警察所内━━━━━━━━━━━━━
僕と五代さんは取り調べを受けている。無論昨日の遺跡での件だ。
「それで、君達は何者なんだ?」
戦いの時、僕が助けた足を引きずっている男性を預けた警察官が聞いてくる。
「えっと僕は夏目博士の助手で…一条カオルと言います」
「俺は世界中を旅して回ってる五代雄介です、よろしく!」
警察官はため息を付き、
「そうじゃなくて…君達戦っていたよな!?つまり民間人の君達が戦うのは…いや違うな…なぜ戦える…こうでもないな…」
何やら混乱しているよう様子の警察官。
その時、取り調べ室の扉が開く。
変わった色のカメラを構えながら若い警察官が現れた。
カメラ?僕と五代さんがきょとんとしていると、
「取り調べは俺がする。あんたは出て行ってくれ。」
「何だお前は?!」
警察官が声を荒げるも、平然とした顔でカメラを構えるのをやめ若い男は胸ポケットから何かを取り出した。
「警視総監の令状!?なっ…何故!?」
「この紙が見えないのか?早く出て行け。」
「なっ…失礼する…」
困苦顔で出て行く警察官を見送ると、若い警察官の男がとんでもないことを言い放つ。
「で…五代雄介、なぜあんたがこの世界にいる?」
その一言で僕は完全に身構えた。
「俺を知ってるの?君はいったい?」
五代さんが問う。
「俺は門矢士。ちょっとした用事…野暮用でこの世界に来た。」
「この世界に…?あぁ君も旅をしてるのか。俺と同じだねよろしく。」
と手を出し握手を求めるが男はそれを払いのける。
「馴れ合いはいい。俺が聞きたいのはあんたがこの世界にいる理由だ、そしてもう一つ。そこのもう1人のクウガ…もう1人の一条カオルについてだな。何なら解っていることを教えてやらなくもない。」
最後に僕を見据え言い放つと同時に僕は口火を切った。
「おい…あんた。失礼にも程があるだろ。」
「まぁまぁカオル君。ここは一つ、じっくりと話そうじゃない。」
五代さんが僕を押さえながら言う。
「で…士君だっけ?君はどうやってこの世界に?」
「何だ…?あんた、ここが自分の居た世界じゃないことに気付いてはいるのか。」
「薄々ね、戦うときに違和感を感じていたから。」
「ちょっ、えっ?話について行けてないんですが?!」
士ははっきりと言い放つ。
「五代雄介はこの世界の人間…いや…クウガではない、と言うことだ、云わばイレギュラーなようなもんだな。」
この言葉と同時に五代さんと出会った時に話した過去の戦いと、今が上手く「繋がらない」理由がはっきりした。
つまり五代さんは別の世界から来た…?
「で、俺が聞きたいのはまさに今あんたが言ったこの世界に来た方法と理由だな。」
と、士は五代さんを見据え答える。
うーん…
と、五代さんは思い出すような、考え込むような仕草をして
「そのどちらもよく解ってないんだよね、何かこう…引っかかってて、もう少しで思い出しそうなんだけど…遺跡の中に気付いたらいた…グロンギの気配を追って戦って、また遺跡に戻ると人がたくさん居て、カオル君と出会って…」
「あー、だいたいわかった。つまり、よく解っていないんだな。」
五代さんの話を遮るように士は歯止めをかける。
やはりいけ好かない男だと僕は正直思った。
ふと僕は、
「門矢士…あんたは何者なんだ?本当に世界を越えてきたとして、何のために?」
と言うと、
「俺は…破壊者らしい。そう誰かが言っていたな。ただ、俺は自分の世界を探しているだけなんだがな、ここに来た理由はただ一つ。異常が有ると解ったからだ、五代雄介が居るべき世界にな。」
「俺がいた世界が!?」
五代さんが声を荒げて言う。
「ざっと教えてやろう。今あんたのいる世界は再びグロンギが活動を再開している。あちらにも、もう1人クウガが現れたようだな。」
「何だって?グロンギはまだ居たのか…もう1人のクウガ?そんな事が…」
僕を見ながら五代さんは言う。
士は五代さんを見据え、
「単刀直入に言おう。五代雄介、あんたは早く帰るべきだ、自分の世界のピンチに何もしないあんたじゃないだろう…?そうだな…俺が連れて帰ってやる、と言ったら?」
五代さんは黙り込む。
と、ちょうど取り調べ室の外がざわつき始めた。
また死体が出たらしいぞ。
血を抜かれていた。
首がない。
息がある被害者が怪物に襲われたと
今怪物が近くに現れた
そんな声が聞こえてくる。
「あの五代さん…僕行きます、近くに現れたみたいだし…」
「カオル君…」
士は黙っている。
「大丈夫、戦い方は解ってきたし、僕にも出来ると思うんです、昨日みたいに。それにまだよく解ってないけど、この世界のクウガは僕だから、五代さんは…そのよく考えて下さい…じゃあ僕行きます!」
それだけ言い残し僕は走り出す。
「この世界のクウガ…か……それでその、士君。まさか君も戦える人なのかい?」
「一応このベルトとカード達を使って変身して戦ってきたな、色んな世界で。」
士はポケットからベルトとカードを取り出し見せる。
「そうか…俺以外にも戦える人が居るのか…」
「五代雄介、もう一度言う。あんたは早く帰るべきだ。おそらく、あんたの世界の一条薫もあんたの帰りを待っているぞ。」
「一条さんが…」
「俺が思うにだが、この世界は五代雄介、という人間が居なかった場合の世界なんじゃないかと思っているんだが、あんたはどう思う?」
「言われてみるとそうかもしれない。俺が自分の世界に居たときに、出会った人たちと同じ名前の人が多いし…似て非なる世界…とか?」
「ifの世界、だからこそだ…あんたは早く帰るべきだ、とは思わないか?」
「思わない。」
はっきりとした五代の声が取り調べ室に響くが騒ぎの中カオルには届かなかった…
静まり返る取り調べ室、外は騒がしくパトカーが数台出て行く最中だった。
「何故だ?早く帰らないとあんたの世界がまずいことになるかもしれないぞ?」
門矢士は淡々と五代に答える。
「カオル君に俺と同じ思いはさせたくない…それに…」
黙り込む五代。
「それに…?」
「実は俺は今…戦えない。言ってないけどたぶんカオル君はそれに気付いてる。だから彼は…」
「先に行ったわけか。しかし、何故戦えない?」
「単刀直入に言うと変身さえもたぶん…」
「どういうことだ?」
一息おいて五代は昨日の戦いの話を始める。
「昨日カオル君が戦う前に俺が先に戦ってね、その時に異変があった。何かに意識を奪われそうになったんだ。」
「戦っていたグロンギの仕業じゃないのか?」
「違う…黒い何か…戦ったことのあるような嫌な気配、そして恐怖。そんな感じの得体の知れない何かが…俺を操ろうとした…グロンギだとしても相当強い力の持ち主だ。よく解らないけど…」
「なるほど…で、変身したら次は確実に体を乗っ取られるだろうと?」
「あぁ…この世界に来て最初に戦ったときも少しだけ感じたけど、変身するたびにそれが強くなってね、たぶん次かその次にはもう押さえきれなくなると思う…」
「ちなみに乗っ取られたとして、やりそうなことはなんだ?」
「感だけど…究極の闇への変身、俺が元居た世界での最後の変身した姿…よりもさらに…上の闇、だと思う。」
「…究極の闇か」
門矢士は外を眺めながら呟く。
「だいたい判った。どうやら俺の今回の役目はあんたを連れ戻すだけのようだな、でもあんたは帰らないと。判った、気は乗らないが、俺も協力しよう。」
「何が解ったんだい?」
「あぁ、可能性の話だが…この世界にグロンギが現れたのはおそらくあんたが原因だろうな。またはグロンギ復活のきっかけを作った。」
「俺が…」
「まだ解らんがな、可能性の話だ。よし、とりあえずカオルの様子を見に行くとしよう。気になってしょうがないんだろう?戦いは慣れていないようだしな。」
「そうだね。うん、心配だ。君は…士君は本当は優しい人なんだね(笑)カオル君と仲良くやれそうだけどな。」
「言ってろ、馴れ合いは俺の趣味じゃない。」
そう話ながら取り調べ室を後にし警察署から出て行く2人が走る姿を桜子と夏目博士が目の当たりにする。
「今の五代さんと誰だろう、カオルは居なかったけど…あの警察官なんか変わったカメラ?持ってなかった?ねえお母さん?」
「そうだったね、鑑識の人かね?うーん何かあったのかな。」
その時夏目博士の携帯が鳴る。
「はい夏目です、はい、はい、えっ?今近くですよ。えっ!?」
桜子はじっと母の電話が終わるのを待っていた。
「分かりました!」
夏目博士が電話を切ると桜子に言う。
「この先のあんたの勤めてる幼稚園の近くで怪物同士が戦ってるそうよ。」
「えっ、怪物同士?」
「てことはたぶん…」
桜子ははっとする。今、五代さんとすれ違ったと言うことは、
「怪物と戦ってるのはカオル!?」
「そうかもしれない。」
「ちょあたし行ってくる!!」
「…待ちなさい、危ないのよ?一条君が心配なのも解るけどかえって一条君を心配させるだけだと思う。」
「私はカオルに頼まれたの!!そばにいてくれって!だから!」
「…解った、解ったから…。私も一緒に行くわ、ただし本当に危ないと思ったら急いで逃げる良い?」
「ありがとうお母さん!」
そして2人もカオルの元へと急ぐ。