ワートリ×ストレイドッグス   作:ささき96

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ワンピースみてたら小説書くの遅くなってました
おかしいな、ワンピース見てると時間が溶ける


14.風間隊

 

 

01,

 

 菊地原がその男に会ったのは、風間に勧誘され、B級に上がった直後だった。

 C級から脱し、歌川と宇佐美を加え、風間隊が本格的に動き出そうというときのことである。風間に『もう一人勧誘した男がいるのでそいつを見に行く』と告げられたのだ。

 風間に連れられ、歌川と菊地原が向かったのは、なぜかランク戦ロビー。

 そこでは、B級隊員同士が1対3という滅茶苦茶な勝負をしていた。

 

「あの赤毛のほうを誘っていた」

「いや、赤毛二人いるんですけど」

「男の方だ」

 

 風間が言った赤毛の男を見る。

 彼は無表情に、淡々と銃を撃ち続けている。

 画面の中では突撃銃を持った眼鏡の男と、孤月の黒髪が奇襲するが、まるで攻撃が見えているかのように振り向きもせず避けてみせた。

 挟み撃ちにされているというのに、焦った様子も見せない。

 

「おお!」

「すごいな」

 

 C級のどよめきに、菊地原は思わず右耳を覆う。ここは人が多すぎる。

 

「2枚抜きか…」

 

 歌川が声を上げる。

 赤毛は攻撃を避けて路地裏に入ったかと思えば、それを追おうとした二人の射線が重なったところをアステロイドで撃ち抜いたのだ。

 シールドの隙間を縫うようなアステロイドだった。

 

「ひとり生きてるな」

 

 背後にいた眼鏡の方はトリオン漏出は激しいが生きていた。

 そのまま狭い路地にいる赤毛に向かって銃を乱射する。

 

 シールドを張りながら路地を抜け大通りに出た赤毛を、今度は赤毛の少女がスコーピオンで奇襲した。

 赤毛はスコーピオンを振るう女を尻目に、ふと背後に目をやった。

 拳銃を背後に向け放つと、カメレオンで潜伏した眼鏡の男にアステロイドが被弾した。

 眼鏡は驚愕の顔をして緊急脱出する。

 

「なにもせずにやられちゃいましたね、あの眼鏡の人」

「いや、なにもしてないってわけじゃ無さそうだ」

 

 歌川の言葉に、菊地原は画面に目をやる。

 少女は男が眼鏡に気を取られている間にグラスホッパーで死角に入り、手に持ったスコーピオンで首を狙っていた。

 

「良い腕だ。だが」

 

パキン、と首筋に届く前に、スコーピオンが割れる。

 

「それでは織田には届かないぞ」

 

 菊地原はあまりの曲芸ぶりに目を見開く。男は死角が見えているかのようにスコーピオンを撃ってみせたのだ。

 少女は男と距離を取ろうとグラスホッパーを起動したが、グラスホッパーが、踏む直前に男のアステロイドで相殺された。

 

 体勢を崩して転んだ少女の眉間に、まともにアステロイドが吸い込まれていった。

 

 

 

「すごい腕の銃手ですね。グラスホッパーをピンポイントで撃つなんて…何者なんですか?あの人は」

 

 歌川は感心したように言った。

 

「アイツは織田作之助だ。もうすぐ来るから待っていろ」

 

 菊地原は内心、『ああ彼が』と納得していた。

 ボーダー内での噂話は嫌でも耳に流れ込んでくる。そして織田作之助という名前は特に姦しく聞こえていたのだ。

 曰く、太刀川慶に勝った。曰く、迅悠一の弟子だ。曰く、実は留年していて本年齢は18歳だとかなんとか。

 眉唾物も混ざっているだろうが、実力者には違いない。それこそ、風間が勧誘するほどの。

 

「きくっちー、うってぃー、風間さーん!遅くなりましたー、思ったより長引いちゃって」

 

 風間隊のオペレーター、宇佐美栞の声がしてそちらに顔を向ける。

意外なことに彼女は一人じゃなかった。

 

「すみません、遅くなりました」

 

 背後に連れていたのは、先ほど画面の中で戦っていた織田作之助だった。

 

 

 

 

 

02

 

 

 私は葉子との約束のため、定期的に香取隊とランク戦をするようになった。

 しかし香取隊と戦うにあたって、ひとつ懸念点があった。

 香取隊には染井華というオペレーターがいるが、私にはいないということだ。

 何回か戦ってみてわかった。オペレーターのサポートがあるとないとでは勝率が大きく変わってくる。

 今はなんとか勝てているが、香取隊もそのうち実力をつけてくる。そうすると私にもオペレーターをつけなければ、不公平になるだろう。(1対4という時点で公平もなにもないが)

 

 どうしたものかと悩んでいると、勧誘を断るために電話した風間さんに、こう言われた。

 

「うちのオペレーターの宇佐美なら、一度貸してやってもいい。ランク戦の予行練習にもなる」

 

 私はまた風間さんに借りを作ることとなった。

 

 

 

 

 

『三人ともバッグワームで消えました!注意して!』

『了解』

 

『若村くんがカメレオンで隠れてます。レーダー見て対応お願いします!』

『了解』

 

 宇佐美は優秀なオペレーターだった。戦場を俯瞰して見ることができるのは本当に助かった。

 

「勝ちましたねー!おめでとうございます!織田作さん!」

「宇佐美のサポートが的確だったからだ。ありがとう」

 

 宇佐美が隊のオペレーターになるのは、風間隊が初めてだったらしく、事前の練習がしたかったらしい。

 

「それにしても香取ちゃん、スコーピオン使ってくるなんてびっくりしましたねー」

「ああ。驚いた」

 

 葉子は銃手だと思っていたのだが、唐突にスコーピオンで奇襲してきたため、その予知が見えたときには驚愕した。

 どうやら私に勝つために新しい武器を取り入れたらしい。勉強熱心なことである。

 

「あ!風間さんもう来てるみたい!行きましょう」

 

 ロビーに出ると、画面の前に風間さん達が立っていた。隊のメンバーなのか、二人の少年を連れている。

 

「きくっちー、うってぃー、風間さーん!遅くなりましたー、思ったより長引いちゃって」

「すみません、遅くなりました」

 

 風間さんは相変わらずの鋭い目でこちらを見やる。

 

「香取隊と戦っているというのは本当だったのか」

「はい。数回ほど。宇佐美を貸して頂きありがとうございました。素晴らしいオペレートでした」

 

 風間さんは気にするなと言って宇佐美に声をかける。

 

「宇佐美、勉強になったか?」

「はい!織田作さん、ありがとうございました!」

 

 宇佐美に頭を下げられてしまった。私は慌てて頭を下げ返す。

 風間さんは頭を下げ合う私たちを尻目に、傍に立つ少年たちを紹介してくれた。

 

「織田。俺と隊を組む菊地原と歌川だ」

「どうも」

「歌川遼です。よろしくお願いします」

「織田作之助だ。よろしく」

 

 愛想のいい短髪の好青年と、無愛想な肩までの髪の少年。正反対な二人のようだった。

 二人とも私より年下らしい。菊地原のほうは、じろりと私を睨みつけていたが、なにをいうでもなく黙っていた。

 

「織田作!」

 

 名前を呼ばれ振り向くと、香取隊の面々が立っていた。

 葉子は私に駆け寄ろうとしたが、風間隊の面々が見えて足を止めた。

 

「……織田作、なんで風間さんがいるの?」

「実は今日は風間隊のオペレーターの宇佐美を借り受けたんだ。その礼を言っていた」

「ふーん…どうも」

 

 葉子が風間さんと宇佐美にぺこりと頭を下げる。

 風間さんは葉子を見て、少し目を細めた。

 

「スコーピオンを使い始めたとは驚いた。使い方は悪くないが、まだ拙いな。実戦レベルには程遠い」

「……」

 

 葉子は自分でもそれがよくわかっていたのだろう、なにも言わなかった。

 すると菊地原が無表情に言った。

 

「風間さんの猿真似って感じだったね」

「は?」

「ログ参考にしたんでしょ」

 

 葉子はじろりと菊地原を睨め付ける。

私は少々驚いた。確かに風間さんと似ているとは思っていたが、あの葉子が他人のログを見て参考にしているとは思わなかったのだ。

 

「だったらなに?アンタに関係あんの?」

「風間さんの真似したって勝てるわけないよ。実力足らないのに」

 

 ピキ、と青筋が立つ音がした。

葉子は怒りを抑えきれず、いつも通り怒鳴りそうになった。菊地原の指摘は耳が痛かったのだろう。

 私が葉子を止めようとすると、その前に歌川が菊地原の肩を掴んだ。

 

「まあまあ、菊地原。実力が足りないのはオレたちも一緒だろ」

「……まあそれはそうだけど」

「すいません、織田先輩、香取」

「……別に」

 

 怒るタイミングを見失ったのか、葉子は鼻を鳴らして菊地原から目を離した。

 

「私たち反省会しに行くから」

「ああ」

 

 置いてけぼりにされていた香取隊メンバーを引き連れ、葉子はさっさと出ていってしまった。

 

「アンタも、なんで風間さんの勧誘断ったくせに、宇佐美先輩借りてるの?」

 

 菊地原は今度は私に声をかけた。

宇佐美を借りたことが気に食わないのだろうか。それとも風間隊への加入を断ったことが気に食わないのだろうか?(もしくはその両方だろう)

 歌川は菊地原を宥めようとしたが、私は構わず答えた。

 

「香取隊と賭けをしていてな。定期的にランク戦をしているんだが、オペレーターがいないと不公平だろう。宇佐美の好意でオペレートしてもらった」

「はあ?1対4を2対4にしても公平じゃないでしょ。バカじゃないの?」

「こらこらー」

 

 宇佐美が菊地原に笑いかける。彼は気まずそうに目を逸らした。

 

「ランク戦前に練習したいと思ってたから、丁度よかったんだよ。きくっちー」

「……」

 

 私への追求は品切れになったらしい。菊地原はさっさと歌川の背後に隠れてしまった。

 

「すいません、悪いやつじゃないんですけど」

「いや、菊地原の言うことは最もだからな」

「俺も気になりますね。香取隊とどんな賭けをしたら、2対4で戦うことになるんですか?」

 

 私たちの勝負は、それなりに話題になっているようだったが、依然として理由は知られていないようだった。

 噂によると、『香取隊に恨みを勝った織田作之助が報復を受けている』という荒唐無稽のものまであった。

 よって、私は正しい情報を述べておくことにした。

 

「実は、香取隊が俺に勝ったら俺は香取隊に加入する、という賭けをしてるんだ」

「それはまた…すごい賭けですね」

 

歌川は目を丸くした。

 

「今のところ織田作さんは勝ち続けてるみたいですけど、香取隊からの賭けの報酬はなんなんですか?」

「?…ああ、それは決めてなかったな」

「いやそれ賭けじゃないですよ。不公平すぎるじゃないですか…」

 

 苦笑されてしまった。

確かに私は、自分が勝ったらどうするかは決めていなかった。これではただ勝負をしているだけになってしまう。

 しかしながら、私と勝負を続けることで葉子たちは確実に強くなっている。そういう意味では目的を達成しているのだ。

 

「なら、負けるごとに咖喱でも奢ってもらうことにする」

「カレーって…」

「隊の加入って重大事項に対してそんなんでいいの?ホントに?」

 

 菊地原が怪訝そうに聞いてくる。

しばらくは負けてやるつもりはない。彼らが私に咖喱を奢るとしたら、結構な回数になる。いずれ釣り合いが取れることだろう。

 

「大体そんな何回も勝ち続けられるの?何回も戦えば、癖も戦い方も覚えられちゃうよ」

「それに関しては大丈夫だろう」

 

 菊地原の疑問に答えたのは私ではなく、風間さんだった。

 

「こいつのサイドエフェクトがあれば、早々に負けることはない。香取隊はかなり苦戦を強いられるだろう」

「は?サイドエフェクト…?」

 

 菊地原と歌川が目を丸くする。

風間さんは説明するつもりはないらしい。そのまま続けた。

 

「なんにせよ、今日はうちの隊の面子と会わせたかっただけだ。なにかあったら声をかけてやってくれ」

「はい、風間さん。宇佐美も今日はありがとう」

「お安い御用だよ!また呼んでね〜」

 

風間隊の面々に頭を下げ、私は葉子たちの反省会に向かうために歩き出した。

 

 余談だが、宇佐美が噂を広めたおかげで、色々なオペレーターが私の元を訪れ、『オペレートの練習をさせてくれ』と言い出すようになり、宇佐美のオペレートを受けるのは大分先のこととなった。

 

 

 

03

 

 

「どうだった?」

 

織田作之助が去るや否や、風間は菊地原に尋ねた。

 

「……気持ち悪いですね。煽ってんのに全然動揺しない。怒りもしない。変なやつ」

「穏やかな人なんじゃないか?」

「香取のほうは煽ったらすぐ怒ってたのに。本当にいとこなんですか?あの二人」

 

 あの二人は確かに似ていない。見た目でも似ているのは赤い髪くらいで、小柄な香取葉子と長身の織田作之助は、側から見ると歳の近いいとこ同士に見えない。

叔父と姪と言われた方が納得できる。

 

「それで、彼のサイドエフェクトというのは?」

 

 気になっていたのだろう、歌川が風間に尋ねた。

 

「アイツは、数秒先の未来が見える」

「!」

「ええっ」

 

 菊地原と歌川は素直に驚き、宇佐美は声を上げた。

 

「今のお前たちが二人がかりでも勝てないだろう。ボーダーでもトップレベルで厄介な相手だ」

「……道理で自信満々なわけですね」

 

菊地原は納得した。

画面で見たあの動き。未来が見えているかのような動きだとは思っていた。

どこに攻撃されるかわかっているからこそ、常に先手をとることができていたのだ。

末恐ろしいサイドエフェクトである。香取隊が負け続けるわけだ。

 

「織田はそれでいて、鍛錬を怠らない男だからな。いずれ上にあがってくるだろう」

 

 風間が勧誘するわけだ。香取隊の賭けに乗っていなければ、色々な部隊へひっぱりだこだっただろう。 

 菊地原は思案する。

織田作之助のサイドエフェクトは、自分のそれよりずっと有能だ。

 

(もしかしたら…)

 

ーーしかし、菊地原はすぐにその思考を否定した。

 

「……。風間さんの想定する部隊なら、僕のサイドエフェクトの方が向いてると思いますけどね」

「ああ、その通りだ。期待している」

 

 負け惜しみのような言葉にも、真摯に答えられてしまった。

 菊地原はため息を口の中で押し殺す。

 風間蒼也の言葉に、一片の嘘も感じ取れなかったからだ。

 

 自分自身を疑うのは、風間がかけてくれた期待を裏切ることになる。一瞬でも『自分は織田作之助の代わりなんじゃないか』と考えた自分が嫌になった。

 結局、人は自分の持っているカードで戦うしかない。

 

「別に、未来が見えてたって関係ないでしょ。勝ちますよ」

「勇ましいな、菊地原は」

 

 歌川の笑う声が響く。

 風間隊は、こうしてカメレオンの流行るボーダー内で、最速でA級への道を進み始めたのだった。

 

 

 

 

 

 





ワートリ戦闘だとオペレーターの有無はかなり重要だ思う(視覚支援とか)
オペレーターいないのに人型近界民はよく対等に戦ってられるなと思います


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