ここは…僕はどこにいる…これは…
青空が晴れ渡る不思議な空間に僕は佇んでいた、いくら見渡しても、ずっと先まで青い空しかない。
すると、先の方に人が一人立っているのが判る。
あれは…五代さん?
そう思った瞬間、先程までの青い空が嘘のように、真っ黒な雲に覆われる。
僕の意識と身体は空を包む闇に包囲され、そしてすぐそばに、目の前に、真っ黒な身体をしたクウガが…
僕の身体も闇に包まれ、目の前にいる真っ黒なクウガを殴り飛ばす。
拳が痛む。
拳を見ると真っ黒に染められた僕の手…そして身体も真っ黒に染まり…いやこの闇に包まれた、この場所にいるのか、この闇そのものが僕なのか?
解らない、ただ怖い、ただそれだけだ。
もう自分の腕も脚も闇に包まれ見ることが出来ない。
僕はどこにいるんだ、怖い怖い怖い怖い、
怖い━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━。
「ウワァァッッ!?」
目を覚ますと見覚えのある風景が目の前にあった。
「カオル!!目が覚めたんだね!!お母さん!!カオルが!!」
桜子が耳によく響く声で母である夏目博士を呼んでいる。
「おぉー、おはよう一条君!!体は大丈夫?」
何やら書類を片手に顔をこちらに向ける夏目博士。
「大丈夫です!あの五代さんは?」
「彼なら…」
指を指す方を見ると五代さんは横になって寝ているようだ。
先の戦闘でだいぶダメージがあったようだ…
あの戦いの後、五代さんに担がれて僕ら2人は何とか遺跡の責任者の小田桐輝の元に戻ることができ、そこで五代さんも眠るように気を失ったらしい、と桜子が教えてくれた。
「どっちが無理してるんだか…」
五代さんを見ながらつぶやいた僕に桜子が続ける。
「そういえば何か怖い夢でも見たの?随分怯えたような感じで目を覚ましたようだけど?」
「あぁ…何というか…何かとても嫌な夢を…」
「よく解らないけど…さ、あんまり無理しないでよ?詳しい話は輝姉ちゃんから聞いたけど…あんた戦ったんでしょ?たぶんそれのせいで怖い夢見たんだと思うし…」
「そっか輝ちゃんから聞いたのか…ごめんな、心配させて…でも大丈夫だから。」
「うん…」
桜子との会話を聞いていたのか、横から夏目博士がとんでもないことを言った。
「あのさ、お二人さん。仲良いのは良いけど、あんたらいつ結婚すんの?」
「ちょっ何言ってんの博士!!?」「ちょっとお母さん!?」
顔が赤くなっているのを隠すため僕はとりあえず身体を起こし外の空気を吸いに行くことにした。
「ちょっ、ちょっと外行ってきます!!」
ぜんぜん隠せなかったんじゃないだろうか…
「あ、ちょっとカオル!!」
桜子の声は僕に届かなかった。
「もうお母さん!!」
「しーっ、五代君起きちゃう」
「もう…!!」
桜子はカオルを追いかけた。
「あらあら。」
走り去る桜子を見送る夏目博士は笑っていた。
「うーん良い笑顔ですね。」
声の主は五代だった。
「あら起こしちゃった?ごめんなさいね?」
体を起こしながら五代は言う。
「起きてましたよ、カオル君の目覚めの声で。」
ふんふんと頷きながら
「無理させちゃったな…」
と五代は言う。
「同じ事を一条君も言ってたね(笑)本当に君たちは似てる。君を他人に思えないのはそれでか、初めて有った気がしないのよねー。」
「ですね(笑)俺も何か、夏目博士をずっと前から知ってるような…」
五代の言葉が止まる。
「五代君、君なにかあったんじゃない?」
「どうしてそう思うんです?」
「初めて会ったときより何か不安?そうというか…そんな顔してるから…かな?いや…何というか…」
「そっか…顔に出ちゃってましたか…」
「良かったら話を聞くよ?君の事を知りたいからね、正直謎だらけだし。何度も言うけど、君が他人に感じられないのよ。」
「そっか…ありがとうございます、じゃあ俺の話聞いてもらえますか?」
「どうぞどうぞ。」
五代は一呼して、
「あの遺跡で戦った怪物、グロンギから言われたんです。何故お前がここにいる?この世界の者ではないお前が何故戦う?何のために?どうやって来た?…戦う前に言われて正直混乱しました…」
「この世界の者ではない。とはどういうこと…なのか…?」
夏目博士も考える。
「俺、気付いたらあの遺跡の中にいて、グロンギがいるのが解ったから追いかけて…そしてカオル君に出会って…確かに何であそこにいたのか自分でも解っていなくて…」
「難しい話になりそうだねぇ、、、」
夏目博士は頬をポリポリかきながら聞いている。
「混乱したせいで上手く戦えなかった…というのは確かなんです。ただおかしいことにも気付きました。」
「おかしいこと?」
「はい。変身する度に何かに身体を奪われそうになる…いや…自分に似た気配みたいな何かに、意識を奪われそうになる…みたいな。」
「ふむふむ…変身、つまりは一条君にも有るというあの霊石の力による身体の変化の異常が五代君に今あるわけね…?」
「はい。」
「一条君は大丈夫なの…?」
「たぶん、彼も夢の中で似たような状況を…ほら、さっき叫んでたでしょ?」
「なるほど確かに、もしかすると異常は一条君にも有るのかもしれないね。」
夏目博士はコーヒーを入れながら話を聞いていたが、会話のほとんどの意味を理解できてはいない。
「一条君に無理はさせられない事はよく解った。それと五代君がとても優しい人だって事もね。そうだ、君が昨日初めてここに来た時に言ってた「県警の未確認生命体対策本部」とか、「九郎ヶ岳遺跡」とか「未確認四号」とか、色々調べを手配したんだけど…何も判らなかった…だとしたら逆に説明着く。君はこの世界の人じゃないって話の。」
「やっぱりそうなりますか、まぁおかしいなと思ってたんで期待はしてなかったんですけど…お手数かけました。」
五代は笑いながら言う。
「気にしない、気にしない。本当に何度も言うけど、何故だか…君を他人に思えない、これも何かの縁なんだろう…君の言っていた「県警の一条薫」はここにいないけど、この世界の一条カオルがここにいる、何とか色々上手くやって行けそうな気がするでしょう?」
笑顔で答える夏目博士、その笑顔で五代に笑顔が戻ったのは致し方ないことであった。
あの夢はいったい何だったのか…?
研究室を離れ僕が向かった先は屋上の広場だ。
曇り空からはちらちらと太陽が見え隠れしている。
太陽を見ていると先程夢に見たあの黒い姿を少し思い出す。
「自分を見失いかける…ってことなのか…?」
最初は逃げようとした、二回目に変身までして戦い、三回目は…この先はどうなるんだろうか…?また奴らと戦うのなら…
「変わらないよ、カオルはカオルだもん。」
どうやら声に出ていたようでいつの間にか声の主、隣に桜子がいた。
「桜子…僕は僕のままいられるのかな。また戦うのかな…ちゃんと守れるのかな…五代さんの代わりになれるかな…あっ」
遂に本音が出てしまい…声が詰まる。
「やっぱり、あんた昔から変わらないよね、そういう所。おじさんとおばさんが行方不明になって亡くなった事になって…それでもそんなときでもあんたは自分が一番辛いはずなのに、先に泣いちゃった私やお母さんを慰めてくれたもんね。誰かを助けてるよね、あんたはいつも。」
「そんな事もあった…そう…だな。確かに僕は誰かを助けたい…戦いたくないけど…きっと五代さんもそうだったんだろうし…だからこそ、五代さんも助けたいよ。きっと辛かったと思う、一度しか僕は変身してないけど、あの感覚はとても辛いはず…なのに五代さんは何度も戦ってるんだからね、きっと辛いはずだよ。」
「だから代わりにあんたがなるの?戦うの?それは少し違うんじゃない?」
「えっ?」
「きっと五代さんも同じ事考えてるよ、カオルには戦わせたくないってね。」
無理させちゃったな…
五代さんが言った言葉が脳をよぎる。
「そうか…だから五代さんは…戦いなれてないからじゃなくて、戦いなれて欲しくないから…」
「あんたはあんたよ、カオル。自分に出来ることをやりたいことをやればいいんだよ。」
「僕に出来ることやりたいことを…?」
「そっ、あんたにしかできないこと!あっ、カオル見てよ!虹が出てる!」
桜子が指を指す方を見ると、七色の橋が綺麗に延びていた。
その虹の色に黒は無い、当たり前だが何だか少し救われた気分になる。
「桜子、ありがとう。桜子が今まで僕のそばにいてくれて本当に良かった。」
「違うよ、カオル。」
「えっ」
「これから先もずっとそばに居て下さい。でしょ?」
顔を赤らめながら桜子が言う。
「…これからも僕のそばにいて下さい。」
「しゃーないから居てあげる!」
青く澄み渡る空に、七色に輝く虹を見つめる2人の手が繋がれているのを陰から見つめている男女がいることを二人は知る由もなく、
「なんだかいい感じですね(笑)若いって良いなぁ。」
「そうだねー、とっととくっついちゃえばいいのに。」
それが五代と夏目博士であることを二人が知ることはなかった。
青空の行方−終−
これにて青空の行方、完結。次回は第二章突入、青空の破壊者編です。
彼を出します、というかその「彼」の一言がどうしても本作に必要なんです。
「クウガの世界か…?
次章お楽しみに!」