一言で言ってしまおう。雑魚的にすら殺される。およそ三回きればまず死ぬ敵に倒される俺は一体……。
ナルトの出産を後一月程度に控えた今日この頃、オビトは火影の執務室にいた。
「はい、オビト。これがお見合い写真ね」
手渡された写真を見て、オビトは必死に考える。一体誰の見合い写真だろうと。
「あー。カカシの」
「カカシはリンとくっつけたんでしょう?媚薬の件で僕がどれだけクシナに怒られたと思ってるの」
「はいはい、ダンゾウの」
「ダンゾウはちょっと年が行き過ぎてるね。というか、彼、未だに見合い写真とか送られてくるの?」
「なるほど、なるほど。イタチの」
「いやいやお見合いするには、まだ若いでしょ」
「……」
「……」
無言のまま牽制しあう二人、ミナトとしてはここで逃がすわけには行かない。正直、これは政略結婚の面がある。しかし、オビトの言い分はこうだ。風の国とは、win-winの関係であり、同盟も十分強固なものだ。不必要に手を入れることはないだろう。しかも、暗部の長が結婚って必要か?と。
なぜ、風の国が出たかといえば、そのお見合い写真に写る女性の特徴がどうにも、風影の妻に似ているからだ。おそらくだが、親族なのだろう。色白でなかなかの美人なのはオビトとしても認めざるをえないが、一夜の関係ならともかく、結婚まで行くと二の足を踏まざるを得ない。
「は!まさか、こいつは男でアンコにか!?」
「違う…」
そうオビトの発想を否定すると、ミナトは今にも使徒か。と呟きそうなポーズをとる。
「オビト、この見合い話は君にだ。正直、この話は多少強引でも通したい。向こうから持ってきた話ではあるが…。こちらとしてもメリットは巨大だ」
同盟関係を強固にするのは、こちらにとってもメリットだが、砂からすればなおさらだろう。今現在において、大陸最強の里は間違いなく木の葉であり、その軍事力は二カ国相手どれるほどである。しかし、ミナトがいう所の巨大なメリットはおそらくだが、別物だ。一体何かまでは分からないが。
「とにかく! 考えておいてくれ」
ミナトはそういって話を締め切った。
部屋を退室して、帳の本部へと向かうオビトだったが、途中、雀が窓をつつき、その存在を強調する。オビトの記憶が正しければ、クシナさんがお呼びのようだ。
オビトは急ぎ、カカシがついているクシナの下へと飛ぶ。
「すまん、呼ばれたんだが」
「ああ、クシナさんから聞いている」
カカシはボディチェックもせずにオビトを通す。しかし、これは当然のことである。そもそも、神威をもつオビトにそのようなことは無意味だ。
中には当然、クシナが一人いるだけだ。出産まで後一月程度。おなかも膨らんでいる。
だが、オビトがそれ以上に気になるのはニコニコと笑っている顔だ。あれは恐ろしいことを考えているに違いないと、オビトは気を引き締める。
「お久しぶりです、クシナさん。体調のほうはいかがでしょうか。うずまき一族とはいえ、出産は体力を使いますからね。九尾の封印も含めて体調は万全にしておくよう心がけてください。ああ、そうそう、ついこの間カカシとリンが恋人になったらしいですよ。まったくもってめでたいことですね。一月ほどで、お子さんも生まれるようですし、火影さまにとっては厄年ならね福年ですね。いやはや、木の葉の未来も安泰ですね。おっと、もうこんな時間だ。このあたりで失礼させていただきます」
クシナにしゃべる切欠を与えずに、オビトは部屋を退室しようとする。……が、しかし、扉が開かない。
「オビトなら、話も聞かずに退室しようとするから、ってカカシが気を利かせて、開かないようにしてくれてるの」
「なん……だと」
まさか、カカシに行動を予測されていたとは。しかし、つまりそれは、カカシはクシナの用事の内容をしっていて、なおかつ、それは俺が逃げ出すようなことであるというわけになる。はっきり言って、やばいことさせられる。クシナが頼ってくる場合は、いや、というよりもミナトではなくオビトを頼るということは。
「実はね。風影様の奥さんも人柱力らしくて、しかも!今妊娠してるんだって。あってみたいんだけど、なんとかできる?」
当然、国内ではなく国外の用事ということになる。オビトの答えは当然決まっている。
「できなくはないですが、色々面倒だし、危険もありますよ。こちらから話を持っていく以上、クシナさんが行かないといけないですし。どちらにせよ、計画を立てて火影様のところに持っていく必要がありますね」
断らない。断りたいという気持ちがオビトの中にないわけではないが、もし、クシナとカアラの仲を取り持つことができたなら、それだけでもある種の同盟関係の強化に繋がるからだ。木の葉のメリットになる話をオビトは断れない。
では、なぜ自身の結婚には二の足を踏むのか。それは、オビトとの結婚という切り札を別のところでも使えるからだ。例えば、敵対関係である大国などである。故に、オビトはこのタイミングで札を切ることをよくは思っていなかった。
機を見間違えれば効力を失ってしまうかもしれないが、少なくとも、手元においておいて損はない。
誠意が一番良い戦術だとか、正直が相手を口説くのに一番だとか。それが通らない状況を生まないようにするのが腕の見せ所だとか。
どこで知ったかも忘れてしまったが、諸外国との外交を司る立場になってからは常に、これを意識して動くようにしていた。
一先ずは、シカクにプランを練らせるか、とオビトは帳へと飛んだ。
誠意こそ最高の戦略、正直こそ最強の戦術。それが通らぬ状況を生まぬが真の策士
本当にどこで知ったのかを忘れてしまった。何かのドラマの台詞かな・・・。