夏目考古学研究所にて━━━━━━━━━━━━
「はい、夏目研究所、あっ、小田桐さん。先程はどうも。ええ、エェッ!?」
小田桐輝からの電話により空気が一転。先程、石版の解読に成功し、空気が静まり返っていた研究所に夏目博士の声が響きわたる。
「どうしたの、お母さん?大きな声出して。」
桜子が怪訝な顔をしながら寄ってくる、周りの研究員も少し戸惑い顔だ。
「それで二人は今まだそこに?えっ倒れた?!」
尚も電話でやり取りをする夏目博士と桜子の顔色が変わる。
「わかりました、ええありがとう。引き取りに行くわ。すみません、ちょっと待ってて。ええ、じゃあ後ほど。」
小田桐輝との電話のやり取りを終えると、夏目博士は桜子を見つめ、答える。
「例の遺跡付近で怪物がまた現れて、五代君と一条君が戦ったらしいわ。」
桜子は目を見開き、動揺を隠せない。
「えっ!?カオルが戦ったの!?」
博士は頷く。
「それで2人は無事なの!?」
「五代君が気を失った一条君を担いで帰ってきたんですって…でも2人共々ひどい怪我はしてないそうで、少ししたら五代君も気を失ったらしいわ、とりあえず2人を引き取りに行くけど、あんたも来る?」
「カオル無事なんだよね…?もちろん行く!!」
「はい、じゃ支度して。」
桜子は急いで支度を始める…
遺跡付近研究員用施設内にて━━━━━━━━━━━━
小田桐輝は長椅子にカオルと五代を寝かせ、外傷の手当てを終えた所で、夏目博士に状況を電話で連絡し、2人を迎えに来るという事なので、
それまでカオルや桜子と昔遊んでいた子供の頃の写真を眺めていることにした。
「懐かしいなぁ…私が12歳位だから、カオルンと桜子は10歳位かな…」
アルバムをめくる度、当時の記憶が蘇る。
と、ある写真に目が止まる。
「これは…カオルンのご両親か…」
今より10年前、この遺跡の研究中にカオルの両親は突如行方不明になりその後死亡したと言うことで、終幕を迎えたあの悲劇。
「カオルン…泣かなかったねー。」
眠るカオルを見つめながらボソッと呟く輝。
カオルの両親とカオル、桜子、そして自分が写る写真を眺め、少し鼻をすする。
「カオルン、強がりだったからなぁ…きっと相当無理したんでしょ?」
眠るカオルは答えない。
「桜子を心配させて…桜子泣かせたら、私が許さないよぉ?」
やはりカオルは眠っている。
「はぁ、もう本当にどうしちゃったの、この世界。意味わかんないよ。」
カオルからのクウガとグロンギの説明と古代文字の一件、そしてグロンギが研究員になりすましていたこと。
「この遺跡にまだ何か秘密があるのかしら…」
そして数分後、夏目博士と桜子が来訪し、夏目博士が五代を背負い、桜子がカオルを背負って、車に押し込むのを見送ると、桜子が輝に声をかける。
「輝姉ちゃん久しぶり!」
「おひさー。元気そうだね、桜子」
「うん、毎日元気に頑張ってます!」
2人は笑顔で話す。
「で、カオルンとはどこまでいったの?」
いきなり輝がとんでも発言を桜子に放つ。
「何言ってるの!?べ、カオルと私は別にそんな関係…」
顔を真っ赤にしながら答える桜子に笑顔で輝は切り返す。
「冗談よ、仲良くやってるなら良かったわ。あんた達いつも一緒だったもんねー。チュウくらいわした?」
「もうっっ!!」
「ごめんごめん、桜子。でもその元気でさ…きっとカオルンは支えられてるんだよ、今までも…これからも。」
「輝姉ちゃん…」
「カオルン…戦って、相当無理したんだと思うの。だから支えてやって、あんたにしかきっと出来ないから。」
「うん…必ず。」
「よしっ、じゃまたね。」
「うん、また今度!」
桜子はカオル達を乗せた車に乗り込む。すると、夏目博士が足早に寄ってくる。
「ありがとうね、小田桐さん…」
「昔みたいに輝ちゃんて呼んで下さいよー。」
「そんな歳でもないでしょー?」
「うわ、ひっどいんだー、実加さんひっどいんだー。」
「変わらないね、輝ちゃん(笑)」
輝は笑いながら
「皆変わってませんよ、これからも変わりません、カオルンもね。」
夏目博士は頷く。
「実加さん、とりあえずこの遺跡の調査で何か判ったら、すぐ連絡します。」
「ええありがとう。私の方も何か判ったらすぐ連絡するわ。」
「はい。じゃあまた今度。」
「ええまたね。」
2人は笑顔で別れる、昔と変わらない笑顔で。
車に乗り込み、自身の研究所に車を走らせる最中、桜子がカオルの手を握り片時も離さなかったのを、夏目博士は微笑ましく眺めていたのを誰も知らない━━━━━━
戦うことの出来ない人達のストーリーこそちゃんと描ければと思います。