痛みが消えていく。同時に現れる腰の機械的なベルト。
何なんだこれは?自分の体に何が?
考えている暇もなく怪物が襲ってくる。
気付いたことがあるとすれば、怪物の頭には鋭い角があること、あれが刺さるとまずい、さっき突進されたときに刺さらなかったのは奇跡的だ…その角が再び襲ってくる。体が軽い気がする。
すぐに反応し避けることができた。
「逃げるか…戦うか…」
戦う…?逃げることだけ考えていたはずなのに?
怪物は急激に接近し肉弾戦を仕掛け始めた。
ここで幸いしたのは、学生の頃武術をやっていたことで、受け流す事よりもかわすことに専念出来たためダメージを受けずに応戦することができた…何故最初よりも身体が軽いんだろうか…?
少しずつ怪物との距離をとり、戦うか、逃げるか自問自答をしている僕が選んだ答えは…
「伏せて!!」 「答え」を行動に移そうとしたとき、背後から気配を感じ横に飛ぶようにして落ち葉の集る地面に突っ伏した、と、その時 。 「ウォリャーッ!!!」 謎の男が変貌した赤色の体をした怪物が空中で一回転し、火を纏った右足で角が有る怪物に跳び蹴りを喰らわす。
そして、角が有る怪物の体に文字のような物が浮かび爆発。
案の定近くにいた僕は吹っ飛ばされる。
今日は吹っ飛ばされてばかりだ。
ここで僕の意識は途絶え、不思議な夢?を見ることになるのだった…
赤、青、緑、紫、そしてこの四色に金が混ざり、そこに黒が混ざる。そして最後は黒だけになり唯一目だけが赤いままの姿に…走馬燈のように駆け巡るあの男が変貌した怪物の姿…それが戦う姿は正に怪物そのものだ。その戦う姿を僕はただひたすら見ていた。急に場面が変わり、「一条さん、俺なります。黒に…黒になります。大丈夫!俺は大丈夫ですから。」
先程の謎の男が笑顔でそう誰かと話している。一条?今一条さんと言ったか?僕は一条だ、だけど彼を知らない。僕は彼を知らない。ここで気付いた、これは夢だと。
「大丈夫、俺はクウガだから!」
クウガ、謎の男が確かに言った。
「五代、頼んだぞ…。」
声の主を見るとスーツ姿の男の人が分厚い上着を羽織り謎の男を五代と呼んでいる。
周りを見渡すと雪景色でしかも吹雪の中に二人はいた「だから見てて下さい、俺の最後の変身。」 そして五代と呼ばれた男は姿を変貌させる。
ただし赤ではなく黒に、唯一目だけが赤いままで。そこで夢?のシーンは移り変わり、一条さんと呼ばれた男が、街の中で一人つぶやくシーンになる。
「五代、みんなおまえの帰りを待ってるぞ。」
青空を見上げ、そうつぶやく男の顔は少し悲しそうだった。
「一条さん!」
急に誰かに呼ばれた気がして、振り向くと、そこには誰もいない。 「一条さん!」
再び声が聞こえたかと想うと青空に吸い込まれるように僕は何かに引っ張られ?目を覚ます。
「一条君っ!」
「カオルっ!しっかりしてっ!」
ふと目を開けるとそこは知らない天井で、ベッドに横たわっているのであろうか、僕は。声の主は夏目博士とその愛娘で僕の幼なじみの桜子だった。
「おはよう…ここどこ?」
僕はとりあえず現状を聞かねばならない。
「病院!カオル、あんた怪物に襲われてそれでっ」
桜子が取り乱しながらも説明してくれたおかげで記憶が鮮明になりつつあった。
「一条君、すまないね私のせいで…」
夏目博士は僕に謝りながら泣いていた。
「大丈夫ですよ博士、僕はたぶん…」
クウガだから、とお腹をさすりながら僕は答えなかった。
そうだ…僕にはあの謎の男と同じモノが体内にある。
僕は…
「僕、行かなきゃ。」
体を起こそうとする僕を桜子が取り押さえる。
「何考えてんのっ!?あんた怪物に胸のあたりを刺されて重傷なんだよっ?!動いちゃだめ!」
えっ何だって…刺された?胸を?見てみると確かに包帯が巻かれていた。しかし痛みが全くない。
「一条君、お願いだから安静にしててね。命を取り留めただけでも奇跡的なんだから。」
「母さんの言う通りよ、動くな!」
余談だけどお気づきの方もいたかもしれないが夏目博士は綺麗な女性で母親である。
「わかった、解りました…でもひとつきいていいですか博士?僕をこの病院に連れてきてくれた、運んでくれた30代位の男性はどこに?」
「気を失ってたはずなのになんであの男の人を?」
やはりか。やはりあの謎の男が僕を助けてくれたんだ。「どうしても彼に聞きたい話があるんです。」
僕は夏目親子を見据え、そしてあの時の自分の出した…
「答え」を心に誓うのだった、そう、きっとあの人も待っている…