((深夜で禰豆子描いてたら急に話が思い浮かんできてガーッ!!と書き始めたんで…w
莉々愛ちゃん……
「ぜん…っ」
莉々愛ちゃん…
「ぜん……ん…っ」
莉々愛ちゃん…愛してるよ…
「ぜ、善逸さん…っ!」
ハッと我に返る。目の前には漆黒の中で淡い藤色が浮かんでいる瞳を震わせている禰豆子がいた。しかも、その瞳に涙を溜めていた。音を聞かなくても分かるくらい、悲しい…悲しい顔をしていた。そんな顔をさせたのは……自分だ。
……俺…なんて言った…?
焦る心の中で自問自答し、その答えを次第に理解したくなくても理解してしまった。
本日は禰豆子との結婚式。その今宵は禰豆子との初夜で房事…と一つ一つ整理し、先程、嫁の禰豆子に言ってはいけない言葉がはっきりと答えを出す。
その言葉は禰豆子に対してではなく、"莉々愛"に対してだったからだ…。
「…あ、ご、ごめん…今日はもうここまでにしようか…」
「う、うん…」
禰豆子に風邪を引かせないように震えた手で寝巻きを着させてあげ、更には布団を被せてあげる。始終、禰豆子の顔を見れないまま自分の布団に入っていった。
「…………」
自分を見ずに布団に入ってしまった善逸の背中を見つめることしか出来なかった禰豆子は涙を静かに流していた。
……莉々愛って誰だろう…。
この禰豆子、最終決戦で無惨を倒す直前に人間に戻った。しかしながら、鬼だった記憶はあやふやだった。人の顔や名前は一致してるかしてないかくらいの曖昧な所があるが、莉々愛という言葉は覚えていなかった。多分、名前が覚えていないだけでその人の顔は覚えているかもしれない。もしくは覚えていないかもしれない。でも、はっきりと分かるのは2つ。
1つは、あの最終決戦で亡くなってしまったこと。
もう1つは、善逸の元恋仲だったこと…。
最終決戦の後から善逸が引きずるように落ち込んでいた姿をよく目にしていたことがある。話でも聞こうと1度だけ聞いてみたが、善逸は元気の無い笑顔ではぐらかしてしまった。
あれから聞けないまま時が経ち、善逸に告白し、善逸と結婚し、今に至るのである。
莉々愛って子…どんな子だったのだろう…?
直接善逸に聞いてみたいが、話してもらえないだろう。しかも先程のことがあって罪悪感で一生、話してもらえないかもしれない。
「……よし」
禰豆子は何か思い付いたのか、両手を握りながらふんすっと鼻から息を吐いた。
「莉々愛?…うん、よく知ってるよ」
まず、聞いてみたのはカナヲ。
「本当!?その子、どんな子だったの?」
「そうだね……」
カナヲは思い出すように手を軽く顎に当てる。そして、何故か悲しげな笑顔を思い浮かべた。
「私に…少し似てたかな…」
「そうなの?」
「うん…実は私も莉々愛もあなたのことを殺そうとしていたの…」
「えぇっ!?そ、そうですよね…私鬼だったし…」
「あの時は怖がらせてごめんね……あと…いつも作り笑顔だった所ね…本人は嫌われたくないからだったそうよ…」
「そうだったんだ…」
「うん……でもね善逸たちによって少しずつ作り笑顔をやめるようになったらしいの…」
その言葉でカナヲは嬉しそうに柔らかな笑顔を思い浮かべた。禰豆子らその彼女の笑顔につられて安心するように笑みを浮かべた。
「でも…なんで莉々愛のことを…?」
「あっ!えっと…ま、前からずっと気になってて聞いてみたくなっただけ!」
「…………」
カナヲは少しドン引きしていた。何故なら禰豆子の顔は目が上を向き、歯をむき出しにしながら頬を膨らませていた…。まるでいつかの嘘つく時の炭治郎に似ていたのだ。そんな兄妹の似た所に思わず吹き出すように笑ったカナヲ。
「ふふっ、そうなのね…あ、莉々愛のこと詳しく聞きたいなら霜原凛音って子を聞いてみて…その子、莉々愛の継子で大親友だから」
「凛音ちゃんね、少し話したことあるわ!」
禰豆子は基本的に人に対して「さん付け」か苗字だが、前に凛音に「凛音でいいよー!」って言われたからである。
「凛音はここの蝶屋敷の何処かにいるから会いに行ってみて」
「うん!ありがとう、カナヲちゃん!」
「どういたしまして」
カナヲに感謝を述べてから、莉々愛のことを詳しく知る凛音を探しに行った。
凛音。凛音は子供のように明るくて無邪気だったのが鬼の記憶でも印象的で覚えている。禰豆子と同じ鬼だったけど、生まれた時から鬼だという。
…そういえば、時々、善逸さんが私に話しかけている時に凛音ちゃんが善逸さんに怒ってたなぁ…あれ、何で怒ってたんだろ…?
(※善逸が禰豆子にナンパしていたから)
「あ…」
禰豆子が見つけたのは縁側で何処か寂しげに…何処か遠く見ている凛音だった。あの明るい凛音とは思えないほどだった。
「…………」
凛音はふと、禰豆子の存在に気付けば、あの表情はどこかへ行ったかのように見知った明るい笑顔を見せた。
「あ、禰豆子〜!こんにちは〜!」
「こんにちは、凛音ちゃん」
「こんな所にいてどうしたの〜?」
「凛音ちゃんに聞きたいことがあって…」
「え、何々〜?あ、ここどうぞ!」
「あ、ありがとう」
凛音に隣に座るように促されれば、禰豆子は彼女の隣に座った。
「で、僕に聞きたいことって何〜?」
「えっとね…莉々愛さんってどんな子だったの?」
「莉々愛か〜普段は穏やかで優しい子だったよ〜あとね、無理しちゃう所があって、僕たちが「無理しちゃダメ!」って言ってるのに頼らずに無理しちゃう子だったよ〜時々僕たちに頼ってくれたのは認めるけど!」
「そうなんだ」
「うん!あとねあとね!闘いになると口が悪くなる子だったよ〜」
「え、意外」
「だよね〜!まぁ、莉々愛も姉たちが殺されて余程の恨み持ってたからね〜」
「だよね…」
莉々愛も善逸たちと同じ鬼殺隊士だ。殆どの隊士は家族や大切な人が鬼に殺された理由が多いらしい。莉々愛もその1人である。
「何で莉々愛のこと聞いたの〜?」
「あっ、それは……」
「…善逸が莉々愛って言ったから?」
「うっ、は、はい…昨日の初夜で…」
禰豆子はカナヲに言ったのと同様に嘘をつこうとしたら凛音に言われたことが当たってしまい、素直に話した。凛音は呆れながら「何やってんの、善逸は〜…」と呟いた。
「……その…莉々愛さんと善逸さんってどんな関係だったの?」
「ん〜…それはもうね仲良しだったよ〜こっちも幸せになるくらい…」
凛音は誰もいない目の前に人がいるように1点に見つめながら懐かしそうに微笑んでいた。その凛音の目に映る光景はまだ生きていた莉々愛と善逸が幸せそうに笑い合っているのを思い浮かんでいた。
「……そうだったんだ…」
「…禰豆子はさ〜何で善逸のこと好きになって結婚したの〜?」
「…………」
……最初は善逸以外の男性のことが好きだった。
その男性とは…伊之助に殺されそうになった時に箱が入った鬼の禰豆子を守った方だった。
『やめろー!!』
『この箱に手出しはさせない!炭治郎の大事なものだ!!』
『炭治郎…俺…守ったよ……お前が…これ…命より大事なものだって…言ってたから……』
自分のことを守ってくれた方を感謝したくて箱の外に出てみたら、その方らしき者はいなかった。
でもその方とは『善逸』のことだった。それが分かるまでは善逸とは別の人物だと思い込んでいたからだ。でも同一人物だった。
でも本当に同一人物なのか疑っていた時期があったことがある。それが同一人物なんだとはっきり分かったのは、ある日。
最終決戦後から暫くして雲取山にある竈門家で暮らすようになった時、禰豆子が町に下りて買い物していたことだった。その買い物の途中に禰豆子を連れ去ろうとしていた男性がいた。禰豆子はその男性に無我夢中で抵抗していた時、善逸が男性の手首を掴んで、その男性に睨んでいた。
その時、善逸があの箱を守ってくれた方と同一人物だと分かった。それから善逸のことを意識するようになった。
しかしながら、善逸は禰豆子のこと恋愛として好意を抱いている様子はなかった。みんなの前では普段通りに振舞っているが、1人の時は悲しげに落ち込む姿を見かけたことが何度かある。そんな善逸が禰豆子に対しては仲間の妹として、妹のような存在として見ているようだったのである。
でも禰豆子は諦めなかった。何とかして自分を女性として見て欲しくて善逸に振り向かせるようにあらゆる手段を考えて頑張っていた。そんな姿が炭治郎にとっては初めて見る妹だった。禰豆子は今まで我儘を言わずに自分より他人を優先する子だった。そんな禰豆子が自分のために頑張ろうとしている姿を見た炭治郎は兄として感動に思いながらも密かに応援していた。
そんな禰豆子が努力して、善逸に告白した結果、善逸は受け入れてくれた。ずっと誰かを想っていた善逸が自分のことを受け入れてくれたことが嬉しかったのだ。
でも、善逸の心の中は何処かで想い人が残っていることを初夜で知ってしまい、禰豆子は悲しかったのだ…。
「そっか〜…」
「……ごめんね、最後に悲しいこと言っちゃって…」
昨夜の出来事を思い出した禰豆子は涙を流していた。その涙を凛音に見せまいと自分の手で涙を拭った。
「ううん〜…でも善逸が禰豆子のことを受け入れてくれたってことはさ〜莉々愛のこと少しでも紛らわせることが出来たってことじゃないかな〜?」
「そうなの…?」
「本人じゃないと分からないと思うけど…善逸が禰豆子といて、辛いこと忘れることが出来て楽しかったんじゃないかな〜…と思っただけ!」
「…そっか」
「うん〜!」
「ありがとう、凛音ちゃん」
「どういたしまして!あ、そうそう莉々愛の写真とってあるんだけど見る〜?」
「見てみたい!」
一方、善逸の方では……。
「はあぁ〜…」
「だ、大丈夫だと思いますよ、善逸さん!」
「いや、もう完全に嫌われたかも…離縁ですって言われたらもう死ぬしかないよぉ…」
「だから大丈夫だと思いますよっ!!」
善逸は星羅の屋敷にいた。
何故、星羅の所にいるのかというと、星羅は禰豆子と同じ性別で、女性の意見を聞くために訪れたのである。
本当は誰よりも既婚している宇随家に行きたかったが、留守だったため聞けなかったのである。次に蝶屋敷にも行きたかったが、禰豆子が蝶屋敷に行くと言っていたため、そこで鉢合わせしたら気まずく感じてしまうからだ。よって星羅の屋敷に行ったのだ。
「でもさぁ…あの初夜で!あの最中で!他の女の子の名前を出したら誰もが嫌になるでしょ!?」
「まぁ…私だったら嫌ですけど…」
「だよね!?だよね!?」
「でも…禰豆子さんは善逸さんに付き合っていた莉々愛さんがいるのを知っているのでしょう?」
「うんうん!」
「禰豆子さんなら分かってくれると思いますよ、大切な人が亡くなって引きずってしまうのは…」
「……だよね…」
禰豆子にも大切な人がいる。それは無惨によって殺された家族のことだ。でも家族と恋人とは意味が違ってくる。
「でも、善逸さんは禰豆子さんと一緒にいると辛いことを紛らわすことが出来るって仰ったのでしょう?」
「うん…」
そう、善逸は禰豆子と一緒にいると辛いことを紛らわすことが出来るのである。
禰豆子が善逸に振り向かせるために頑張っていた時期の中で、善逸は莉々愛のことで引きずるように落ち込んでいたのだ。
そんな時…
『善逸さん…何を落ち込んでいるかは分からないけど…あ、言いたくないなら無理に言わなくてもいいので!……でも、私に力になることがあれば言ってね…善逸さん』
禰豆子のあの言葉が落ち込んでいた善逸にとって支えになっていた。その言葉だけではなく、禰豆子がかけてくれる言葉が善逸の壊れた心を直してくれたのだ。
少しずつ…少しずつ治っていく心が満たされていき、いつの間にか禰豆子のこと考えることが増えていき、好意が禰豆子に傾けていくようになったのである。
「だから大丈夫だと思いますよ、だって禰豆子さんは善逸さんのことが好きだからこそ振り向かせようと頑張ってたんですもの、それに…私の所にも相談乗ってきたことがありましたからね」
「え、何それ、ここで俺のために相談してたとか可愛すぎるんですが?」
「本当に必死で可愛かったですよ」
「俺の嫁可愛すぎない!?あ〜!こんな俺でごめんよぉっ!!」
「ふふっ、さぁ、帰って仲直りしてくださいね」
「うん、ありがとねぇ星羅ちゃん」
「はい!相談したいことがあればいつでも!」
その日の夜。
禰豆子と善逸は布団で向き合う形で座っていた。どちらも緊張しており、不穏な空が流れていた。
「…………」
「…………」
禰豆子はまだ拭いきれない不安な気持ちを抱いており、善逸は罪悪感と不安に押し潰されかけそうになっていた。そんな重すぎる空気が耐えられなく、自分から話さなきゃと思った禰豆子が発した。
「あの……」
「は、はひっ!」
「…………莉々愛さんのこと…今でも好き…ですか…?」
「……もう好きじゃない…と言ったら嘘になるよねぇ…でも莉々愛ちゃんのことは大切な思い出としてしまっておくことにしてるよ、今は禰豆子ちゃんの方が好きだよ」
「そうなんだ…」
「でもこれから昨夜みたいに禰豆子ちゃんを悲しませることがあるかもしれないけど…それでもこんな俺を愛してくれる?」
「…うん、だって善逸さんよりずっと大好きだったから…だから善逸さんから離れたくないから」
「禰豆子ちゃん…」
禰豆子は膝で歩かせながら善逸に近づき、抱き締めた。そして、善逸の耳元で愛の言葉を囁いた。
「善逸さん…好き…大好きだよ」
「俺も…禰豆子ちゃんが大好き」
この夜、禰豆子と善逸はやっと身体を重ねることが出来た。2人で愛を確認をするように囁き合い、絡め合って、互いに自分のモノだと主張するように印を付けていった。
数ヶ月後。
善逸と禰豆子の間に、新たな命が産まれた。その命を喜ぶように産声を上げている赤ん坊。その赤ん坊は善逸の腕の中で泣いている。自分の親の人肌に落ち着いてきたのか、次第に泣き止んで、寝息を立てるようになった。
「ふふふ、可愛い」
汗だくで疲れ切っている禰豆子は赤ん坊の寝顔を見て、元気を貰うように微笑んだ。
「ほんと可愛いよねぇ、女の子だから禰豆子ちゃんに似て美女になるかもねぇ」
「もう〜」
「ふひひ、名前つけなきゃだよねぇ、何しようかなぁ」
──莉々子──
「……えっ?」
驚くように目を見開いた善逸は耳を疑った。禰豆子は驚く善逸に思わず微笑んだ。
「もしもこの子が莉々愛さんの生まれ変わりだったら……そう考えると嬉しくならないかな?」
「あ…うん…そうだったら嬉しいけど…」
「じゃあ決まりね!」
「うん、そうだねぇ」
善逸は我が子に名前を覚えさせるように「莉々子ちゃん」と呼びかけたり話しかけたりしている。そんな父親の姿となった善逸の姿に微笑む禰豆子。
そして禰豆子は莉々子の方を見た。
【善逸さんにはそう言ったけど…『子』が付いているのは私の血が入ってるし、善逸さんは私のモノだからネ】
そんな時、善逸の腕に抱かれる赤ん坊、莉々子がギロリと禰豆子の方を睨んだ。
【 善 逸 八 私 ノ モ ノ … 】
〜おまけ〜
《少し成長した莉々子ちゃん》
「とーしゃん…だいしゅき…」
「んぎゃぁあああああっ!!!とーしゃんも大好きだよぉぉおおおおおっ!!!!!」
「結婚…しようね…」
「え、えぇっ!?俺求婚されちゃったぁ!?えぇ〜嬉しすぎるんだけどぉ!?」
「とーしゃんがいい…」(ぎゅ〜っ)
「何この子可愛すぎるんだけどっ!?」
「ム〜…」
「禰豆子ちゃん、鬼みたいにム〜と言ってどうしたのぉ?そんな所も可愛いけどっ」
「何でもないです!(善逸さんは私だけのモノなのに…)」
《善逸からも禰豆子以外人たちからも莉々子はパパっ子な娘にしか見えないのであった……》