今回は殆ど戦闘シーンばっかです。
感想乞食しておいて月一の亀更新になってて申し訳ない。
その後も奇妙な出来事は続いた。
『なんか変なボタンあるニャン』
『ん? ああ、危ないから絶対に押さな──』
『ポチッとな』
『───い、でって言おうとしたんだけど……』
トンネルの出口が 少し遠くなった気がした……
『『……』』
『違うんです』
てっきりいつもの'フリ‘だと───などと宣っているウィスパーはさておき。
こんな感じで道行く途中にあるボタンを押しまくったり、謎に設置してあった自販機に勢いで万札を突っ込んだりもした。 何も出なかった。
何を律儀に全てのトラップに引っ掛かっているのか。
線路も無いのに現れた蒸気機関車。
去り際に鳥肉を渡してくる鶏、謎のひょっとこの人など、この他にも様々な異変は続く。
そうして進んだ先。
おおよそ8kmは進んだだろうという所まで来た時、今まで暗闇に覆われていたトンネルの先から光が差し込んでくる。
「出口っぽいね」
「この先にマジで人がいるニャンか?」
「恐らくはそうでしょう。 他に出口はありませんでしたし」
先の景色は見えない。
やはりこの空間と外は何らかの手段で断絶させられているのだろうが、今更そんな事を考えている暇はない。
どのみち道中に出口は無かったのだ。
彼女は最初から俺達をトンネルの向こう側に誘い込むのが目的だったのだろうと当たりをつける。
───でも、一体何のために?
「この先に間違いなくトンネルの主……危険な妖怪も居るでしょう。 ケータくんも気を付けて」
「言われなくても……ッ!」
スタミナムのお陰で消耗はごく僅か。
脳裏によぎった疑問を振り払い、両脚に気合いという名の鞭をいれて光へ駆ける。
◆◇◆
光の中を抜けた先。
目を開けないほどの眩しさが薄れ、開けた視界に差し込んできたのは、青白く光る満月の光だった。
「入ったときは真昼だったのに……」
「月の位置を見るに、ここは真夜中───妖気の最も強まる丑三つ時のようでうぃす」
まだ日の落ちる時間ではない。
故にここも、少女の生み出したトンネルと地続きのエリアなのだろうと察する。
言われるがまま、ウィスパーの指差す方向へと視線を上げると、確かに満月が西の方へと傾いていた。
そうして月を見ながら立ち止まっていると、リンリンと辺りに響く、スズムシの鳴き声が耳に入る。
外は今9月の下旬。
時間は違うが、どうやら季節は同じらしい。
まあ、それは恐らく偶然で、特に大した意味は無いのだろうが。
「…………行こう」
同時に頷くジバニャンとウィスパー。
彼等を尻目に、前方へと向き直って歩き出す。
そうして、少し歩いた先は行き止まりで。
そこに奴は立っていた。
「……」
5m程度は優に超えているであろう身長。
腰には丸太を削って作られた杭、右手には己の身長以上の大きさの槌を持っている。
ああ、間違いない。
その姿に、俺は見覚えがあった。
その妖怪の名を脳裏に浮かべると同時に、ウィスパーが口を開いた。
「アレは──」
「『でるくいたたき』……ッ! 何故居るのかは分かりませんが、恐らく奴がこの空間の主でしょう」
「じゃあ、隣の子が例の泣き声の子ニャン?」
出る杭は打たれる、とはよく言われる。
その名の通りあの大男は、そういう人間に灸を据える妖怪なのだろう。
幸いにも、まだ此方の存在は認識されておらず、その視線はジバニャンの指差した先にいる少女へと向けられていた。
背丈は自分とそう変わらない。
今も尚、えんえんと声を上げながら泣いているように見えるが、顔を両手で覆っているせいでその表情は見えず、足元に至っては少し地面から浮いている。
見ての通りだ。
こんな所にいる時点でという話ではあるが、まず間違いなく普通の人間……一般人の類ではない。
自分は端から分かっていた事であったが、ジバニャンとウィスパーはそこでようやく気付いたようで、あれっ? と両者首を傾げていた。
大男───でるくいたたきが、慈しむような声で、少女へと話しかける。
『おめえさ、泣がしたやつは誰だっべ?』
「───」
少女が僅かに顔を上げた。
そして、此方へと視線を向ける。
既に此方の存在に気付いていたのだろう。
「…………」
「…………うん?」
前髪に隠れて、目元は見えなかった。
故に確証は持てないが、手の平越しに彼女と一瞬、目があったような気がした。
そして、数秒の空白の後。
少女は『こいつらです』と言わんばかりに───無言で、俺達のことを指差した。
「───は?」
「「!?」」
完全に虚を突かれた。
少なくともこの瞬間、この先奴と戦うことしか覚えていなかった俺は、この展開を覚えていなかったからだ。
無論、彼女とはバリバリの初対面である。
ゲーム越しと言うのならいざ知らずだが、アレは本来複数回えんえんトンネルに入った後に起こるイベントだ。
えんえんトンネル童貞を今しがた脱却したばかりの今の俺に起こるものではなかった筈。
いやはや、本当に嫌になるね。
つくづくこの世界は俺に優しくないらしい。
「あのさ───ッ!?」
口を開いた直後、地鳴りの如き轟音と衝撃で、発した声が掻き消される。
すぐさま音の中心部と思わしき、砂ぼこりの巻き上がった方向へと視線を向けると───
『─────おめえか?』
地面に向かって槌を振り落とし、こちらを憤怒の表情で睨みつけるでるくいたたきの姿があった。
『おぉ、おぉ、おぉぉぉんッッ! おめえかァァァッ!! うちの娘さ、泣がしたのはァッ!!』
ダン、ダンと、怒れるでるくいたたきが槌を地面へと振り落とす度に、砂埃が大きく巻き上がり、石で構成された地面には罅が入って割れていく。
「違う。 そもそも彼女とは初対面だ」
「そうニャン!! むしろオレっちたちは、あの娘を助けようと思って来たんだニャン!」
『ウソつくんでねぇ!! おめえがやったんだろ!?』
駄目だ、完全に話を聞く気が無い。
交渉は早々に決裂だ。
『ユルさねぇ、ユルさねっぞーッ!!』
奴の視線は完全に俺の方へと向けられている。
どうやら、冤罪で推定容疑者、かつ唯一の人間の俺にヘイトが向いているらしい。
でるくいたたきが、槌を大きく振りかぶる。
それが開戦の合図だった。
「来るニャン!」
ジバニャンの叫びの直後、俺達の立っていた場所目掛けて槌が振り下ろされた。
それを後方へと大きく飛び退くことで回避する。
飛び退くと同時に、ウィスパーに両脇を抱えられた俺は、ジバニャンの立つ場所よりも数歩後ろへと運ばれる。
奴の最優先攻撃目標は俺だ。
その間にウィスパーとジバニャンが挟まることで、俺をでるくいたたきから守るような構図になる。
「なんかアイツの弱点とか無いニャンか!?」
「そうですね……。 でるくいたたきは、調子に乗ってる人を見つけては杭を打ちつける大男の妖怪です」
そこでチラリと、ウィスパーが一瞬、手元の妖怪パッドへと視線を向ける。
ここまでは自前の知識だったようだが、ウィスパーもそこまで詳しくは知らなかったらしい。
「ふむ……」
「どう?」
「なんか分かったニャンか!?」
妖怪パッドを仕舞ったウィスパーを、固唾を飲んで見守る俺とジバニャン。
それを見て自信ありげに頷いたウィスパーは、でるくいたたきを指さして、再び口を開いた。
「大辞典の情報によると───『ピコピコランドにあるモグラ叩きで、彼の右に出る者は居ない』だそうでうぃす」
「どうでもいいよ、その補足情報ッ!!」
「むしろ聞きたく無かったニャンッッ!!」
なんでちょっと自信ありげだったんだよ。
ただ向こうの技量が保証されただけで、弱点要素一ミリも無かったじゃん。
『低ランク妖怪共が───』
こんな茶番に相手が付き合ってくれる筈もなく。
今度が両腕で槌を持ち、その場で大きく振りかぶる。
移動する気配が無い。
当てに来ていないのか? と思考した直後、でるくいたたきが足元へと槌を振り下ろした。
『──邪魔すんでねぇッ!!』
地面越しに衝撃が伝わってくる。
だが今回は、それで終わりではなかった。
「ケータくん、後ろ見て下さい! 後ろ!」
「後ろ──?」
言われた通り後ろを振り向くと、何処からともなく振ってきた大量の丸太の杭が壁を作り、背後の道を完全に塞がれて仕舞っていた。
きっとこれが奴の能力。
あの杭で此方の動きを制限して、逃げられなくなった所を槌でモグラ叩きのごとく粉砕するのがセオリーなのだろう。
どの道トンネルの中に戻ったところで二度と出れなくなるというオチは目に見えている以上、逃げの選択肢は無かったから別にいい。
だが、フィールドが狭まったのは少し不味い。
スピードで撹乱するジバニャンにとって、閉じた空間、狭いフィールドは不利だ。
相手がこのような大型のパワー系なら尚更。
でるくいたたきが槌を頭上で振るうと、上空から妖術に起因する物と思われる小型の岩石が振ってくる。
ジバニャンは連続して振り注ぐそれを、杭や木々を足場として活用して縦横無尽に駆け回ることで躱していた。
「『ひゃくれつ肉球』──ッ!」
『むん……っ!!』
時々隙を見てひゃくれつ肉球をお見舞いしようとしているが、槌を左右に振り回した連続攻撃に弾かれてしまっている。
そう。
ジバニャンはまだ
始めて出会った頃に比べると見違えるほど強くはなったが、このままでは火力かスタミナのどちらかが足りずにジリ貧になる。
少し前にウバウネとの決戦で発現した
───故に、その為の時間を稼ぐ。
「ジバニャンッ! こっちに戻ってッッ!!」
「分かったニャン!」
呼び掛けに合わせて、ジバニャンが俺の隣へ跳ぶ。
でるくいたたきも、一網打尽にするチャンスと見たか、槌を掲げて大きく深呼吸し、必殺技の溜めへと移る。
段々と思い出してきた。
俺の記憶が正しければ、奴の必殺技は先程の妖術の強化型。 巨大隕石による攻撃だった。
攻撃か、妖術か。
それさえ分かれば問題ない。受け切れる。
こんな狭さでは
ポケットから取り出した緑色のフレームの妖怪メダルを、左腕の零式に挿入する。
「俺の友達───」
ウォッチのフレームを『1』へと動かすと、この場にそぐわぬ軽快な効果音が流れると共に、ウォッチから召喚演出である青色の光の円環が漏れ出した。
『させねぇべ……』
丁度その時、必殺チャージが終了したのか、でるくいたたきがにやりと笑みを浮かべる。
槌を振るうと、夜空は裂け、その先の宇宙空間かと思わしき場所が露わになる。
そしてそこから、巨大な隕石が降ってきた。
これが奴の必殺技、『でるでる落花生』。
10秒もあれば隕石は地上に到達し、俺達は皆纏めてぺしゃんこだ。
まあ、そんな事にはならないが。
零式の召喚サークルを隕石の方へと向ける。
そして右手で零式のフレームを『2』へと動かし、召喚を実行する。
それは嘗て、妖魔界を襲った災厄。
戦場で散った多くの妖怪達の魂が集まり、積み重なって生まれたこいつの本体は、ムゲン地獄の最奥で今もなお眠り続けているんだとか。
その妖怪の名は───
「出でよ───どんどろ」
ウスラカゲ 召喚デアリマス
零式の器械音声が耳元でなった直後に隕石が着弾し、大量の砂塵がまき起こる。
それによって視界は奪われ、向こうから隕石の行方が見えなくなった。
『……へへっ』
勝ちを確信していたのだろう。
槌を降ろし、したり顔を浮かべていたでるくいたたき。
『…………あぁん?』
刹那。
砂埃が散った後に現れた、無傷の俺達。
加えて───赤色の結界に阻まれ、ボロボロと音を立てて崩れていく大岩を見て、その顔が驚愕に染まる。
実際、危なかったことは否定しない。
並のタンクでは広範囲攻撃に対応出来ない以上、‘‘こいつ’’が居なければジバニャンと他の妖怪が隕石を粉砕することに賭けていた。
砂埃が捌け、大地は月光に照らされる。
其処には俺とでるくいたたきの間に、先程まで影も形も無かった筈の妖怪が一体、立っていた。
「ぶわぁぁぁぁぁぁ───」
大きな欠伸の後、正面へ向き直る。
サイズは本来の物に遠く及ばずとも、その能力に一切の陰り無し。
数多の妖怪が魂を賭けて封印されていたソレは、分かたれた肉体の一部から、その体躯を大きく縮めながらも新生し、再び地上へと降り立った。
「……どんどろ〜」
この世界における『黒歴史』。
その双眸を青く染めた
「ありがとね、どんどろ」
「どんどろー!」
釜の蓋を持ち上げて、幼子の様にぴょんぴょんと跳ねて喜んでいるどんどろ。
刷り込み効果とでも言うべきか、生まれたての個体であるコイツは、俺に凄く懐いている。
朝起きた時に枕元に置いてあった、泥入りの袋。
それの処分をマオくんに相談し行き、『夢で見た』と言う通りにしたら生まれてしまったのがこのどんどろ(幼体)なのだが、これはまた別の機会に。
目下の目的は、脅威の撃退だ。
『一体増えたところで結果は同じッ! 戦いは数ではなく‘‘質’’だと教えてやるべ』
そう言って再び、槌を振るう大男。
どんどろへとソレが振り下ろされる直前に、両手を叩き、乾いた音を鳴らした。
次の瞬間、どんどろの双眸が
『何──ッ!?』
「……概ね同意するよ。 突き抜けた‘‘質’’、究極の一は、時に数をも凌駕する」
一つ間違いがあるのなら。
『質ではそちらが勝っている』などと、言った覚えは此方には無い事だ。
小さくなってもどんどろはどんどろだ。
この世界が実際のゲームでない以上、その
究極の闇、闇のブレス。
攻撃無効に、妖術無効。
流石にビッグボス形態には及ばずとも、その全ての能力を十全に行使出来る力を持っていたのだ。
それでも全盛期の三割程度の出力ではあるが、それでもいち妖怪としては破格の能力だった。
でるくいたたきが、何度も何度も、どんどろ目掛けて槌を振り下ろしている。
それを赤眼のどんどろが、素知らぬ顔で受け流している。
このように相手に合わせて形態を入れ替えれば、それだけでどんどろは鉄壁の要塞へと変貌する。
この耐性を無視して一方的に殴れる存在など、それこそエンマ大王に匹敵する強さの妖怪だけだろう。
───そして。
「アレを試そう、ジバニャン。 何となくだけど、今なら行ける気がする」
「分かったニャン……っ!」
どんどろが奴を完全に封じ込めている今なら、こちらは自由に動ける余裕が出来る。
最強の盾がある現状、足りないのは矛。
あらゆる脅威、あらゆる困難。
それらを一撃で葬る、最強の矛が必要だ。
一歩前に立つジバニャンへと、零式を向けると、零式からジバニャン目掛けて水色の線が伸びる。
ウォッチを媒介にし、ジバニャンと俺の間で妖気のパスを形成したのだ。
これからやるのは、ウバウネとの決戦の再演。
あの時は桜町全ての妖怪から集めた妖力の後押しがあっての事だったが、一度経験した今、多分覚醒そのものに‘‘それ’’は不要だ。
大切なのは───絆。
互いの意思を統一し、絆を極限まで高めること。
「ニャァァァ……ッ!」
変化は直ぐに訪れた。
姿こそ特に変化していないものの、身体からは強大な妖気が漏れ出ている。
それが溢れるオーラとして形を成し、赤い光がジバニャンの身体を包んでいた。
「敵が怯んでますよ。 ケータくん、妖怪ウォッチで今のジバニャンを見てください!」
ソレに気圧されたのか、でるくいたたきのどんどろを攻撃する手が止み、一歩後退する。
ウィスパーの言うとおり、ウォッチに備えられたレーダーでジバニャンを探知した。
表示されたランクは───S。
「成功した……!」
DランクからSランク。
進化してランクが上がる妖怪は数多く存在するが、その中でも極めて稀な、4段階のランク上昇。
それも元は一般の、何の伝承も持たぬネコ妖怪が、人間との絆だけでその域まで上り詰めたのだ。
正史の
当然力の上昇幅も、並の妖怪とは一線を画す。
「力がみなぎってくる…………一気に決めるニャンッ!!」
『速え──ッ!?』
ジバニャンが駆ける。
その速度はDランクの頃の倍を優に超え、瞬く間にでるくいたたきを間合いに入れた。
刹那、ジバニャンが大きく真上に跳び上がる。
「食らえ、『ひゃくれつ───」
ひゃくれつ肉球。
秒間二十発のパンチを合計百回浴びせる、誰もが知るジバニャンの
少なくともこの世界では、ジバニャンは本当に百発パンチを放っていた。
でるくいたたきが槌を横に構え、防御の構えを取る。
通常時のジバニャンならそれで受け切れただろうが、上昇した能力の殆どを攻撃と素早さに回し、ノーガードで襲いかかるジバニャンSのひゃくれつ肉球は、最早別次元の威力を誇る。
「───肉球』───ッッッ!!」
一発一発が、通常時のひゃくれつ肉球全弾に匹敵する威力へと底上げされているのだ。
およそ一月前、スベテ・ウバウネを瞬殺した技を耐えられるはずもなく。
『ぶべらッッッ!!?』
一秒目はかろうじて耐えたものの。
二秒目で槌は弾き飛ばされて。
三、四、五秒目でタコ殴りにされたでるくいたたきは、吹き飛ばされながら死に声を上げて消滅した。
「……勝った?」
「みたいでうぃすね」
瞬殺すぎていまいち実感が湧かなかった。
ジバニャンS……変化が解除されて元に戻ったジバニャンが、こちらへと戻ってくる。
今のでかなり疲労が溜まったのか、若干肩で息をしていた。
「お疲れ。 ジバニャン、どんどろ」
「どんどろー!」
「ハァ、ハァ……疲れたニャー。 帰りにコンビニでアイスとチョコボーおごってくれニャン……」
ぴょんぴょんと嬉しそうはしゃぐどんどろ。
ジバニャンと右手でタッチし、ジバニャンは俺の首へとよじ登ってきた。
絵面は完全に肩車であった。
「てか、もう終わったみたいな雰囲気出してるけど、本題はこれからだよ? ほらあれ」
「うぃす?」
「ニャ……?」
そう言って、えんえん少女の方を指差す。
先程娘と言っていた彼女を守っていたのか、でるくいたたきの立っていた所より少し後ろに、彼女の姿はあった。
彼女の元へ近づくと、こちらが話しかけるよりも先に、彼女の方が口を開いた。
「…………すごい」
「えっ?」
「あいつをあんな簡単に倒しちゃうなんて。 ……そんなの連れてる辺り、あなたたち、ただ者じゃないみたいね」
「???」
そう言って、彼女は俺の右に居るどんどろへと視線を落とした。
そんなの呼ばわりされたどんどろは、よく分かっていないのか疑問符を浮かべて首を傾げていた。
少女が続ける。
「さっきの怪物は、私が作り出した幻」
「やっぱり……」
「知ってたの? やっぱり面白いね、あなた」
そこで、己の失言に気付いた。
俺が彼女の事を一方的に知っているだけであって、彼女はそれを知らない。
余計な事を口走って興味を引いてしまったらしい。
「みんなは私の事を、泣き虫のえんえん少女って呼ぶの」
「たしかに、私たちも彼女の泣き声と、大粒の涙を見ましたが……」
「迫真の演技だったでしょう? わたしのウソ泣き……」
「ウソ泣きだったんでうぃすか!?」
「ふふっ……」
反応の薄い俺と、疲れて寝ぼけているジバニャンに変わって、100点のリアクションを見せたウィスパー。
その反応がどうやらお気に召したらしい。
えんえん少女が、じっと俺の方へと視線を向ける。
長い前髪で目元は見えなかったのだが。
「このえんえんトンネルはね、わたしの気分によって長さが変わるの。 だからここまで来るのって、けっこう大変だったんじゃない……?」
「実際大変だったけど……それ以上に道中色々あったから、そっちの印象が強いかな」
「道中……?」
そう言うと、何故か彼女は首を傾げた。
何かおかしいことを言ったか? このトンネル内に存在する物は全て、彼女の生み出したものと思っていたのだが。
そう思考した直後、何か心当たりがあったのか、視線を僅かに落としたえんえん少女。
「あぁ───そういうこと」
「勝手に自己完結されるとこっちが困るんだけど」
「あなたは、トンネルの中のものは全てわたしが生み出した…………そう思ってるんでしょう?」
「ソレ以外誰が───」
そう言って喉から出かかった言葉が止まる。
このトンネルの構成要素は全て彼女が担っていると思っていたが、もしそれが間違いならどうなる?
『キミは ついうっかり死んでしまった』
彼女が俺を知っていた訳では無かった。
『運よく神さまにチャンスを貰ったとして───』
偶然の産物?
それにしては出来すぎている。
『どちらの願いをかなえるんだい?』
「……なら、今まで見てきたのは」
あの男は間違いなく俺の記憶の一部の参照している、きっとそれは違いない。
なら、他の通行人たちは?
「まさか……ッ!!」
「あいつを倒せて、その上聡い……。 ふふっ、わたし、本当にあなたのこと気に入っちゃったかも」
心なしか、彼女の声色が変わった気がした。
怒っているとかではなく、もっと別の……歓喜に近い色を宿している。
「そうよ。 トンネルの中の通行人はわたしが作ったものだけじゃない。このトンネルを通った人達の──記憶の残響」
「その人達は、外に出れたの?」
「トンネルの中に本人はもういない、とだけ言っておくわ。 だから会話の中に、妙な部分があったんじゃない?」
「嫌な言い方だな……」
明言されないと、最悪の方向に考えてしまう。
悪い癖だとは思っているが、この状況だと強ち間違っていないんじゃ無いかと思ってしまう。
目線を俺の方へと合わせ、彼女が続ける。
「やっぱり、あなたは
「むこうがわ……?」
その言葉を額面通りに受け取るならこの場所のことになるが、絶対にそういう意味ではないだろう。
向こう側の隠喩として適切なのは…………パッと思いつくのは黄泉の国、死後の世界辺りだろうか。
一度死んでることを気付かれたのか?
最初から気付かれている前提で来ていたから、然程ダメージは無いのだが、より彼女にロックオンされてしまった気配がしてならない。
ギャルゲならグッドコミュニケーションだが、俺的にはバッドコミュニケーションである。 帰ったらお祓い行こう。
目の前までフヨフヨ浮いて近づいて来た彼女が、両手で俺の手を取る。
俺の温度感が狂ったのか、相手側の体温が分からなくて、奇妙な感触だった。
「せっかく会ったんだもの。 同類さん? 私たち、ともだちになりましょうよ!」
「それは良いんだけど……ど、同類……?」
「おかしいかしら? あなたは人間だけど、本来こちら側の人でしょう?」
「……もうそれで良いよ」
ハッキリ言って異論しかないが、指摘するのがなんか怖かったので適当に受け流す。
どうせもう来ないだろうしいいだろう。
「じゃあ、妖怪メダルを───」
「メダル? 何それ」
「妖怪っぽいのに妖怪メダル知らないんでうぃすか!?」
「……? かわりになるか分からないけど、これをあげるね?」
そう言って彼女が渡してきたのは、妖怪ガシャのコイン数枚であった。
ここに入ってくる妖怪が偶に落としていくらしい。
彼女の反応を見るに、本当に妖怪ではないらしく、これの用途も分かってなさそうだった。
「それじゃあ……最後に一つだけ」
再び浮き上がり、頭一つほど上の位置から俺と目を合わせたえんえん少女は続ける。
「わたしはあなたの事をずっと見てる。 だからもし気が向いたら、またここに遊びに来てよね」
「分かった。行けたら行くよ」
「うふふっ……、もう友達なんだからさ。 遠慮なんてしなくていいのに」
こちらは日本人の持つ中でも最強の言葉『行けたら行く』を使ったは良いが、ちゃんと伝わったかは些か不安だ。
なんか笑ってたし。
「じゃあ、またね…………わたしの同類さん?」
それだけ言い残して、彼女は姿を消してしまった。
結局最後まで目元は拝めなかったので、おそらく美少女ということしか分からなかった。
「どうやら、彼女は妖怪ではないようですね。 もしかすると、彼女自身も幻なのかも……」
「何というか、いまいち噛み合わない相手だったなぁ……」
ウィスパーのぼやきに、感想を漏らす。
全体的にこっちの主張が届いていなかった気がするが、後で変なことにならないかだけが不安だ。
「えんえんトンネル……中々『奥が深い』でうぃすねぇ……。 トンネルだけにね! うぃっすー!」
「もうほんっと台無しだよ…………」
主にシリアスな雰囲気とかその他諸々が。
ジバニャンは疲れて寝たし。
頼むから俺の余韻を返して欲しい。
小学生の頃から考えてた妄想(ジバニャンS関連)を書けて個人的には満足
この世界戦のウバウネ戦
トキヲ・ウバウネ→大体原作通り
スベテ・ウバウネ戦→ジバニャンSが瞬殺
第三形態(映画版の巨大化した姿)←ジバニャンS素体のブチニャンがワンパン。 映画と同じ流れ。
ジバニャン:ジバニャンS形態なら車倒せんじゃね? と考えたが、運転手の安否を案じたケータから
今回のえんえんトンネルの描写、解釈は大体作者の独自解釈なので、妖怪ウォッチ2覇道で公式回答が来るかもしれませんね。
感想を頂けると非常に嬉しいです
(後日後書きのえんえん少女関連の話は加筆します)
皆の好きな妖怪は?
-
ふぶき姫
-
百鬼姫
-
椿姫
-
えんらえんら
-
フゥミン
-
にんぎょ
-
バニー・ミント
-
スノーラビィ
-
ミーフー/フミちゃん
-
フウ2/天野景太
-
ジバニャン
-
ウィスパー
-
オロチ
-
キュウビ
-
エンマ大王
-
その他