「…来いよ…こっちだ…」
その声を追って俺が向かった先は、
「遺跡の中からか…?」
俺は遺跡の中に足を進める。
つい先ほどまで調査していた場所は暗やみに包まれていた。
時刻は20時を回ったところだったと思う。
声に導かれた場所は予想通り、棺の間(輝ちゃんがそう呼んでいた)だった、つまり先ほどまで俺と輝ちゃんが調査をしていた2つの棺が有る場所。
棺の間には明かりが灯されていた。
そしてその灯りの中に、声の主はいた。
「君だね、俺を呼んだのは。」
俺がそれを問う相手の風貌は、黒い羽織と頭にはフードを深々とかぶっていた。
「あぁ、俺だよ?久しぶりだな、五代雄介。いや…別の世界の戦士クウガ。」
フードを深くかぶっているため顔がよく見えないが、彼は(俺)と言ったことから男なのだろうか。
「久しぶり…?君は俺に会ったことがあるのか?なんで俺がクウガだと知っているの?」
俺がそう問うと、彼はため息をつくように答えた。
「やはり忘れているようだな、10年前の出来事を…良いだろう…全て話してやる。今から話すことはすべて事実だ、あんたの真実、この世界のな。」
10年前…?この世界の10年前…?真実…?
彼は続ける。
「10年前、この場所。戦士の眠りし場所、ここで俺は、2人の人間により棺から開放された。俺が目覚めるとその2人の人間は少し驚きながらも笑顔で俺に(おはよう)と言った、おはようという言葉の意味が解らず、俺はただ無言でいることしかできなかった。ただある事を思い出した、棺に入る前に聞いたことがあった事…2つの棺のうち一つが開放される時、もう一つの棺も開放され…戦いが再び始まるということを。」
「グロンギの復活…?」
と、俺が問うと、彼は少し鼻で笑うような仕草のあとまた続ける。
「復活…だと?進化…変化だと思うが…?本当に何もかも忘れているようだな。いや知らないのか。」
俺が忘れている…?知らない…いったい何を…?彼は一息おき続ける。
「あんたの世界のクウガやグロンギその他諸々はどうだかは知らない。だがこの世界の2つのクウガという存在は…そうだな、天使と悪魔、グロンギに成る者達…それはヒトだ。」
俺は最後の言葉に驚きを隠せない。
「…人間がグロンギに成る…!?」
「そうだ、そして…俺の親友…いや話を戻そう、10年前にこの場所で、2人の人間がグロンギに慣れ果ててしまった。何故か?それはこの遺跡が人をヒトではなくす物の保管場所だからだ。今の世間が言っている(古代文明の遺産)の塊がこの場所なのさ…俺が此処に封印されたのはもう何千年も前だ、その頃この場所は作られた。ヒトが二度と争いを行わぬように、血肉の争いが起こらぬように。」
俺は黙って彼の話に集中している。
「俺が封印される前、幾数のグロンギが他の世界からやってきた、この遺跡を通じてね、ここはそういう場所だったんだろう。」
「他の世界からグロンギがやってきた?」
「そう、何故やってきたのかは解らず終いだったが…グロンギは人々を殺し始める、今の世間で言うゲーム感覚で。人々はグロンギを神だとか、神の怒りの象徴だと言ったりしていた、そんな事を言うだけで何もせず、ただ殺されていった。俺はそんな何もしない笑顔の失われた世界に耐えられなくなり、ある行動に出た。グロンギに立ち向かうために、人々の笑顔を取り戻すために。幼なじみ…親友と共にある研究を始めた。」
彼はまるで俺と同じようなヒトなのだろうか…俺も身に覚えのある似たような話を経験しているが。
「運が良かったのか悪かったのか、古代文明は今よりも技術が進歩していた、のかもしれない。俺と俺の親友2人で、ある力の秘められた石を2つ作り出した。昔からこの場所の付近には不思議な力を持つ石が有ると言われていて、それを見つけだし、ヒトを限りなく奴ら…グロンギに近しい存在に変化させるその石を作り出した。その石を身体に身に付けると、身体が強化される、それはあんたがよく知ってるな。」
「霊石のことだね、つまりこの世界のクウガ、霊石は君とその親友が作った。」
「そういうことだ、そしてその霊石を俺と親友は自ら身に付け、グロンギに立ち向かった。この世界にやってきた幾数のグロンギを俺達はただひたすら殺す日々に追われた。」
「幾数…それなりの数がいたってことか…」
「最初にやってきた数は知れていたが…ここで話は少し戻る、ヒトがグロンギになる、という話だ。」
「まさか…」
そこで俺は有る考えにたどり着く、と同時に彼は続ける。
「ヒトはグロンギを神だと言っていた、つまり自分がグロンギになれば神になれる、と思う奴らが現れた。
そして、俺達同様にヒトを変化させる石を、俺達とは違う方法で身に付けた者達がグロンギへとなり始め、奴らは殺し合いを始めた。
巷に話は広がり始め、それによって人々は力を求め、力の石を奪い合う。そしてグロンギは減るどころか日に日に増えていき、ついに俺達の身体には限界が近づいていた。
グロンギは俺たちをクウガと呼び、人々はそのクウガこそ神だと、守護神だと言い始めた。
そのクウガを我先に殺そうとグロンギ達が手を組み始め、戦いはさらに血肉の絶えないものとなった…
そして俺の親友は流れゆく血を見ることに耐えきれなくなり…心を捨て、ただ闘いに生きる者になり果てた。
それは究極の闇と言わんばかりの黒い身体、全てを闇の炎で焼き払い血も残さず破壊する破壊神。破壊する者の中に普通の人間も含まれ、人々は俺の親友を闇を統べるもの…破壊神と呼んだ。
俺は親友の心を取り戻すために戦った、忘れかけていた笑顔を取り戻すために。
戦いが収束を迎える頃、人間はほとんど残らなかった、ほとんどがグロンギへとなりお互いに殺し合い、俺も親友も奴らを殺した、そして…親友と俺の2人だけが異形の者として生き残り…戦いは終わったかに思えた、が…親友にはもう戦う本能しか残っていなかった…親友は俺を殺そうと、ただ拳を振るうのみ。
話を聞いてもくれやしなかった…意を決し、生き残った人々を守るため、俺は親友の闇を焼き払おうと、必死に戦い…俺は勝利した…闇を焼き払い、生き残った人々は俺を光の守護神と呼んだ。
俺は…親友を殺した…はずだったが、致命傷を負わしただけで、親友はかろうじて生きていた。
それで俺は親友をこの場所に封印する事にした、俺の甘さのせいで殺せなかった、そう…俺はもう殺したくなかったから。
その後の人々への戒めのために、そして俺と親友のために。残っていた、ヒトを変化させる石を石版にしてとある文字を彫り明日への人々への希望と共に親友と共にこの場所の棺、普通のヒトには見ることのできないこの棺と俺が入っていた棺にクウガのまま安置された。」
と、2つの棺に指を指す彼。そしてまた続ける。
「そして今から10年前、俺は再びこの世界に解き放たれた…2人の人間により。しかも先に俺の親友の入っていた棺を開けてしまっていた、何故普通の人間に見ることのできない棺を見ることが出来て、しかも開けられたのか…答えは簡単だ。解るか?」
彼が俺に問う、これは…俺には解った、恐らく…
「古代文明の時グロンギに成ってしまった者の中にも戦いを望まなかった、あるいはヒトとして再び生きることを選んだ…その人々の子孫…つまりグロンギは人間社会に溶け込み、血を受け継いでいる人々がいる、そして君と君の親友の封印を解いた2人の人間…それはグロンギの血を少しでも受け継いでいた…だと思う。」
恐らく、カオル君のご両親だ。叉は片方どちらか…つまりカオル君はグロンギの血を引いている?
「ほう…正解だ。俺もそう思っている、だからその2人は俺を解放した直後、身体に異変が起こり始めた。力の石に近付きすぎたからだろう。数分もしないうちに力に負け自我を失い、グロンギへとなり果ててしまった。そして…そのグロンギの気配に釣られ、俺の親友は目を覚ました。親友はその2体のグロンギを一瞬で焼き払い、俺を見たかと思うと、俺に襲いかかってきた。俺は戦うことを決め親友と再び死闘をこの場所で繰り広げた。長年の封印により俺も親友も傷はそれなりに癒え傷だらけだった腹部の石も治っていた…俺だけが。」
「親友の方は傷が癒えていなかったのか?」
「癒えるどころか真っ黒に染まり、ひび割れが目立っていた。それでも俺は親友との死闘で窮地にたたされた。親友はただひたすら俺を殺そうとし、俺はそれをやめさせ、再び封印するため…いや…己の甘さ故にまた殺せなかった、殺したくなかった。そんな気持ちで、止められるわけもなく、自分の死を覚悟した。俺は叫んだ、心の中で。願った、精一杯に(せめてもう一度、親友の笑顔がみたい)と。すると、どこからともなく君が現れた。」
「俺が…?」
「俺は驚いたよ、いや親友の方が驚いたかもしれない…君は殺されそうになっている俺を庇うように生身で親友に戦いを挑んだ。」
「自分でもそれは驚くかな…せめてクウガに変身しろよ俺…」
「いや…驚いたのはそこじゃあない。」
「えっ?」
彼は深くかぶっていたフードを取り俺に素顔を見せた。
その素顔はどこか懐かしく、何故か泣きたくなるぐらい笑顔を見せたくなるあの…
「一条…さん…?」
彼の顔は俺のいた世界の一条さんに瓜二つだった。
「10年前にも君は俺をそう呼んだ。俺の名は…ジョウ。親友の名はダイ。そしてダイの顔は…」
この彼=ジョウの一言でフラッシュバックのように一気に10年前の記憶が蘇る。
「ダイ…は、俺と瓜二つなんだ…思い出した…全て…!」
10年前…俺は一条さんの似た声に引かれこの遺跡…この世界にグロンギと同じようにやってきた…
そして、殺されそうになっているジョウを助けるため、まず生身で自身の身体の状態を確かめた。
行けると確信し数年ぶりの変身をして…ダイに戦いを挑むが…圧倒的な闇の力に歯が立たなかった。
そしてジョウも再びクウガに変身し俺と共にダイに立ち向かう…そしてジョウの霊石の力…究極の光と俺の究極の…あの黒い金の力でなんとかダイを再び封印する事に成功した…かに思えた直後、ダイ渾身の力で俺の霊石目掛け闇の炎を放つ…俺は避けることすら出来ずただ…立ち尽くした…その俺を庇うようにジョウが俺の前に立ち壁になり…ジョウは…ジョウは…そしてダイを再び封印するが、不完全な状態で封印したため、弱い結界と成ってしまった。
「ジョウ…思い出したよ…俺を助けてくれてありがとう…君はあの時死んだんだね…」
「思い出してくれたか…そうだ俺はもう死んでいる…」
「どうして俺をこの場所に呼んだの?何か理由が?」
「五代雄介、俺の最後の頼みと希望を聞いてくれるか?」
ジョウは俺を見据え問う。
「俺に出来ることなら。」
ただ俺は答える。
「五代雄介、俺の親友を…ダイを殺してやってくれ、そして俺の石を…意志を…受け継いだ一条カオルの道標となってやってくれ。これが俺の最後の願いだ。」
「…解った。この戦いを終わらせよう、人々の笑顔のために、君とダイの笑顔を取り戻すために。」
「ありがとう。そうだ、行く前に…五代雄介、君の変身出来ない理由を教えてやろう。ダイが三度に目覚めた理由、それと現代で現れたグロンギについても。」
「それはありがたい助かるよ。」
「まず君が変身し時間が経つと自我を失いそうになる…あれは、君の持つ何かへの恐怖心と、戦いの疲労によるものからだ、と思われる。
そしてダイの封印が解けた理由は簡単だ、君が目覚めたからだ…力の石の石版を持たせたまま眠るように気を失った君を俺は死ぬ直前に俺の入っていた棺に君を入れ、そして俺の身に付けていた霊石も君に託し、俺は焼失した。君は記憶を無くし、何も解らず棺を自らの力で開けたんだろう。現代に現れたグロンギは恐らくダイの影響だ。ダイの力に引かれグロンギの血を引く現代人が自我を失い、力を求め人々をゲーム感覚でおそっているんだろう。」
「何か俺よりも俺のことを知ってるねジョウ?」
「クウガの事は同じクウガが一番解る。という事さ。」
俺は内心なるほど…と思いただ頷く。
「だから俺の願いは…俺の出来なかった…ダイの死…殺してやること…そして二度と戦いの起こらない世界。」
「あぁ、解ったよ。」
「そのためには五代雄介、君の戦いの疲労を癒すため、俺が生前見つけて利用していた聖なる泉の場所を教える、そこで10日程休めば、一条カオルと共にダイと戦えるはずだ。」
「聖なる泉…?アマダム…?」
「アマダム?とは言わないが…普通の人間には入ることの出来ない場所がこの遺跡には有る。クウガになれば解りやすいだろう。」
それを話しているうちにジョウの身体が消え始める。
「ジョウ…!?身体が…!?」
「もう限界か…五代雄介、まず君は自分の身体を癒すことを優先しろ、大丈夫。俺の力を受け継いだ一条カオルがそんな簡単にやられはしないさ。だから…頼む、ダイを…この世界を…」
ジョウの姿が消え、声だけが俺の耳に最後に届く。
「親友を…相棒を頼む…」
その言葉と同時に、俺はこう叫ぶ。
「変身ッッ!!」
ジョウに言われたとおりクウガに変身すると、
ジョウが立っていた場所の先の壁にうっすらと光の壁がある事に気付いた。
そしてそこから光が漏れ、それに引かれて足を進め壁を越えて、その光に意識を奪われ…そして俺はそこで意識を失った━━━━━━━━━━━━━
読み辛いかったでしょう…?ごめんなさい、最大限でした…質問など有りましたら受け付けますんで何でも聞いて下さい。謎は明かされましたが、何故小田桐輝が一条カオルの見に宿る霊石を最初持っていたかという謎は…ふふふ、お楽しみに。