母、「実加」がグロンギに襲われ、その後一命を取り留めてから一週間。
未だに母の目が覚めることは叶わないでいた。
母が入院してから、自分の仕事は休んでいる…幼稚園辞めようかな…
「桜子~、おはよう。」
少し悲観的な感情になっている私に毎朝必ず会いに来てくれている輝姉ちゃん。
「あっ、おはよう輝姉ちゃん、今から仕事?」
時刻は10時前、出勤にしては少し遅い気はする。
「いんや、違うわよ。これから県警でグロンギ対策会議がねー。昨日も一昨日も現れたらしいから。県警がグロンギと関係の有るであろう遺跡の資料が欲しいらしくて。」
そう…ここの所毎日のように怪物、グロンギが人を襲い、カオルがその度に刑事の杉田さんと共に出動している。ついに都市伝説ではなく現実として社会は認識し始めたのだ。
「そっか…ニュースになってたもんね。人が急に暴れ出して怪物化するって奴の関連でしょ?」
この一週間、世間はこの話題で持ちきりなのだ。
人が自我を失ったように急に暴れ出してその直後怪物化=グロンギになるという話。しかもこれは警察の正式な公式発表のため、世間は混乱状態に陥りずつあった…
「まぁね、ここの椿先生も召集されるみたいだし何か動きがあったんだろうね。そういえばカオルンは?」
カオル…その名前を聞く度、身体がぴくっと反応してしまう。
「カオルは…たぶんカオルはもう対策本部にいるんじゃないかな?」
「あっ、そっか。」
ここ一週間ほとんどカオルと有っていないし話してもいない。3日…4日ほど前にこの病室に母の様子を伺いに来て他愛もない話を少し…そして昨日電話で「五代さん帰ってきた?」とか「博士は大丈夫?」とか「桜子も無理すんなよ」とか言っていた気がする。そう、いつも…あんたはいつもそうなの。
「あんたは…大丈夫なの…?」
誰にも聞かれないくらいの声で呟いてみる。
「えっ?」
輝姉ちゃんが顔を?としながら私を見ている。
「ううん、何でもない。お母さん、起きないかなーって。」
「本当ね…早く目を覚まして欲しいわ…あっ、やばっ、こんな時間だ!ごめん桜子このリンゴ食べちゃって。」
右手に下げていた袋を私に差し出すと輝姉ちゃんは足早に去っていった。
「私…私にも…出来ることはないのかな…?ねえ、お母さん。」
母は答えてくれそうもなかった。
「カオル大丈夫かな…」
この一週間で、私が知る限りカオルは、12体のグロンギと死闘を繰り広げ、世間ではその救世主をいつ頃からか「仮面ライダー」とか「クウガ」と呼ぶようになった。警察の発表で「クウガ」という存在が明かされはしたが、人類の味方である以外は何者なのかまでは発表されていないみたい。
「仮面ライダー」は…たぶん、警察の杉田さんからカオルに支給されたスポーツタイプのバイクに乗ってカオルがクウガに変身し現場に現れるため?「仮面」を被りバイクで現れる=「仮面ライダー」と呼ばれるようになったんじゃないかなとか思っている。
母に繋がれた沢山の管を見て思う。
こんなになってまで、私を庇ってくれた母。
こんなになるほどの致命傷を与えたあのグロンギ。
最初は普通の人の姿をしていたあのグロンギ。
いや、たぶんもとは人間なんだと思う、普通に会話することも出来ていた。
栄水遺跡の関係者として来訪した話だったので誰も何も疑わなかった。
その人もたぶん、母と同じ人なのだ。
なのになんで、
あの石板を見た途端、ニヤリと笑い。
もうその姿は人のそれではなくなっていた。
「見ーつけた、これこれ。」
この言葉とあの顔。忘れることはない。
その瞬間鮮血が舞い、母は必死で私を匿いながら石板も頑なに手放さなかった、その手は自らの血で覆われているのに。
研究所のメンバーが異変に気付き警察に通報したのか、すぐ警官が駆けつけてくれて━━━━━━
その頃には母の意識は切れ切れで、石板はグロンギに奪われ━━━━━━━━━━
混乱状態の中、救急車を呼び、母の止血を知識の範囲出来る範囲で行っている中、静まり返る研究所に足音が響く。まさか…またグロンギが戻ってきたのかと身構えた私は恐る恐る様子をうかがいにいく。
「博士!桜子!」
この声はカオルだ、来てくれたんだカオルが。
泣きそうな私を見てカオルが駆け寄ってくる。
その直後母の変わり果てた姿を見たカオルの手は震え、顔は…怒りに満ちていた…と思う。カオルのあんな顔は見たことがなかったから。
「おまえは何だッッ!?一条カオル!!」
母の懇親の一声でカオルの目に光が灯ったような気がした。
カオルを見送ったあと、母は気を失い、一時心配停止に陥るも小野寺医院にて出会った「ジン・ケイスケ」なる男性の医者が奇跡を起こしてくれた。母は一命を取り留め、今に至る━━━━━━━━━
ここでふと我に返ると、輝姉ちゃんがくれたリンゴをとりあえず袋から出し、カゴにおいておく。
「早く起きないと私が全部食べるぞー?」
やはり母は答えてくれそうもなかった。
時刻は10時30分、今の私に出来るのはただ母の傍にいることだけ━━━━━━━━━━━━五代さん、あなたの笑顔であいつをいつものあいつに戻してあげて━━━━━━━━五代さん、どこ行っちゃったんですか━━━━━━━━━
「小田桐さんはまだのようだな、今日集まってもらったのは他でもない、奴らへの」
まで杉田さんが言い掛けたが…
警察の会議室というのはどうも僕は落ち着かない。
椅子に座る僕の両サイドに杉田さんと椿先生、正面に門矢士。
門矢士。
また、現れたよ門矢士。
「で、カオル。五代雄介は?」
杉田さんの話を遮り、士が僕に聞いてくる。
「行方不明、一週間程前から。」
僕と士のやりとりを黙ってみている杉田さんと椿先生。
が、ここで杉田さんが士に質問をする。
「あなたは警察の人間ではないんですね?初めてお会いしたときは令状をお持ちでしたが?」
「あぁ。それが?」
とだけ士はめんどくさそうに答える。
杉田さんはため息を付き、
「何者なんだ…」
「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えなくて良い。」
士はお馴染みのその言葉を口にする。
そこで椿先生が
「仮面ライダー…ってつまり?あれか、今噂の一条のあの姿のことか?それと同じ存在なんだとしたら…興味深いな…ニヤリ」
語尾がおかしかった気がするがそんなことを気にせず士は椿先生をスルーし、僕に顔を向ける。
「何だカオル、お前仮面ライダーって呼ばれてるのか。」
「まぁ最近噂になってるよ、クウガと呼ばれる方が少ないね。」
「そうか…でだ…俺が聞きたいのは五代雄介の事だ。行方不明になった場所、最後に見た場所は?」
その時、会議室の扉が開き見知った女性が入ってくる。
「最後に見たのは私が五代さんと一緒に栄水遺跡の調査から戻って施設で別れるまで一緒だった、つまり遺跡付近で行方不明になったのかも。ひさしぶりね、門矢士君。」
輝が登場すると会議室には僕を含め五人が集まった。
「それから…士君に伝言と何か封筒がね、署の外で出会った変わった探偵さんに頼まれたんだけど。」
「探偵…ね…」
士は訝しげな顔で問いながら封筒を開けると写真が一枚。
「えぇ、その写真の奴が俺の住む町の…世界の脅威になるかもしれないって。風都の方で噂になってるみたいよ?」
風都…何か聞いたことのある町だな…そんなことより、その写真に写っていたのは
「五代さん!?」
僕の声が会議室に響く。
「探偵ね…ハーフボイルドがいい仕事をしてくれたようだ。切り札は伊達じゃないな。」
士が何か呟いたが今はそれどころじゃない。
五代さんが見つかった!
でも何でだろう。
この写真の五代さん…
いつもの五代さんじゃ無い気がする。
そうだ、笑顔じゃない。
この写真の五代さんはもしかしてこの間出会って戦った…
「ダ…」
僕が言いかけたその時、所内の緊急通達の警報がなり始めた━━━━━━━━
ずっと考えてまして…このクウガの世界はどこにあるのかを…設定として断言します。風都という町が存在する世界の何処か他の場所で存在するクウガと言うことを。伏線として士が探偵に会いに行くと、いつだったか台詞で言っちゃってましたが…
なので、今回登場した「探偵」は、そう…彼でした。
それではみなさん良いお年を。