その復興の最中、不安定な人々の願いを歪な形で叶える者達がいた。
それを鎮める力──仮面ライダーの力を持つ者達も、自らの願いの為に戦っていた。
個人宝石店「エーデルシュタイン」の宝石商である水宮晶も、自らの矜持と願いを持って戦っていた。
「──さぁ、鑑定の時間だ」
※こちらは読み切り版となります。連載版とは多少変動の可能性がある事をご容赦下さい
誰かが、倒れている。
誰かが、血に塗れている。
炎と煙に阻まれていたものの、倒れている自分を嗤う人影が辛うじて見えた。
けれど、小さな女の子の叫ぶような泣き声が聞こえたと同時に辺りをキラキラとした光のようなオーラが包み、それが周囲に大きく波のように広がって──
*
「……また、この夢」
白銀の髪に白銀の目をした青年──水宮晶は寝ぼけなまこにそう言いつつ、頭を少し抑える。
いつからか、この夢をよく見るようになった。
弟である玻璃に聞いても、心当たりはないと以前言っていた。
枕元の時計に映る時刻を見る。
「6時30分か。…うん、開店時間までには間に合いそうだね」
ベッドから起き上がり、少し古めかしい洋服箪笥へ向かい、接客用の服装一式を取り出す。
着替えつつ、ネクタイを締め終えてからハンガーにかけてあったジャケットを羽織る。
「…よし」
顔を洗うのは食事を取ってからでも間に合うだろうと考え、下の階へ向かう。
「兄貴、おはよ」
「ん、おはよう。玻璃」
自分と同じように白銀の髪と目、そして四角フレームの眼鏡とラフな私服を着た青年──晶の弟である玻璃は少し先に朝食に手をつけていた。
キッチンでは自分と玻璃が昔から面倒を見て貰っている大家であり、玻璃の後見人である柘榴がちょうど朝食を作っていたところだった。
「おはようございます、
「相変わらず、こんな時間からスーツか。まだ開店まで時間はあるだろうに」
「これ着てた方がスイッチ入るっていうか…まあ、そんな感じなので」
柘榴の言葉に笑ってそう返し、席に着く。
ご飯と味噌汁、スクランブルエッグにウィンナー、ベーコン、温野菜と多少簡素だがある程度バランスの整ったメニューだ。
少しして柘榴が自分の分も含めた2杯のコーヒーをテーブルに置き、同じく席に着く。
「…いただきます」
開店前の数少ない一息つける時間。
食器の音とテレビのニュースの音が、静かに絡み合う。
『以前として、ワールドエインセルの被害は10年経った今でも回復の見込みはなく──』
『政府は被害状況を踏まえ、引き続き被災者や帰宅困難者には支援をするとの意向を示しており……』
「また、この話題?」
玻璃が飽き飽きした様子でテレビを見る。
ワールドエインセル。
別名、
10年前に突如として発生した大規模な怪現象であると共に、世界の凡ゆる場所で様々な災害が発生。
それに加えて、被害に遭った地域では建物などが宝石のような物に覆われた事から、この名前が国連によってつけられた。
被害にあった地域や国は、今でも復興が進んでいないのが現状。
「無理もない。全世界で同時に災害が起きたのは未だにこれだけだからな」
「…メディアが良くも悪くも話題作りに躍起になるのはしょうがないというか…」
「見てるこっちも疲れるから、程々にして欲しいんだけど」
玻璃が溜め息を吐きつつ、食事に戻る。
その後に食事を済ませ、柘榴に家事を任せる。
向かう前に軽く読んでいた新聞には「連続家庭殺人事件の犯人、本日初公判」とあった。
ここ暫く世間を騒がせていた男だろうか。
「以前から思っていたんだが」
「なんですか?煙道さん」
「何故、君達が元々持っている食器類は少し数が多いんだ?」
「…僕も正直よく分かってないんですよね、それ」
この家には後見人兼大家である柘榴も含めて、3人しかいない。
それにも関わらず、食器類の数は
もっと言ってしまえば、幼児用の物もある。
2人とも自分が過去に使った覚えのある物かと思ったが、心当たりは殆どなかった。
どちらかと言うと女子に近いデザインの物だったから、というのもあるが。
「…そうか」
「そろそろ時間ですし、店舗の方向かいますね。いつもの事ですけど、何かあれば連絡して下さい」
「あぁ。気をつけてな」
*
─某所
高校の制服を着た少女はスマホを片手に僅かに震えていた。
理由は勿論、新聞で一面を飾った初公判の事だった。
「彼奴が、やっと…!でも、彼奴にはこれだけじゃ足りない……!!」
その年齢に似合わぬ、暗く異質な雰囲気と表情に街行く人々は遠巻きに彼女を見ては立ち去り、目的地へ急ぐのみだった。
──そんな彼女に目をつけた存在が一人。
「ねぇ、そこの君?」
「っ?!」
音もなく、遥か上から自分の近くに着地した蒼いワンサイドアップに蒼い目、聖歌隊のような服を着た女性が自分の事を見ていた。
「…だ、誰」
「そんな警戒しないで〜?…何か叶えたい
「なっ…!?」
見透かすような、それでいて弄ばれているような。
この世の物とは思えない、文字通り青い宝石のような目が品定めするかのように細くなる。
「……いいねえ。自分の手で相手を下したい、復讐したい、亡くなった存在と同じ目に遭わせてやりたい…。あたし好みの
「っ、っ…!」
「あはははっ、図星って顔だね。だって、あたしには分かるよ?そんな奴らを
「…新山、鈴」
「鈴ちゃんね〜。…じゃあ、
「
「そうそう。あたしがあんたの願いや欲望を叶えて、力を与えてあげる。あんたは──コレにサインすればいーだけ」
いつの間にか、女性の手元には古めかしい契約書と透明な石が現れていた。
「……どうする?こんな
「私、わたし…っ」
契約書の内容なんて、見えなかった。
ただ、その言葉しか聞こえなかった。
「はーい。
同時に女性の手元にあった石が形を変え、白い光沢を持った石へと変わる。
「…それじゃ、見せてよ。君の欲望の純度はどの程度なのか、そして何より──」
「
女性は口元に歪な嘲りを見せながら、風と共に消える。
その瞬間、白い鷹が一声鳴いた。
*
それから、数日後。
晶が営む宝石店「エーデルシュタイン」にて。
「晶さーん、お邪魔します」
「菫さんか。久しぶり」
カラン、と鈴を鳴らしながら扉を開けて店内へ入ってきたのは紫色のボブカットに青い目をした女性──
「今日はどうしたんです?何かご用命が?」
「あー、実は今日はそうじゃなくって…。…実はここ数日、不審な転落死が相次いでるみたいでして」
「君、そういう事を調べる度胸凄いよね」
「私が個人的に気になるからです!…それで、1つ関連のある事柄が浮かび上がって来たんですよ」
「…なんだい?」
「不審な転落死をしている方は全員、何かしらで死刑を逃れている方なんです。正確に言えば、保釈されたりなんだりでなんとかなった…と言いますか」
菫は現代でも名を残す名家の生まれだ。
本人が良くも悪くも気になった事にはすぐ首を突っ込む為、周囲は苦労していると聞いているが、家柄故に情報網や把握している詳細情報も多いのだろう。
「…なるほどね」
「晶さん?」
「いや、なんでもない。君も親族がそうならないように気をつけるんだよ」
「分かりました…?」
「それで、他には?」
「いつも通り、って言ったらアレなんですけど…コレクションの宝石を買いに」
「分かりました。お席にどうぞ」
菫を席に案内し、幾つかの宝石の標本をテーブルの上に置く。
イエローダイヤモンドの母岩付き、双晶アメジスト、ルースのムーンストーン、アレキサンドライト、翡翠の原石、パイライト、少し欠けたラピスラズリ。
「そういえば、ここってアクセサリーをメインに扱ってますよね?なのになんでこういうのも?」
「同じ形の物はないからね。ピンと来る石があったら、それは出会いだろうし…一期一会だから」
「一期一会、ですか」
「うん。鑑定書とか持って来るから、ちょっと待ってて」
「ありがとうございます」
店の奥へ向かう晶を見送った後、戻ってくるまで菫はテーブルの上の標本を見つめていた。
*
──某所
白い鷹のような怪人が上空から、街を歩いていた男性の首元を嘴で啄み、男性をそのまま上へ上へと上げていく。
突如起きた異様な状況に、慄く者もいれば、それを物珍しそうに携帯のカメラで撮ろうとする者もいた。
が、次の瞬間どよめきと悲鳴が辺りを引き裂き、混乱の波となった。
何故なら。
上空の限界まで怪人によって上げられた男性は怪人が嘴を放したと同時に地面に向かって急降下し、地面に落ちた時には受け身を取る暇もなく肉塊となり、人の形すら保っていなかったのだから。
それに満足した怪人は一声鳴くと翼を広げ、再び標的を探しに向かった。
『モッと…もっト、罰さなキャァ…!』
それを見つめる人影が2人。
蒼い目に蒼いワンサイドアップの女性と、眼鏡をかけ、黒いリボンで髪を結んだ桃色のハーフサイドアップと桃色の目の女性。
「おーおー、やってんねえ」
「全く…相変わらず、貴女のチェスピースジュエルは猟奇的ですね。パライバ」
「え〜。それ、ラズベルが言うの?
「…段階の進捗は?」
「ん、
「第二段階に差し掛かった、と?」
「多分ね〜。…でも」
パライバは片手の中に広げた小さな色とりどりの石達を見つつ、手を閉じる。
「また
「対処は貴女に任せます。契約者共々」
「はいは〜い。頑張ってお仲間増やせるようにしますよーっと」
「頼みましたよ」
炎に包まれて姿を消したラズベルを見送り、パライバは軽く溜め息を吐く。
「ラズベルはホント真面目だよね〜。…じゃ、あたしも一仕事しますか」
*
「…さ、流石に買いすぎましたかね」
エーデルシュタインからの帰り道、菫は袋の中の物を少し見ながら、そう呟く。
今日はコレクション用に標本を数点、それとよそ行きに着けていく用にアクセサリーを幾つか買う形になった。
といっても、コレクション用の物は基本的に自分で手入れするので問題はないのだが。
「家の人待たせてますし、早く帰らないと」
待たせている車の方へと歩を進めようとした時、突然羽のようなものが上空から地面に刺さる。
「っ?!」
一瞬、膨れ上がるような動作を見せたそれに気づいて咄嗟に離れたが爆発を防ぎきれず、既にあった第二波に巻き込まれたと思った瞬間、誰かに庇われて衝撃が減っていた事に気づく。
「…大丈夫?」
その声は先程まで聞いていたもので。
「あ、晶さん?!」
「良かった。嫌な予感がしてたから」
「助かりましたけど、今のは…?!」
「…空、見て」
「えっ」
晶が自分からそっと離れた後、上の方を見る。
そこには白い鷹のような怪人がいた。
よく見ると光沢のようなものが見えるのは気のせいだろうか。
『じゃマしない…デェ…!!』
「…なるほど、菫さんが言っていた件の犯人は──恐らく君、かな?」
怪人を前に晶は臆していなかった。
いや、
慌てて晶の手を掴み、逃げようとする。
「晶さん、逃げましょう!ここは…っ」
「…大丈夫。菫さん、ちょっと下がってて」
「へ?」
そう言うと晶は金色をメインとしたバックルのような物を取り出し、装着する。
真ん中は大きくスペースが空いているものの、右手側には同色のダイヤルのようなものが見えた。
《プロセシンドライバー!》
装着されると共に帯の左右に装填スロットのようなものが出現。
「願いがどんなものかは知らないけど、うちのお得意様に手を出されるのは…困るかな」
晶はそのまま星が内側に見えるようなカットが施された水晶を取り出し、装填。
《セット》
《プラモディアル:クリスタル》
周囲に透明な光の粒が舞う中、晶は両腕を広げてから左手をダイアル側に、右手を前に出して開くと何かを掴むように閉じる。
そして、ダイヤルを前側に動かすと同時に“その言葉”を発した。
「変身」
《プロセシング!》
周囲に舞っていた光の粒が晶に集まり、薄金のアンダースーツの上から、各部に無色透明な宝石のようなカットがされた装甲が装着。
顔部分にはグリフォンのようなカットがされた仮面が付き、口部に牙のようなものが展開されて僅かに吼えると口部分に収まり、少し吊り目気味な複眼が半透明な光沢を持った黒いものに。
腰には後ろ部分にかけて銀色の腰布が付き、右肩には同色の少し大ぶりな肩マントが装着。
《──クリスタル:スターカット》
「え、ぇえ…?!」
『なニぃ…!?』
「それじゃ、鑑定の時間と行こうか。…あぁ、でも飛ばれてたら困るね」
帯の右側の装填スロットに楕円形のカットが施されたライラックブルーの石を装填し、操作。
《タンザナイト:プロセシング》
《マテリアル>ウェポン:デュアルピストル》
手元に同色の二丁拳銃が現れ、それを怪人に向けて放つ。
怪人は上空でそれを回避するものの、途中で胸元近くに命中し墜落。
二丁拳銃を霧散させ、怪人へそのまま思いっきり打撃を喰らわせる。
『キェ…?!』
「ちょっと痛いかもだけど、我慢してね?」
今度は左側のスロットに丸い山形のカットが施された黄緑色の猫の目のように見える石を装填。
《クリソベリルキャッツアイ:プロセシング》
《マテリアル>ウェポン:タガー》
同色の短刀が手元に現れ、怪人の片翼を斬り落とす。
それと共に構築している宝石がパラパラと少しではあるが剥がれる。
『咿タぃイイ…!!』
「まだ痛みは感じられるか。…さて、どうしたものかな」
周囲を見回すと、何かがばら撒かれたような音と共に石と植物が組み合わさった兵のような者達が現れる。
「相変わらず容赦ないね〜。…ビジュティエ君?」
「…やっぱり君か、パライバ」
兵達と怪人を同時に相手取りながら、晶は声のした方を見る。
《タンザナイト:プロセシング》
短剣を霧散させ、再び二丁拳銃を装備。
そのまま兵達の攻撃を回避して少し上へと飛び上がると兵へ向けて弾丸の乱舞をお見舞いする。
着弾と共に兵達は煌めきに包まれ、爆散。
「せーっかくいいとこまで来てるんだから〜……邪魔しないでくれる?」
「残念だけど、それは無理かな」
そう言い、兵達へ向けていた銃をパライバへと向ける。
が、彼女はそれを気にもせず菫の方を見た。
「いいのかな?あたしばっかりに気取られてて」
「…っ!」
菫を拘束しようとしていた怪人に気づき、引き離すと蹴りで吹き飛ばす。
怪人が片翼から展開した羽弾による攻撃と、ブーメランの投擲を同時に行うが、羽弾を弾丸で着弾前に撃ち、自分に向けて飛んできたブーメランをスレスレで回避。
ブーメランは近くの鉄柱に深く突き刺さると共に、大きな音を立てて倒れる。
「わ、ぁ…っ?!?」
『谺鹵、サナないと…わタシが罰サないと…』
「…かわいそうに」
「あ〜の〜さ〜。そういうの、いらないんだよね」
パライバは呆れたように言うと、指をパチンと鳴らす。
『グ、ぃヤぁアアアァァ?!』
「っ、まさかとは思うが…!」
「今回は短期でカタつけたい気分だったの。…そいじゃ〜」
パライバは軽く手を振りながら風に包まれて姿を消し、それと共に怪人が風に覆われる。
「何…?!」
風が収まると先ほどまで人の形をしていたそれは巨大な鷹の姿になっていた。
「まずいな。…菫さん」
「は、はい?」
「安全なところに隠れて。これはちょっと洒落にならないからさ」
言いつつ、装填されていた水晶を外し正方形のカットが施されたルビーを装填。
今度は赤い光の粒が周囲を舞う。
《セット》
《プラモディアル:ルビー》
《プロセシング!》
無色透明だった装甲が赤く変わり、どこか四角く見える形状に変化。
仮面は不死鳥を思わせるカットの形状になると共に黒い複眼は明るい黄みの橙になり、垂れ目に近い形に変化。
肩マントは真紅に変わり、腰布は炎を思わせる形状に変化すると縁部分に橙のラインが入る。
《ルビー:プリンセスカット》
「赤く、なった…?」
「これ疲れるからあんまり使いたくないんだけど、そうも言ってられなさそうだからね」
更にダイヤル部分を前に1回、後ろに1回操作する。
《クォーツビーストモード》
「っ、ふぅ…!!」
炎に包まれ、それが晴れると赤い炎を纏った鳳凰のような存在が巨大な鷹と相対する。
「もっと変わった…?!」
炎を纏った鳳凰は鷹に嘴で攻撃し、更に炎の弾丸で追撃。
鷹は地面に墜落するも、鳳凰に再び風で攻撃する。
鳳凰はそれを回避するが、鷹は流体となって背後を取り、爪で攻撃する。
それを先ほど以上の炎の弾丸が防ぎ、鷹の羽を焼く。
パラパラと剥がれていく痛みに鷹は悶え、近くのビルに衝突する。
それを確認したビジュティエは着地して等身大の姿に戻る。
装填されているルビーを少し強めに押し、ダイヤルを前方向に一回転させる。
《イグニッション:ルビー》
《ファイア:インクルージョン》
背に先ほど変化していた鳳凰と似た形の翼が現れ、高く飛び上がると両脚にかけて炎が充填。
片足蹴りの体勢になり、そのまま前に出した片足に炎が集中。
「──ひとときの夢は終わらせよう」
《ルビーイグナイテッドフィナーレ!!》
そして、同時に蹴りが鷹に突き刺さり、大きな爆発が起こる。
「晶さん…」
菫の目線の先には怪人となっていたであろう少女を抱きかかえる赤いビジュティエの姿があった。
「この人は大丈夫なんですか?」
「怪人になってた間の記憶は忘れてるかもしれないけど、外傷はそこまで酷くないから問題ないと思う。…一応ちゃんとしたところで診てもらった方がいいかもだけど」
「ですよね…」
「…あー、でもどうしようかな」
「なんですか?」
「菫さん、ばっちり僕の戦い見ちゃってたでしょ?となると別で行かないといけないところがあるかもなあって」
「え、えぇ…?!」
「大丈夫大丈夫。そんな怪しい所じゃないから」
晶が変身解除すると同時に白っぽい宝石と正方形に近いカットを施された黄色い石が晶の手元に飛んでくる。
「…この子も休ませないといけないし」
「分かりました。…って、言ってもどうするんです?」
「こうするんだよ」
2つの石を懐にしまった晶が取り出したのは黒い光沢を持った一方向に尖った石だった。
よく見ると内側にバイクのようなものが描かれているような。
「ほいっと」
晶はそれを軽く地面に向けて投げる。
割れる──かと思ったが違った。
《オブシディオール!》
そこから現れたのは黒をメインカラーとしたバイクだった。
見たところカスタムらしいカスタムは少ない。
「え、えぇ…?!あの、これ質量保存とかどうなって…!?」
「まぁ、とりあえず乗って。その子の事もちょっとよろしくお願い」
「は、はい」
どうにか3人乗り込むとエンジンがかかり、座標が示される。
「落ちないように気をつけて」
「…っ」
「じゃ、行こうか」
そして、バイクが動き出すと共に進んでいく。
途中から景色が変わり、見えてきたのは神社の社のような物だった。
3人を出迎えたのは白銀のロングヘアと白銀の目に、前髪に一房灰色のメッシュがある黒い着物を着た女性だった。
「…来るとは思っていましたが。……其方のお二人は?」
「一人はチェスピースジュエルになってた子。こっちの子はばっちりしっかり僕の戦いを見ちゃってたから連れてきた」
「貴方という人は…。…前者は落ち着き次第返しますが、後者はどうしましょうか」
「青光菫です。えと…?」
菫の様子を見た女性は軽く溜め息を吐くと晶を暫し見つめてから言った。
「…いいでしょう。特例ですが、此方への入場を許可します」
「は、はい。えと、貴女は?というか、此処は一体…?」
「此処は
「仮面ライダーの、専用拠点となります」
*
──ある教会
「あーもう!また失敗したし!!」
「パライバ…うるさい。というか物に当たんないで」
教会内にある物品に八つ当たりするパライバを紺色の髪と目をした気怠げな青年が疎める。
「うっさいベニト!アンタ、今回見に来てすらなかったでしょーが!」
「んでも、第一段階はクリアしてたんだろ?どうしてパライバはいいとこでミスるかなあ〜」
ベニトとパライバの会話に首を突っ込む、片目が隠れた桜色の髪と桜色の目をした青年。
よく見ると棒付きのキャンディを軽く齧っている。
「クロイト…人間に一番興味持ってるアンタに言われたくないんだけど。ただでさえ、あたし達の同胞は片手で数えられるほどしかいないってのに…!!」
「言いてえ事は分かる。けど、彼奴等が作った文化や娯楽に罪はねえだろ?」
「クロイト、多分パライバが苦手なの…そういうとこだと思う」
クロイトの半ば脆弁にベニトが小さくツッコミを入れる。
「少しはお静かに願えますか?インペリアルが祈りをしている最中ですので」
「はいはい、分かった。ごめんね〜ラズベル」
ラズベルの言葉に仕方なくと言った様子で同意するパライバ。
「祈りの時間…。じゃあ、まだインペリアルはまだ表には来れない?」
「そうですね。10年前に
ベニトの言葉にラズベルは少し目を伏せながら答える。
クロイトはキャンディを齧るのをやめ、口を開く。
「にしたっても妙だよな〜」
「何が?」
「クォーツビースト。…俺達がチェスピースジュエルを暴走させるならまだしも、なんであの宝石商は理性を保ったまま切り替えられる?」
「その理由は図りかねます。ですが、ライダーは私達と同じように人並み以上のインクルージョン率を有しています。それがあのシステムを扱える理由」
クロイトの問いに、ラズベルがファイルから取り出した資料を他のメンバーに渡す。
「…可能性としてあり得るのなら、
──晶の資料には「Inclusion percentage:60% more than」と書かれていた。
Collection.0
宝石店「エーデルシュタイン」
晶が営む個人宝石店。主に宝石を扱っているが、鉱物標本・各種アクセサリーなど、幅広く扱っている。
晶の融通が効く範囲内でだが、宝石や鉱物の買い付け・取り寄せも行っている。
晶の弟である玻璃の後見人、柘榴がコーヒーを振る舞う事もある。
晶自身が人当たりのいい、紳士的な性格である事からリピーターは多い。