その後士と五代さんと僕の三人で、夕飯の材料を買い出しに出かけ、夏目研究所の近くにある商店街にやってきた。
「カオル、明日には出発だぞ、解ったな?」
士が無粋な顔で呟く。
「解ってる、ありがとう士、本当ならもう行かなきゃいけないのにさ。」
「まぁ、五代雄介が帰ってきた祝いと夏目博士の退院祝いくらいわな。それくらいしたって罰は当たらんだろ。」
と、悠々と歩く士はいたる所へカメラを向けフラッシュを焚いていた。
「士君、写真巧いよねー、今度教えてよ、俺も結構好きなんだよ!」
五代さんはニコニコしながら度々カメラの被写体となっていた。
「良いが、技術料と教習料はきっちり貰うぞ。」
…士は甘くはなかった。
「で、五代さん?本当に大丈夫なんですね?」
「カオル君もなかなかの心配性だねー?大丈夫!俺はクウガだから!」
グッと握った右手に親指を立てて笑顔で答える五代さん。
「だったら良いんですけど…」
「大丈夫!大丈夫!あっ、このジャガイモいい感じ、すいませんこれ6個下さい!」
と、僕との会話の途中目に入った八百屋のジャガイモに目を奪われた五代さん。
「ちなみに五代さん?夕飯は何を作るんですか?」
「カレー!俺の叔父さんの店の味!あっおじさん、これ人参買うから玉葱安くなりません?いやーそこを何とか!」
五代さんが何か値切りだした!?とにもかくにも今晩のメニューはカレーで確定のようだ。
「って、あれ?士…?あれ…どこ行った?」
辺りを見回すと士がいないことに気付く。
見渡すと八百屋とは反対側に位置する電気屋さんのテレビの前に釘付けになっている士を発見した。
「どうしたのさ、士?」
「このニュース、気にならないか?」
「えーと…」
テレビに映し出されていたのは、日本のあちこちで怪物=グロンギの遺体が見つかっているというニュースだった。
「最近になってね…杉田さんからも聞いてはいたけど…どうやら同族争いみたいな感じなんじゃないかって。」
「遺跡が無いのにか?グロンギは遺跡に関連しているんじゃないのか?」
「それなんだけど…」
話は少し遡る、五代さんが消えてから2、3日たったある日の事、杉田さんと輝ちゃんの三人で集まったとき、その話が出たのだ。
「研究結果から…つまりね、カオルン、遺跡は栄水遺跡以外にも日本各地に有るみたいなの、似たような遺跡が幾つかね。だからもしかしたら霊石は…クウガになるためのあの石は他の場所にもあるかもしれないの、逆に言えば…」
僕は博士から聞いていた。だからその可能性も有るのではと少しは考えてはいたが…
「つまり各地にグロンギは出没する、人はグロンギ化する可能性が有るわけだね、うーん、参ったな…。」
「警察の力だけじゃ…人間だけで倒せる相手ではない…俺達警察官はただ一条君たちに頼るしかない…のか…しかしながらグロンギの出現場所が離れている場合…どうしようもないな…まぁ、今の所は同族争いみたいな感じですんでるようだからまだ良いか…」
杉田さんが何やら気になるワードを口にした。
「え、同族争いって?」
「あぁ、実は今朝他の県の…えーと確か嶬辺(ぎべ)遺跡という場所でグロンギ化したままの遺体が2体発見されてね。」
「そうだったんですか!?」
輝ちゃんと僕の目が合う、輝ちゃんの予想はすでに起きていた。
「小田桐博士の言うとおりグロンギは遺跡との関係は間違いないようだし…君のように戦える力がその遺跡に眠っているのかもしれない、明日から調査が入るようだ。」
「なるほど…」
僕は少しばかり期待を抱いた…抱いてしまった、独りじゃないという希望を。
「しかし、気になるんだがなー、その2体の遺体の死因なんだが…」
「死因?争って共倒れしたんじゃないんですか?」
僕の問いに杉田さんは歯切れ悪く続ける。
「━━━━━━━実は…2体の遺体の死因は━━━━━」
時はニュースを見ている士の場面に戻る。
「他にも遺跡が…?」
士はそう呟くともう一つ続ける。
「複数の遺跡で見つかっているグロンギの変死体、死因は過度の火傷によるショック死、いわゆる焼死…か。」
「みたいだね、火を扱う強いグロンギが他のグロンギを襲っているのかな。」
「グロンギ…ね…。もしかすると…もう一人の方が…」
士はテレビから反転し買い物に勤しむ五代さんを見ながら何か呟く。
「エ?何、士?」
何でもない、と答えた士は五代さんに近づきながら、俺はナマコ食えないからな、と一言添えた。
「へー、士君もかい?輝ちゃんも駄目らしいし、何か面白い!」
かくいう五代さんの両手に大量の野菜の入った袋が下げられている。
「って五代さん!?いくら使ったんですか!?僕も出しますよ!?」
「1000円くらいかなー。気にしないで、お金はどの世界も共通なのかな?日本円が使えて良かった。」
イヤイヤイヤ1000円で買える量じゃない…ですよ?
ざっとみた限り普通なら2000円以上はするハズだよ!?
「おじさんありがとう!」
五代さんがその言葉を口にすると八百屋のおっちゃんは毎度あり!と笑顔で見送ってくれた。
「あとはちょっとお肉とサイドメニューの材料くらいかなー…」
と、五代さんはスタスタと歩いていく。
そうだ、これこそが五代雄介、自由そのものなんだ━━━━━━━。
一方その頃夏目家では、件の用事を済ませ久しぶりに自宅の掃除をする親子二人の姿があった。
「ちょっとお母さん、あんま無理しなくていいよ?カオル達が来るまでに掃除くらい私一人で出来るし、座っててよ。病み上がりなんだしさ。」
母の実加を心配し娘の桜子は精一杯引き止める。
「見ての通り、ピンピンだから、あと子供1人産めるくらいピンピンだから大丈夫よーっと。」
娘の心配をよそに実加はテーブルを拭いていた。
「何言ってるのよ!?あのさ、歳考えてよ?お母さん幾つになるんだっけ?」
実加は手を止めず切り返す。
「私は永遠の17歳ですから。」
「ごめん、お母さんそれキツいわ。」
「なっ?!うっさいわねー、良いでしょ言ってるだけなんだから!」
「どこの世界に娘より年下の母親がいんのよ!?恥ずかしいからやめてよね!」
「別に本気で言ってるわけじゃないっての!あんたね、そんなだとカオル君に嫌われんぞー?」
いつの間にか掃除の手も泊まり、ちょっとした口喧嘩が勃発していた。
「カオルは関係ないでしょ!?そもそも子供1人産めるくらいとか、本当歳考えてよ!?冗談でもキツいわ!」
「何を!?私だってねまだまだ男の1人や2人くらいね!」
「えっ、ちょっとそれ本当?やめてやめてやめて、笑えない、笑えないから!?」
「うんまぁ無いけども、五代君はアリカナー。」
実加の棒読みに桜子はハイハイと冷めた目でスルーした。
「とにかくお母さん!カオルは取らないでよ!」
実加は呆気にとられ、次の瞬間には大笑いしだした。
「なっ、何がそんなにおかしいの!?」
実加は一息おいて、
「私がカオル君奪えるほどね、カオル君は浮ついた男じゃないよ、あんたが一番解ってんじゃん。ったくこんなところでも惚気かよ、鬱陶しいわ!」
実加は笑いながらそう言いきった。
「ふーん…なら良いけど…」
汐らしくなった桜子をニヤニヤしながら眺めるのも悪くない、そう思った実加であった。
その時、ピンポーンという来客を知らせる音が鳴った。
「「ゲッ…」」
親子2人は声をシンクロして、焦り出す。
「掃除終わってないのに…カオル達来ちゃったじゃん!お母さんが邪魔するから!」
「は!?あんたね、人のせいにすんじゃないわよ!?」
「お母さんが悪い!」
「ったく、性悪女め!親の顔が見てみたいわ!」
そんなやりとりをする親子二人は来客を忘れている、それに気付いたのは玄関が開けられ、リビングに見知った顔が現れたときだった━━━━━━━
他の買い物を終えた僕、五代さん、士、そして途中で合流した輝ちゃん。その四人で徒歩で夏目博士の自宅に向かう。
「結構買っちゃったなー、ごめんねカオル君荷物持たせちゃって。」
「いえ、筋トレもかねてちょうど良いくらいですし、ねえ、門矢君、君も筋トレ…シタイヨネー?」
「ははは、生憎俺はその手の事はやらない派でな、まぁ、一条君が筋トレでちょうど良いくらいらしいし、邪魔するわけにはいかないな?」
くそっ、士め、一つくらい持ってくれよ…
「カオルン!ファイト!オー!」
輝ちゃんが何か応援してくれてる、あ、でもつまりは持ってはくれないんだね…?
「というわけでカオル、ファイトだ。」
士にだめ押しを喰らい不屈の精神で荷物を運ぶ決意を固める、命有る限り戦う、それが仮面ライダーだからッッッッ!!
道中そんなやりとりをする中、ふと士は足を止め、急に目の前に現れた人物を凝視して凄む。
僕はその人物に見覚えがあった、この人は…!!
「何だ?海東、こんな所で何をしている?」
その人物はいつかの戦いで共闘した仮面ライダー=海東さんだった、服装はといえばキャップをかぶり、背中にはちょっとしたリュック、シャツにジーンズというなかなかのラフさだった。
「やぁ、士。久しぶりだね、おや、君はあの時の、一条カオル君じゃないか、久しぶり。」
海東さんは軽く挨拶をしたかと思うと、話を切りだした。
「ある人に頼まれてね、この石版を君に返すよ、一条カオル君。」
「ほぅ?お前が人の頼みを聞くとは…どういう風の吹き回しだ?」
「僕はお宝以外に興味がないんでね、ある人にとある条件を示談されてね、話に乗ったのさ。」
僕は海東さんからリュックを預かると、中身を確認する。石版…って、言ったよな今…石版…石版…アーッッあの石版!
その石版は海東さんが杉田さんから奪ったあの石版だった。
やはりあなただったのか…
「誰の差し金だ?」
士は海東さんに問う。
「まぁ、良いか、鳴滝さんだよ、鳴滝さん。交換条件は話せないというか話さないけどね。辞めてくれたまえよ?手荒なまねだけは。」
少々ピリピリしたムードになりつつあるが…
「また鳴滝か…まっ、良い。用は済んだのか海東?」
「あぁ、要件は果たした、それじゃあね。」
それだけ言うと、海東さんはどこかへ消えていった。
「鳴滝か…あいつ今度は何をたくらんでる…」
士は沸々と呟いてはいるが、隣で輝ちゃんが、あのイケメン誰!?とか言い出してそれをやりくりするだけで精一杯で士に話を聞けそうもなかった。
唯一五代さんだけが石版を眺めていた…何かを悟ったように━━━━━━━━━
夏目家の呼び鈴を鳴らすが一向に出てこない、よって僕の持参している合い鍵で強行突破することになった。
「お母さんが悪い!」
「ったく、性悪女め!親の顔が見てみたいわ!」
何か喧嘩してるみたいだ…まぁ、いつものことなんだけど。仕方ない僕の役回りを全うしよう。
「その親はあんたでしょう!夏目博士!いや…お義母さん!呼び鈴くらい気付いてくださいよ!!」
リビングに入るなり僕のツッコミは決まった。
「「アァ!?忘れてた!!」」
母娘二人の声は見事にシンクロしていた。
「2人とも仲良いよね、私感心しちゃうなー。」
僕の後ろからスタスタと入って来た輝ちゃんは、うんうんと首を縦に振っている。
「おいおい、客人にお茶くらい出したらどうなんだ?コーヒーが良いが。」
最初からそこにいたように悠々とリビングに有るソファーに腰掛けている士がいた。
「あっ、門矢さんだー。」
桜子がコンニチワーと挨拶している、って
「いやいや!!そうじゃなくて士!?なに人様の家でくつろいでんの!?ちゃっかりコーヒー頼んでるし!?」
「コーヒーじゃ物足りん、最高級のコーヒーを。」
「うっさいわ!!精々だせるのはインスタントコーヒーだよ!」
そこに現れたのは…
「お待たせしました、五代雄介特製、最高級ポレポレ珈琲でございます。」
「えっ!?有るの!?」
「頂こう。」
「召し上がれ!」
しばしの沈黙がリビングに訪れる。
コーヒーを飲み干した士、カップを置くと、ふむふむとなにやら頷いている。
「美味い。」
士は呟いた。
「長いよ!!士!!」
「美味いものを美味いと言っただけだが?」
「はは、喜んでもらえたみたいだね。」
五代さんは笑っていた。
「いや…あのー…」
そこに割って入ったのは桜子だった。
「何?どうしたの桜子。」
桜子を見ると、口元が見事に「アワアワ」していた。
「えーと、カオル、その人…五代さん?」
「そうだよ?」
「かっかっか帰ってきたー!!?五代さんだ!本当に五代さんだ!!おかえりなさい!」
桜子が取り乱し始めた。
「ただいま、桜子さ…桜子ちゃん。窓が開いてないから勝手に入って来ちゃいました。」
「え?あぁ、玄関鍵かけてたから!ごめんなさい、呼び鈴…」
五代さんは首を横に振り、ただいま…と呟いた。その後誰にも聞こえないであろう声で「言う人はこの子じゃなかったなー。」と呟いたのが僕にはわかった。
「実加さん、無事に戻れたみたいですね?」
五代さんは博士を目で捕らえ言った。
「五代君も無事戻れたのね。良かった。」
2人は笑いあっていた、いつの間にか皆も…なんと士も微笑んでいた。
僕も笑っていた、こんな気持ち、久しぶりだ。こうやって笑い会える日々を取り戻すため、僕は戦っているんだと改めて思い返したのだった━━━━━
次回はなるべく早く書こう、うんそうしよう。