわかるものであった。
一人は、息は少し上がっているもののまだまだ余裕が見え、今一人は傷だらけで肩で息をしていた。
(何の特徴も持たないたかが人間如きが、な……なぜこんなに強いダボ!)
傷だらけで肩で息をしている方であるドロダボは、下等種族と侮っていた人間にいいようにやられていることに焦りを感じていた。
「降参するならさっさと降参したほうがいいぞ! オレより強いやつなんてまだまだいるからな!」
「馬鹿め……ス、スラッグ様に叶うはずがないダボ……!」
──目の前の地球人に対して屈辱と怒りを感じて入るのだが、それ以上に自身のボスであるスラッグにこの情けない様子を見られて怒りを買い、殺害されることを恐れていた。
(スラッグ様が来た時点でどのみちこの星は終わりダボ……!)
ただでさえ恐ろしいスラッグが、あのヘンテコな実を食べたことによりさらに強く、恐ろしい存在となったのだ。
どんなやつにも──あのフリーザにさえ負けるはずがない。
(仮に降参しても、ここで退いたとしても……。その先にあるのはスラッグ様による直々の『死』……!)
──勝つしかないダボ!
「ハァッ!!」
「っ!? ゲホッゲホッ……地面に……!?」
突如、地面にエネルギー波を打ち込み土煙を立てたドロダボは、近くにあった岩の裏に素早く身を潜めヤムチャがいるであろう方向を覗き見るのだった。
(つ……土煙が消えてお前が姿を表したときが地球人め……最後になるダボ!)
土煙は、まだもうもうとその男の姿を隠している。
今頃、どこから奇襲してくるのか恐怖におののいているに違いな──
「なるほどなー。確かにお前みたいに目でしか物事を捉えられないやつには有効な戦法だよな〜」
──な……後ろ!?
恐る恐る振り返るとそこにいたのは──。
「残念だけど見えるんだよ、オレにはな!」
「ま、まて! お前は魔族ではないがスラッグ様にオレが直々に口利きを──」
今更命乞いをするドロダボだが、遅すぎたと言わざるを得ない。
「もうお命は時間アウトだぜ! 三倍界王拳かめはめ波!!」
ヤムチャの赤い気を纏った手から放たれた光線は、ドロダボの姿を完全に消し去っていた。
あとに残るは荒野のヤムチャ、ただ一人──。
「うーん……せっかく新しい技を考えてたのに披露できなかったな……ま、それだけオレが強くなりすぎたか! これからは勝ちまくりモテまくり!!」
(やっぱりヤムチャはなんか勝ってもヤムチャだなぁ)
界王様に地上の様子を見せてもらいながらラディッツはそう思うのであった。
「しかし……マシンガン……銃の名をつけるとはな……」
──天津飯。そう言えば昔にお前を追っかけてる女性がいると弟のカカロ……悟空からきいたぞ。
──あまりどうこういうつもりはないんだが……きちんと態度は示しておいたほうがいい。その女性のためにもな。
──ずっと探し続けさせるのは、残酷だぞ。
「実は…………マシンガンで思い出す女性がいましてね」