明くる日、博士と桜子に見送られ、五代さんと二人で歩いて栄水遺跡に向かった。
到着したときに輝ちゃんが出迎えてくれて、嬉しかったけど、正直言うと、なんかちょっと疲れた…輝ちゃん元気すぎだよ…恐るべし、話し出すと止まらない病。
栄水遺跡…ここは…約一月前僕と五代さんが出会った場所、僕の両親が失踪した場所、そして…僕が初めてクウガになった場所。
その場所で僕は真実、真相に迫ろうとしている。
この世界の謎、古代文明の謎、もしかすると両親の失踪した理由も解るかもしれない。
そして気になっている事項。
僕の両親が失踪直前に発見したとされる、霊石を身に宿し棺に眠っていた何者か。
おそらくその何者かが、今僕達が直面しているグロンギの襲撃の謎と僕の両親の失踪の謎、の鍵を握っているに違いない。
遺跡の奥深くにあるという現場へと向かう途中、僕は唐突に五代さんに聞いてみた。
「五代さん聞きたいことがあるんですが。」
「うん?何だい?」
「五代さんが自分の世界で最後に戦った、あのグロンギ。この世界にもいると思います?」
「あー…カオル君は知ってるんだったね、夢で見たんだっけ?いるかどうかは解らないけど、もしいるとしたら…いや居ないとしても正直に言うと二度と会いたくない。」
「…ですよね。ごめんなさい変なこと聞いて。」
「いやいや、良いんだ。ただ会いたくない理由はというか…俺が今はおそらく戦えない状態だろ?
だから、君が戦ってくれてる。だからこそ、カオル君にあのグロンギと戦って欲しくないんだよ。
正直に言うとさ、あの最後の戦いの時、俺は怒りで狂いそうだった。
戦いを楽しそうにやっている奴が目の前にいて、そいつがたくさんの人を殺したことも事実で…
怒りと憎しみに泣きながら、それを堪えてただ皆の笑顔のためにって想いながら戦った。
戦い終えて気付いた事があった…このままじゃみんなの笑顔を見ることは出来ない、自分が笑えない状態なんだと気付いた。
だから自分が心から笑顔になれるまでは仲間の元には帰らないでおこうってね。
つまり、それくらい辛い戦いをカオル君にはして欲しくないんだ。俺がこんな状態じゃなかったら、君は戦わずにすんだかもしれないから…そう思ってる
本当はね…」
「そんな!僕は大丈夫ですよきっと!もっと強くなりますから!それにグロンギも最近出ないし!」
「それでも…ね。いないで欲しい。」
「五代さん…」
そんな話をしながら、栄水遺跡の内部、古代文明の文字が大量に刻まれた、僕の両親が失踪したその場所まで初めてやってきた。
「ここが…」
「そう、俺が目が覚めた場所、そして」
「僕の両親の失踪場所…全ての始まりの場所?」
話には聞いていたが。
人が50人ほど入れる場所、そして周りの壁の一面は古代文明の文字でぎっしり埋められ、この場所の中央に棺が「2つ」有る事。
「アレッ?棺が2つ有るね、俺のいた世界はどうだったんだろう?」
「うーん、そもそもこの棺が2つ有るなんて僕初耳というか…初見というか…だから、どうなんでしょう?」
到着してから一息ついているときに輝ちゃんから遺跡内部の話を聞いた。
その時聞かされた棺の話、2つ有るとは聞いていなかった。
昨日博士に収集依頼された僕の両親が残した書類に記載されていただろうか…?
この棺が発見されたのは10年前。
そして、2つ有るうちの一つを僕の両親が開放した。
そしてその後僕の両親は消失した、そこまでは調査書類で解っている。
「まぁ、とりあえず何から調べましょう?僕の両親が古代文字の解明はしてくれていたみたいなんで、壁の文字は一週間も有れば全部解読できそうです、それに途中まで解読してたみたいで、ほら。」
僕は博士から預かった、いや…両親から託されたヒントである古代文字の書類を五代さんに見せる。
「どれどれ…聖なる泉が枯れ果てた者が現れるとき、世界は空を失い人は恐怖する、光を統べた者が現れるとき、それを光と炎で打ち払い、世界は光を取り戻す、か…」
「あと、博士達が五代さんから預かってたあの石版の文字、世界の終末を書いていたとか。」
「あぁ、実加さんから聞いたよ。君のこと何じゃないかとか言ってたね、何だっけ?新たな選ばれし者?だっけ?聖なる泉…これは俺も知ってるよ、俺のいた世界にも同じ文字があったから。」
「へー、でも聖なる泉って何なんですかね?」
「たぶん…心…じゃないかな。」
「心?心が枯れ果てる?」
「つまり、自分を見失い、何のために何をするのか?自我を失うということかな…何となく解る、今ならね。」
「なるほど…(思うところがある…のかな?)」
「それはそうとカオル君。」
「えっはい?」
「もう一つの棺、あれも開放されてるって話も聞いた?」
「聞いてないですね、さっき見たとき、あれーおかしいなー二つ有るなーてか、開いてるなー何でかなーなんて思う余裕は持ちたかったんですけど。色々スルーしてました。」
「いやー、本当本当。俺もあえてスルーしてたけど。」
2つ棺があって2つとも開いてる。
それが事実。
「帰ってから輝ちゃんに聞いてみましょう…」
五代さんは頷いて調査の準備を始める。
輝ちゃん話し出すと止まらなくて重要な事忘れちゃうんだよな…昔から…
「変わらないな…みんな…」
輝ちゃんも博士も桜子も、僕は…
「ん?何かいった?」
「あっ、何でもないです!さっ、始めましょう!」
「ん?ああ!とりあえず解読されていない文字から手を着けていこうか。」
「はいっ!」
そこから今何時だろう?と腕時計を見て驚く時間まで作業し、遺跡の付近に有る関係者用の施設に戻る事にした。
時刻は20時を回ろうとしていて外は真っ暗だった。季節は夏を終えようとしている時季、少し肌寒い風が吹いていた。
「もう!遅い!心配したでしょ!」
施設の玄関先で僕と五代さんを待っていた輝ちゃんが叫ぶ。
「ごめんなさい。」
五代さんが謝ると、輝ちゃんは続けて
「はぁ…とりあえず、中入ってからお説教です。」
「エッ?」
「何か言った?(一条君)?」
僕を一条君と言うときはだいたいあれで、あのいけ好かない門矢士の言葉を借りるならこうだろうか…だいたいわかった。
始まります、キレキレのずっと輝ちゃんのターン…やめて、僕のライフはもう0だよ…?
それから約一時間後、五代さんの作った夕食により機嫌が直り、笑顔だけでなく口も止まらなくなった(しゃべる方の意味で)輝ちゃんに聞かなければならないことがある。
食事中だが別にいいだろう。
「輝ちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」
「何?あぁもしかして、桜子との子供の作り方?」
ゴフッ(五代さんの咽せる音)
ブフッ(僕が食べていた物を吐き出す音)
「やだっ、ちょっと二人とも汚い!」
「だって輝ちゃんが変なこと言うから!」
「そうだよ!さすがにカオル君もそれくらい知ってるよ!」
「えっ、そこ五代さん!?」
「なーんだ、カオルン知識は有るの、良かったわー。」
「良かないわ!僕と桜子はまだそういう関係じゃ!」
「「まだ?」」
最後に五代さんと輝ちゃんの声が重なり、2人ともニヤニヤしてる。
「…もうやだ…」
顔が真っ赤なのを隠すためテーブルに顔を落とす。
ゴンッ(勢い余って額をぶつけた音…痛いよぉ…)
「あぁ、ごめんごめん(笑)で、何よ?聞きたいことがあるんでしょ?」
「じゃあ俺が変わりに、遺跡の中にある棺の話でね。」
五代さんが僕に変わって聞いてくれた。
「あぁ、カオルンのご両親が開放したやつですか?」
「そう、でもそれじゃなくて。もう一つ棺が有るだろ?あの棺はいつ開放されたのかなって。」
「はい?ん?えっ…ちょっ、ちょっと待って下さい五代さん、えっ?もう一つの棺?あそこに?何の話です?私そんなの見たこと無いけど…?」
「「えっ?」」
五代さんの声と驚いて顔を上げる僕の声が重なる。
輝ちゃんは続けて
「あの場所が発見されたときから今に至るまでに、壁一面の古代文字と棺が一つ、そしてその棺の中にいた何かと霊石が2つ、それしか発見されてませんよ…?」
「いやでもっ!確かに有ったよ!?ねえ五代さん!」
「あぁ…間違いないよ…どういうこと…?」
「ちょっと待って…あっ有った。はい、これみてこの写真。最近撮った遺跡内部の写真ね。」
輝ちゃんはファイルらしき物から写真を取り出す、食事中でも仕事を手放さない研究者らしい一面でもあるがそんな事より、
「よく見なくても一つしか棺は無いでしょ?」
と、輝ちゃんは問うが、
「五代さん…」
「あぁ…」
次に口にした僕と五代さんの答えは同じだった。
「「2つ有る。」」
「ごめん、意味わかんない。」
と、輝ちゃんが口にしたのを最後にその場は沈黙を迎え、時刻ももう直ぐ明日を迎えようとしていた━━━━━━━━━━━━━━━━━。
今回のお話で五代雄介が何故仲間の元から離れ旅に出たのか…も筆者の勝手な解釈で書きました。なのでオリジナル設定とは少し違うかもしれませんのでご理解を。
あと、今思案中なのが当初は「行方」→「破壊者」→「消失」→「旅立ち」の順の四部作の予定だったんですが、「足跡」という章を追加しようかと…
「旅立ち」→「足跡」で終わりにしようかと思ってます。うーんまだまだ長くなりそうだ…読んでくれている皆様どうか最後までおつきあい下さい。