ごく普通の一貫校に通う高校3年生、八尾陽月。
彼は自らを取り巻く環境もあり、進路をどうするか悩んでいた。
が、その矢先に3年間クラスが一緒だったものの、まるで関わる機会がなかった筈の同級生、月神三珠に放課後「実証」に付き合って欲しいと言われる。
ホラー映画も怪談もてんで苦手な陽月は、「約束した以上は」とそれに付き合う事に。
…それを近くで見ている白い狐がいる事には気づかずに。
「──怖いけど、やらなくちゃ」
※こちらは読み切り版です。連載版とは多少の変動が出る可能性がある事をご容赦下さい
その日は、やけに雨が酷かった。
柔い布に包まれて眠る赤子の近くを、心配するように白い狐が寄り添っている。
赤子をそれに気づいた女性が抱きかかえ、近くの施設にいる別の職員に声をかける。
そして、赤子がその施設に迎えられた事を確認すると白い狐は姿を消した。
*
──それから10年後
「ふぁ〜…」
授業中に小さく欠伸をする青年が1人。
白銀の髪に、片側につけたクロスしている2つの赤いヘアピン。
赤い目は眠気故か、少し涙が滲んでいる。
「
「…うぇっ?!…すいません。話は聞いて、ました…一応」
「ちゃんと睡眠時間取るんだぞ。…じゃ、再開するか」
担任の言葉を聞き流しつつ、なんとなく教科書のページを捲る。
【あなた、待っていられますか。】
そんな文面がふと目に止まった。
惹かれたわけでも、興味を引いたわけでもない。
ただ、なんとなく目についただけ。
その後も、どこか飽きているような様子で授業を受ける陽月を、茶黒のツーサイドアップに黄緑色の目をした少女が見つめていた。
*
「掃除も終わったし、後は今日の分の個別補習だけか」
机の中に入れていた今日の授業の分の一式を、学校指定のバッグに詰めていく。
陽月が通う学校──
小学校から高校までが管轄だが、陽月は所謂「外部組」。
高校受験に合格して入学したタイプに当たる。
「……流石に高3になってまで補習受けてるのは…まずいよね、うん」
正直言って、
現時点でも成績としては真ん中の前後から数えた方が早いレベル、受験も補欠合格という形で受かっただけ。
かと言って、
バイトは全体的な校則で禁止されている為、一人暮らしをするお金を貯める事も出来ない。
完全に
「どーしよっかなぁ…ホント」
「…何してんの、あんた」
「うわぁ!?」
「大声出さないで、廊下まで響く」
「ごめんごめん。えっと…」
茶黒のツーサイドアップに、黒いリボンと同色のカチューシャ。
黄緑色の目はどこか、自分を
…数刻考え、漸く思い出した。
確か、見た目
「…
「その感じだと、思い出すのに時間かかったみたいね」
「いや、だって僕と君、全然話した事なかったし…」
結果的に3年間同じクラスなのにも関わらず、それらしい縁が今までなかったのもあるが、彼女自身が他人との関わりを持とうとしなかったのも理由の一つ。
男女問わず取る、素っ気ない態度と文字通り
当然ながら、彼女を苦手とする同級生も少なくない。
「単刀直入に言うわね。補習の後、時間空いてる?」
「え?まあ、一応…」
「じゃあ、ちょっと手伝って欲しい事があるから、2階と3階の階段踊り場で待ち合わせね」
「急じゃない?!」
「最終下校までにはなんとかするから。…実証出来なかったら、それまでだし」
「…?」
「こっちの話。じゃ、そういう事で」
そう言うと三珠は自分から離れ、教室から出て行ってしまう。
他の同級生男子なら、恐らく浮き足立っていたであろう状況だったが、陽月は他の事が頭に浮かんでいた。
「…実証、ってなんだろう…?」
*
──少しして
「えーっと、ここ…だっけ」
補習が落ち着いた後、三珠から言われた場所に陽月は来ていた。
それと同時に近くから少し前に聞いた声が響く。
「まあ、間に合ったみたいだし…よしとしましょうか」
「三珠さん…。…えと、それで?」
「端的に言うわ。…『4時44分の鏡』と『鏡の中の異世界』って知ってる?」
「いや、全然…都市伝説か何か?」
「4時44分に鏡を見ると…って話と、鏡の中に異世界があるんじゃないかって話なんだけど」
「やめてよ、そういうの…」
「意外ね。割と平気そうに見えたから」
「ホラー系は全部無理だよ。それで?」
近くにある時計の針は16時30分を示している。
窓の外から見える夕暮れと、そこから差し込む日差しに目が焼かれるんじゃないかと錯覚すら覚える。
「それの実証に、一緒に付き合って欲しいわけ。そうでないなら、それでいいし。何もないなら帰るつもりだから」
「昼間言ってた実証って、そういう事?」
「そ。人1人入れそうな鏡があるとこなんて限られてるし、誰か一緒にいて、それを覚えてる人がいれば、証拠にもなるでしょ?…この学校自体っていうか、ここの土地が割と曰くつきなんじゃないかって言われてるのも理由の一つだけど」
洒落にならない。
「なんなら、それが本当だとしたら所謂『七不思議』もありそうよね。此処」
あまり笑えない気がする。
「やめてよもう…。…でも、約束した以上は手伝うからさ」
「怖いもの苦手なんでしょう?無理しなくても…」
「約束した事からは逃げないって、一応決めてるから。…そういえば、なんで僕なの?他にも手伝ってくれそうな人はいるんじゃ?」
「あんただから、意味があるのよ」
「へ?」
時計は16時30分を過ぎている。
少し暗い日差しが三珠の顔に当たって、彼女の憂いを帯びた顔をより昏く感じさせる。
「私、昔から結構…妖怪だとか、都市伝説だとかが好きなんだけど。でも、親はもっと『らしい』物にしなさいとか…同学年の子達は『そんなの漫画とかアニメのやつだけ』とか『現実にいるわけない』とか、否定ばっかで。……だから、証明したいの。そういうのがちゃんといるって。…あと、あんたなら、そういうの否定しなさそうだし?」
「…そう……かな?」
それを聞いて、脳裏に蘇ったのは時々自分の近くに現れる白い狐の事だった。
あの狐も、昔から自分がお世話になっている施設や通っている学校の近くに現れてはいつの間にか姿を消していた。
自分にだけ見えているのかどうかは、定かではないけど。
「…って、こんな話をしてたら時間が近づいてきたわね」
「ほ、本当にやるんだ?」
「当然でしょ、私が知ってる類で一番証明がしやすいものなんだから。…ほら、手繋いで」
「わ、分かった」
手を繋ぎつつ、その時を待つ。
たった十数分なのに、普段の授業時間よりも体感が長い気がした。
そして、16時44分。
「…!行くよ!!」
「えっ、ちょ…?!」
一瞬鏡の中に発生した僅かな波紋のような歪みに三珠が入って姿が見えなくなったと同時に、陽月もその中に入る形になる。
先ほどまで2人がいた場所には、まるで人気が無くなっていた。
*
「なんとか入れた…。となると、この2つは証明出来る…」
「うぇっ、うぅ…」
「あんた、大丈夫?ちょっと座って休んでたら?」
「そうする…」
2人が入った世界は、現実の鏡に映っている世界が反転したものではなかった。
言うなれば、
どこかの遊園地に似たようなアトラクションがあったようなと思いつつ、陽月はその場に座り込む。
「私はちょっと色々調べてくるから」
「迷わない?」
「本当にあるなんて思ってなかったから、ついね。…落ち着いたら探しに来て」
「…うん」
そうして、先に奥へと進む三珠を見送った。
何回か、深呼吸を繰り返す。
少し息が詰まるような。
それでいて、軽く酔っているような。
「でも、この感じ…」
「──
*
数十分後。
落ち着いた陽月は立ち上がり、辺りを見回す。
といっても、どこもかしこも鏡ばかりなのだが。
「方向感覚おかしくなりそう…。とりあえず、三珠さん探さないと」
此処がどの程度の広さなのかはさておき、体感的には離れて30分も経っていないはず。
最初に三珠が進んで行った方へ、歩を進める。
「ん?んん…?」
考えた通りだった。
景色は変わり映えしないのに、周囲に鏡しかないせいもあり、前後で進んだ道や方向が分からなくなる。
その上、どこが袋小路になり得るのかも分からない。
「まずいなぁ…」
この様子だと、恐らくはぐれていてもおかしくない。
なんなら、最初にいた場所も分からなくなっている。
──ふと、狐の鳴き声が聞こえる。
「…あっ…!?」
目線の先にいたのは、何かと自分の近くに現れるいつもの白い狐。
狐は陽月の方を見ると再び一声鳴いて、少し先を行く。
「ちょ、待って!」
慌てて狐の後を追いかける。
何故此処にいるのかという疑問はさておいて、今はこの狐に頼るのが無難な気がしたからだった。
狐の後を追いかけて、十分程度経った頃。
「もう、君もさっきからなんなの──…?」
狐が鳴いた先を見ると、石化している何かのアイテムがあった。
見たところ、教科書で見たオイルライターのようなものが2つ。
もう一つの大きなアイテムは腰辺りにつけられそうな大きさだった。
狐はそのままアイテムの近くに行くと陽月の傍へグイグイと寄せる。
「──僕の、なの?」
その問いに狐は再び鳴く。
恐る恐るアイテムを取ったと、ほぼ同時に。
「わっ!?」
3つとも石化が解け、2つのオイルライターはそれぞれ紅と白の色が入り、大きなアイテムも漆で塗られたかのような色が顕になり、オイルライター2つを入れられそうなスペースが見える。
そして、大きなアイテムの近くに鏡のような材質の手裏剣のようなものがついたプレートが落ちる。
「え、えっと…?」
どうにかそれらを集め、両腕の中に収める。
割とギリギリな気もするが、仕方がない。
いつの間にか、先ほどまでいた狐はいなくなっていた。
「ど、どうしよう?」
*
一方、三珠。
「…流石に奥の方まで来すぎたかしら…」
証明出来た嬉しさと、その場所にいるという事実に興奮して、思わず奥の方まで来てしまっていた。
早々、陽月とはさほど距離も離れていないと信じたいが、早くこれをまとめたい気持ちも0ではない。
「でも、ちゃんとやるんだったら1回出口を探さないと……」
その時だった。
僅かな金属音と共に、三珠の髪を僅かに何かが掠めたのは。
「っ?!?」
見ると鏡のような材質の兵──チェスのポーンか何かだろう──が自分の近くに現れていた。
「どうなってるの?!」
三珠が発した疑問に応えず、兵は三珠に向けて槍を向ける。
思わず、本能故の恐怖の叫びが辺りに響いた。
*
「!今の…三珠さん?!」
声のした方へ慌てて駆け出す。
どうにか辿り着くと兵のようにも見える異形が、三珠を追い立てていた。
「…っ!!」
慣れないながらに蹴りを繰り出し、異形を後退させる。
「っ、あんた…」
「大丈夫?!」
「人の心配してる場合!?」
「するでしょ、死んでたかもしれないんだよ!?!」
「それは…」
「……とにかく、三珠さんは今は出口がどこにあるのか思い出す事に注力して」
「でも、あんたが…!…怖くないの?こんな、奴等目の前にしてるのに」
そう言う三珠の声は震えている。
「怖いよ、僕だって凄い怖い。都市伝説でしか存在しない異世界に今いる事も…目の前にいる此奴等も。…でもね」
「──怖いけど、やらなくちゃいけない事は誰にだってあるんだ」
*
陽月は先ほど手に取った漆黒の大型アイテムをおもむろに腰部分に当てる。
自動的に帯が装着、同時にそれに似合わぬ音声が響く。
《エンチャントドライバー!》
それと同時に
そのまま、手裏剣のようなプレートをドライバーの右手側に挿入。
《シノビミラープレート、セット!》
更に紅のオイルライター、白のオイルライターの口を開け、着火・起動させ、点火した方を下にしてドライバーの空きスペースに装填。
《フォックス×
そこからミラープレート側に右手を添え、左手で狐を作り、“その為の言葉”を発した。
「変身!!」
《エンチャント!》
同時にプレートの手裏剣部分が回転し、それに巻き上げられて風と共に紅と白の炎が猛る。
発生した風によって黒いアンダースーツを装着し、その上に武士のようにも、忍のようにも見える紅い和鎧が各部に炎によって形成され、装着。
白い狐を模した仮面に少し吊り上がった複眼が現れ、それが唐紅に光る。
後ろ腰の部分に白い二尾の狐の尾が揺らめくように現れ、最後に左側の方へ流れる白いストールが首元に装着され、風と炎が晴れる。
《焔纏いて夜を駆ける忍!
そして、狐の鳴き声が辺りに響く。
同時に発生した強い風により、兵の異形達の一部は大きく吹き飛ばされ、中にはそのまま砕け散る者もいた。
「あんた、それ一体…」
「僕にもよく分かってない。…でも、僕に出来る事はやらなくちゃ」
その言葉と共に陽月が変身した存在──狐忍は兵の異形達へと攻撃を仕掛ける。
赤い炎を纏った蹴りが、打撃が、確実に仕留めていく。
「うわっ?!」
残っていた兵が槍を投擲するも、どうにか回避し、下からつま先蹴りを喰らわせる。
そこから奪った槍で別の兵を貫き、それごと吹っ飛ばす。
直線的に向かってくる兵達を飛び上がって回避し、そのままプレートの手裏剣部分を1回転させる。
《必殺
《壱式!》
二尾に炎が充填され、片足蹴りの状態になると同時に前に突き出した足の方へと紅い炎が向かい、二尾が少し後ろへと向きを変える。
そこから兵達に向けて紅い炎を纏った片足蹴りを喰らわせると、兵達は連鎖的に爆発を起こすと共に倒される。
「とりあえずこれで此処は全部…!三珠さん、出口覚えてる!?」
「一応。でも行けるの…?」
「──道は僕が拓く。君は案内に集中して」
そう言って三珠を立ち上がらせ、自分の近くに。
「分かった。気をつけなさいよ」
「…うん」
*
──それから少しして
手を繋いで、辛うじて出口近くに到着する。
「まだいる…っ」
「…あっ」
「何よ」
「…僕が三珠さんの事抱えて突っ走れば、突破出来ないかな?」
「無茶にも程がない?!」
狐忍が見つめる先には最初に入ってきた鏡が見える。
が、先ほどの戦闘を警戒してか、兵の異形達も多少配置されているようだ。
「でも炎って頑張れば、だいぶ勢いつくよ?」
「まあ、理論上はそうでしょうけど…」
「…やるだけやってみない?」
「あんたも割と度胸あるわよね」
「えっ」
「…まあいいわ。乗ってあげる」
「ん、分かった」
そう言って、狐忍は三珠をお姫様抱っこする。
そして、片手でプレートを90度ほど動かす。
《火遁・
「っ!!」
同時に首元のストールに炎が充填され、先まで行き渡った瞬間、一気に加速する。
その勢いのまま、途中途中で兵の異形達を薙ぎ倒しながら、一直線に鏡へと向かう。
そのまま、正面に見えた鏡に向かって突っ込むと同時に現実へと帰還する。
「はぁ、はぁ…っ」
「あんた、大丈夫?」
どうにか戻ってはこれたものの、陽月はどこか疲れ切った様子だった。
そのまま三珠の近くに倒れ込む。
「……う、ぁ」
「ちょっ…!」
変身が解除され、ドライバーは五芒星の陣から発された光と共にどこかに消えたが、2つのオイルライターは蓋が閉じたまま、陽月の近くにあった。
「……落ち着いたら帰るわよ。…あんた、家どこ?」
「家っていうか、施設なんだけど…」
「施設?」
「うん。…
「寝落ちしかけるんじゃないってば!ちょっと!?」
*
──それから暫くして
逢魔学園から少し離れた、ある場所にて。
「いやぁ…ごめんね。送って貰っちゃって…」
「いいのよ。私だって実証付き合って貰ったし…あと、助けられたし。というか、あんた養護施設住みだったのね」
「僕、孤児らしくてさ。親も分かってないし、迎えに来ないから…こうして高校生までお世話になってて」
三珠が陽月を送った
「里親とかは?案外いそうだけど」
「保護施設じゃないからだって。まあ、気にしてないけど」
「っ…。少しは気にしなさいよ!親との思い出の一つや二つ、気にしないわけないでしょ!」
「…皆、年下の子達を除けば、僕の事をなんか避けてるんだよね」
「…は?」
陽月は少しバツの悪そうな顔をしながら、言葉を続ける。
「さっき使ったアイテムの所にさ、白い狐が案内してくれたんだけど…その狐って、僕がこの施設でお世話になっている時も、ちょこちょこ現れてたみたいで。害はないから、職員さん達も僕と接するのは気にしてないらしいんだけどね」
「その白い狐っていうのが避けられてる理由なの?」
「…なんじゃないかなって、なんとなく。だって狐ってあんまりいい目で見られない動物でしょ?」
「…あのねえ、そりゃ狐を由来とする妖怪もいるにはいるけど、全部が全部悪いってわけじゃないの。人を叱りつけるのもいれば、手伝うのもいる。あんたの近くに何かと現れるその狐も、別に悪い奴じゃなさそうだけど?」
「三珠さんらしい例えだなぁ…うん」
「…そんな風に言うの、あんたが初めてよ」
「?そうなの?」
「まっったく、もう…。それじゃ、そろそろお暇するわね。今日の事は一旦2人の秘密って事で」
「うん。…また明日ね」
「はぁ〜……。ホント調子狂うわ、あんた」
「なんでぇ!?」
陽月は三珠を見送った後、伸びをしてから施設内の自室へと戻った。
「…でも、なんであの狐、彼処にまで現れたんだろ?」
*
──某所
一目につかないよう、一見すると屋敷に偽装されたある場所に数人ほど人が集まっていた。
「今回集まって貰ったのは
オレンジ寄りの茶髪のワンサイドアップと桃色の目をした女性の言葉に緑色の髪と目の青年、紫色の髪と黄色い目の女性が少し驚いたような顔をする。
それに反応を返したのは紺色の髪に水色の目、赤縁の四角い眼鏡をつけた男性だった。
「
「
「接触するんです?」
千世の言葉に紫色の髪に黄色い目をした女性が次の疑問をぶつけた。
「その予定ではある。ただ、その際に立ち会った一般人がいるそうだから、それを含めての接触は君にお願いしたい。任せて大丈夫かな、鈴」
「勿論ですよ〜。漸く見つかってなかった物に変身出来た新人ちゃん、私も会ってみたいですし」
「…そんな簡単に、厚意的に捉えていいのかな」
鈴の言葉に緑色の髪と目をした青年が多少訝しげに言葉を紡ぐ。
「
「それは分かってる。…でも、あれは制御が難しいって、ずっと言われてたし…使える存在も少ない。何か理由があってもおかしくない。なら、万一の事は考えておく必要があるって思っただけ」
「君だって、変身できるとはいえ…一応下忍なんだからね?先輩の言葉は少しは聞いておいた方がいいよ?」
「…言われなくても」
泉里はそう呟くと外へ出ていった。
「出来れば仲良くして欲しいんだけどな〜。あの感じだと難しいかもしれないけど」
「まあ、泉里君良くも悪くも頑固ですから。…オレはその子が来た時用に霊装諸々の調整と整備が出来るようにしておきます」
「よろしく、内匠君。…さて、これから忙しくなるかもね」
千世が手元で見つめる紙には「紅白狐ノ忍 新規
記録 零ノ巻
陽月が暮らしている児童養護施設。
厳密な児童保護施設ではないものの、里親が見つかるまでの間か、高校3年生〜大学入学までは面倒を見て貰える。
部屋は基本的に高学年と低学年が混合で、高学年が低学年の面倒を見る事もある。
トレーニング系も充実しており、一定の年齢を超えれば受講も可能。