慎二くん転生する 強くてニューゲーム   作:茶ゴス

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教会

現在僕は衛宮の家の居間の机に肩肘を付けて険悪な様子の遠坂とそのサーヴァント、衛宮のサーヴァントを眺めていた。僕のサーヴァントはどうしたって?霊体化してるよ

 

台所へ目を向けると、衛宮が何かを作っている。あいつ今日殺されたんだろ?鈍いんだか肝が座ってるのかわからない奴だな。

 

視線を再度険悪な方へ向ける

。まあ、確かに聖杯戦争でマスター同士が仲良くってのは出来ないだろうけどさ。もう少し柔軟に出来ないのか?

 

 

仕方がないから口を挟むか

 

 

「ああ、遠坂。一ついいかな?」

 

「……なによ」

 

 

いつもの優等生の皮を脱ぎ捨てているのか、不機嫌な様子を隠すまでもなくこちらを睨んでくる。

イラつくけど我慢だ。幼稚な奴にいちいち腹を立ててたら身が持たない

 

 

「お前さ、自分が何やったかわかってんの?」

 

「……何のことかしら?」

 

 

苛ついてるためか少し刺のある口調になっちゃったけど、及第点だよね。まあ、続けるか

 

 

「聖杯戦争での一般人を巻き込んだ挙句敵サーヴァントに殺される。」

 

「……わかってるわよ、そんなこと」

 

「いいや、わかってないね。お前さ、冬木市を治める遠坂家の人間だろ?それなのに冬木市民守れてないじゃないか。他の奴だったらまだしもさ、お前は絶対に守らなきゃいけなかったんだよ」

 

 

僕の言葉に萎縮していく遠坂、遠坂のサーヴァントは無表情だが衛宮のサーヴァントは何を思っているのか僕の言葉に耳を傾けてるようだ

 

 

「僕だってさ、流石に全員を守れとは言わないよ。出来ないだろうしね。でもさ、目の前の奴くらいは守れよ。お前だったらそれくらいの技量はあって然るべきだ」

 

 

言いたくはないけど遠坂は間違いなく魔術の天才だ。僕に匹敵すると言ってもいい。

でも、それでもだ。これだけは言っておかないといけないんだよね

 

 

「うっかりも大概にしておけよ」

 

「……わかってる…いいえ、わかったわ。うっかりなんて優雅じゃないものね」

 

 

【常に優雅たれ】だったか、遠坂の家訓は

 

まったく、優雅に生きたいのならもっと先のことまで読むべきだよ。とはいえ…

 

 

「わかったのなら僕からお前に言うことはない。じゃあ次、衛宮のセイバー」

 

「……さっきは驚きのほうが大きかったから聞けなかったけど、どうして2人もセイバーがいるのか説明してもらうわよ?」

 

「いちいち口はさむなよ…まああれだね、僕にわかることはないってのが正しいかな」

 

「……」

 

 

文句はないようだ。普通に考えたら絶対にわからないから仕方ないっちゃあ仕方ない

 

 

「で、話を戻すけど。セイバー」

 

「……なんですか」

 

「仮にもマスターの恩人にそこまで警戒するのは失礼だと思うんだけど」

 

「それは…そうですが」

 

「まあ、仕方ないか。で、お前は何がしたいわけ?」

 

 

率直に疑問を聞く。こいつは典型的に戦争に勝つことに重みをおいているサーヴァントのようだ。

 

マスターの事を考えてるならこんな行動には出ないだろうしね

 

 

「……敵であるマスターへの警戒ですよ」

 

「それが非合理的なんだって」

 

「……どうしてですか?」

 

「まず最初に、衛宮は聖杯戦争の事をよく知らない」

 

 

指を1本立てる。台所の方で衛宮の声が聞こえた気がしたけどとりあえず無視しておく

 

 

「次に、遠坂達の敵意は薄い」

 

 

流石に無いとは言えないけどさ。比較的友好的ではあると言える

 

セイバーもそれはわかっているのか顎に手を添えて思考している。

考えなしではないのは良かったよ

 

 

「で、最後。衛宮は弱い」

 

 

これが一番の理由だね。衛宮の魔術は随分と歪で戦力としては考えない方が良さそうだ

 

立っている3つの指越しから衛宮のセイバーはこちらを見る。後ろで衛宮が両腕両膝ついてる気配がするけど気のせいだろ

 

 

「つまり…同盟を組めと?」

 

「そこまでは言ってないさ。まあ、取り敢えずは聖杯戦争について教えてくれる奴のとこまで一緒に行ったらいいだろ。」

 

 

詳細を聞くことで心構えも変わるだろうし、参加したくないのなら教会で保護される事も可能だ。マスターの事を考えるのなら、いい策だとは思うけど

 

 

「……私としては、不満ですが……」

 

 

勝利に固執してるのか、こういう輩は少し崩したらあっという間にやられるから、僕としてはラッキーなんだけどさ

 

今回だけは衛宮の事優先してやるか

 

 

「衛宮はどうする?どうせ遠坂の事だから、お前を教会に連れて行くと考えてるだろうけど」

 

「どうせって何よ、どうせって」

 

 

図星だろうに…まあいいや。未だに項垂れている衛宮の横腹をつついて意思を確認する

 

 

「くすぐったいぞ、慎二」

 

「早く言わないと蹴るよ」

 

「酷くないか!?」

 

 

思わず溢してしまった言葉に、慌てたように後ずさる衛宮。冗談で蹴るモーションに入ると、衛宮のサーヴァントから殺気を感じたため、構えを解いた

 

 

「で、どうする?」

 

「俺としては遠坂について行く方がいいと思う。俺はいまいちわかってないから、知っておかないといけない気がするんだ」

 

 

気がするじゃなくて、その通りなんだけどさ。

 

立ち上がった衛宮の横に立ち、遠坂へと視線を向ける

 

 

「というわけで、今からここにいるメンバーで教会に向かうんだけど、何か質問はある?」

 

「少しいいかしら?」

 

「なんだい?遠坂」

 

「実はさっき、この家に来る前にアーチャーが、2体のサーヴァントと1体の正体不明の気配を感じ取ったらしいんだけど…慎二、あんたわかる?」

 

「そんなもの僕は知らないよ。」

 

「……わかったわ」

 

「次は私から質問いいかな?」

 

 

いや、遠慮したいんだけど…遠坂のサーヴァントから聞かれることなんてろくな事じゃ無さそうだし

まあ、ここで断るのは無理か

 

 

「君のサーヴァントの姿を私も確認できないのだが、どういう事だ?」

 

「おいそれと敵に手札をみせるわけ無いじゃないか」

 

「……把握した。」

 

 

そう言い、遠坂の後ろに控えたアーチャーを確認した後、衛宮たちの方へ視線を向けるが、特に聞くことはないらしい

 

 

「じゃあ、行こうか。」

 

 

 

 

 

 

 

出る直前、セイバーが霊体化出来ないという異常があったが、合羽を被るという起点でなんとか教会に辿り着いた。

夜遅くに高校生の男女3人に雨合羽を来た不審者1人……傍から見たら怪しいだろうな。

 

そう思いながら教会の扉を開く。

 

 

中には誰も居ないようで、遠くに聞こえるモーター音から、AU王がまた車の映像を見ていることがわかる。

 

遠坂にはテレビの音が聞こえていないようで、何の疑問も持たずにずかずかと教会内へ入っていく

 

 

「綺礼いる?」

 

 

少し大きめの声を出す遠坂。ここでやっと気配を感じ、こちらを見ているのがわかった

 

 

「いないわね?じゃあ帰りましょ」

 

 

どうやら遠坂はここにはいたくないらしく、すぐにこちらへ歩いてきた

 

いや、言峰綺礼に会いたくないようだ

 

 

だけど、もういるんだよなぁ

 

 

「そちらから呼び出しておいて出ていこうとするとは」

 

「あら、いたのね。綺礼」

 

 

暗闇から姿を表す神父。どこのホラー番組だよと内心思いながら、僕は近付いていく

 

 

「ふむ、お前も一緒だったか。ここで一つ占いのようなことを言ってやろう」

 

「なんかすごい嫌な予感がするから、言わなくていいよ。」

 

 

多分手遅れだな。あの顔はよくAU王も浮かべる笑みだ。

 

愉悦笑いはほんとどうにかしろよな

 

 

「先程、顧問が興奮しておったのでな。恐らくは拉致されるであろう」

 

「言わなくていいっていったんだけど!?それに占いじゃないよね!?それ!?」

 

 

今度はいったい何をするつもりなのだろうか。AU王の相手は精神的にも肉体的にもつかれるんだよ

 

 

 

「??いったい何の話?」

 

「……遠坂には関係ない話だよ」

 

「確かにそうだけど、その言い方は腹が立つわね」

 

「そうおっかない顔はしないでくれよ。怖いからさ。あと僕も聖杯戦争に参加するよ。」

 

「了解した。今夜全てのサーヴァントが揃い聖杯戦争が開始されるのはわかっているだろうな?」

 

「もちろん。」

 

 

そう言い、その場を後にする。

 

この後待ってるであろう面倒事に肩を落としつつ外へ向かう

 

 

暫くは一人でゆっくりしたい

 

戦争に参加する事となった衛宮達にすれ違いざま同情の視線をむけるが、わからなかったらしい。2人共首をかしげていた

 

 

まあ、いいんだけどね


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