「あー、いけないんだー。門矢さん好き嫌いしちゃダメですよ?正義のヒーローのデカイド?の名が廃りますよー?」
桜子が士にお説教しはじめた。
「嫌いな物を食って調子が悪くなり、戦えなくなったらヒーローも元も子もないだろ、ちなみにディケイドな。デカイドなのはあんたの態度だろ?飯ぐらい静かに食えよ、声もデカイドなのか?」
桜子の説教もなんて事なく、士は平気な顔をして皿にナマコを残している、ナマコが嫌いなのか。
「何を~!?態度と声がデカくて悪かったですね!そうですよ、その分胸が小さいんだよコンチクショー!輝ねぇちゃんが羨ましいわ……」
桜子の発言が最後の方自滅しに向かっていたのは…輝ちゃん、その…立派に育って良かったね。
とか、考えながら僕は無言でご飯とおかずを頬ばっている、メニューは白米、減塩味噌汁、ほうれん草のお浸し(減塩醤油仕立て)、サバの塩焼き(減塩)etc.
と、減塩メニューばかりなのは今僕達が夕飯を食べている場所が、病院の食堂だからだ。
「ってね、なんで自分の嫁さんが散々言われてるのに、黙々と食べてんのよカオル!」
ほら、僕に飛び火したじゃないか。こうなることが解っていたから黙々と食べていたのに
「って、僕らまだ結婚してないじゃん!?何、桜子!?今の嫁さんて!?」
僕の盛大なツッコミに桜子の顔色が急に青ざめる。
「え…しないの…?…してくれないの…?」
桜子の言葉に危険を感じる、なんか面倒臭いことになってきた。
「その…僕は桜子と結婚したいです…はい…」
仕方ないので本音を言いましたごめんなさい、恥ずかしいもう死にたい、いっそ殺して。
桜子の顔色が青から急に赤に変わった、正直僕よりも変身巧いんじゃないかな。
「カオル、周りの目を気にしろよ、今のは公開プロポーズだ、ほら見ろ周りが拍手してるぞ。」
士が小声で僕に話しかける、ホントだ離れた席にいたお爺ちゃん達が拍手してる…一応どうもとか会釈だけしよう。
「あんたらねー、こんな所でいちゃいちゃしないの。ご飯時ぐらい静かにしなさいな?行儀悪いでしょう?」
と、ずっと黙々と食べている桜子の母、夏目実加博士は僕達三人を見ずに手元のタブレット端末機を片手に操作しながら器用におかずを口に運びながら注意してきた。博士、食事中にそれは…行儀が悪いのは誰でしょう?桜子も恥ずかしさからか遂には黙り込んで、潮らしく夕飯を終えようとしていた。
「御馳走さん。」
いの一番に食事を終えた士がちゃんと御馳走様と言った気がしたが気のせいだろう。
「カオル、お前俺に対して失礼すぎるイメージを持ってるようだが、俺も感謝ぐらい出来る、俺のために犠牲になった食い物達に感謝するのは他愛もないことだ、まぁたまにだがな。」
「たまにかよ!?」
最初の方滅茶苦茶いい感じだったのに最後の一行で台無しだよ!
「そんなことより重要な話の続きだカオル、大きな戦いが始まる、さっきも言ったが…力を貸してくれ。今回の戦いは…俺が経験してきた中で一番厄介だ。敵に昭和ライダーとバダン帝国、相当な数の相手をしなければならん。頼む、協力してくれ。」
士が僕に少し頭を下げた、それほどその戦いに味方が必要なのだろう…バダン帝国…とは何か?昭和ライダーとは?
「解らないことが多いけど…わかった、行くよ、僕。」
そこまでされたら行くしかないし、それに色んな「仮面ライダー」に会ってみたい、強くなるために。
「でも、グロンギが大量に出没してる今、すぐに…僕は行けない。」
五代さんが居てくれたら…でも…五代さんはいない、それ以前に別の世界から来た五代さんを戦わせたくないし、仮に戦ってくれるとしても変身した状態が不安定だ…どうしたものか。
「その件ならもうすぐ解決するんじゃないか、夏目博士殿?」
士が丁度夕食を食べ終えた夏目博士に話をふる。
「あぁ、五代君ね?彼曰く明日には戻れるんじゃないかって言ってた気がするね、うん。」
「だそうだが…カオル、とりあえずまた明日俺はこの世界に来ようと思う、色々とやることが多くてな、その時五代雄介が帰ってきているなら、協力してくれるか?」
士が僕に問うが、
「ちょっと待って門矢さん。カオル…帰ってこれるんだよね?絶対に?でなきゃ私はカオルを行かせない。」
僕が話し出す前に桜子が士に詰め寄る。士は博士を一瞥し語り出す。
「大切な人のその母親が傷を負ってまで守り抜いたその人を置いて、こいつがくたばるなんて事、それは俺がさせない。必ず、責任を持ってつれて帰る、約束する。」
士が桜子に力強く語りかける。
「…あんたは…カオル…あんたは本気なの?」
桜子は僕を睨むように力強い視線を向ける。
それに対し僕は桜子の目を見つめただ頷いた。
「はぁ…わかった、でも五代さんが帰ってきたらね!それと、もし旅に出たとしても必ず無事に帰ってくること!」
桜子は僕の前までやってきて手を握った。
「わかった?カオル?」
「約束する。ありがとう、桜子。」
そして僕も桜子の手を強く握り返した。
その温かな手は少し震えていたような…そんな気がしたのは気のせいだろうか…?
「そろそろさー、いちゃいちゃするのやめなさいな?」
「「ハッ!!?」」
僕と桜子は声をシンクロさせながら繋いでいた手を離す。
「とりあえず、私は病室戻るわ、検診有るし。傷が完全に癒えた訳じゃないからね~、じゃお先。」
博士はスタスタと歩き去っていった。
「あ、もうお母さん!待ってよ!もう!」
その姿を追って桜子も消えていった。
「じゃあカオル、また明日な。」
士も、いつの間にか逃げるような足取りで食堂を出て行った。
ただ独り残された僕とそして━━━━━━━━━
会計3860円税込と書かれた伝票がテーブルの上に置かれていた。
「何故!?(伝票が)置いてあるんです!?嘘だ!!ドンドコドーン(そんな事ー)!!」
最後の方取り乱しながらの僕の心からの叫びが食堂に無惨にも響き渡った━━━━━━━。
会計を済ましあいつ等絶対徴収してやるから覚えとけよ、おっといけない。冷静になるんだ僕、たかだか4000円程の出費じゃないか、うん。
そうだきっちり徴収しよう、と気を取り直し食堂をあとにした僕が向かった先は、博士と桜子がいるであろう病室には向かわない。
向かう先は、栄水遺跡の施設だ。おそらく輝ちゃんと椿さんが今も尚あの遺体の解剖を行っているだろう。
遺体の件で行くわけではない…輝ちゃんに夏目博士の意識が戻ったことを伝えるのと…まぁ、その他諸々。僕はバイクにまたがり病院をあとにした。
「ん…?」
誰かに名前を呼ばれたような気がしたが気のせいかな。
同じ頃、夏目博士と桜子のいる病室にて。
「で~、桜子?カオル君とどこまでいってんの?」
ベッドに腰掛ける母、夏目実加が桜子に問いかける。
「ちょっともう!まっまだ何も無いよ!」
実加はため息を付きつつ、
「はぁ、あんたね。もう24だっけ?もうすぐ25になるんだよ?いい加減そういうことしちゃいなさいな。彼なら私も何も言わないし、寧ろ安心だわ。」
それを聞いた桜子は顔を真っ赤にし、呻き声をあげながら語り出す。
「うぅ…その…私もね、五代さんが来てからなんだけど…そのカオルに…詰め寄ったというか…迫った…?みたいなこともあるよ?」
その発言に実加はヒューやるねー、とニヤニヤして聞いている。
「茶化さないで聞いて!」
「はいはい、でそれで?」
桜子は病室から見えたバイクで走り出すカオルを目で追いながら、小さく、カオル…と呟き、話を続ける。
「その時、カオルがね、こう言ったんだ。」
(僕はもう普通の人間じゃ…ない、今、桜子が求めていることを僕がその…それで桜子に何も起こらないとも限らない、自分自身、ほとんど何も解ってないから、だから危ない目に遭わせたくないんだ、だから少し待って欲しい。)
「だから私は…ずっと待つことにした、カオルが私を受け入れてくれるまで…待つよ。ずっと信じてるから。」
「なるほどね…」
実加はそっと娘を抱きしめ、
「はぁ…桜子、あんた良い女に育ったね、ホント誰が育てたらこんな良い女になるのかしら?」
桜子は誰だろうねー?と笑いながら母親に抱きついている。桜子は、いつまでも変わらない、この温もりを私がカオルに分け与えてあげたい、そう強く思うのだった。
「あっそういえば明日、輝ちゃんの誕生日ね、あー…なるほど。」
実加が娘から離れ目に入ったカレンダーを見ながら話す。
「あっ、ホントだ。明日何かプレゼント買いに行こうっと、って何がなるほどなの?」
実加は窓から見える夕焼けを眺めながら、
「さっき、カオル君がバイクで出て行ったでしょ?たぶん、明日自分が忙しくなるかもしれないだろうから、先にプレゼントなり渡しに行ったんでない?」
と、それを聞いた桜子の顔が急に黒になった。文字通り真っ黒。
カオル君よりも変身巧いんじゃないかな、と実加は内心思った。
「あんの、女ったらしーっ!!!」
桜子の叫びが遠くにいたカオルに嚏となって届いたことを誰も知らない。
うだうだと話す桜子を尻目に、この娘の旦那になる奴は大変だねー、と内心呟くと遠くにいたカオルは再び嚏をしていた。
「…んん?風邪でも引いたかなー、まぁすっかり秋になったし、体調管理しっかりしないと。」
無論、当のカオルもそれを知る由もなかった━━━━━━━。
遺跡にバイクを走らせること15分もう数百メートル先には施設も見えている。空は夕焼けに覆われ、綺麗な鰯雲が泳いでいた。
遺跡は山中に在るため、見晴らしの良い高台が多々設けられていた。
「綺麗な夕焼け空だなー、今日も戦ったなんて…ホント嘘みたいだ…」
左さんと士、ジョーカーとディケイド。二人の仮面ライダーと共闘した僕は、少しずつだけど強くなれてるはずだ。
「ですよね、五代さん?」
夕焼け空を眺めながら、呟く僕。
「あっ、これ写真に撮るか!ごめんね輝ちゃん、プレゼント用だけど一枚だけ!」
と、背負っていたバッグに入れていた、カメラ。包装こそしていないが、今日戦ったあと士と行動を共にしているときに買ったもので、輝ちゃんの誕生日は明日ではあるが渡しちゃいけないわけじゃないし。それに士が言っていた。
「そのカメラ、悪くないな。」
と、あんなに大事そうにカメラを首に下げている奴が言うんだから間違いない、輝ちゃん喜んでくれたらいいけど…
パシャッという言い音と共にフィルムに収められたらその景色。今度五代さんにも見せてあげよう。
カメラをバッグにしまい込み、バイクにまたがりエンジンをかけようとしたとき、帽子を深々と被り眼鏡をかけコートを羽織った独りの男性が夕焼け空を眺めているのに気付いた。
その男性がこちらを向いて、口を開いた。
「門矢士、ディケイドは世界を破壊する、いずれこの世界も破壊されるだろう。この懐かしい夕焼け空も全て。」
僕の心臓がドクンと跳ね、バイクから一端降り、その男性に問う。
「あなたは?」
その問に男性は、
「私は…鳴滝。ディケイドを追って旅をしているものだ。」
士を追う?どういうことだろうか?
「懐かしい夕焼け空と言いましたよね?でもあなたは士を追って旅をしている、つまりあなたはこの世界の人ですか?鳴滝さん。まさか仮面ライダー…とか?」
鳴滝さんは首を横に振り話し出す。
「20年以上前にこの先の遺跡の研究者として働いていたことがある、残念ながら私は違う、君が求めている同士、仮面ライダーではない。君がこの世界のクウガのようだが…君、名前は?」
「僕は一条カオルと言います、昔僕の父と母もそこの遺跡関連で研究者として働いていたんです。」
鳴滝さんは少し驚いた顔をして、
「一条…そうか…運命とは皮肉なものだ…元気にしているかね彼等は?」
「僕の両親は…10年ほど前に亡くなったんです、それから夏目実加という、両親の同僚の方に面倒見て貰いまして、今僕は夏目実加博士の助手をしてるんです。」
「そうだったのか…悪いことを聞いてしまった、申し訳ない。」
鳴滝さんはそう話すと、最後にと一言添えて続ける。
「ミカ…いや夏目実加君は…彼女は元気かね?」
鳴滝さんは視線をいっそう強くし問いかけてくる。
この間グロンギに襲われた話はしないでおこう。
「元気にしてますよ、実加さん。娘の桜子の方が元気ですが、あっその桜子と近々、僕結婚するんです。」
鳴滝さんはフッと笑ったかと思うと、くるりと反転し、山中に消えていった。
「そうか、良かった…桜子も…幸せになりなさい。そう、彼女に伝えてくれ。」
その言葉と共に━━━━━━━━━。
鳴滝さん、いったい何者なんだろう…?
明日士に聞いてみるとしよう。
施設に着いて、輝ちゃんにプレゼントのカメラを渡すと、大層喜んでくれて、輝ちゃんが僕と2人で写真を取りたいと言い出し、丁度帰り支度をしていた椿さんがカメラマンとして、散々こき使われていたのが、正直少し面白かったのは…秘密にしておこうと思う━━━━━━━━━━。
さぁこの作品の鳴滝さんの登場回数は少しずつ増えるのか!?感想よかったら下さいm(_ _)m