転生したらガミラスの真田さん枠(なおロマンチスト)兼総統のお気に入りになってた件   作:夜叉烏

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 夜叉烏です。

 寿命問題については、将来的に臣民を移民させる以上、いつかは絶対公表しなきゃいけない筈だから黙っててもいいことないと思ったんですけどね。


総統は相当動揺しているようです

――ヴェルテ・タランside

 

ガシャン…ッ!!

「…何だと?」

 

 ハルハの言っていた"革新的な環境改変装置"の実験許可を得る為、定例会議でその報告を行った瞬間、総統は机上に置いてあった黄金色のグラスを取り落とした。

 特注のグラスが固い床へ落下し、中に入っていた水――会議中は無論禁酒だ――が散らばった。

 

「総統!」

 

 弟であり、参謀次長であるガデル・タランが真っ先に総統の身を案じ、宣伝相のミーゼラ・セレステラが側へ控える侍女へ目線をやる。目線を受けた侍女は即座にタオルを持って総統の足を拭い、次いで床の掃除に入った。

 グラスは砕けず、破片で怪我をするようなことはなかった。

 

「あぁ…すまない。手元が狂ってしまったよ」

 

 総統はそう言って皆に軽く謝罪するが…どこか落ち着きが無いように見えた。いつもの余裕が感じられない。

 

「宜しいですかな?…それでヴェルテ、本当なのか?"惑星規模で環境を改変させる装置"の開発に成功したというのは?」

 

 ヒス副総統が訊いてきた。

 軍事や科学技術に疎い彼でも、この装置がとんでもない代物だということは理解したらしい。

 

「はい、確かなようです。ただ、これまでに類を見ない装置でして…ハルハ本人より原理の説明は貰ったのですが、恥ずかしながら全く理解が及びませんでした」

「兄さんが…?それほどの代物なのか…」

 

 ガデルが信じられない風に呟いた。私も、ガミラスの軍事技術の躍進に貢献してきた身であると自負しているが…。

 

――いいかな、師匠?生命体が存在する惑星には『星のエレメント』と呼ばれるものが存在するんだ。

――その星の物質・生命の進化の記録が封じ込められた代物だよ。

――それを観測・獲得・制御する技術があれば、エレメントを触媒にして星の記憶を呼び起こし、惑星を再生させたり、別の惑星のエレメントを使って環境を上書きすることだってできる。

――エレメント、例えば…その星に棲む生命体とかね。その生命体の記憶にある在りし日の惑星と同じ環境を再現することができるんだ。

 

 少し前、装置の原理がどうしても気になった私が質問した際、ハルハはそう応えた。

 

「………はぁ????」

 

 全く以て理解できなかった。

 極めてオカルト的であり、既存のガミラスの科学技術では説明のつかない代物であること。…辛うじて分かったのはそれだけだ。

 

「ほぉ~う。まるで神の如き御業であるなぁ~」

 

 特徴的な巻き舌で話すのは、色々と胡散臭い噂が多いヘルム・ゼーリック国家元帥。猫を被るのが上手いこの男は、しかし今回ばかりは本気で驚いているようだ。

 ハルハを上手く抱き込もうとしている噂もある。奴が大人しくされるがままになるとは思えないが、今一番警戒している男だ。

 

「ふむ。つまり…仮に70歳の臣民をその『エレメント』として使った場合、その惑星の地質や大気成分等の環境が70年前のものに戻る…という認識で合っていますでしょうか?…あぁ、赤子の頃の記憶を覚えているなら、の話ですが」

 

 親衛隊長官のハイドム・ギムレーが確認を求めるように言った。こういった話題には門外漢の筈だが、彼は頭の回転が早く、専門外の分野でもある程度会話についていける。

 …臣民を『使う』という表現に言いたいことはあるが。

 

「その認識で正しいかと。ハルハ曰く、『宇宙に散らばる惑星全てをガミラス星と同じ環境に上書きすることができる』とのことです。また、軍事利用も可能とのことで…」

「「「おぉ…!!」」」

 

 会議に参加していた閣僚が総じて感嘆の声を上げる。「素晴らしい」「流石だ」といった声が方々から聞こえる。閣僚たちからは反対の声は出ない。

 

「ハルハは実験で使うノルド管区の元植民惑星042、そして重犯罪を犯し死刑判決を受けた臣民を1人、被検体として使いたいと求めております。総統には、その許可を頂きたく…」

 

 そこまで言い、総統へ視線をやる。総統は、基本ハルハの希望は二つ返事で受け容れている。

 

「……」

「そ、総統…?」

 

 しかし、ハルハの申し出を許可することも却下することもなく、思いつめたような表情で机上の一点を見つめるばかりだった。目線が小刻みに震えており、全く落ち着きがない。肘掛に付いている手も揺れている。

 

「…許可する、と伝えておきたまえ」

 

 様々な感情が込められていそうな声音で、搾り出すようにそれだけ言った。

 

「惑星環境を改変させる装置とは恐れ入った。彼女の手になる代物だと言うのなら却下する余地はあるまい。失敗を咎めることはない、好きにやるように…とね」

「は。直ちに…」

 

 ハルハの要求を報告し、総統が承認する。見慣れた流れである。

 

「タラン、その実験の実施予定はいつかね?」

「は。件の装置は『ハルシュヴァルト』へ搭載するとのことで、その準備期間を含めると丁度1か月後になりますが…」

 

 僅かに身を乗り出し、前のめりになって訊いてくる総統にへ応えた瞬間だった。

 

「…タラン。その実験には私も同席する。デウスーラⅠ世(私の艦)をいつでも出せるようにしたまえ。私が居ても問題はあるまい?」

「は…?はぁ、恐らくは…」

「よし、ハルハにも伝えてくれ」

 

 これまでにない程強い口調で、総統は要望を押し通した。彼の言葉を拒否することなどできない。

 確かに惑星環境の手軽に改変してしまう装置など、既存の科学技術の基準を大きく引き離す代物ではあるが…そこまでして肩入れしたい理由が分からない。

 まぁ、総統の気まぐれ等いつものことだ…そう私は片付けた。

 

「そ、総統。恐れながら、その日は丸一日ご予定が入って…」

「そんなものは全てキャンセルだヒス君…!!」

「は、はいぃっ!!」

 

 恐る恐る意見したヒス副総統に向け、総統が凄絶な表情を向けながら突き返した。「君は私の傍で何年副総統の役職をしているのかね?あ゛ぁん?」とでも言わんばかりに。

 その表情と強い口調で返された副総統は、声を半ば裏返させて引き下がった。…いつもお飾りだと揶揄している副総統に、初めて憐憫を覚えた瞬間だった。

 

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――デスラーside

 

「そうか…やってくれたな、ハルハ…」

 

 会議が終わり、閣僚たちが退出した室内で私は誰ともなしに独り言ちる。

 

「マティウス兄様、天はどうやら私に味方をしてくれているようだ。…ハルハという、これ以上ない贈り物を授けてくれた」

 

 嘗て、私と約束を交わした亡き兄…マティウス・デスラーの顔を思い出し、自然と口元が吊り上がってしまう。

 ガミラス本星の寿命問題、それを告げられないやるせなさ、自身の目を盗んで好き勝手行動する貴族派等の閣僚連中…。数多もの問題に纏わりつかれつつ、「イスカンダル主義の浸透」の名の下に、マゼラン銀河の外にまで我武者羅に侵略の手を伸ばしてきた努力が報われたのか、と思う。

 思えば、終わりの見えない道のりだった。半ば諦観の念もあったかもしれない。

 

「…いや、ダメだ。その時までは公表するわけには…」

 

 臣民を全て移民させるのであれば、遅かれ早かれ寿命問題は全員が知ることになる。事情を話さず『勅命』で移民を強制させるのは無理だ。総統権限も万能ではない。

 ならば、その情報を今公表してもいいのではないか…そんな考えが一瞬脳裏に過ったが、それはダメだと一蹴する。

 

 寿命問題は、デスラー家のさらに極一部しか知らない秘密。マティウス兄様も、私に「決して公表してはならない」と厳しく言っていた。掟を破るわけにはいかない。

 それに、寿命問題という『弱み』を公表してしまえば、旧貴族派をはじめとした反乱分子がどう動くかが分からない。ただでさえ私には敵が多い。暗殺の危機に晒される覚悟もあるし、実際されかけたが…死ぬのはせめて、寿命問題が一区切りついてからだ。

 いずれ公表はしなければならないが、今はまだその時ではない。

 

「それに…いや、ハルハのことだ。失敗はしない、筈だ…」

 

 タランの報告にあった惑星の環境改変装置。信じていないわけではないが、今までにない類の装置である。あのハルハの手になる代物とはいえ、正常に作動するかは分からない。

 希望は見えた。しかし、まだ油断はできない。

 

「やれやれ、指導者とは本当に疲れる…母の心さえ現世に留められなかったというのに、この役職は重すぎる」

 

 会議室を照らす天窓。そこへ映るイスカンダル星を仰ぎ見ながら、思わず溜息をついた。

 




 よろしければ感想よろしくお願いします。

 寿命問題を閣僚たちに共有しておけば「軍だ、親衛隊だ、貴族だなどと騒いでる暇はない!総力を挙げて移民計画を立てるのだ!」ってなるかな…って思った。
 ゼーリックは絶妙なタイミングで足引っ張って犠牲を出した挙句移民船に乗れないで死ぬんだろうな。

アルペジオみたいなメンタルモデルを出演させる?

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