杉田さんの前に出るとそれはもう悲惨な状況だった。
1、2、3、4…数えるのが億劫になる程の警官が倒れ血を流している。
「なんて事を…」
倒れている人を割けるように足を進める僕の身体が少しずつ変わり始める。視線の先にコウモリの姿をしたグロンギがいた。
「よくも…」
両腕が変化する。僕の気配を感じ、コウモリのグロンギが僕めがけ飛来、奇襲を仕掛けてきた…だが…
両腕だけがクウガに変化した僕のその右拳が飛来したコウモリのグロンギの腹部に直撃する。
「ンガァ!」
コウモリのグロンギは奇声をあげながら痛みにもがき、その場に倒れ込む。
「よくも…博士を…!」
もがいているコウモリのグロンギに間髪入れず、ボールを蹴るように腹部を蹴り飛ばす…と、同時に僕の両足がクウガへと変化。
5メートル程蹴り飛ばしたコウモリのグロンギは再びもがき苦しんでいる。
「僕の大切な人達を…これ以上悲しませるのなら…」
そいつ目掛けゆっくり足を進める僕の胴体が赤い色のクウガへと変化した。右足が炎に包まれる
「俺が殺す…変身…」
その言葉と同時に僕の顔がクウガへと変化した。
膝がふるえながらも立ち上がるコウモリのグロンギに向かって少し飛び上がり、空中で前回転し、
「死ねえッッッ!!!」
僕の炎を纏った右足がコウモリのグロンギの腹部に3度目の正直と言わんばかりに直撃。
「ンギッ!!!」
奇声をあげそのまま炎に包まれ、消滅した。
「博士…死んだら恨みますからね…桜子を一人にしたら…あっそういえばっ」
いつの間にか変身も解け、早く倒れている人の安否を確認しなきゃと振り返ると、救急車やらパトカーやらが沢山押し寄せてくる。被害者が救急車に運び込まれ始めた頃に、杉田さんが僕に血相を変えて駆け寄ってきた。
「一条君!怪我はないか!?助かったよありがとう!それよりも!」
一息おいて続ける。
「夏目博士が搬送された、かなり危険な状態らしい、出血が酷く意識不明だそうだ…」
「ッッッ!!!わかりました!!!搬送先は!?」
「この前君が運ばれた例の病院だ。」
それを聞いた僕はもう走り出していた。
僕の足下に、研究所に有るはずの石板が落ちているがそんなの構っていられない。
走れ、前に走れ、ただ前を見ろ。
自分に語りかけるようにそして人混みをかき分け、ただ前に走る。
人混みの中には、生きていた研究所の職員や、野次馬や警官救急隊員に、五代さんが
「んえっ?五代さん?」
走っていた僕の足が止まる、今確かに五代さんが…
「五代さん…?」
振り返って周りを見回しても、人混みのせいで五代さんの姿を捉えることが出来なくなった。
「…行かなきゃ!」
今は五代さんを探している場合じゃない。
早く博士の…桜子のところへ行かなきゃ!
「ただ、前を向いて。
下を向いて生きるくらいなら、上を向いて欠伸でもしてろ。
前へ進め、誰かのために、自分のために。
泣きたきゃ泣け、前向いて泣き叫べ。
それが男ってもんだ。」
この言葉は僕の両親が亡くなった後、博士が僕に言ってくれた一言だった。
この一言で僕はかなり変わった。
少しでも強くなれた、だから今の僕はある。
僕の「もう」独りのお父さんでお母さん、
それが夏目実加博士。
頼むよ、神様仏様、何様でも言い。
博士を助けて下さい…
僕の大切な人を連れて行かないで下さい━━━━━━━━━━━━
次回、五代雄介視点の話になります。