『怖くて逃げたのは臆病だけど、情けないことじゃない。ちゃんと現実を見てた証拠だよ。』
はっ、言うじゃないか。あの時は情けない奴だとは思ったけど。少し見なおしたよ
『誰もおまえに期待してないんだから、どんな失敗をしてもいいじゃないか!うらやましいかぎりだよ!』
期待…か。やっぱり子供のお前には重かったのかねぇ
『僕はさ、記憶を残したかったんだよ。誰にも超えられない記録を。僕がいた証として』
……そう…か。あんたは残したかったんだね…私とは正反対だ
『僕、頭おかしくない?なんだってアイツらのためにここまでやるワケ?そんな借り、まったくないんですけど!』
そうだね。表での小物臭い悪役ではないね、今のアンタは。
悪者になりきれないわけだよ
『なにやる気になってんだよ。痛み止めとか飲みはじめてるし。僕ってこんな馬鹿だったのか?』
ああアンタは馬鹿だね。まあ、私はそんな馬鹿は嫌いじゃないけどねぇ
『自分が殺されるのと世界が殺されるの。どっちが怖いかなんて考えたコトもなかったし、考えたくもなかったけどーーーーーーどっちにしても終わるっていうなら……やっぱり、こっちの方が大切だよねぇ。』
本当にアンタに何があったんだい?まるで正義の味方のようじゃないか。どおりで悪になりきれないわけだよ
『はっ、そうだよ、その通りだよ!僕は子供で、ワガママで、他人のコトなんてどうでもいいさ!』
『僕だって弱者をいたぶるのは大好きだ。けど、アレは自分の実力あってのもので、借り物の性能とか白けるにもほどがある。』
『ほんとーーーーーーチート行為とか、虫唾が走るぐらいキモいんですけど!バーカバーカ!あとバーカ!』
確かに、アンタは私の宝具の性能を知っていたから反則行為を使えば1回戦程度勝ち抜けたかもねぇ。
それにしても、あんな連中を相手にそこまで啖呵切れるなんてね。随分とかっこいいじゃないか
『はは……リアルに体が消えていくのは、気持ち悪くて、吐きそうになる。もう、その機能もないワケ、だけど』
死ぬのは誰だって怖いだろうさ。表でのアンタも今のアンタも同じこと思ってただろうねぇ
でもさ、その気持ちってのは違うんじゃないかい?
『そうだよ、スゲーむかついてるよ。今でもおまえなんか嫌いだよ。』
『……でもさ、おまえ、泣いたじゃん。』
『そうだよ。あんな事でよかったんだ。』
『聖杯戦争で優勝する、なんて記録は残せなかったけどーーーーーーそれぐらいは、残ったんだなって。』
ああ、残ってるさ。アンタのやったこと、アンタ自身の事は残ったさ。
『おまえがここで消えたら、誰も、僕のために、泣かないじゃん?そう思ったら、仕方ないなあ、って』
『……本当に、怖くて、イヤだったけど。よく考えたら、リアルな、はじめてのトモダチ、だったし。』
自分勝手だからこそ、他人のために行動するってやつかい?魅せるじゃないか
『すごい記録じゃなくてーーーーーー僕のために泣いてくれたヤツがーーーーーー残って、くれるならーーーーーー』
『おまえがつまんないヤツでもーーーーーー思い出す、誰かをーーーーーー残さなくちゃっ、てーーーーーー』
『だからーーーーーー
だからーーーーーー』
「おまえには、残っていてーーーーーー」
アンタはこのまま消えていいのかい?
本当にアンタはそれで満足かい?
アンタがやりたいことなんでも言ってやりなよ。
それくらい強欲なくらいじゃないと私のマスターが務まるはずがないだろ?
ほら、行っておいで。私がなんとかしてやるからさ
安心しな。私を誰だと思っているんだい?
だから、こんどこそ……
ーー僕は、僕自身が生きた証を残す
「精一杯生きな、シンジ」
姐さん大好きです