岸辺露伴、帝都へ行く   作:玄武Σ

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岸辺露伴、帝都へ行く・上

「……ここは?」

 

漫画家・岸辺露伴はある日、目を覚ますと何処かの路地裏にいた。

昨日、漫画の取材の準備を終えて自宅で休んだはずなのに、何故か野外、しかも見知らぬ路地裏にいたのだ。なぜか荷物も一緒にあったのが幸いだったが。

露伴自身もわけがわからなかったが、とりあえず路地を出ることにする。

 

「オイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイ。こいつはどうなっているんだ?」

 

露伴の目の前に広がっていたのは煉瓦造りの家屋が広がる、ヨーロッパ風、というかファンタジー風の街並みだったのだ。

 

「まあ、どこだろうと僕がすることは変わらないけどな。というか、むしろここの方が取材にぴったりなんじゃないか?」

 

その後、露伴はやや上機嫌気味に街へと繰り出す。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

あれから取材を続けて分かったことがいくつかあった。この街が帝都と呼ばれていること、グローバル化のご時世にに貴族制度が残っていること、先代皇帝亡き後にその幼い息子が即位したこと、その皇帝を推したオネストという大臣が政治で好き勝手やっているということ、そしてそれによって帝都どころか国が腐敗してきたということ。

 

「面白い話ではあるが、あまりインスピレーションに働かないな。さて、どうしたものか……」

 

日が傾き始めたころ、露伴は適当に見つけたベンチに座り、ポケットに入っていた栄養バーで軽く腹ごしらえしながら呟く。取材の合間に露伴は手持ちの金を換金しようとしたのだが、日本円が金だと信じてもらえなかったため、突っぱねられてしまったのだ。

これまでの取材でもわかったように、この国ではいまだに貴族や王族が権力を持っていた。しかも日本やアメリカなどのメジャーな国が知られていないということから、露伴は自分が置かれている状況に気づく。

彼は、何故か異世界にいたのだ。これが夢なのか、新手のスタンド使いの攻撃なのか、そこはわからなかったが、少なくとも現状では杜王町に変える術がないため、早く生活資金を得る必要があった。

 

「最悪、僕のポリシーに反するが日銭を稼ぐために漫画もしくは絵を書いて売るしか「あ、あの…」…?」

 

一本目の栄養バーを食べ終えた露伴は、二本目を口に運ぼうとしたときに、誰かから声をかけられる。振り向くとそこにいたのは、背中まで伸ばした黒髪の少女と、バンダナを巻いた少年だった。

 

 

 

「へぇ、ロハンさんのお仕事って面白そうですね」

「ああ。その漫画ってやつ一回読んでみたいぜ!」

「そうかそうか! そんなに興味を持ってくれたんだね!! 僕はうれしいよ、サヨ君にイエヤス君!!!」

 

あの後露伴は、この二人に栄養バーを不本意ながら分けることとなったが、自身の職業について語ると二人とも漫画に興味を持ってくれたので、嬉々とした様子ですぐさま友人認定をしてしまうのだった。この二人はそれぞれサヨとイエヤスといい、地方の村から帝都にやって来たらしい。なんでも、二人の故郷は重税によって貧困にあえいでいるらしく、そんな村を救うために軍に士官して金を稼ごうとしていたのだという。しかし、ここに来る途中で夜盗に襲われ、もう一人の幼馴染(タツミというらしい)と逸れてしまい、しかもその幼馴染が偶々全財産を持っていたために二人も無一文状態だったという。それで物欲しそうに露伴の栄養バーを見て、ダメもとで分けてもらえないかと思い、声をかけて来たという訳だった。

 

「食料を分けてもらったお礼に、何か手伝わせてください」

「いや、なったばかりでも友達にそんな苦労はさせないよ。とりあえず、今日はどこか宿でも探して親睦でも……」

 

露伴はそのままサヨと会話していると、馬車が通りがかったのを見た。と思っていたら、その馬車がいきなり止まり、中から金髪の少女が出てきた。

馬車に乗っていたことからもわかるように、少女は貴族と思われる。着ている服も上等そうなので、確実だろう。

 

「あなたたち無一文?泊まる当てがないなら私の家へこない?」

「……いいのか? 俺達からすれば願っても無いことなんだが…」

「アリアお嬢様は困っている人間を放っておけないお方なんだ」

「お言葉に甘えておけ」

 

出てきた少女は開口一番にそう言った。イエヤスが代表してそのことを尋ねると、護衛らしき二人も勧めてきたので、とりあえず乗っかることにした。

 

(ふむ、リアル貴族の話なんて日本どころか現代じゃ聞けなさそうだな。こいつも取材にピッタリなんじゃ……)

 

ただし、露伴にはそんな打算があったようだか。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「……あれ? 僕はどうしたんだ?」

「目が覚めたかしら?」

 

目を覚ました露伴の前には、笑顔で仁王立ちしているアリアの姿があり、露伴自身は鎖につながれて身動きが取れなくなっていたのだ。周囲を見回すとここは薄暗い部屋で、辺りには腐っていたり体の一部が無くなっていたりする死体がいくつもあり、そしてサヨとイエヤスが眠ったままで露伴と同じように鎖で繋がれていた。

露伴達はあの後、アリアに招かれた屋敷で夕食をご馳走になった。露伴も食事の席で貴族の暮らしについてアリアの両親に取材していると(漫画といってもしっくりこなさそうだったので作家ということにした)、いつの間にかサヨとイエヤスが眠っており、露伴自身も睡魔に襲われてしまい、現在に至る。

 

「アリア君、これは何の冗談だい? いくら君が貴族とはいえ、年上に敬意は払わないといけないんじゃないかな?」

「冗談じゃなくて私の趣味よ。これから、あなた達三人に拷問をするの。それと、家畜に年上も何もないじゃない」

 

不機嫌そうな露伴を他所に、アリアは変わらずに笑顔で常軌を逸した発言をする。すると、その直後でサヨとイエヤスも同時に目を覚ました。

 

「あれ? ここって……」

「な、なんだここ!?」

 

少なからず修羅場をくぐり、取材先で色んな恐怖経験をしてきた露伴だからこそ冷静だったが、仕官しに来たとはいえつい最近田舎から来たばかりのサヨとイエヤスは、周囲の様子を見て驚愕する。

 

「アリア、あなた一体何を…「僕達を拷問するつもりらしい。しかも趣味だそうだ」ええ!?」

 

アリアの代わりに、先に話を聞いていた露伴が相変わらず不機嫌そうに説明した。まあ、他人の趣味で拷問を受けさせられるなんて、納得のいくものではない。

 

「この趣味は元はお父様が始めた物なんだけど、お母様も薬漬けにした家畜どもの観察日記をつけるって似たような趣味が高じて結婚したの。そして、娘の私にもそれを教えてくれて、今じゃすっかりはまっちゃった」

 

アリアは好きな男の子について話すかのように、その異常かつ下劣な趣味について語り出した。その様子に、得体のしれないものを感じ取って、サヨもイエヤスも背筋が凍り付く。

 

「地方から出てきて不安の大きな家畜が、少し優しくしてもらっただけでホイホイ付いて行って、そのまま絶望のどん底に叩き落される。その様子を見ながらいたぶるのがもう最高で……」

 

話している内容は身の毛もよだつような内容で、しかもアリア自身もそれを説明している途中でうっとりしている。おぞましいことこの上なかった。

しかし、露伴はそんなことよりも先程からアリアが行っているある単語について引っかかっていた。

 

(家畜だと? この僕が、健全な少年少女の為に漫画を書いているこの岸辺露伴が、家畜だと?? しかも、そう思い込んでいるだけの無能な小娘に騙されただと???)

 

露伴の中には恐怖や不安ではなく、違う感情が渦巻いていた。

 

これは、そう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……怒りだ

 

「この岸辺露伴をハメて、しかも牛や豚と同レベルだというのかスカタンがあぁあああああああああああああ!!」

 

露伴がいきなり怒りだし、サヨもイエヤスもアリアも突然の事態に驚く。しかし、露伴はかまわずに続ける。

 

「この国の人間は知らなくて当然だが、僕は漫画家・岸辺露伴だ! 週刊少年ジャンプの人気作品ピンクダークの少年で故郷の日本じゃそれなりに有名だ!! そんな僕を、親の権力を背に威張り散らし、しかも非生産的な趣味しか持たない無能な小娘より格下だと思っているというのか、このスカタンがぁあああああああああああ!!!」

 

ブチギレた露伴の反応に、アリアは先程の陶酔っぷりも抜け落ちて、焦り始めている。

 

「あいにく、僕はここから逃げさせてもらうよ。僕が死んだら漫画が描けないし、新作を読んでもらえない。よって、君のようなスカタンの趣味には到底付き合えないのさ」

「へ、へぇ〜……けど、どうやってにげるつもり? あなた今、縛られてるでしょ」

 

露伴の迫力に一瞬押されたアリアだったが、すぐに露伴の現状を思い出してそれを突きつける。

確かに、鎖で縛られている人間は動けない。鎖を引きちぎるという方法もあるが、露伴自身はそれが出来るほど屈強そうには見えない。しかし、彼はこの状況を打破できる力を持っていた。

 

「まあ、百聞は一見に如かずということで、説明するより見てもらう方が早いか。サヨ君もイエヤス君も見ておきたまえ」

 

そして、露伴は少し間をおいて……

 

「ヘブンズ・ドアーーーーっ!!」

 

叫ぶと同時に、何処からともなく小柄な少年の姿をした何かが出現した。のだが、この少年の姿はサヨにもイエヤスにもアリアにも見えない、というか露伴以外の誰にも見えないのだ。

 

スタンド

生命エネルギーが生物や器物などの形を持って実体化した、いうなれば形ある超能力である。ちなみに、この姿は先程露伴が言っていた彼の代表作”ピンク・ダークの少年”の主人公の物だという。

なぜ露伴にしか見えないのかというと、スタンドはスタンド能力を持つ人間にしか見えないというルールが存在しているためである。

スタンドにはそれぞれに固有の能力が存在しており、このヘブンズ・ドアー(天国の扉)の能力は

 

「!?」

 

スタンドが触れた相手を本に変える。そして、その本は元になった人間の体験したことのすべてが記されているのだ。

ヘブンズ・ドアーに触れられたアリアは、顔が本のページのようにめくれて行き、サヨとイエヤスもその様子を驚愕に満ちた表情で見ていた。そして、そのページの一か所にヘブンズ・ドアーの持つペンによって文字が書かれたのだ。

「岸辺露伴を解放しろ」と

 

「え、なにコレ……あなたを解放しないといけないって衝動が……」

 

ヘブンズ・ドアーで本に変えられた人間のページに、「~をしろ」「岸辺露伴を攻撃できない」といった具合に命令を書き込むことで、相手の意思に関係なくそれを実行させることが可能なのだ。しかも発言した当初こそ露伴自身が直接ペンで書き込まなければ効力を発揮できなかったが、スタンド能力の成長によって今では遠距離からでも文字が書けるようになったのだ。

それによって、アリアは本を閉じられると同時に、自身の意志と関係なく露伴を拘束している鎖の錠を外してしまったというわけだ。

 

「さて、サヨ君たちとは友達になったばかりなんでね。二人も一緒に開放させてもらうよ」

 

錠を外された露伴はアリアから鍵束を奪い、二人の開放に向かう。

 

「家畜の分際で、よくもコケにしてくれたわね……」

 

しかし、露伴が背を見せたと同時に、アリアは小さく呟きながらナイフを取り出す。そして、サヨの錠を外している露伴に向かって駆け出した。

 

「もう趣味なんてどうでもいい! 今この場で殺してやるわ!!」

 

アリアは美少女に分類されているが、その内に秘めた醜悪な感情を露わにし、加えて露伴に対しての憎悪と怒りを爆発させて、顔を酷く醜い物に歪ませていた。

 

「ロハンさん、危ない!!」

 

サヨが叫ぶがアリアはすでに露伴にナイフを振り下ろそうとしており、絶体絶命だった。しかし

 

「がぁあっ!?」

 

アリアの喉元に衝撃が走り、動きが止まった。そして、あまりの痛みに持っていたナイフを落としてしまう。

 

「僕のヘブンズ・ドアーは力こそ弱いスタンドだけど、それでもろくに鍛えていない小娘を倒すのは容易いのさ」

 

そう、アリアの喉元に走った痛みは、ヘブンズ・ドアーに殴られたことによるものだったのだ。スタンド使いにしか見えないというルールと、スタンドの存在を知らない人間と対峙したからこそ出来たものだった。

 

「最初は、グーだ!!」

 

そして、サヨの錠を外し終えた露伴はアリアの鳩尾を思いっきり殴り、それによってアリアは崩れ落ちたのだ。確かに彼女は人としては恐ろしいが、所詮は一方的に相手をなぶっていただけで、直接戦闘の経験など皆無だった。露伴はスタンドに覚醒して以降、スタンド使い同士が惹かれ合うというルールからスタンド使い同士の戦いを非が応にも経験せざるを得なかったので、実戦経験もあるので、タイマンを張れば結果は一目瞭然だ。

 

「ロハンさん、さっきのアレは……」

「詳しいことはあとで話すさ。でも、その前にイエヤス君を解放しないと」

 

露伴はそう言って、イエヤスの方に近づいて彼の錠を外しにかかる。

その後、露伴はイエヤスの錠も外してやり、倒れているアリアを放置して屋敷からの脱出を図ることにした。

 

「あの、彼女はこのままにしておくんですか?」

「放っておいたら、また誰かが犠牲になるんじゃ……」

「僕は犯罪者になりたくはないんでね、彼女は生かすことにしたさ。けど、確かに何か罰を与えてやらないとダメだな……」

 

くる途中、ナイトレイドという富裕層の人間を殺して回っている殺し屋集団の指名手配書があったが、アリアを見るに彼らはこのような悪人だけを殺して回っているのではないかという推測が立った。加えて、サヨもイエヤスも仕官しに帝都を訪れたので、アリアを殺すことに抵抗もないようである。

しかし、スタンド能力こそ存在している物の、至って平和な日本から来た露伴は別だ。露伴は自分勝手な性格だと言われているが、平然と殺しが出来るような外道ではないので、殺しに躊躇いがあるのは当然であった。

しかし、何か罰を与えて二度とこのようなことを出来なくするべきでもあるのだったのだ(ただし露伴はハメられた仕返しがしたいだけという理由)。

 

「よし、こういうのはどうだろう?」

 

何かを思いついた露伴は、再びアリアにヘブンズ・ドアーを使用し、何かの命令を書き込んだ。

アリアの両親を襲撃してヘブンズ・ドアーで自分達を認識できないようにした後で少しの金を押収、門番にもヘブンズ・ドアーを使い、自分たちに会ったという記憶のページを引きちぎって記憶消去、そのまま脱出した。これで追われる心配もなくなったのだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そして翌朝、広場に人だかりが出来ていた。その中央にはアリアがいて、何やら喚き散らしている。

 

「これは3か月前に新婚旅行に来た田舎者夫婦が身ごもっていた子供のミイラでね、親が死んだ後にお腹を裂いて引っ張り出した後で拷問したの!! それからこっちは……」

 

なんとアリアは広場で自身の趣味について暴露しており、死体のいくつかを家臣に持ち出させてそれを証拠

として見せて回っていたのだ。露伴がアリアに書き込んだ命令は

 

 

 

 

 

「趣味について人の多いところで暴露しろ。その際に証拠も見せて回れ」だった。

 

余談だが、アリアはこの後両親及び家臣諸共帝都警備隊に逮捕されたそうだ。やっていることがことなので死刑は免れないし、仮に免れても一生独房生活だろう。

 

「自分の悪行を自ら人に暴露する。これ以上に屈辱的なことはないはずだ」

「ロハンさん、とんでもないこと考え付きましたね……」

 

遠巻きからアリアの様子を見ていた露伴はドヤ顔で語っており、サヨもその様子にドン引きしていた。

そして、広場から離れたあたりで

 

「私達はこのままタツミを探しに行きます。それで、何か村にお金を入れられる仕事を探します」

「そうか。僕も漫画の取材があるし、いつか帰らないといけないから、ここでお別れだね」

「ロハン、助けてくれてありがとうな! あと、このマンガってのも読ませてもらうぜ!」

 

露伴からもらった「ピンクダークの少年」のコミックスを手に、イエヤスが上機嫌そうに礼を言う。帝都では英字が使われているようだったので、海外版を渡しておいた。何故持ってたかは、ここでは語るまい。

そして、彼らはそのまま露伴と別れた。

 

余談だが、この二人はタツミと再会し、成り行きからナイトレイドに入ることになるが、露伴が知るところではなかった。




どうも、流行に便乗してアカメが斬る! に挑戦してみました。とりあえず、サヨとイエヤスの生存がやりたかったので。
で、作品が作品だけに仕方がないですがキャラが死にすぎる。なのでたまには死人が少なく、それでいて悪党がしっかり裁かれるのは無いかというのを考えた結果、「露伴先生のヘブンズ・ドアーを使おう!!」という考えに至って、本作が誕生しました。

ちなみに、原作未読&他の作品もあるので2,3話程度で完結の予定です。
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