貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します   作:ナロウ・ケイ

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刃牙のインタビュー形式、ちょっとやってみたかったのでやりました。


貞操逆転世界の悪徳皇子と、旋乾転坤の探索者稼業⑤

 ◇◇◇

 

 

 

 

「高貴な身分の美男子の探索者が私の前にふらっと現れないかなと。……ええ、そんな風に考えていた時期が私にもありました」

 

 ──今はそう思っていない? 

 

「いえ、今でも美男子には会いたいとは思っています。ですが、あの青年はちょっと例外ですね」

 

 ──あの青年というのは? 

 

「うちのギルド支部に受付に来た青年です。……そうですね、やたらと顔が整っていて、どことなく品を感じる身のこなしの彼です。本当に、とんでもない青年でしたね」

 

 ──その話を詳しく。

 

「色々とありすぎて、ちょっと整理できないですね(笑)。ええと……登録の際に、最初はE級探索者から始まると伝えたら、不服だったのか『自分は探索者学校に通っていたのだが』と言われたのは覚えてます。でも結局、卒業してなかったのでE級探索者から始まるのは変わらなかったんですけどね。そのときから、何というか、厄介な人が来たかも、という予感がありました」

 

「後、そうですね、探索者登録の申請も済んでないのに、四英傑のパーティと合同依頼を受けたいとか言い出したんです。流石に止めましたよ(笑)。だって、身元証明を提出できない女性三人と、本物かどうかも分からない皇室の印璽付き書面を出してきた男性ですよ? まともな皇族が探索者なんかになりたいはずないいじゃないですか(笑)」

 

「ええと、そうです、そうなんですよ、皇室の印璽を押した手紙を懐から出したんです。本物かどうか鑑別するために、上司に許可を取って、宮内省皇室庁に伝書鳩を送って鑑別を取る必要があるんですよ。鑑別料も時間もかかるので、こんな怪しい人たちのためにそこまでしなきゃいけないなんてやだなぁ、って思ってました」

 

「そしたら、三週間ぐらいかかって『本物の印璽です、魔力反応が皇室管理の色相と一致しています』って回答が来たんです。もうびっくりですよ」

 

 ──本物の印璽と一致したんですね。

 

「はい。絶句しましたよ」

 

「だってその四人、街のどこにもいないんですよ」

 

「皇族を何のおもてなしもせずに三週間も放ったらかしにして、これでもし何か怪我でもしてたりしたら死罪ものですよ!」

 

 ──それだけじゃなかったんですよね? 

 

「はい! そうなんですよ! 何とギルド総本部の、《森羅万象を聞く千年樹》様が数十年ぶりに目を覚まされたのです!」

 

「探索者登録をする際、個人個人の魔力紋を石版に登録するんですけど、それがどうやら、()()()()()()だというので千年樹様を揺り起こしたみたいです」

 

「開口一番、【建国の祖】が帰ってきた、なんて言うので、探索者ギルド全体はもう大騒ぎですよ!」

 

「【建国の祖】だなんて……流石の千年樹様も、寄る年波のせいで、思考が朦朧となさっているのだろうと誰もが思いましたけどね」

 

 ──その後はどうなったんですか? 

 

「……。大変でしたよ。始末書を山ほど書いて、失踪した皇子を探すために関係各部にたくさんお手紙を書いて、皇子をおもてなしする手筈を整えるために高級宿を抑えて、地方のいいお酒を用意して、劇団の人に予定を空けてもらって、街の顔役の商人や教会関係の有力者のように皇子に会いたがっているお偉いさん方との日程調整をして……っ!」

 

「本人はどこにいるか分からない、なんて今更言えるわけないですよね!? ねえ!? もうギルドの皆、半泣きでしたよ!」

 

「だと言うのに、あの皇子ときたら……っ!」

 

 ──あの皇子ときたら? 

 

「勝手に野宿とかしててさあ! 帰ってくるなり、大蛙の胃袋を唸るほどたくさん持って帰ってきて、『これで魔力鞄を作ってもらえる人を紹介してほしい』とか言ってさあ! 魔力鞄五十個分ぐらいの素材を持ち込んできてさあ! そんな高級品、いきなり買い取れる訳ないのにさあ!」

 

「あとついでに『未登録迷宮を見つけた』とか平然と報告してさあ! 未登録なのてめーだよてめー! 何が、地図化(マッピング)は半分済ませといた、ですか! 植生とか魔物分布とか罠の有無とか調査する以前にさあ、もっとこう、順番ってものがあるでしょう!?」

 

「でさあ! うちの職員の子らが『おもてなしを! 今からでも、どうかおもてなしをさせてください!』って、てんやわんやで慌てているからって、『悪いけど歓待とかは無しの方向で。大丈夫、面倒な手続きを全部解決させられる魔法の紙を書くから』とか言ってさあ!」

 

「そんな魔法の紙あるわけねーだろ! そういうの、もっと面倒なことになるやつなんだよ!」

 

「案の定、勅令書を書いてたんですよ! 皇室の印璽と皇子の署名付きで! 『極秘ノ公務ノ途中ニテ享楽ニ耽ル暇ナシ、一切ノ歓待ヲ禁ズ』って! いやいやいや、一か月も迷宮に潜っといてそんな訳なくない!? 一体どうやって関係者に説明すればいいんですか!?」

 

「もう、本当に地獄でしたよ……」

 

 ──それはそれは、大変でしたね。

 

「もう懲り懲りです。高貴な身分の美男子はもう結構です……」

 

「だからもう、身分なんてどうでもいいので、お金持ちの美男子でいいです……」

 

 ──あんまり懲りてませんね。

 

「もう懲り懲りですよ!」

 

 ──質問は以上です、ありがとうございました。

 

「あ、ちょ、まだ愚痴が! あのー!」

 

 ──ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

「なんで地方の商人とか聖職者ってだけの立場なのに、俺といちいち晩餐会をしたがるんだ。帝国中央の皇室に顔が利く人脈が欲しいからって、下心が露骨すぎるんだよなあ。俺はそんなに暇じゃないんだが」

「ええ、迷宮に潜らないといけませんからね」

 

 俺の悪態にロナが同調した。迷宮に何日も潜れるってことは暇なのでは、と野暮なことをいう奴はどこにもいない。賢者(キルケ)あたりはそういう皮肉をよく飛ばすのだが。

 それにしても本当、人のことを利益や権力でしか判断しない、欲深い連中はどこにでもいるものだ。こう言ってしまうと反感を買うかもしれないが、身の程を知ってほしいとはまさにこのこと。俺は継承権こそ末席だが、帝国の皇子として、それなりに格の高い扱いが求められている。そんな中で、大したことのない連中から美味しい商談だとばかりに有象無象に食いついてこられては切りがない。時間の浪費にしかならない。やれ我が娘とお見合いはいかがだろうか、とか、やれ我が商会の目玉商品を無料で進呈いたしまする、とか、下らない話ばかりで気が滅入る。

 

 人様を格付けするのは忍びないのだが、欲と下心むき出しで来られては、こちらもそれ相応に冷たい対応を取るしかない。身分をわきまえろ、という言葉はこういう時には便利である。

 もっと節度を持った付き合いをしてほしいだけなのだが。

 

「全部断ったけどさあ……何だか、感じの悪い対応をされたと思われてしまっても仕方がないよなあ……でもなあ……」

「ええ、あれは向こうが悪いと思いますよ。中央の大貴族たちに挨拶がしたいから、殿下に仲立ちの手紙を書いてほしいとか、我々をなんだと思っているんでしょうね。部下だとでも思っているんですかね」

「あー、あれはひどかったな、うん」

 

 本当にひどい話だった。こんなのは一例で、連中からの非常識な声掛けは色々とあった。

 無論、まだまだ文明の発展途上のこの世界では、中央宮廷から遠ざかれば遠ざかるほど、社交術やら常識やらも疎くなっていくというもの。この辺の田舎の有力者は、色々疎いが威勢だけはいい中小企業の社長、みたいな気風のやつらがほとんどなのだ。常識がなってないとかそんなことを言っても虚しいだけである。

 そんなことを考えていると、精霊たちが耳元で『身分で差別する皇子だって言われてるよ』『皇子は常識が足りてないってさ』とくすくす笑いながら囁いた。げんなりする話だ。

 

「そんなに俺とお話したいなら、晩餐会とかじゃなくてさ、俺と一緒に未踏破迷宮に潜ればいいだけなのにな」

「流石に未踏破迷宮についてこい、は言い過ぎだと思いますが」

「言い過ぎじゃないさ。俺について来れないなら、無理してすり寄ってこなくていいんだよ。下心で近づいて来ようとするやつなんか、このぐらい冷たくあしらっても文句は言えないはずだ」

 

 誠意には誠意で返すつもりだが、そうでなければこんなものである。

 もちろん、まだ探索者が誰も最奥部まで到達していない『未踏破迷宮』に、本当について来られても困るのだが。

 

「そういえばまだ、探索者証明証が出来上がってないらしいな」

「今、探索者ギルドは混乱してますからね」

 

 殿下のせいですけどね、とロナにちくりと言われてしまったが、俺はあえて聞き流した。

 俺は気ままに暮らしたいだけなのに、身分が勝手に付いて来るから困っているのだ。生まれ持った身分は選べない、こればかりは天命を恨むしかないのだ。

 

「これはもう、探索者証明証なんか待ってられないかもなあ」

「まあ、別に探索者階級を上げたいわけじゃないですしね」

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 探索者ギルドが【危険迷宮】として指定している迷宮は、入口に警邏の兵士を立てて入場制限を行うことで無謀な犠牲者が発生することを事前に防がれている。

 また、魔物の大発生が起こらないように定期的に人数を募って討伐隊を編成して魔物の大規模殲滅が行われたり、危険な兆候がないか定期的に調査班が迷宮調査に繰り出したりと、厳正な管理が行われている。

 

 その一方で、探索者ギルドがまだ詳細を把握していない【未発見迷宮】は、当然ながらギルドに管理されてはいない。危険度の調査はもちろんのこと、定期的な魔物討伐も行われていない。日々どこかに新しく迷宮が発生するとはいえ、未発見迷宮を放置していい理由にはならない。迷宮は放置していると、異常進化を遂げたりする可能性があるため、発見した探索者はそれを速やかに探索者ギルドに報告することが義務付けられているのだ。

 

 そのため、『未発見迷宮を二つ発見したので両方踏破して無害化しました』というふざけた報告が入ったりすることは、今までなかった。

 件の青年が、今度は二週間で何かをやらかしてきた訳である。

 

 後から出された報告書一式は、ただの地図情報だけに留まらず、植生分布、鉱石分布、魔物の生態について簡潔に記載されていたりと、調査班も唸るほどの纏まりの良さだったが、本来は新しい迷宮を発見したら真っ先に探索者ギルドに報告すべき事案である。

 

「え、あの、まだ探索者証明証をお渡ししてませんよね……」

「?」

 

 そうですね、とどこ吹く風とばかりの態度。そんなことよりも魔法の鞄は納品まだですか、と青年はまるで興味なさげな様子であったという。

 そんな青年が、探索者ギルドを困らせている問題児として有名になり、大ベテランの上位探索者に『おい、ちょっと面を貸せや若造』と絡まれるに至るまで、それほど時間はかからなかった。

 

 

 





ルーク皇子「一刻も早く迷宮核を破壊しないと、一般の犠牲者が出るかもしれないからな」
ロナ「そういえば迷宮核って、魔力密度が高い魔石ですよね」

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