教会の外にあるベンチに座って衛宮達が出てくるのを待つ。
肌寒い空気にもう少し厚着の方が良かったと感じながら隣を見る。
そこには僕のサーヴァントが座っている。今回の事で色々とわかったことがある。
僕のサーヴァントは冬木の聖杯のサーヴァントではないと言うことは薄々感じていた。恐らくはムーンセルとなんらかの関わりがある僕にムーンセルのサーヴァントが召喚されたのだろう。まあ、思いもしなかったやつだけど……
アーチャーの反応を見るに、僕のサーヴァントは霊体化していると冬木市のサーヴァントに気取られないようだ。まあ、多分気配とかは感じるとは思うんだけどね。
それでもこのアドバンテージは大きい。普通ならサーヴァント同士は霊体化していても認識出来る。だがその前提条件が覆ったらどうなる?奇襲を行ったりするのにとても便利だろう。
まあ、それは僕にも言えることだけど。恐らく霊体化している冬木市のサーヴァントを僕のサーヴァントは認識できない。極力桜と離れないほうが良さそうだな。
桜のライダーならそういった奇襲に対処することは可能だろう。されるとなるとアサシンくらいじゃないと……まあ、それでもコードキャストでどうにか出来るんだけど
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「ん?僕のキャラが違うって?何言ってんのさ。あの時の僕は8歳だったんだ、そりゃあ成長くらいするさ」
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「まあ、お前たちと会ってなかったら傲慢でどうしようもない奴だったろうけどね。」
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「何笑ってるんだよ……」
視線を空へ向ける。真っ暗な空に少しだけ星が見える。街の灯のせいで見える数は少ないけど……
そういえば桜に連絡してなかったと思い出し、携帯を取り出してコールする
『……もしもし』
ワンコール目で出た。というよりも、声からして怒っているようだ。連絡遅れた事に腹を立てているのか……
「ああ、桜。今日はちょっと帰れそうにないからさ、夕飯は冷蔵庫にでも入れておいてくれないか?明日の朝にでも食べるからさ」
『…それは、いいんですけど…理由とか教えて貰えませんよね…』
ああ、心配してたのか…まあ仕方ないか、学校の近所で殺人事件が発生してるし、連絡もなく帰ってこなければ誰でも心配するか。
相変わらず甘いやつだなと思いながらも、理由を話してやる。別に話してはいけない内容ではないからな。
衛宮がサーヴァントに襲われたこと
衛宮がサーヴァントを召喚したこと
衛宮と遠坂と一緒に教会にいること
要点をあげるとこの3つだが、随分と濃い内容だ。
事実、桜も驚いてるし
「それでさ、衛宮の家に上がる時にお前と喧嘩したって言っちゃってさ。そこのところよろしく」
『はぁ…わかりました。これからは早めに連絡を頼みますよ?兄さん』
「わかってるさ」
そう言い、電話を切って閉じた。
そのタイミングで教会のドアが開く音がした。視線を向けると遠坂がこちらへ向かってきている。
凛とした佇まいで僕の目の前まで来ると、こちらを一瞥してその口を開いた
「一応あんたにも言っておくわ。今夜やっとサーヴァントが7騎揃ったから聖杯戦争が開始されたわ」
「ご丁寧にどうも。それでどうするんだい?今から一戦やるつもり?」
僕の言葉に遠坂は少し不満気な顔をし睨んできた。
おいおい、本当にやるつもりなのか?まあ、構わないけど
今の状況で有利なのはこちらだ。向こうは殆ど情報を仕入れていない状態で、こちらは相手の手の内を深い所まで知っている。
月の聖杯戦争での僕と相手の状況をそのままひっくり返した状態だ。
違うのは、マスターの力量に差が無いことくらい。
その状況で敗れたのは能力的には勝っていた僕
それだけ情報ってのは重要だ
「…….今はやめておくわ」
「そうかい」
少しは考える事が出来るようだ。まあ、流石にこちらが遠坂のサーヴァントについて知っているとは思ってもないだろうけど
遠坂は僕と少し間をあけてベンチに座った。少し苛ついてるように頬杖をついて教会のドアを睨んでいる。
その後ろには怪訝そうな顔でこちらを見るアーチャー
霊体化はしないのか?こちらが変な動きをした時に動けるようにしてるとか……
こっちのサーヴァントは霊体化してるってのに変な話だ。
「そう警戒するなよ、アーチャー。今は遠坂を攻撃するつもりはないから」
「……」
だんまりか。
ん?何か嫌な予感がする
「ほう?何やら複数人の気配を感じたから出てきてみれば、懐かしい顔ぶれだな」
普通に外に出てきていいの?英雄王。確か隠れてるはずだったよね?
「貴様は!!」
何やらアーチャーが驚いている。まさか英雄王のことを知っているのか?
ってか、ジャージ着てる英霊ってどうかと思う。
遠坂も突然のことに驚いてるし
「ふん、我に向かって何たる言い草。斬首ものだぞ。まあよい、今宵は気分が良いのでな。寛大なる我に感謝しろよ?」
「いきなり出てきてなによ!あんた!」
「凛、下がっていろ。こいつはサーヴァントだ!」
「うそ!?」
まあ、確かにこの姿はそうは見えないよね。どこかのヤンチャな青年って感じだし
「ふん、口うるさい女だ。そこらの犬っころの方がまだ可愛げがあるものよ。」
「なんですって!!」
本当に何しにきたんだよ。僕にはまったく考えもつかないことを考えてるというのはわかる。いつもいつも愉悦というものに振り回されるこっちの身にもなってくれよ…
「と、お前たちの相手をしている場合ではない。さて、行くぞシンジ」
「へ?」
「先程ハーレーが完成した。あのフォルム、よもやあそこまで甘美なものに仕上がるとは…玩具の域を超えて宝具と言っても過言ではない!」
「過言だよ!!っていうか何?そんなことで出てきたの?お前」
「そんなこととは何だ。喜べ貴様らに一番に見せてやるのだ。桜がいないのは少々残念だが、あいつが不幸なのはいつものことだ。悔しがるだろうさ」
絶対悔しがらないだろ。寧ろ変わってほしいんだけど!
「さあ、行くぞ!!」
「わ、離せって!」
担ぎあげられて改めてこいつが英霊だとわかる。こんな安々と人を持ち上げる奴が一般人にいるわけがない
遠坂達は担ぎあげられる僕を見て呆然とこっちを見ている。
見ていてないで助けてくれよ
ってか、お前も笑ってないで助けろよ!
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いや、確かに英雄王は楽しそうだけどさ!
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ああ、もう!!