一条カオルside
ジン・ケイスケの治療院で一晩世話になった明くる日の朝、いつの間にか治療院に届けられていた僕のロードバイクの存在に気付いた。
「あれ…誰がここに…」
「そいつ、あんたのだろう。身体は大丈夫なのか?肩から血を流してたみたいだが。」
背後から語りかけてきた男性は、長身の…どこか士に少し似た風貌というか…そんな男性だった。
「はい、傷も完治しましたし…あなたは…あっ、あなたが乾、乾巧さんですか!?」
「ん?あぁそうだ。」
「ありがとうございました!僕を運んでくれたんですよね?本当にありがとうございました!」
乾さんはぼうっと空を見上げたかと思うと、
「それくらいのことなら…戦わなくても…守れるのにな…」
そう呟いた。
「それで…ジン先生とマリがいないんですけど…乾さん何か知りませんか?」
「マリから電話があったらしくてな、あの人は血相変えて出て行ったよ、最近物騒だからな、何かあったんだろう。」
「えぇっ!?ちょっちょっとそれ気になりますよ!どっちに行きました!?」
「海沿いを走っていったぞ?」
「僕行きます!」
「ちょっと待った。2つあんたに聞きたいことがある。」
「何ですか?」
「一つ目は…もし仮に、仮にの話だ。誰にも負けないような、そんな戦う力があって、その力で誰かを守ることが出来るのに、戦わないのは悪か?どう思う。」
乾さんは真剣な眼差しで僕に問う。
「それは…その人しか答えが出せないでしょう。でも僕は…僕なら…一人でも多くの笑顔を守りたい…だから戦いますよ。」
「…そうか…そうだな。」
乾さんは遠い目をしながらまた呟く。
「二つ目だ、あんた名前は?」
乾さんは自分のバイクに跨がりヘルメットをかぶりながら問う。
「一条カオルです!」
「そうか…一条カオル、あんたはきっと強い。俺もあんたみたいになれるかね。」
呟きながら、乾さんはエンジンをかけるとどこへと向かうのか颯爽と去っていった。
「肩の傷が一晩で完治…誰かのために戦う…笑顔のために…まるで正義のヒーロー…仮面ライダーだな…いや…きっと…」
乾巧は心の中にその言葉をしまい込み、目の前の道をただ進むのだった。
「って、僕も急がないと!またショッカー怪人やバダン帝国の仕業で何かあったとしたら…それと、士を探さなきゃだしな…」
バイクに跨がりエンジンをかけ、僕は乾さんと同じ方向に向かう。
なぜだか解らないが…乾さんはたぶん、何かを知っている、そんな気が僕を駆り立てたからだ━━━━
━━━━
一条カオルが乾巧を追う一方、バダン帝国の怪人達と戦う二人の仮面ライダーがいた。
「夏実!息はあがってないか!?」
「士君こそ大丈夫なんですか!?」
二人の仮面ライダーは仲が良いのか悪いのか、しかし息の合った素晴らしいタイミングとコンビネーションで怪人達を圧倒していた。
「そろそろ仕留めるか。」
その仮面ライダーは戦いの手を取め、懐にあるカードをベルトに装填すると、空高く飛び上がる。
九つの巨大なカードの紋章が現れ、それを突き破りながら怪人達に向けて降下しながらキックを放つ。
「伏せろ!夏実!」
もう一人の仮面ライダーは有無を言わず横に転がり難を逃れる。
「はぁぁっっ!!」
複数の怪人達が消滅しその場には煙と静寂が立ちこめ、その幻想のような場所には2人の男女が向かい合って立っていた。
「士君ひどいです、私まで巻き込むつもりだったんでしょ。」
「は?ちゃんと伏せろと言ったろう。」
「…解ってます…違います、巻き込んでほしいんです。」
「はぁ?…何が言いたい。」
女性は男性に寄りそのまま抱き付いた。
「夏実、何のつもりだ。」
「士君が遠くに行ってしまうそんな気がするんです。」
「遠くも何も俺は色んな世界を渡り歩いている、ただそれだけだ。」
「少しでも良いんです、たまには私たちの元に帰ってきて下さい…心配なんです。」
男は溜息をつき、空を仰いだ。
「夏美、俺は…ディケイドとして世界を渡り歩く。それが俺の居場所なんだ。俺は戦い続ける、それが俺なんだ。」
「士君…あなたという人は…そうですね、そうです。それこそが士君です。でも…それでも…」
女性は少し顔を赤らめ口を閉ざす。
「歯切れが悪いな、何だ?何が言いたい?」
「…寂しいんです、士君にたまには会わないと私寂しいんですッッ!!」
「なっ…夏みかん、お前どうしたんだ…訳が分からん。とにかく、今回の件はお前は関わるな、俺達が片を付ける。良いな?」
「なっ…もう良いです!せっかく会いに来てあげたのにッッ!!色々調べて協力しようと思ったのにッッ!!キバーラさんッッ、こんな人ほっといて行きましょう!!キバーラさん?キバーラさん!!どこですか?キバーラさん?」
女性が周りを見渡し誰かを捜しているようだ。
「ここよー、夏実ちゃーん。」
夏美と呼ばれた女性が声の主を捜すとそこには見知った男性とキバーラと呼ばれたコウモリがいた━━━━━━━━━━
バイクを走らせ乾さんを追う僕の頭上に見知ったコウモリが飛び回っていた。
「はぁい。一条カオル君、昨日ぶりね~元気してた?」
僕はいったんバイクを降り、エンジンを切る。
「あ、えーと…キバーラ…?あれ、じゃあ近くに夏実さんと士がいるの!?」
辺りを見回すがそれらしき姿はない。
「あの二人ならこっちよ~バイクを押してきなさいな。」
「あっ、うん!」
僕はバイクを押しながらって言った?なのでバイクを押しながらキバーラを追う、おそらく近くに二人はいるのだろう━━━━━━━━
「喧嘩してる…?」
「しーっ、静かに。あれは…はぁ…昼ドラ的展開を期待しちゃう。」
乾さんを追っている途中でキバーラに再会、キバーラについて行くと何か士と夏実ちゃんが険悪なムードで話していた、つまりどういうこと…?
「夏実ちゃんね、寂しかったのよ。士君がなかなか会いに来ないから、今回の戦いのついでに士君に会って説教してるわけ。私に会いにたまには帰ってこいよってね。」
「あっ、夏美さんが抱きついたよ!?あの二人デキてるの?」
「ビミョーな所よね、士君が乙女心解ってないから、もうすんごいアレなんだけど、こういうのキュンキュンして私はたまらないッッ、たまらないわ~。」
キバーラは羽をパタパタ言わせながらキュンキュンしているようだった。もうよく解らない。
「あ、キバーラ。呼ばれてるよ?」
「あらホント?ここよー夏美ちゃーん。」
僕もキバーラに釣られ二人に姿を見せてしまった、気まずい。これはアレか、かなり気まずいアレだ━━━━━━━━━━
「…いつから見ていた、カオル。」
夏美さんとキバーラはそのままどこかへ消え去り、残された士と僕は…うん、とても気まずい。
「いつからと言われても…夏美さんが抱きつ」
「だいたい解った、アレは誤解だ。俺と夏みかんは何でもない。」
僕に最後まで話させることなく士は言い切った。
「まぁ、うん、解った。お幸せにね、士!」
「誤解だ。」
そんなやりとりをしていると、遠くからバイクの音が近づいてくるのが解った。
「乾さんかな。」
「何だ、カオル。乾…?お前、まさか乾巧を知ってるのか?」
「うん、僕を助けてくれたんだ。ちょっと昨日戦いが酷くてさ。怪我して気を失って。」
「そうか、昨日はぐれたのは正直悪かった。どこにいたんだ?」
「ジン・ケイスケ先生の診療所で一晩世話になったんだ。乾さんはそこで出会ったんだよ。」
「…ジン・ケイスケ?なるほどな…」
「それでさ、乾さんとジン・ケイスケ先生を探してたらキバーラが現れて今に至るわけ。」
「カオル、先に言っておく。そのジン・ケイスケと言う医者、乾巧、共に俺達の仲間だ。」
「…なんとなく解ってたよ。うん、ジン・ケイスケ先生が昨夜それっぽいこと言ってたんだ。戦う運命になれば容赦しないとか言ってて。たぶん僕の正体に少しばかり気付いたんだろうね。」
と、一台のバイクが視界に現れた。
「あれは…」
士がそう呟くと同時に、バイクから降りたのは童顔の男性だった。
「やぁ、久しぶりだね、門矢士。仮面ライダーディケイド。」
「お前は…園崎ライト…フィリップ…仮面ライダーダブルだな。相方はどうした?」
「翔太郎なら、単独変身で戦ってるよ、今頃ね。それを君に伝えにきたのさ。バダン帝国と昭和ライダーが遂に動き出したらしい。」
「何!?」
「この先の海岸沿いでXライダーと555が戦いを繰り広げているよ。」
「まさか…乾さんとジン先生…?」
「ん?君は?あ、君は確か…一条カオルだね。仮面ライダークウガ。」
フィリップと呼ばれた青年は僕を知っているようだ。ん?フィリップ…?
「五代雄介さんに僕はある場所で出会ってね。」
「あ!君が五代さんから聞いたあの話のフィリップ君なの!?」
五代さんが失踪時、不思議な空間で出会った青年、そうか彼がフィリップ君なのか。
「まぁ、そうさ。それより話がそれてしまったね、門矢士、仮面ライダーディケイド、早急に君は仲間を集めた方がいい。戦いはもうすぐだ。」
「わかった、とりあえず左翔太郎の所へ行く。」
「いや、そう簡単には行かせてくれないみたいだね。」
フィリップ君が目を向けた先には複数のバダン帝国怪人達がひしめき合っていた。
「げ…すごい数。士、急ぐんなら先に行ってよ、ここは僕が戦うから。」
「あぁ、任せる。後で合流だ、そうだな…フィリップと行動を共にすればいい。件の(検索)とやらをすれば俺の居場所は掴めるだろうからな。」
「仕方ない、じゃあ僕も単独変身と行こうか、翔太郎も今戦っているようだし。」
士はマシンディケイダーを走らせ先に進む。行く手を阻む怪人達は僕とフィリップ君が引き受けることになったようだ。
「さっ、行きますか!フィリップ君!じゃお先に…変身ッッ!!」
僕は赤のクウガに変身した。
「単独変身はあまり好きではないんだ。早く終わらせよう。」
フィリップ君はベルトを装着し右手に持つ緑色のメモリースティックのスイッチを押した。
サイクロンッッ!!
そんな電子音が聞こえ、右手に持つ緑色のメモリースティックをベルトに装填し、ベルトを起動させる。
辺りに風が舞い、そこには緑色の体を持つ仮面ライダーがいた。
「僕は仮面ライダーサイクロン。さぁ、お前の罪を数えろ。」
決めゼリフと共に戦いの幕はあがる━━━━━━━
五代雄介side
俺はただひたすらに戦っていた。独りで三体も同時にグロンギを相手取るのはほぼ初めてなのだから。
「超変身ッッ!!」
赤から青、青から紫、紫から緑、緑から青…
三体のグロンギ相手にハイペースで色を変え臨機応変に対応し、何とかグロンギ達の体力を削るのには成功しているようだ。
まずは一体、続いて二体、と確実にとどめを刺し残る一体になったときにはけっこう体力的に限界だった。
「くっ…」
残るグロンギはサイのような角を持つタイプだった。パワーではこちらがかなり不利である。
「はぁ…はぁ…超…変身ッッ!!」
紫のクウガに変身し、大剣をふるいながら対応するが体力はすでに限界を越えつつあった。
思うように体は動かなくなりはじめ、仕留めるには無理があった。
「どうすれば…」
カオル君ならどうしていた…俺は…俺なら…
「甘いんだよ。」
えっ…?
誰の声か解らないが、今確かに聞こえた。
「闇の力を使えば良いんだよ」
まただ、また聞こえた。
「誰だ、誰なんだ!?」
俺が声を張り上げた瞬間、目の前に迫っていたサイの角を持つグロンギの身体が黒い炎に包まれ燃え始めた。無論もがき苦しむそのグロンギは遂に膝を突いた。
「自然発火…まさか…」
俺が気付いたときにはグロンギは燃え尽きた後で塵一つのこりはしなかった。
「ダイ…か…」
そう、この自然発火には心当たりがある。
俺も同じ力を使ったことがあるからだ。
そう、黒に染まったクウガの本当の力、
それが黒い炎を操る力だということを俺は知っている。
同時に確信した、謎の声の主と、黒い炎を操ったのは…この世界の俺、「ダイ」だということに━━━━━━
今回、原作からの登場人物が結構いました。
士と夏実のいちゃいちゃ(笑)キバーラのキャラ崩壊、そして原作の小説に登場した仮面ライダーサイクロンが登場。たっくんは戦いたくないようだし…と、色々ありました。短い割に詰め込めた感はあります汗
五代雄介sideはかなり短いですが次回はほぼ五代雄介sideになるので致し方ない結果に。
「一条カオルの世界がクウガ」の世界の五代雄介=ダイと、五代雄介の戦いは近付いています。ダイの狙いは何なのかが今後のキーになります、ではまた次回お楽しみに。