そして青空の破壊者、これがラストになります。次章は第三部「青空の消失」となります。
しばらくの沈黙の後、輝ちゃんからとりあえず今日は遅いからお開きにしようと提案され、それぞれ寝床に着いた。写真もとい2つの棺の件は翌日に持ち越された。
翌朝、時刻は8時。少し遅い目覚めになってしまった僕は慌てて寝間着から着替え、昨晩食事を取った研究者用の休憩室に向かった。
「おはようございます、遅くなり…あっ」
まで言いかけた僕の視界に写る休憩室内には輝ちゃん、五代さん、そして…通りすがりのいけ好かないあいつがいた。
「おはよう、カオル君。」
「カオルンおそよー。」
五代さんと輝ちゃんが手を上げならが迎えてくれた。
「よう、また会いに来てやったぞ。」
コーヒーを啜りながら、声だけで迎えてくれやがった士がそこにいた。
「…今日は何のようだ?」
僕は怪訝な顔を解るように士に見せながら問う。
「おいおい、そんな朝から機嫌悪そうにするな、コーヒーが不味くなる。五代雄介のいれたコーヒーは中々旨いんだからな。」
確かに五代さんのいれたコーヒーは美味しいが、意外だった。門矢士という人間は人を誉める事を言える奴なのかと、その時ふと脳裏に浮かんだ先日の病院でのやり取り、士はこう言っていた。
「大丈夫か?俺だって人間だ、人並みに心配だってする。」
と。
そうか、そういう奴なんだ。
「悪かったよ。で、今日はどうしたのさ?もう(大集合)の時が来た?」
「いや、まだ少し猶予は有る。今日俺がここに来た理由、それはお前に強くなってもらうために来た。」
「僕に強く?」
輝ちゃんと五代さんは僕と士の会話を黙ったまま聞いている、おそらく士からこの話は聞いているのだろう。
「あぁ、(大集合)の時にお前だけ弱かったら足手まといにしかならんし、大勢の命がかかった戦いでもあるからな。それに五代雄介が戦える可能性が低い今、お前が強くなければ次グロンギが現れたら…だろう。」
「確かに僕はまだまだだけれど…でも…何をするの?具体的には?五代さんも特訓するって言ってましたよね?」
と、五代さんに振ると、
「実は士君にお願いしてたんだよ。この前君が病院で士君に会った後、士君が俺の元を訪ねてくれてさ、その時に。戦ってほしくないって思ってるけど、君は戦う意志を持ってるから。だからせめて少しでも強くなる方法をね?この遺跡付近は人が少ないからそこでお願い出来ないかと、そしたら、」
まで五代さんがいいかけた所に士は割ってはいる。
「単刀直入に言う、一条カオル、いや仮面ライダークウガ、世界の破壊者である俺、仮面ライダーディケイドと戦ってもらおう。」
「はい?僕と士が戦う?」
「そうだよカオル君!これが俺が言っていた特訓だ!」
「…マジで…?」
「カオルン!ファイト!」
五代さんと輝ちゃんが同時にサムズアップで笑顔を向ける。
「陳情だな…」
士は何か呟きコーヒーを啜りだした。
戦うの…?マジで…?
かくして、士と戦うというハードスケジュールから僕の一日は幕を開けた…そもそも、よく士が口にする「仮面ライダー」って何なんだろう?
採石場にて━━━━━━━━━━━━━━━。
輝ちゃんは仕事があるため別の場所へ、そして僕と五代さんと士は施設から少し離れた採石場にやってきた。
「さて、始めるか。準備は良いか?」
僕に対峙する士はどこからか取り出したベルトのような物を腰回りに装着。
同時に僕も腹部に力を込め、ベルトを出現させる。
「準備オーケー!」
「んじゃ行くぞ?変身ッ!」
士はカードを取り出し、ベルトに差し込む。すると不思議な電子音が聞こえたかと思うと、次の瞬間に士はマゼンタ色の戦士の姿へと変身していた。
「これがディケイド…」
五代さんが呟いた。
「じゃあ僕も!見てて下さいよ五代さん!変身ッ!」
五代さんの動きを真似た変身に至までの動作、少しはまともになったかな?
「ってあれ?」
僕の身体の色はまさかの白だった。
「やはりか…」
士…ディケイドが続ける。
「カオル!そんなんじゃあダメだ!俺を殺す気になれ!そうすれば赤になれるだろう。」
「そんな…」
僕は悩むしかない。
「仕方ないそのままどれだけやれるか試してやる、行くぞ?ハァッ!」
ディケイドはダッシュで僕へと間合いをつめ蹴りの体制へはいる。
「くっ…」
ディケイドが目の前に来た瞬間、僕はそれをかわし無防備になっているディケイドの背中に蹴りをいれようとするが…
「かわす速さは中々早いが、攻撃の威力と速さが足りないな。」
すぐさま振り返るディケイドの蹴りによって相殺され、右の拳を顔面に打け数メートル飛ばされてしまった。
「嘘だろ…」
たった数十秒戦っただけで解る明らかな戦力差。圧倒的な格差。膝を着きながら立ち上がると、殴られた場所を手でさすると手に少し血が着いているのに気付く。
「カオル君大丈夫かい?」
五代さんが駆け寄ってくる。
「はい!見てて下さい!これからですよ!」
「よし!その意気だ!」
と、五代さんが少し背中を押してくれた気がする。
「行くよ士!変身ッ!」
僕の身体が白から赤に変わる。
手に着いた血の色のイメージ、この血を見ないためにも僕は強くなる!と、思った瞬間赤色に変貌した。
「さて、本番はこっからのようだな。行くぞ!」
そこからどれくらいの時間、ディケイドと戦っただろうか?
動きを止め唐突にディケイドが言う。
「カオル。」
「何?」
「体力的にはどうだ?」
「まだ行けるよ!」
「そうか、ならば…お前の必殺技、俺にぶつけてろ。」
「必殺技?」
「敵を確実にしとめられる技、クウガは封印の文字を蹴りやらで打ち込む、それを俺に見せてみろ。遠慮はいらん!」
「わっ、解った!」
僕はディケイド向けて走り少し飛び上がりながら封印の飛び蹴りを打ち込む、が。
「ちょえっ!?」
ディケイドは僕の蹴り出した右足をうまく掴みそのまま投げ飛ばす。
「ウワァァァッ!?」
そのまま再び数メートル飛ばされてしまう。
「いててて…」
ディケイドがつめより語りかける。
「カオル、今のがもし本当の戦いならお前の命はここで終わっていたぞ、お前の命が終わる、つまりこの世界の終わりだ。」
「うん…」
「威力が足りなさすぎる、五代雄介、あんたのあれ、教えてやったらどうだ?」
と、ディケイドは五代さんに問う。
「俺の奴か…まぁカオル君に合うかどうか解らないけど…やってみるかい?」
「もしかして、空中で一回転?ですか?」
ディケイドと、五代さんが頷く。
「やってみます!」
右足に力を込め空中で前回転しそのまま右足で蹴りを打ち込む。
それを何度かディケイド相手に繰り返し、様になってきた頃にディケイドは急に士の姿へと戻る。
「えっ、どうしたの士?」
士は服を正しながら、言う。
「そろそろ、締めのテストと行こうか。」
と、士が見つめる先に、一体のグロンギがいた。
「俺たちの気配に釣られて現れたんだろう。」
士は冷静に答える。
「カオル!」
「カオル君!」
「はいっ!」
そのグロンギの姿がどんな奴なのかも見ることすらせず僕はグロンギ目掛け駆け出す。
「ここだっ!」
と、少し飛び上がり、空中で前回転し、グロンギ目掛け蹴りを打ち込む。
「ウォリャッー!!」
叫んだりもしてみた、よく考えたら五代さんと同じかも。
ドンっという鈍い音と共にもうそこにはグロンギはいなかった。
「上出来だ。」
士は呟き五代さんはサムズアップと笑顔で喜んでくれたりして、少し嬉しかった。
「この技、名前を付けるなら何が良いかな…」
と、僕が言うと士はすかさずこう答えた。
「ライダーキック…ってのはどうだ…?」
「良いねぇ、ライダーキック。カオル君言いと思わない?」
「ライダー…キック…」
バタッ(僕の倒れる音)
こうして僕の今日という一日は終わった。
遠い意識の中、士と五代さんの会話が聞こえていた気がする。
「ったく、世話の焼ける奴だ。五代雄介、後は頼んだぞ?」
「あぁ、士君今日はどうもありがとう。」
「気にするな、どこかの旅人も言っていた、ライダーは助け合いでしょってな。」
「その…ライダー?仮面ライダーって何なんだい?」
「そうだな、俺達みたいな命知らずの冒険家の事を言うんじゃないか?」
「そうか…」
「まっ、また近いうちにこの世界の様子を見にくるから、またそん時にな。」
「あぁ、またね。」
士は歩き出し、手を振る。
五代もカオルを背負い歩き出す。
それぞれ反対方向へ。
「五代雄介、あんたのコーヒー旨かったぞ」
五代が振り返るがそこには士の姿はなかった。
「門矢士…面白い人だな(笑)」
と、呟きながら空を見上げると、眩しいくらいの青空がこの先の不安を破壊してくれた、そんな気が五代はしたのだった━━━━━━━━━━━━━。
青空の破壊者━終━
門矢士の成長した姿を書きたくて書いたお話ですがどうでしたか?今回、門矢士が破壊したもの、それは門矢士自身の人物像と、主人公カオルの戦い方の甘さです。
ほんとねー、士はね、良い奴なはずなんですよ、たぶん!
次章「青空の消失」もお楽しみに!