それでも君は「友達」だから。(妖ウォ×呪術) 作:ノーネーム
戦闘描写って、こんなに難しいもんなんですね……。
妖怪側の詳しい能力とか設定は後々まとめると思うんで、「ん?」と思ってもここは一旦飲み込んでくれ!(フユニャン風)
呪霊と妖怪。
その違いとは一体何なのだろうか。
『本質的には両者同じであり、誕生した時から備わっている意識の違いが我々を分けている。そしてそれは人間に対する態度でより顕著となることだろう』。
このように提唱した当時の閻魔大王から、それは疑う余地のないものとして妖怪達の間の共通認識となっていた。
呪霊とは妖怪の優しさを持って生まれてこなかった憐れむべき存在、妖怪とは呪霊の残虐性を持って生まれてこなかった喜ぶべき存在。
そのような考えが奥底にあったからこそ、妖怪は自分と同じ存在であるにもかかわらず人間を襲う呪霊を、悲しき存在だとは思いつつも許せなかったのだろう。それは『人間を襲う呪霊を生んでしまった』と思う妖怪の、ある種の罪滅ぼしのようなものだったのかもしれない。
何はともあれ、そうして呪霊と妖怪はお互いに争い合うことで歴史を紡いできたのだった。
しかし、その共通認識は"半分正解"で、"半分不正解"であると分かったのは……つい最近のことであった。
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「ぬらり、下がっていろ」「御意」
「領域展開『無量空処』」
自分の生徒達が領域内に入らないよう一瞬でエンマとの距離を詰めた五条は、自分の生得領域を空中で現実世界へと顕現させる。
五条の領域には、領域内に入った者に無限回の知覚と伝達を強制する術式効果が必中効果として付与されている。
領域展開とは、呪術師が基本的に持っている術式の最終奥義、必殺技のことである。五条の領域展開はまさに「必中必殺」を体現していた。
エンマの命令を聞き、真っ先に安全地帯へと退避した後真っ黒い球体の中へと姿を消した五条とエンマを見ていたぬらりひょん。普通であれば、この時点で誰もが五条の勝ちを確信することだろう。
しかし、ぬらりひょんは絶望するどころか顔に笑みを浮かべていた。
そう、ぬらりひょんは知っていたのだ。
「……それでは私は彼らの相手をすればいい、ということですね」
ぬらりひょんは、遠くの校舎からこちらを唖然としながら見ている生徒達をゆっくりと見ながらそう呟く。
そしてそんな五条の領域の中にて。
「突然高専を襲いに来て、君何者?」
「エンマ大王。妖怪の頂点に立つ妖怪だ」
「ふーん。ま、そんなことは別にどーでもいいんだけどさ。前々からずーっとおかしいと思ってたんだ。
でもやっと分かった。どうやらお前達妖怪は、呪霊が呪力で生きているのと同じように何かしらの力で体を構成して存在してる。そしてその力は呪力とは相反するもの……違うか?」
「……"妖力"。俺達はそう呼んでいる。そうだな……呪術界で言うところの反転術式、それに用いる正の呪力が高性能になり成長可能となった……と捉えてもらって構わない」
(……術式の開示のように妖力の底上げするつもりか?)
領域の必中効果がエンマを襲っているはずにも関わらず、エンマはまるでそんなものが初めからなかったかのように次々と妖力についての説明を続ける。
しかし五条はその説明を聴きながら、エンマの周りにある呪力だけが不自然にエンマに吸収されていることを見抜いていた。
そもそも呪力というものは負の感情から生まれたものであり、呪力自体、負の力と言うことが出来る。そしてその負の力である呪力を掛け合わせることで生まれるものこそが、正の力を持つ正の呪力、反転術式なのだ。とエンマは淡々と話す。
「ではもし呪力のように、正の感情から生まれる力があればそれは正の呪力と全く同じものだと、お前は思うか?」
「……あえて言わせてもらうなら、NOだね」
「そうだ。俺達が使う妖力は負の感情以外から生まれた力であり、それは正の呪力と同じようで全く違う。あくまで正の呪力は"呪力"に過ぎない」
「でも君の言葉が正しいなら、妖力を扱う人間がいても良さそうだけど?」
「……あぁ。お前の言う通り、確かにこの世界に妖力を扱える人間自体は何度も誕生している。ただ、その者は全てにおいて
「…………」
「妖力とはその力を使い理解度を深めれば深めるほどより強くなっていく。それは裏を返せば、妖力を全く使わなかったりその力を持っていることを自覚していなければ、それは元々存在しないと同じように弱いということになる。
そしてそんな風前の灯火に等しい優しい力は、当然負の力に吸収されてしまう」
「………………」
「嫌悪、嫉妬、憤怒、孤独、恐怖……。いつの時代でも、様々の感情が負の感情に勝つことはなかった。
だが! 俺達妖怪はそんな負の感情の集まりでしかない呪力を凌駕する力を持った、正の感情の妖力を使える。つまり……」
「俺はお前に勝つ、ってことだ」
「やっと長ったらしい話終わった? こっちが無量空処食らったみたいだったよ」
────────
五条は無下限呪術を使い、まるで瞬間移動でもしたかのようにエンマの背後へと回った後、呪力で最大限強化した拳に術式順転『蒼』の吸い込む反応を纏わせて打撃を与えようとする。
次の瞬間、確かに渾身の打撃は背中にヒットする。だがエンマに近づいた瞬間、五条の身体中に巡っていた呪力は突然その活動を停止させていたのだ。
呪力による強化が消えたことはおろか『蒼』すらも消されてしまったことにより、ろくにダメージも与えられずただ隙を晒す結果となってしまった。
エンマはその隙を見逃さず、妖気を纏って強化された状態で引き抜いた剣……エンマブレードを後ろに一突きさせて斬りあげ、カウンターを見事に決める。
だが同時に五条はそれを土壇場で防ぐことに成功する。『正の呪力を流し込んだ落花の情』でカウンターのダメージを最小限に抑えることが出来たのだ。
(まさかとは思ったが呪力の中和ではなく吸収をしてくるとは……)
(俺の開示を聞いてからのこの僅かな時間で、新しい応用方法を会得するなんてな)
五条はエンマから開示された情報、六眼から見えること、そして今実際に試してみて分かったこと、そこから推測できることを一瞬でまとめる。
・壱、妖力は反転術式のような、呪力の中和に留まらず呪力そのものを吸収可能、また呪力を流し込んで発動する術式の中和と領域展開中の必中効果も無効化など、呪力に関するありとあらゆる操作を蔑ろにできる。
・弐、妖力は呪力のような身体強化、恐らく術式も発動可能。
・参、反転術式を使った攻撃・防御、術式なら通じる。
そしてそこから導き出される最適解。
「術式反転『赫』」「【覇王閻魔玉】」
超至近距離で『赫』を放つ五条。しかしその手が来ることを読んでいたエンマは自身にとりつきでバフを掛けた状態で後退、すかさず手のひらに妖力を集めてそれを『赫』と衝突させることにより、お互いの攻撃を打ち消して爆発が発生させ、煙で視認を阻害させる。
五条は視界をクリアにするため、煙の中から抜け出し辺りを呪力でサーチする。
(六眼でも妖力は見抜けない……だけど)
「バレバレだよ」
背後から迫るほんの微かな呪力にいち早く反応し、素早く攻撃を避けようと移動する五条。
だがしかし、移動した先には既にエンマがいたのだ。
(さっきの呪力はブラフ!)
「【覇王閻魔だっ】!!?」
「さっきの『赫』はまだ炸裂してねえよ」
五条が移動した先は爆発が発生したばかりの場所。そこにはまだ炸裂前の『赫』が残っていた。
エンマが放った【覇王閻魔玉】は『赫』の周りを薄く覆う、『落花の情(反転術式)』の応用をした結界に当たっていたのだ。
わざと相手の誘いに乗って『赫』の一撃を食らわせることにより、術式効果に大きく吹っ飛び完全に隙が生じたエンマに、『落花の情(反転術式)』を纏ったまま今度は術式反転『赫』の拳を入れることに成功する。
(いける!)
「残念、俺の方が一枚上手だ」
さっきの『蒼』の打撃とは違い確かにエンマにダメージは入る。だが、『赫』の効果である発散が全く発動していなかった。五条の拳は、エンマのみぞおちに在るままだったのだ。
体の力がどんどんと抜けていく感覚を受け、五条は無下限呪術を使って瞬間移動しようとするが何故かできない。
エンマを蹴り飛ばすことによって距離を取る五条だったが、それと同時に突然、領域が崩壊する。
(無下限呪術が使えない……妖力は領域展開している相手に対して、必中効果を無視するだけじゃなく妖力を相手に流し込むことによって術式をオーバーヒート、強制的に焼き切らせることが出来るってわけか)
(領域を破壊できた……あとは妖力を流し込んで呪力を吸収するだけだな)
エンマは一時的に領域展延を使って『赫』の発散効果を中和することで確実に五条に触れられるようにする。
そして、呪力を体に触れている五条の右腕から流し込むことにより絶妙なバランスを保って成り立っていた『落花の情(反転術式)』を破壊、その後に妖力を流し込むことにより術式自体をオーバーヒートさせたのだ。
領域が破壊され高専の状況を確認できるようになった五条は、ぬらりひょんと自分以外の七海や生徒達が戦闘を繰り広げていることを瞬時に認識する。
「随分と余裕そうだな」
理想としては五条の体のどこかに触れて妖力を5秒以上流し込むこと。しかし現状の五条の様子を見るに、戦闘中にそんな時間は無いと判断するエンマ。
考えた結果、無下限を使えない今こそ一刻でも早く動けなくするように、と剣を取り出し斬りかかることに。
「【地獄のエンマブレード】」
(もう呪力操作すらまともに出来なくなっちまってるな)
エンマの繰り出した『煉獄の術』が五条を焼き付くし、炎を纏わせた刀身が五条を切り刻む。
しかし彼は不意に、まるで左腰にある鞘から刀を取り出すようなポーズを取る。すると、辺りに燃え盛っていた炎は忽然と姿を消していく。
(六眼持ちとはいえ、妖力が流れた影響で正常に呪力操作が出来ないにも関わらず簡易領域を使うとは……)
五条は瞬間的に『領域内では術式を行使できない』という条件を組み込んだ簡易領域を構築していた。
さらに、五条が己の切り刻んだ傷を治癒していること、身体中が再び正の呪力に覆われていることにエンマは気づく。
"簡易領域"と"反転術式"、そして"落花の情(反転術式)"の同時運転。
普通の術師ができるはずもないことを、よりによって妖力で弱っている状態で再現していることにエンマはただただ驚いていた。
(しかし状況としては依然優勢、相手に決定打がないなら勝てるのはこっちだ)
「【地獄のエンマブレード】」
「…………」
斬撃、治癒。斬撃、治癒。何度もエンマの剣が五条の体を切り刻み、そしてそれと同じ回数五条は回復する。
だがこれを繰り返せば次第に呪力が底を尽き、負けることになるというのは五条は百も承知だった。
そして大きく博打に出ることとなる。
(反転術式での治癒をやめた……?)
こんな重要なタイミングで意味もなく反転術式による治癒を止めるはずないと訝しむエンマ。
しかし突然の予測していなかった、いやするはずがないと勝手に除外していた可能性の行動を取った理由を、エンマが瞬時に推測できるはずもなく。
「術式反転『赫』」「!?」
文字通りエンマの目の前に瞬間移動をして現れ、超至近距離の『赫』を今度こそ決める五条。
(この短時間でどうやって術式を修復したと言うんだ……?)
あまりに予想外の行動に、行動が後手に回ってしまうエンマ。しかし五条はそんなことお構い無しにガンガンと攻めてくる。
「術式順転『蒼』」
(さっき『赫』のように結界術で包み込まれている……)
吹っ飛ばされてすぐの思考が回らない状態のエンマに対して、術式を行使する五条。
だがその結界を、エンマは再度使えるようになった術式を使っていとも簡単に破壊する。
そして呪力を使っている『蒼』を自分の術式で吸収しようとするエンマだったが、その前に背後から攻めてきた五条の応戦を始める。
「術式反転『赫』」「【覇王閻魔玉】」
『蒼』と一緒にエンマを挟む形で、またしても放たれる『赫』と、打ち消すように【覇王閻魔玉】を放つ両者。
しかし『赫』にも付与されていた結界により【覇王閻魔玉】は消失、それと同時に己を包んでいた結界も崩壊したむき出しの『赫』がエンマに迫る。
だが【覇王閻魔玉】と結界の衝突によりわずかな時間ができたエンマは迫る『赫』を回避し、『蒼』を消そうとしている隙をついてきた五条もろとも術式を使って破壊、ダメージを与える。……そのはずだった。
「"位相" "波羅蜜" "光の柱"」
突然『蒼』がエンマの放った『煉獄の術』の術式範囲外へと移動する。
呪詞の後追い詠唱により出力を引き上げる『赫』。その発散効果は『蒼』にまで届いていた。
『赫』の進む速度と比べればその移動した距離は僅かだったが、術式範囲を抜けるには十分であった。
ここにきて妖力の呪力吸収効果による、術式の中和が裏目に出る。
「"位相" "黄昏" "智慧の瞳"」
次期妖魔界の王として育てられてきた彼は呪術界のことや、無下限呪術についても良く教えられてきていた。もちろん五条家でもごく一部しか知らない"あの技"のことも。
だからこそ、順転と反転の術式を衝突させることは、何としても避けたいことであった。
再度術式を使って『蒼』の破壊を試みるエンマ。
しかし今度は『蒼』の呪詞詠唱によって収束効果が増幅、焼け焦げながらも反転術式で治療している五条自身が、ありえない速さでエンマと『蒼』の間に割って入り、見事な『赫』を纏った打撃を打ち込み術式を使用をキャンセルさせる。
(くそっ、また遠くに飛ばされた! だがまだ術式で『蒼』を遠くからでも消せる! ……)
「領域展開『無量空処』」
基本的に、妖力は呪力に対して様々な点において強い。つまり、妖怪は呪霊や呪術師に対してはめっぽう強いと言える。
だがそれは呪霊や呪術師が展開した領域内では別であり、領域内では妖怪は術式の行使が不可能となる。
それは、いくら妖怪の頂点に立つエンマにも覆すことの出来ないことであった。
そして、五条はそれを見抜いていたのだった。
(……今から『蒼』の近くに行って素の妖力で消すことは距離的に不可能……)
領域展延を使えば、エンマは打撃による発散効果を無効にできた。だが術式を使って『蒼』を消せると高を括り、領域が展開されても大丈夫なように近づいて吸収もできるようにする、という択を自らの手で消してしまった。
「"九綱" "偏光" "烏と声明" "表裏の狭間"」
もう何も手を打てないエンマに聞こえるのは、ゆっくりと噛み締めるように詠唱される"
完全詠唱、指向を絞らずに自身を巻き込む形となった無制限の技。
これって…
ああ 五条の勝ちだ(超絶ウルトラ特大死亡フラグ)
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