「いなくなった?いったいどこに?」
謎の男は瀕死の僕を担いで夏目博士の前に現れ、僕を引き渡し忽然と姿を消したという事だった。
「博士、その男性は五代って名乗りませんでしたか?」
博士は首を横に振った。
「いいえ、名乗りこそしなかったけど一条君に伝言が有るみたいで、ねえ桜子?」
「うん、えっとね、(君の答えは正しい)だったかな。」
僕は少し怖くなった、彼は…おそらく五代というあの男は…やはり普通ではない、いや違う、まるで僕を知っているかのような、僕が知らない僕を知っているような、よく解らないが、とにかく普通ではない、そうだ普通ではない。彼は怪物になった、(変身)した。僕も同じ様になれるのか?なるのか?僕はどうしたい?
「君の答えは正しい…?」
彼は僕の答えを知っている、
そうか。
そういうことか…
僕が怖いのは彼と同じだからじゃない。知らない自分が怖いからだ。彼と同じ姿に(なれるかもしれない)自分が怖いんだ。
「カオル、大丈夫?」
桜子が僕を怪訝な顔で見つめているのにようやく気付いた頃には夏目博士はいなくなり、桜子だけが病室に残っていた。
「大丈夫、僕は…」
と言いながら体に巻かれている包帯をはずし始める僕。「って、あんた何やってんの?!えっ…?」
当然、桜子に止められるが、僕は気にせず包帯を外す。 確信があった、間違いなく包帯なんて必要ない事を。 「そういうこと。桜子、僕は行かなきゃならないんだ、傷はもう大丈夫、博士はどこに?」
桜子は驚愕している。
「そう言う事って…!?あんた傷が無くなって…?!どういうこと?!」
「それを確かめるために行かなきゃ、彼に会いに。五代っていうあの男性に。」
「五代…?母さんは電話で何か研究所に呼び出されて急ぎ足で行ったわ、何かまた怪物が出たらしくて、例の遺跡の辺りがどうとか話してたけど…でも母さんもその五代ってひとの場所は解らないと想うよ?」
研究所?遺跡と怪物は何らかの関係が有るのは間違ないいが、夏目博士が研究所に急いだという事は遺跡から何か見つかったという事か…?
「桜子、悪いけど病院の手続きお願いできる?僕も急がなきゃ、行かなきゃならない。」
「手続きは良いけど本当に体大丈夫なの?」
桜子は心配そのものの顔でつぶやく。
「大丈夫、僕は…そう僕はクウガだから!たぶん大丈夫!じゃ、あとよろしく!」
と言いながらダッシュで病室もとい病院を後にする。
「クウガって?あっ、ちょっとカオル!!待ってよ?!」
桜子の声は青い空と病室の窓から入る風にかき消されるのだった…
-遺跡付近-
曇り空の中、俺は遺跡に向かっていた。久しぶりに感じたあの嫌な感覚。
もう10年ほどになるのか、戦いから離れ旅に出てから。
あの人は元気だろうか、みんなも元気でやっているんだろうか。そうだったら嬉しいし少し会いたい気もする。
しかし、今はまだダメだ。
間違いようのないこの感覚は…この意識は…そして忘れようとしていた戦いは今再び始まろうとしている。
そもそも何故奴らがまた現れたのか?
10年前に倒したはずのあの角の未確認生物、通称グロンギ。
間違い無く同じ姿をしていた。
「あの子はそろそろ目を覚ますかな。」
何かのイメージというか、声…?何かに引き寄せられるように俺はあの遺跡に気付けばいて、すぐそこでグロンギと戦った。その後逃がしてしまったグロンギを追い何体かのグロンギと交戦しそれを色んな人に見られたが、
新聞の記事やニュースでは怪物としか書かれなかったが
…おかしかった、
あれから10年はたったが俺やグロンギを「怪物」と取り上げたマスコミや巷。何故「未確認」「未確認生命体」「未確認4号」と呼ばないのか…?
ここは日本で間違いないハズだが、
たった10年で忘れ去られる物だろうか?
「やっぱり何か違う、何かがおかしいんだよなぁ…」
曇り空を見上げ、あの人の笑顔をポケットにしまい、
「一条さん、いったい俺は今どこにいるんでしょう?」
やはり曇り空は答えてくれなかった。
それとあの遺跡で出会ったあの子、霊石を体に宿した、宿してしまった彼の事が気になる。
角のグロンギに襲われて重傷を負いながらも生きていた。俺と同じ霊石を体に宿したおかげで。
あの霊石は人をグロンギと同じように変異させ、身体の運動能力の超上昇、回復、修復の促進、そして人間を超越した視覚、聴覚、嗅覚を与える。
古代の生物兵器みたいなもの。
意識を失いながら譫言のようにつぶやいていた彼の「クウ…ガ」「一条さん」そして「五代」このワードを俺が聞き逃すはずがなかった。
その彼を背負い、俺が向かったのは彼のポケットに入っていた研究所かなんかの住所が記されている(彼の名刺か?)そこに向かった。
そしてあの夏目博士という人にたどり着き病院を手配してもらいその最中事情を説明(夏目博士の娘さん)し彼への伝言を頼んだ。
「君の答えは正しい」
ただそれだけ言い残し、俺は今遺跡に再び戻っている至大である。
彼は霊石を宿しながら、おそらく角のグロンギとそして自分と葛藤したのだろう。
不幸中の幸いで霊石を宿したおかげで角で刺されはしたが死ななかった。
自分と葛藤、すなわち自分でどうするか悩んでいたはず
だ。戦うか、逃げるか。そして恐れたはずだ。俺の変身をみた後、同じものを宿した自分に。
彼は逃げることを選んだ。俺はそう思う。迷いのせいでベルトが現れはしたが…だが逃げようとしたはずだ。
何故か?それは、彼が彼のままでいたからだ。
俺は過去に霊石を身に宿し強くなりたいと願ったときに体が変異した、さらに強くなろうと心に誓うと色が変わり始めた。
つまり彼は、「人間でいたい」と思い至ったため体が変異しなかった。戦わないことを選んだ。
俺からしてみると、正しい答えでしかならない。
戦いのつらさ、人でなくなるあの感覚、失いかけた心。どれも酷いものだから。
だから、だからこそ俺が
「俺が戦う、ですか?クウガ…いや…五代さん。」
後ろを振り向くと彼が立っていた。
「僕、戦いたくないです、怖いし…だけど…考えて決めました、戦います、僕もあなたと同じだから。また奴らは現れますきっと。だから」
「違うよ、君はクウガじゃない、俺とは違う。君はその力を使っちゃだめなんだよ。」
「どういう…ことです?」
━━━━━━━━━曇り空がそんな2人を見下ろしていた。