へっぽこマスターが物申す(改)   作:剣聖龍

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へっぽこマスター対赤のジャンヌ・ダルク 後編

「この感覚……あのときと同じだねぇ……!」

 

 

 巨大化現象――ハイパー化を引き起こしたジェリルは、一捷を見つけると巨大化したオーラソードを振り抜く。

 

 

「うぁぁぁぁぁっ!?」

 

「次は……お前らぁっ!!」

 

「ぐっ、うぉぉぉぉっ!!」

 

 

 寸前でソードの軌道から外れるも、発生した突風、ジェリルのオーラによって、ダンバインは成す術なく飛ばされてしまう。

 

 返す巨大オーラソードがオルレアンの大地を切り裂く。ジャンヌ、マシュ、エミヤが各々のスキルと武器で防ごうとするも、圧倒的パワーとオーラ力によってサーヴァント全員が薙ぎ払われてしまった。

 

 

「フフフフ……敵が小さく見えるということは、私がサーヴァントにもダンバインにも、勝つということだ!!」

 

「くっ、そぉ……!」

 

『平沢君、ここは一度退くんだ! 敵の対象を考える必要がある!』

 

「……わかり、ました」

 

「逃げようってのかい。そうは……」

 

 

 巨大レプラカーンの方を向いたまま、一捷はバックの要領でダンバインを飛ばす。

 

 当然ジェリルは追いかけようとするが、ズズン、とその巨大が地面に膝をつく。

 

 

「ちぃ……魔力とオーラ力が、体に馴染んでないか……!」

 

 

 胸を押さえ苦しむレプラカーン。その隙にカルデアメンバーは全員離脱していき、ジェリルは下手に動かない方が良いと判断しその場に留まる。

 

 どちらにせよ戦うことにはなる。カルデアの目的は聖杯の回収なのだから。

 

 ジェリルは体に溢れる力をコントロールすることに専念。

 

 

「まぁいいさ。次に来たとき……一巻の終わりってやつにしてやるよ」

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

「……どう? アサシン、敵の様子は」

 

 

 ジェリルから十分に距離を取ったカルデアは、息を整え怪我の治療、水分補給などを行いながら、情報整理と対策を練っていた。

 

 偵察に向かわせた百貌のハサンの分身がエミヤと共に戻ってくる。

 

 少なくともレプラカーンとは10キロ近くは離れているが、巨大化した赤いオーラバトラーの姿は全員の目にはっきりと見えていた。

 

 

「今のところ、ジェリル・クチビに大きな動きはありません」

 

「その場からは動かずにいる。攻撃する様子はないが、全身の武器は全て修復されていたよ」

 

『こちらでも解析したけど、膨大な魔力と生命力が巨大なオーラバトラーから確認できる。あの姿全てが、膨大な力の塊なんだ。見た通りとてつもなく危険なんだけど』

 

『……平沢君、あの巨大化現象について、心当たりは? もしかして、前に言っていたことなの?』

 

 

 ロマニが通信越しに問うと、座って休んでいた一捷が立ち上がり、「……そうです」と頷いて説明を始めた。

 

 

「あの現象は……『ハイパー化』。操縦者の負の思いが高まり、オーラ力が増大してオーラマシンを巨大化させる現象です。正確に言うと、巨大化ではないんですが」

 

「どういうことですか?」

 

 

 尋ねたのは清姫だ。

 

 

「あれは機体を覆っているオーラのバリアがマシンの形を象って膨れ上がった状態。中には元のオーラバトラーがいます。強力になったバリアが相手を攻撃する同時に、攻撃は防ぐ……大きな風船の中に本体が入っている、とイメージしていただければ」

 

「成る程……。それじゃあ、あのデカい姿を突破すればいいって訳か」

 

「そういうことです。ですが、ハイパー化自体はオーラ力が暴走している状態です。発動すれば増えていくオーラ力に機体が耐えられなり……いずれ自滅します」

 

「じゃあ……別に無理して戦う必要はないんじゃないの。向こうが勝手にやられるってことでしょ?」

 

 

 城をも上回るサイズとなったレプラカーン。そのパワーが計り知れないものなのは、誰もが理解している。

 

 世界を救うために正々堂々という気持ちが一捷にないわけではなく、卑怯だとかズルいと思われるかもしれない。

 

 しかし時間切れを狙えるなら、正面からの戦いを避けるのも手だと一捷は考えたが、それはロマニとダ・ヴィンチによって止められることになる。

 

 

『すまない平沢君。考えは分かるんだけど、そうはいかないんだ』

 

「それは、どういう理由で?」

 

『敵オーラバトラーは聖杯を取り込んでいる。そのせいなのか、内包されたエネルギーが時間経過で上昇しているんだ。このままだとレプラカーンが自滅する同時に……そのエネルギーが周囲一帯に広がる』

 

 

 威力を計算した結果が通信モニターに映し出されると、全員が息を呑んだ。

 

 オルレアンを中心に、フランスに大穴が空くほどの威力。そうなれば甚大な被害が出て特異点の修復が失敗してしまう。

 

 何がなんでも、今すぐに、ハイパー化したジェリルを止める必要があった。

 

 

「平沢。ハイパー化というのを知っているのなら、何か弱点はないのか?

 

「……あります」

 

「あ、分かっちゃったわ! あのでっかい奴の中に本体があるんでしょ。なら真っ直ぐ飛んで行って、そいつを倒せば良いじゃない」

 

「おバカ。そんな単純な手の訳が……」

 

「いえ、その通りです」

 

「「!!!???」」

 

「清姫さんはともかくなんで言ったエリザベートさんも驚いてるのよ」

 

 

 偶然説明は済んだが、それは真っ正面からハイパー化のレプラカーン――ハイパーレプラカーンと戦わなければならないということだ。

 

 しかも巨大化したまま、空を飛んでいる。

 

 圧倒的破壊力を掻い潜り、強化されたオーラバリアを突破して、本体のジェリルに止めを刺す。

 

 現在の戦力でそれを行うとして、可能なのは、

 

 

「……まぁ、僕しかいないですよね」

 

『おい、大丈夫かよ坊主』

 

「空中のレプラカーンとバリアを突破するには、ダンバインが必要です。僕が奴の元まで飛ぶしかない」

 

 

 それの意味することは一つ。

 

 ……ジェリル・クチビの命を、奪わなければならないこと。

 

 

「……それならせめて、私も行きます! 先輩がバリアを突破して、最後の攻撃は私がやれば」

 

「ならば私も。守りには優れていますし、赤のジャンヌ・ダルクを止める役目は私にもあります」

 

「……申し訳ない。そう言ってくれるのはありがたいんだが、一人で飛ぶことはできても、誰かを乗せて高速飛行するのは流石にできない。辿り着く前に、落とされてしまう」

 

「けどそれでは、先輩が……」

 

「やるしかないでしょう。……この旅の何処かで、絶対起こるとは思っていました」

 

 

 例え誰かを傷つけ、犠牲にしたとしても、目的のために進まなければならない。

 

 悪しき行為だと理解し、それを忘れず、尚突き進む必要がある。

 

 歯を食いしばり、一捷は皆に向けて言う。

 

 

「僕が行きます。ジェリル・クチビを倒して、この特異点を修復する。皆さん、どうか力を貸してくれ」

 

「……分かった。ここまで来たら、後一歩よ。平沢、最後の詰めは任せるわね」

 

「はい」

 

 

 オルガマリーがまとめ、一捷が応える。サーヴァント達も各々思うことはありつつ、配置と作戦を聞く。

 

 十分後、カルデアメンバーは再びレプラカーンの元へ歩き出した。

 

 フランス最後の戦い。

 

 その火蓋が今……切って落とされる。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「……来たか、ヒラサワども」

 

 

 時間が経ったことで力にも慣れてきたジェリル。その目が接近してくる存在達を捉えた。

 

 地面を走るサーヴァント複数。やや後方に飛んでいるダンバイン。

 

 オーラソードを抜き、空高く振り上げる。

 

 

「さぁ、ここをアンタらの墓場にしてやるよぉっ!!」

 

 

 大上段、縦一閃。

 

 ダンバインを目標とし、大気を裂いてオーラソードが振るわれる。。

 

 

「聴くがいい! 魔の響きを! ――‘死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)’!」

 

「サーヴァント界最大のヒットナンバーを、聞かせてあげる! フィナーレよ! ――‘鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベト)’! La〜〜〜!」

 

「これより逃げた大嘘つきを退治します――‘転身火生三昧(てんしんかしょうざんまい)’!」

 

 

 宝具使用三連発。アマデウスが奏でる魔曲。チェイテ城を改造した巨大アンプとエリザベートが放たれる音波。体を青い炎の大蛇へと変えた清姫が巨大ソードの軌道を逸らし、レプラカーンにダメージとステータス低下・呪い・火傷のデバフを与える。

 

 続いて、エミヤの狙撃とクー・フーリンのルーンとオルガマリーの魔術がレプラカーンの顔面、砲口へ狙う。

 

 先のデバフ二種類と合わせ少しずつだがダメージを重ねていき、隙を作った。

 

 それを狙い一気に突撃をかける一捷。高速飛行の勢いを乗せ、そのままハイパーレプラカーンを突っ切ろうと試みるが、

 

 

「貴様らぁ……洒落臭いんだよぉぉぉっ!!」

 

「ッ、皆っ!?」

 

 

 その程度でハイパー化を攻略できる程甘くない。

 

 砲口が煌めき、絶大な破壊力の弾丸達がカルデアメンバーへ降り注ぐ。

 

 いや、魔力とハイパー化が加わったそれは必殺の砲撃だ。一撃必殺の威力を持った弾丸の連続発射。

 

 各々が防御手段を展開するも、絶対な破壊力を持つ弾丸・炎は張られた守りを突破して、大きなクレーターを生み出しながら地上のサーヴァントを吹っ飛ばしていく。

 

 その光景に思わず止まりそうになる一捷。

 

 直ぐ様飛んで助けに行きたい、そう思ってしまう。

 

 が、それはダメだ。事前の打ち合せで自分は言った、ジェリルを倒すのだと。

 

 不安がある中で発したその言葉を、皆は信じて動いてくれている。

 

 

「(僕がそれを、裏切るわけにはいかない)」

 

 

 振り返りそうになるのをぐっと堪え、一捷は飛ぶ。ダンバインを操り、破壊の雨の中を飛び続ける。

 

 途中、装甲に何度も砲撃が掠り、焼かれる痛みに顔をしかめ、そんなものは大したことはないと振り切って、高速飛行。

 

 そしてなんとか砲撃を抜け切り、ダンバインはハイパーレプラカーンの前へ辿り着く。  

 

 このまま真っ直ぐ行けばいい。危機を抜けたこともあって、張り詰めていた一捷の気。

 

 それがその瞬間……ほんの少し、緩んだ。

 

 一捷が戦闘経験のない一般人ということもあって、それも無理のないことでもあった。

 

 しかし、しかしだ。

 

 その緩みは、戦いにおいて致命的なミス。

 

 凄まじい衝撃がダンバインの、一捷の全身を駆け抜ける。

 

 悲鳴すら上げる暇もなかった。今度は一捷は真っ暗闇に包まれていた。それが迫ってきて、彼を押し潰そうとしているのだ。

 

 

「ぐぅぅっ、あぁぁぁ……っ!?」

 

「潰してやるよこのままぁぁぁ!!」

 

 

 ハイパーレプラカーンの左手がダンバインを握りしめる。

 

 巨大な手と指によって軋みを上げるダンバインと一捷の体。ボキボキ、と装甲が端からひび割れ、数本の骨が折れていく。

 

 握り潰される。死ぬ。一捷がイメージした瞬間、

 

 

「――オルガマリー・アニムスフィアが令呪を持って命じます! 宝具を使い飛びなさい、ライダー!!」

 

「お任せを……!」

 

 

 天馬の嘶きが響き渡る。オルガマリーが二画目の令呪を使用し、マスター契約を変えたメドゥーサを召喚・宝具解放。

 

 後ろにマシュを乗せ、跳躍したジャンヌと共にレプラカーンの指を集中攻撃。親指、人差し指が壊れ、なんとか一捷は脱出に成功する。

 

 

「この……ジャンヌ・ダルクがぁぁぁーーーーっ!!」

 

「!?」

 

 

 止めを邪魔をされたこと。それがジャンヌだったのもあり、ジェリルは激昂し、今度はジャンヌへ狙いを定めた。

 

 巨大オーラソードでメドゥーサを振り払い、返す刃を空中のジャンヌへ振り抜く。

 

 メドゥーサと一捷が近寄れず、そのままのコースならばジャンヌを一刀両断にする筈だった。

 

 そう、横から複数の触手が絡みつき、レプラカーンの右腕を拘束しなければ。

 

 

「ジル!?」

 

「やらせはしない……やらせはしないぞぉぉっ! ジャンヌを死なせることだけは、絶対にぃ!!」

 

「邪魔をしてぇぇぇ!!」

 

 

 宝具にて召喚した巨大海魔と自ら融合したジルは、オーラバリアに焼かれるのも構わず触手をレプラカーンとオーラソードに巻き付け、その右手からオーラソードをはたき落とした。

 

 が、空いている左の拳が海魔にめり込み、オーラショット・キャノン・バルカンの一斉砲撃。

 

 辛うじてメドゥーサに回収してもらったジャンヌは、海魔ごと体を引き裂かれ、あちこちを消し飛ばされたジルの姿を見て息を呑んだ。

 

 

「ジル……っ!」

 

「……ご無事で良かった、ジャンヌ」

 

 

 ジャンヌを慕うジルの気持ちは、ジル自身がどんなに変わっていても、変わることはなかった。彼女がまた死ぬことだけは決して認められず、助けることができた。

 

 ジャンヌの無事を確認したジルは、その向こうにいるダンバインこと一捷を見やる。

 

 

「……助けて、くださったんですね」

 

「貴方の為ではありません、ジャンヌの為です。勘違いなさらぬことだ」

 

「……だけど、今助けてくれたことは事実です。ありがとうございました」

 

 

 ジルはそれ以上何も言わなかった。ただ一捷に視線をやって消えていった。

 

 直ぐ様レプラカーンへ向き直る。ソードを落としている今がチャンスだった。

 

 念話をオルガマリー達三人へ飛ばす。

 

 

『所長、ゲオルギウスさん、ジークフリートさん! あの連携を!!』

 

『了解……!』『いいでしょう』『了解だ』

 

 

 三角目。オルガマリーが持つ最後の令呪が輝く。

 

 バルムンクの柄を左右に捻り構えるジークフリート。彼を追い抜いて、ゲオルギウスは自身の剣『聖剣アスカロン』をレプラカーンへ突き立てる。

 

 

「我が剣が訴える、汝こそは竜! ――‘力屠る祝福の剣(アスカロン)’!」

 

 

 ゲオルギウスの宝具の一つ『汝は竜なり(アヴィスス・ドラコーニス)』。赤い十字の描かれたサーコートが、アスカロンに竜種付与の力を与える。

 

 一捷との訓練・実験により、オーラバトラーにもその効果が現れること――具体的には切り離したダンバインの装甲にジークフリートのバルムンクを叩き込む。その際付与をするかしないかで威力に差が出ることが判明していた。

 

 宝具により、一時的な竜となったハイパーレプラカーン。そこに撃ち込まれるのは、竜殺しの一撃。

 

 

「黄金の夢から醒め、揺籃から解き放たれよ。邪竜、滅ぶべし! ――‘幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)’!」

 

「うっ、がぁぁぁぁぁぉぁ!!!?」

 

 

 竜特攻の宝具、巨大な剣気がハイパーレプラカーンを襲い、その巨体が大きくかしぐ。

 

 思わぬ大ダメージにジェリルは絶叫し、レプラカーンのあちらこちらが損壊。加えて、ハイパー化の自壊も重なった。聖杯があっても元々無理のあるパワーアップであるハイパー化。端から機体が割れ、火を噴き、崩れ出す。

 

 バルムンクを振り抜いたジークフリートが、一捷へ叫んだ。

 

 

「平沢!! 行け……!」

 

「……はい!!」

 

 

 全員が作った好機、できた道。頷いた一捷は残る力全てをダンバインに込め、オーラソードを握りしめレプラカーンへ突貫していく。

 

 改めて見るレプラカーンの巨体。プレッシャーとオーラ力に恐怖を感じつつも、振り払って、ひび割れた胸部装甲へとぶち当たる。

 

 装甲を割って抜け、内部を突き進む。全身をバリアに焼かれながら、前方に本体のレプラカーンを確認。

 

 

「ジェリル・クチビィィィィッ!!!!」

 

 

 真っ直ぐ飛翔し、その胸へと、オーラソードを突き立てる。

 

 びくん、とレプラカーンが震える。オーラバトラーのボディだけでなく肉と骨と臓器を貫いた感触が、ソードから伝わってくる。周りは高熱のバリア内部なのに、とてつもない悪寒が一捷は感じていた。

 

 確実に心臓の位置を貫いている。

 

 オーラソードを抜いて離脱しようと退いた……そのとき。

 

 ガッ、と。掴まれる。右腕を。次いで首を。

 

 

「よくも……やって……くれたね……」

 

「ジェ、ジェリル……!? まだ息が」

 

「死んださ、確実に。お前が殺したんだからね」

 

 

 レプラカーンがバラバラに崩れていく。纏っていたジェリルの顔が露わになり、暴走する自身のオーラ力で全身を焼かれながらも、一捷を睨みつけてくる。

 

 

「世界のためだの言ってたお前のやることがこれさ。相手を殺すこと。私と大差なんかない……」

 

「そんな、こと……」

 

 

 炎に包まれたジェリルは体の先から消え始めている。

 

 それに反してそのオーラ力は、負の感情は限界以上に広がり続けており、思念だけでも一捷を呪い殺さんと強く続けている。

 

 

 

「結局同じさ……私もお前も穴の狢ってやつ」

 

 

 

 

「都合よく力を使われ続ける。なら、その力を自分の好きなように使わなくてどうするのさ」

 

 

 

 

「覚えておきな……お前みたいに正義の味方ぶってる奴は、必ずロクな目に遭わないんだよ……!!」

 

 

 

 

 その言葉を最後に、ジェリルは炎の中で崩れていった。彼女の残したオーラの炎が、ダンバインを包み込み、激しい流れとなって機体を吹き飛ばしていった。

 

 頭の天辺から爪先まで熱さと激痛を味わい、心にはジェリルの言葉を刻みつけられて、一捷はオーラバリアの中なら弾き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「状況は!? 平沢はどうなったの!」

 

「……ダメだ。未だマスターの姿を確認できん」

 

「ドクター、そちらで先輩の位置を特定できませんか!?」

 

『やっている! だけど、魔力とオーラ力の流れが激しすぎて、測定が不可能なんだ……!』

 

 

 一方、外ではハイパーレプラカーンから距離を取ったカルデアのメンバーが、険しい表情で敵機を凝視していた。

 

 レプラカーンへ突入した一捷からの連絡はなく、こちらかも繋がらず、ハイパー化の影響なのか状況も正しく観測できない。

 

 最悪の可能性もある。誰もがそう考えてしまいそうになった、そのときであった。

 

 レプラカーンが大きくかしぎ、各部が爆発し出した。全身にひびが広がり崩壊を始めるレプラカーン。その胸部が爆ぜ

、中から緑色のオーラバトラーが吹っ飛ばされてきたのだ。

 

 

 

「先輩っ!!」

 

「ライダー、キャスター! 平沢を受け止めて!」

 

「――Isaz(イス)!」

 

 

 メドゥーサがペガサスにクー・フーリンを乗せ空中へ。風のルーンでダンバインを受け止めると、オーラバリアで焼かれ高熱となった機体へ氷のルーンを使用。温度を下げ過ぎないよう調整しつつ、熱を冷ましていき、地上へ戻った。

 

 同時に解除されるダンバイン。火傷を傷を全身に負った一捷が現れ、マシュ達は軽く悲鳴を上げたが、よろよろと右手を上げて一捷は無事を伝えた。

 

 

「せ、先輩……!」

 

「生きてますよ……ドチャクソ全身が痛いですが」

 

「キャスター、直ぐに治療を。……良くやってくれたわ平沢。ジェリル・クチビは、倒したのね?」

 

「恐らくは……」

 

 

 確実に心臓を貫きトドメは刺したと伝える一捷。

 

 ならば後は、残っている聖杯を回収するだけと、全員が思った。

 

 ……だが。

 

 この世界に現れたイレギュラーは、最後の最後で、思わぬ事態を引き起こすこととなる。

 

 

 

「……待て。ハイパー化とやらは、本体のオーラバトラーを倒せば消えるのだろう、マスター」

 

「……そうですけど。それが何か?」

 

 

 黙ってレプラカーンがいた方向を指差すエミヤ。

 

 そこに、一捷すら知らない『それ』が、蠢いていた。

 

 バラバラになったレプラカーンの中から赤い炎のような物体が出てくる。それらは一つになって、人の形になり、天に向けて絶叫する。

 

 

『■■■■■■■■ッ………!!!!』

 

「こ、こいつは……なんだ!? 何が起こって……」

 

 

 予想外の事態に戸惑う一捷。炎のような何かは、そんな一捷に向かって手を叩きつけて来る。

 

 

「危ない!」

 

 

 咄嗟にマシュが出てガードしたことにより、事無きを得る。

 

 だか周囲には炎が飛び散り、あらゆるものを焼き尽くしていく。

 

 正体不明の存在だが、この炎の塊を放置するのはあまりにも危険だ。

 

 

「こいつも……どうにかしないと……うぐっ!」

 

「無理すんな坊主、あのデカブツと戦ってボロボロだろうが」

 

「だからって、何もしないわけには」

 

『その通りだ。とりあえずこれを見てくれ』

 

 

 ロマニが一捷らの目の前にモニターを映す。内容は、あの炎の塊の解析結果。現れた瞬間から測定を始めていた。

 

 

『この赤い塊は、魔力とオーラバトラーから発していたオーラ力で構成されている。中央部分には聖杯の存在も確認できた』

 

『言ってしまえば、ハイパー化した機体の中身のようなもの。高まったエネルギーそのものだ』

 

「……聖杯の力で、オーラ力が更に暴走して、溢れ出した?」

 

『その可能性はある。だから、あの塊に生命反応はない。ただの暴走した力だ。より大きな力を与えれば、消滅すると思う』

 

 

 ようするに、跡形もなく消し飛ばしてしまえばいい、ということだ。

 

 

『相手の出力を考えると……対城宝具クラスなら、一撃で消滅させられる筈だ』

 

「……では、私が行きましょう」

 

 

 現在のメンバーで最大威力の宝具を持つ英霊。

 

 それはセイバー、アルトリア・ペンドラゴンであり、宝具にで勝負を決める作戦に決められた。

 

 

『ここまで来たのなら、後一息だ。……無理をさせることになるけど、平沢君。やってくれるか?』

 

「無論。ここに来て、引き返すはないでしょう」

 

「じゃあ、私は防御に回るわ。ルーラー、貴女の力を使わせて貰います」 

 

「了解です」

 

「それでは、私も……」

 

「……そうですね。敵の威力が未知数なら、パワーは多い方が良い」

 

 

 防御のサーヴァント二騎。攻撃に一騎。

 

 一捷とオルガマリー、二人のマスターを動員して、フランス最後の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

『ウウウ……■■■■■ーーーッ!!!!』

 

 

 

 炎の塊は接近してくる一捷達に気付き、その両手を組んで振り下ろした。

 

 灼熱の両拳。対し、マシュとジャンヌが前に出て、一捷とオルガマリーはそれぞれ令呪を発動。

 

 これでオルガマリーは全ての令呪を使用し、一捷も残り一画となった。

 

 大地に突き立てられた十字盾が、光を発する旗が掲げられ、守りの力を発揮する。

 

 

「真名偽装登録――行けます。――‘疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)’!」

 

「我が旗よ、我が同胞を守りたまえ! ――‘我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)’!」

 

 

 虹色の結界と天使の祝福による守り。

 

 重なった二つの守りの力は、組まれた炎の両手を防ぎ、弾き返し、後方の仲間を完全に守り切る。

 

 防がれたたらを踏む炎の塊。

 

 最後の攻撃を飾るのは、黄金の聖剣を携える騎士王。

 

 

「……令呪を持って命じる。セイバー、アルトリア・ペンドラゴン! 宝具を解放し、フランスを守れ!!」

 

「――えぇ、決着を付けましょう」

 

 

 最後の令呪を使い切り、アルトリアに魔力をチャージ。

 

 エクスカリバーを両手で握り、刀身を覆う風王結界(インビジブル・エア)を解除。

 

 黄金に輝く刀身が露わになり、大上段へ持っていくアルトリア。

 

 

「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。受けるがいい――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 両手で構え、大きく振り抜く。

 

 所有者の魔力を光に変換。収束・加速することで運動量を増大、光の断層を放つ究極の斬撃。

 

 人々の想い、願いが形となった黄金の聖剣より放たれる一撃。

 

 それは一捷達だけでなく、フランスにいる者達、通信越しに観ているカルデアといった全ての人間が、その輝きに目を奪われる程の眩しさ、美しさ、そして、強さを持っていた。

 

 聖剣の一撃は炎の塊を飲み込み、その体を火の粉一つ残さず消し去り、残ったエネルギーが空に立ち昇って、周囲を金色に照らす。

 

 ただ聖杯だけが残って地面に落ち、静寂がその場に流れていった。

 

 

『……敵性反応、無し。聖杯も確認した。――終わったよ。平沢君、所長』

 

「……そのようね……」

 

『マシュ、聖杯の回収を。そこから真っ直ぐ行った地点にある』

 

「了解です、ダ・ヴィンチちゃん」

 

「本当に、これで、終わった? …………ゴフッ、ごはっ!?」

 

「っ、平沢!」

 

「大丈夫ですか?」

 

 

 聖杯の回収へ向かうマシュの背を見ながら、大きく息を吐くオルガマリーと、その場に座り込む一捷。

 

 戦闘が終わり一息つこうとしたが、一捷の方が大きく咳き込んで血を吐き出した。

 

 ゲオルギウス、メドゥーサ達が駆け寄り、「大丈夫」と返す一捷だがどう見ても無事ではない。

 

 少し休んでいれば良くなる筈だと一捷は言うが、少し体を動かすと礼装から青緑の短剣が目の前にこぼれ落ちる。

 

 

「……良かった。どうにか無事みたいだね、平沢君。これで私の役目も果たせたってもんだ……」

 

「……マオー?」

 

「……なんだ? この声は」

 

 

 短剣より声が発せられた。一捷以外のメンバーが怪訝な表情を浮かべる中で、聞き慣れている一捷が短剣を取る。

 

 手に取った瞬間、青い火花が散る。

 

 それにより、真ん中のひび割れに気づいて、一捷は叫びを上げた。

 

 

「……おい、なんで壊れてんだお前!? 大丈夫なのかよ!」

 

「いやはや、君を守る為にやったんだがちと受けた場所が不味くてね。正直、良くないよ」

 

 

 マオー曰く。ティエールでジェリルの剣を防いだときに、損傷を負ってしまった。

 

 しかも中枢までダメージが入ってしまい、ここまでなんとか保たせていたが、限界が来て直に機能が止まってしまう。

 

 その前に、どうにか情報を伝えようと声を発した……とのことだ。

 

 

「カルデアの皆さん、こんな形で初対面となってしまい申し訳ない。私はマオー。この剣の制御AIだ。損傷でリミッターがやられたのか、最後に話せるようになって良かったよ」

 

『……本当だったのか。その剣が喋るって言うのは……』

 

「それよりマオー、最後ってなんだ! 壊れているならなんで言わなかった!?」

 

「君は心配し過ぎるタイプだからね。私のことでストレスを与えたくなかったの。……あーもう時間ないから、とりあえず言えることだけ言うね」

 

 

 バチバチ、と火花を散らす青緑の短剣。残された時間が少ないと嫌でも理解する周囲。

 

 聞きたいことは山程あったが、まずはマオーの言葉に耳を傾けることにした。

 

 

「平沢君、カルデアの皆さん。この世界は今、大いなる存在に狙われている。そいつが異世界の道具や力をばら撒いた元凶だ」

 

『……それは、Aという存在なのか?』

 

「そう。Aはこの世界で自らの目的を叶える為に現れた。その為に、特異点へ『柱』を配置した……」

 

「柱、とはなんだ?」

 

「異世界のアイテムを生み出す大元だよ。全部で七柱。各特異点に配置されているそうだ。この特異点には間に合わなくて、A自身が対応した様だがね」

 

 

 マオーはAを止めようと追っていた。Aを倒す力として、一捷を選んだ。

 

 そこまで説明したところで、更に大きく火花が弾けた。

 

 

「まぁこの通り、返り討ちにあってしまったが……いやはや失敗失敗」

 

「ま、マオー!」

 

『直ぐに帰還準備を行う! カルデアでなら、なんとか修理することだって』

 

「無駄だよ。技術体系が違い過ぎる。何より中枢の私はもう保ちそうになくてね」

 

「ふざけるなよ! 勝手に巻き込んでおいて、なんだよそりゃあ! お前には聞かなきゃならないことが沢山あるんだぞ!?」

 

「すまないね……。本当なら、最後まで君の成長を見ていたかったよ」

 

 

 本来、アクセルの変身ツールは一捷がもっと実力をつけてから渡すつもりだった。

 

 しかし一捷の成長が予想以上に早かったので具現化。お詫びとして、そのまま一捷に授けるとマオーは伝える。

 

 バチリバチリ。ひび割れが広がり、マオーの声も途切れ途切れになっていく。

 

 

「……最後に、これだけ言っておくね」

 

「何言うんだ、最後だなんてそんな……!」

 

「――聞きなさい!! 良いか……? ハッキリ言って、Aの力はとてつもない。今の君じゃあ、到底敵わない……」

 

 

 

「……だけど、不可能ではない。今の力を鍛えて……相手を……柱を倒して……その力を使っていけば……きっと強くなれる」

 

 

 

「そう……誰にも負けない存在に。力も……富も……世界平和も。全てを思い通りに出来る存在……何もかもを統べる存在になれば……きっとAだって倒せる」

 

 

 

 

「大丈夫……君ならなれる……究極の存在、

 

 

 

 

 

 

 

――魔真王(ましんおう)に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そう言い残して、一際大きな火花が散り。

 

 青緑の短剣は、二度と声を発せなくなった。

 

 

「…………なんだよそれ。なんなんだよ」

 

 

 ぽつりと一捷が呟く。それを皮切りに、どんどん感情が溢れてくる。

 

 

「言うだけ言って……なに? 意味、分かんないよ……全然……巻き込んで、勝手なこと言って、それで、いなくなってたさ……」

 

 

 言葉と一緒に涙も溢れていた。マオーには思うことばかり。

 

 無茶苦茶なばかり言って、いなくなってしまった。

 

 それでも、確かに力を与えていくれた。そのお陰でここまで戦えた部分がある。そうでなければ、とっくに死んでいただろうから。

 

 知らない間に信頼が生まれていた……のかもしれない。

 

 だけど、感謝の前に、文句すら言えなかった。

 

 サーヴァントや、カルデアで観ている者達。周りは何も言えなかった。ただ短剣を握りしめ、泣いている一捷を見ることしかできなかった。

 

 

「……なんでだ……なんでさ……! なんでいなくなるんだよぉ……バッカやろぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーッ!!!!」

 

 

 うわぁぁぁぁ、と叫びだけが響いていく。

 

 ……こうして、フランスでの特異点修復は終了した。

 

 最後の最後に、一つの犠牲を生み出して。

 

 この先、一捷とカルデアにどんな試練が、異世界からの試練が襲い来るのか。

 

 今はまだ、誰にも分からない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……マシュが聖杯を回収する前。

 

 地面へ落下したタイミングで、聖杯から光る玉のようなものが飛び出し、森の中に飛んでいった。

 

 その先にいたのはA。

 

 Aの持つ長細い物体に光球が入ると、にやりと笑い、魔法陣を展開し静かに消えていった。

 

 その姿を誰にも見られることなく……。

 

 

 




やっとフランス編まで終わりました…。改めてFGOって、そして群像劇ってとても難しいと思いました。

人数把握とか途中でよく分からなくなりますわ…。

フランスが終わったので、力のアンケートも5月いっぱいで締め切ります。

投票して下さった方々、ありがとうございます。

まだの方は、よろしければ投票していって下さい。

感想・批判・ご意見、お待ちしています。

絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?

  • オルガマリー
  • マシュ
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