五代雄介side
夕飯を作るためキッチンには俺とカオル君が入ることになった。その方がいいと実加さんに強く勧められたからであるが…桜子ちゃんの不服そうな顔がちょっと引っかかる。
「死人がでますから。」
カオル君曰わく。
リビングではガールズトークを繰り広げる女性三人(実加さん、桜子ちゃん、輝ちゃん)とそこに囲まれた士君の姿があった。時たま聞こえてくるのは彼女いるの?とか、歳は?とか…?輝ちゃんがほとんど質問している。
「写真館でカメラマンの仕事しながら時たま旅に出たり、色んな世界で戦ってきたな。」
士君もうまくあしらっているようで良かった。
そうこうしているうちにカオル君が野菜の皮をむき終えたようで、俺も取り急ぎ調理に勤しむことにした、カオル君は実は料理が出来るようで、なかなか手際よい。桜子ちゃんに教えてあげたらいいのに。
「教えたら死人が増えますよ。」
カオル君曰わく。
今晩のメニューはカレーがメインだ。俺のおじさんの店、ポレポレの味。
「五代さん、ドレッシング作ってみたんですけど…味見してもらえます?」
「どれどれドレッシング~、んっ!!美味い!!これバジルソース?」
「はい、昔母さんが良く作ってくれてたんです、美味しくできてよかった…」
カオル君は笑ってホッとしたようなそんな表情だった。
やっぱり誰かの笑顔は良いな。
「さっ、出来たよ!!お皿だしちゃおうか!」
「はい!」
カレーの香りが一面に広がり、夕食時を知らせる合図になった━━━━━━━━
食事を終え、洗い物は桜子ちゃんと輝ちゃんが担当することになった。まぁ実加さんは病み上がりだし年長者だしッて痛い痛い実加さん痛い叩くの禁止!暴力ダメ絶対!
「んでー?カオル君?明日行くわけね?」
「はい、博士…いや…お義母さん。すみません。」
「何で謝んのよ?世界を救いに行くんでしょ?誇りに思いなさいな?」
「はい!」
「よろしい。で、士君?実のところどれくらいの期間になりそうなの?」
「長くてあと3日、それで仲間は集まるはずだ、カオルを含めて。」
「なるほどー、で五代君はココにいるんだね?」
「そうですね、カオル君が帰るまで俺が戦います。」
「ふむふむ…戦う男たちか~良いね~、うんうんうん。」
実加さんもしかして酔ってる?
「みんな死ぬんじゃないわよ?」
「実加さん…」
「まっ、あたしが言えないわよねー、でもね、もうこれ以上悲劇はたくさんよ。」
士君はコーヒーを啜りながら相槌をうっている。
カオル君は…少し不安そうな顔でどこというわけでもなく視線を泳がせていた。
「大丈夫!俺が守ります、いや俺たちが守ります、ね士君、カオル君!」
俺の言葉に2人は強く頷いてくれた。
するとキッチンの方から輝ちゃんが帰ってきて、
「今から記念にみんなで写真撮りません?」
その一言に俺は強く賛同した。
「良いね!撮ろう撮ろう!」
桜子ちゃんもキッチンから戻ると、私も撮りたいとカオル君の手を取り引っ張っていった。
「あっ、じゃあカオルンからのプレゼントのあのカメラすぐ現像できるしあれで撮ろうよ!」
輝ちゃんはカバンを漁りカメラを取り出す。
「うーん、順番にみんなで一枚ずつ撮って行こうか!」
俺の案に皆賛同してくれた。
全員取り終え、パソコンとコピー機を使って現像を始める輝ちゃん。
「やっぱり士の写真なんか面白いよ、みんなボヤケてる。」
士君の写真だけが何故かボヤケていたのが妙に面白かった。
「そういう仕様だ。」
拗ねたようにカオル君にかえし言う士君が少し面白かったりした。
その後、順番にお風呂に入ることになり、俺は最後になった。
「あっ、五代さんお待たせしました、お風呂どうぞ。」
カオル君が風呂から上がり、俺も仕度をする。
「ありがとう。」
カオル君と別れ、リビングを出ると何やら女性陣が騒がしい。
「アァッ!?これカオルと私が生まれてすぐの写真だ!!」
とか。
「えっ、ちょっこの綺麗な人誰?」
「お前の母親だよッッ!!」
「えっお母さん!?」
「実加さんなの!?嘘だーッッ!?」
「お前ら歯ぁくいしばれェッッ!!」
とか、実に賑やかだった。
風呂から戻るとリビングのテーブルでアルバムを広げ、あーだこーだと盛り上がる女性陣とそれに付き合わされているカオル君がいた。
ちなみに士君は端で仮面ライダーの書かれたカードを整理していた。
「あっ、五代さん…」
力なく呟くカオル君に少し同情してしまう。
「何々?アルバム?」
「そう、五代君。あたしのピチピチの20代の頃の写真、欲情しちゃダメよー?」
「やめてよお母さん!!」
「まぁまぁ、桜子ちゃん、どれどれ、ほほう、なかなかの。やっぱり妹そっくりだ。」
「あー、それ僕の母さんです。」
「五代君歯ぁくいしばる?」
「じょ冗談ですよ実加さんははは。」
正直言うと実加さんの若い頃の写真はとても美人だった、今も綺麗な人だけどね。
アルバムをめくるページもラストになり、そのページには若い頃のカオル君の両親と実加さんの元旦那
さんも写っているページになった。
カオル君と桜子ちゃんが生まれる前らしい。
「ありゃ、あいつの写真まだあったんだ。」
「ヘー、お父さんの顔なんてほとんど知らないけど…写真あったんだ。」
実加さんと桜子ちゃんは案外あっけらかんとしている…が、
「つつつつ士士士!!」
カオル君がとたんに壊れた。
「どうした気持ち悪い。」
士君もなかなかひどい。
「僕は気持ち悪いと言う名前じゃない、カオルだ!いやそんなことより…これこの写真の男の人!」
「ったく…ん…?な…こいつは…!?」
士君も壊れた。
「えっ何、門矢君、うちの旦那知ってるの?葛城喜太郎っていうんだけど。」
「…葛城喜太郎…か。」
士君は少し戸惑っているようだ。
「士…この人…やっぱり…」
「あぁ…間違いない…鳴滝だ。」
士君とカオル君だけが何やら掴んだらしいが後ほど士君とカオル君の鳴滝なる人物の説明を受けると、実加さんが泣き出し、その日はお開きなった。
「喜太郎…生きてんなら顔見せなさいっての…」
実加さんの呟いたその一言は俺を中々寝させてはくれなかった━━━━━━━━
真夜中、横たわりはしているが寝られない俺の元に実加さんがやってきた。
「起きてるー?五代君?」
リビングのソファーで寝ていた俺の横に座る実加さん。
「どうしたの、実加さん?」
実加さんの目は少し腫れ上がってはいるが泣き止んではいるようだが…
「夜這いにきました~。」
「夜這いって、はは、冗談言わないでよ、実加さん。」
実加さんは何も言わず、ただ座っている。
「実加さん?」
無言で実加さんは俯いている。
「何か飲み物入れてきますね。」
「あっ、良いの良いの、ちょっと1人だと寂しくてさ、いい歳してね。それでね…」
「何か話しましょうか、楽しい話。」
「そうね、じゃあ五代君の話を聞かせてもらおうかね~。」
「それじゃあ━━━━━━━━」
俺は俺の世界での話をした。楽しい話も多かったが、実加さんが「一条さん」に強く興味を示したのでほぼ話は「一条さん」ネタになった。
「━━━━━━━それで一条さん何て言ったと思います?大丈夫か五代?ですよ、自分が血だらけの状態で生身で敵と戦っていたのに、俺を心配してるんですよ、おかしいでしょ?いやいやあなたこそ大丈夫じゃないでしょうにってね。しかもその次の日には現場に復帰してるし、強すぎってレベルじゃないですよホント。」
実加さんは笑いながら聞いてくれていた、それを見てつられて俺も笑ってしまう。
「面白い人ね、一条さん。なんかカオル君と似てる気がするわ、まぁ同姓同名だからかしらね?五代君の相棒って感じがするわ。」
相棒か…
「実加さんは?何か面白い話し無いですか?是非聞きたいんですけど?」
「わたし~?私ねー…それじゃあ━━━━━━」
カオル君との話、桜子ちゃんとの話、輝ちゃんとの話、カオル君の両親との話、しかしその中に彼の…元旦那さんの話は一切出てこなかった。
「━━━━━━ってわけよ。はぁ、話したら気が楽になったわ、ありがとうね五代君。」
「いやいや、俺も何か思いっきり笑ったの久しぶりだったんで、輝ちゃんの話なんか面白すぎでしょ。」
何があったかは二人だけの秘密だ。
「あの実加さん、気に障ったらあれなんですけど。その旦那さん…喜太郎さんの話、何か有りませんか?」
実加さんは少し目を細めた。
「あ、いやダメだったらいいんですごめんなさい。」
「あー、いやいや私もね、話したくない訳じゃないの。その…上手く話せないのよ。記憶に靄がかかったようになっててね。ただ、あいつの顔ぐらいしか思い出せないのよ、いつからかだったか…そんな感じ。」
「靄…?そっか…残念です。」
「まぁ真面目な奴だったのは確かよ、うん。あっ、そうだ、さっきの写真出来てたからはいこれ。」
「あー、出来たんですか。この写真…帰ったらみんなに見せよう。」
写真の真ん中に集まったカオル君、士君、桜子ちゃん、実加さん、輝ちゃん。
士君の口元を引っ張り笑っているように見せようと奮闘しているカオル君が妙に面白い。こんな写真が俺にも撮れることが本当に嬉しい、良い笑顔だよ皆。
「あとこれ、輝ちゃんが隠れて撮ってたみたい、カオル君とのツーショット。」
俺とカオル君がキッチンでドレッシングを作っていた頃の写真だった。
「絵になるねー、相棒同士って感じ。」
実加さんはそう言って、ソファーから立ち上がる。
「そろそろ寝るわ~ごめんなさいね五代君。遅くに…」
「いえいえ、おやすみなさい、実加さん。」
おやすみ~とスタスタとリビングを出て実加さんは自室に戻っていった。
「俺も寝よう…っとその前に。士君いるんでしょ?」
キッチンの方から士君が現れた。
「いつから気付いていた?」
士君は怪訝そうな顔で聞いてきた。
「うーん、いつって言うか何となく。」
「盗み聞きするつもりはなかったが…出て行くタイミングをはき違えてな。」
「聞かれちゃまずい話もないし全然良いんだけどキッチンで何してたの?」
「夕食のサラダのドレッシングのレシピがないか探していたんだ、美味かったからなあれ。」
「カオル君に直接聞いてみなよ?」
「あれはカオルが作ったのか?そうか、今度聞いてみるとしよう、それと。」
「葛城喜太郎…?」
「あぁ、葛城喜太郎…もとい鳴滝の件は俺が調べる、気になる話があったしな。」
「気になる…?」
「記憶に靄がかかると夏目博士は言っていた、おそらく何かあるはずだ、葛城喜太郎…鳴滝が何か仕組んでいるのかもしれない。」
「そうか…じゃあよろしく頼むよ。」
あぁ、とだけ返事をした士君は客間に帰って行った。
「皆の物語が少しずつ進み始めた、俺もその時なんだろうな。」
俺は目をつむると懐かしい記憶を辿るように夢の世界に落ちていった━━━━━━━━━━━━━
次の更新はいつになるんだろう…