僕は戦いの後の疲れも忘れ、必死に…いや必ず生きていると信じて…その足で病院へと駆け込み、受付け職員に急患の「夏目実加博士」の病室を聞くと
「あの…只今緊急治療室で手術中でして…」
と僕に説明してくれた。
「術室は!?どこに!?」
「えっと」
まで受付の職員が答えた直後
「一条君!!」
後ろから声をかけられ、振り返ると見知った…白衣の先生がいた。
「椿先生!」
「一条君、話は後だ。夏目博士の術室まで案内する、小田桐さんと夏目さんの娘さんも来ている!急ごう!着いてきてくれ。」
「えっ、はい!ありがとうございます!」
僕は急ぎ足の椿先生を追う━━━━━━━━━━
「カオルン!」
「輝ちゃん!」
「カオルンが遺跡を離れてちょっとあとに実加さんが搬送されたって電話で警察の人から聞いてそれで急いでこの病院に来てそれで!」
薄暗い術室の前に着くと、仕事着のままの輝ちゃんが僕を見つけるやいなや、いきなり取り乱し混乱しはじめた。
「輝ちゃん落ち着いて…」
「っ…うん…ごめんなさい…」
その輝ちゃんの後ろの長椅子に、うつむき…ただ泣いている桜子がそこにいた。
「桜子…」
僕は桜子の横に座り、精一杯ただ抱き締めた。
今はそれしかできなかった。
出来ることがあるとしたら、目の前の術室で行われている「奇跡」を信じることだけだ。
神様なり仏様なり何様でもいるなら…何とかしてくれ…
正直…あの時の出血量からして、大量出血でのショック症状は間違い無く起こり得るだろう…でも…
「カオル…おがっ、おがあざん…助かるよね…?」
「…信じよう…博士の…いや…僕達のお母さんの力を。」
「カオル…うん…」
「一条君、ちょっと良いか?」
そばにいた椿先生が僕に問いかけてきた。
「何でしょう…?」
「先ほど警察の杉田の方から連絡が有ってね、」
「杉田さんから椿先生に?」
「あぁ、まぁあいつは学生の頃からの長い付き合いでね、それでその杉田から連絡を受けた。」
「そうなんですか!で…それで?」
「夏目研究所の職員8名、警察官25名が他の病院で死亡が確認されたそうだ。」
「そんなに…」
「杉田は最後に近隣の住人に被害はなかった、一条君のおかげだと言っていた。一条君…今…いったい何が起こっている?良ければ話を聞かせては貰えないか?」
「えっと…」
「話しづらいことなら、それ以外の話せる部分だけで良い、俺は医者だ。身体を治療したり見てきた患者たちのその後のケアも仕事のうちなんだから、何でも良い、協力させてほしい。」
「…解りました。輝ちゃん、桜子をお願い。」
「あっ、うん。」
桜子を輝ちゃんに任せて、そこから少し離れた場所へ、人気の無い場所で椿先生に全てを話すことにした。
自分と五代さんがクウガであること、クウガとは何か、グロンギの事、栄水遺跡の古代文明との関連、それを研究していた僕の両親の事━━━━━━━話せる全てを。
椿先生は医者としてよりも、人として信用出来ると思う。協力させてほしいと言われたら…もうこの状況は頼れる人を片っ端から頼るほか無いから。
「なるほど…ね。さっぱり俺の知識じゃ付いていけないなこれは。」
「そう…ですか…」
「ただ、いくつか協力出来ることはあるな。」
「本当ですか!?」
「あぁ、一つ目は戦いで傷を負ったら俺が五代と一条…と呼ばせてもらうが、君達を治療する。掛かり付けとしてな。二つ目は警察官である俺の友人、杉田と連携して、グロンギの身体や特徴、弱点になりそうな物を極秘で研究する、杉田に相談してみるよ。」
「あっ、ありがとうございます!!」
「若い人間ばかりに苦労させるわけにはいかんからな、これが年長者の努めさ。あと最後にもう一つ。」
「まだ何か協力して貰えるんですか!?」
「まぁ、協力というか…一条、小田桐さんの事なんだがな…」
「輝ちゃんが何か?」
「小田桐さんはたぶんお前の事…あぁ、やっぱりなんでもない、こんな時にする話じゃないな…とりあえずさっきの2つの件は任せろ、俺がケアさせてもらう。」
「…?はい。ありがとうございます?」
「とりあえず戻るか…夏目さんが心配だ。」
「っ、そうでした!」
僕と椿先…椿さんは術室に急ぎ足で向かった━━━━━。
術室に戻ると、未だ術室の「術中」の光は灯っていた。
「大量出血らしいからな…輸血しながら傷を塞ぐ所からだから…長くなるだろう…いったい研究所で何があったんだい…?夏目さんの娘さん…?」
戻るなり椿さんはうつむいている桜子に問いたざす。
「ちょっと!今そんな話は良いじゃないですか!?」
と、怒った顔の輝ちゃんが間に入る。
「大丈夫…輝姉ちゃん…私大丈夫だから…」
桜子は顔を上げ真っ赤な目を僕に向けながら続ける。
「大丈夫。」
と。
桜子の目を見ながら僕は頷く。そして桜子は語り出す。研究所で起きた悲劇を。
「怪物…グロンギは最初、人間の姿だったんです。だから最初は普通に研究所の来客として受付の人も疑わずに通したみたいで…今日は休日だけど職員さんも結構出勤してたから、関係者かと思われたんでしょう…栄水遺跡の件で話があると来たそうですから。」
そこでいったん僕が間に入る。
「つまり、ヒトの姿でヒトの言葉を話し栄水遺跡の事を理解しているグロンギだった可能性が有るのか…」
と、そこで椿さんが
「何かを…狙いに来た?」
その言葉に輝ちゃんが
「まさか…石版…?五代さんが実加さんに渡したあの石版を狙ってきたんじゃ…?そういえば…その五代さんはどこなのカオルン?」
その言葉に僕の記憶が少し時間を遡り始める。
「そうだ…さっき倒したグロンギのそばにその例の石版が落ちていたんだ、おかしいなとは思ったんだけど。」
そこに桜子が
「そう、その石版は文字が彫られているだけじゃなくて…カオル、あんたの身体の中に有る石と全く同じ物で有る可能性があるらしいの…そのグロンギが言っていたってお母さんが…だからお母さんは助けが来るまで必死にその石版と…そばにいた私を庇って…っ」
と、言ったところで再び顔を落とし少し泣き始める。
「話してくれてありがとう桜子。」
と、僕は良いながら桜子の手を握る。その手は震えていた、桜子だけじゃない。僕の手が怒りで震えていたのもある。
「しまったなあの石版…回収しておけば…」
と僕が言うと、椿さんが
「杉田に今連絡して聞いてみるよ。その石版。」
「すみませんお願いします。」
と、首を縦に振りながらこの場を離れていった。
「五代さん朝から遺跡の付近にいなかったみたいだけど、」
と、輝ちゃんがそこまで言ったところでもう一つ思い出したことが。
「そういえば…輝ちゃん。僕さ、さっき研究所の付近で五代さんを見た気がするけど…見間違いだったのかな?」
「研究所の付近で?もし五代さんなら変身出来ないとしても何かしら行動取るだろうし違うんじゃないかしら?」
確かにそうだ…
と、ただ頷く僕のこの少しの不安が、独りで戦う恐怖だとは気付きたくなかった、そう思うのは五代さんも同じだったのだろうか━━━━━━━━━━━━━━
失われつつある「何か」それはカオルの笑顔、日常、そして…?
タイトルの「消失」は五代雄介不在のままストーリーが進行します。「消失」というタイトルは某アニメからイタダキ!そのストーリーを知っている。すると、この作品と少し似ているような気がしても気のせいです良きっと。