「・・・宇沢ッ!」
ゆっくりと、目を醒ます。顔に浮かんだ玉のような汗を拭いながら、彼女──レイサ*スターは、友達と先生の顔を見上げる。
「・・・ははッ」
憑き物が落ちたような顔から、零れた笑顔は。彼女の旅路が、無事に終わったことを告げてくれた。
それと同時に──弾けるような、歓喜の声が上がる。
抱き合って喜ぶ、ヨシミとアイリ。
つられてジト目のまま、万歳をするナツ。
『流石私ですね』と言わんばかりの、もう一人の私。
優しくこちらを見守るスズミ。
同じく、私の側で並んで笑う先生。
そして──
『お帰り、宇沢。待ってたよ』
そう言って微笑む、杏山カズサ。
「──えぇ。只今、戻りました。宇沢レイサ、帰還いたしました」
その微笑みと一緒に──私も、屈託のない笑顔で、笑った。
笑うことが、できたのだった。
それから、一週間後の風景。
今から垣間見るのは、彼らが至った世界の姿である──
「いましたね・・・見つけましたよ、杏山カズサァ!今日という今日こそ、決着をつけてやりますよォ!」
「だから!あんたは!!いい加減!!!話を聞けって言ってんの宇沢ァ!!!!」
「さぁ!行きますよ杏山カズサ!あれは開発済みですよね、放課後スイーツ部の偉大なる研究員!」
「ふむ、勿論。最新鋭の技術を結集させてできた人智の結晶。それがこのドライバーだ」
「いやどうみてもおもちゃのベルトなんですけど!?」
「うぉ~~~~変身だぁ!」
「あんたたちまとめて、後で覚えてなさいよ・・・!」
そんな、どこかの世界でも、繰り広げられていた会話が。
だけど──その『世界』は、違った。
真昼の空に──彗星は、人となったのだから。
「はぁ・・・全く、こっちの私は元気ですねぇ・・・」
「あ、やっときたわね!レイス(レイサ*スターの略称らしい)、あんたこいつどうにかしなさいよ!!!」
「そうですね・・・そんな風に、挑戦状を乱暴に渡しながら、杏山カズサに宣戦布告するものではないですよ──」
そうして彼女は、レイサ*スターは、宇沢レイサの肩に、ポンと手を置き──
懐から、挑戦状を出した。
「──は?」
「相手がちゃんと受諾するまで、待つのが礼儀でしょう。挑戦状は──このように渡すんです」
そう、レイサ*スターは──この世界の宇沢レイサとは、全く違う様相だった。
一言で言えば、紳士──ジェントルマンのような風貌。
黒い燕尾服を鮮やかに着こなし、手には綺麗な白手袋。
言うなれば──ちょっと男装のそれに近く、人によっては見惚れてしまいそうだ。
まぁ、今その彼女が挑戦状を懐から出してるわけなのだが。
「そういうわけで、杏山カズサ──挑戦を受けて頂きましょうか?」
「~~~~~~~~~ッ~~~~~」
「やっぱこいつ宇沢だわ!!!!!!」
「こういう所は、やっぱこいつ変わんないわね!」
「ひゃぁ~いつ見ても似合うなぁ」
「うむ。男装イケメン女子は、ある者たちにとってはまさにご褒美」
「あんたたち!!!
まとめて!!!!
後でぶっ飛ばすッ!!!!!」
・・・と。
もしかしたら、想像とは違ったものになったかもしれないが。
しかし、彼女は。この世界は。恐らくは、もう大丈夫だろう。
もう彼女は、独りになることはない。独りに、なろうとはしない。
きっとみんなで──この世界という『居場所』を、勝ち取っていくのだろうから。
そう、つまるところは──
「私たちの戦いは、これからだ!!!」
「いやナレーションを奪うな!メタいわ!!!」
───それじゃ、バイバイ。
頑張ってね──レイサ。
私たちの、スーパースター。
Fin.