"おい衛宮、道場の掃除しておけよ"
ーーなんだ、こいつは
"お前がわるいんだよ!"
ーーまるで子供だね。幼稚過ぎて見てられないよ
"これが、僕の力だ!いけ、ライダー!"
ーー借り物の力で浮かれるなんて、本当に格好悪い
ーーあれが僕だって?冗談はよしてくれよ
ーー……本当に言ってるのか?
ーーわかったよ。認めてやるよ。あれも僕だって
ーー何?僕だったらこういう時どうするかだって?決まってるじゃないか
「僕は、僕自身が生きた証を残す」
◇
目を覚ませば見知らぬ天井だった。
僕は確かたった一人の友人であるあいつを助けるために、チート女と対峙して、弱体化させ消えたはずだった
自分の意識が途切れる瞬間に何か声が聞こえたような記憶がある。その時に成長した自分にそっくりな
顔の男がださい事をしている夢を見ていたような気がする
ふと、自分の手に視線を向ける。
見覚えのある小さな手。ゲームのアバターである高校生の身体ではない、現実の僕自身の手。
なんて弱々しいんだろうか。こんな手では何もできはしないと錯覚してしまうほどの頼りない手…
どうやら、僕は死ななかったようだ。結局は虚仮威しだったか。やっぱりあんな簡単に人が死んじゃうのは問題があるに決まっている。大方、僕達を本気にさせるだけの嘘だったのだろう
身体を起こす。長い眠りに付いていた筈だから、上手く動かせないと言う事も覚悟して起き上がったのだが、普通に動いた
高校生の身体に慣れていたというギャップは感じたが、特に筋肉が固まっているなどの障害もなく身体を起こすことが出来た。
もしかして、そんなに長い間眠っていたわけではないのかもしれない。
日付を確認するために部屋を見渡すが、おかしな点に気付く。
見覚えがないのだ。現実の僕の部屋とは作りからして違う。どちらかというと、夢でみた"あの僕”の……
そこで気付く。あの声はなんと言っていた?
"お前だったらどうする?"
これじゃあない。確かこの後、僕が生きた証を残すと言った後…
"なら、やってみろ"
ああ、なるほど。どうやら僕は"あの僕"になったようだ。
不思議と混乱はしていない。あるがままに受け止めている自分がいる。
そう自覚してから気付く、"自分に流れる物"
まさか、これは魔術回路?あの僕には無かった筈だが……
なんだ。根本的に僕は"あの僕"とは違うじゃないか。やっぱり天才である僕は自分自身といえど格が違うんだろうね。
そこまで考えて、何か違和感を感じる。この僕の部屋を取り囲むようにいる物に対する嫌悪感
ああ、これがあの祖父の蟲か。邪魔だなぁ、はっきり言って気持ちが悪い。
まったく、僕のキャラじゃあ無いんだけどね。この世界の僕になったからには妥協はしない。
こんなもの、少し現実味のあるゲームみたいなものだろう?