ワートリ×ストレイドッグス   作:ささき96

17 / 23

難産すぎ




17.決戦

 

 

01

 

 今回の作戦の大まかな流れは、葉子と三浦が織田作之助を発見、交戦し、その後なんとかグラスホッパーを踏ませて若村が撃つ…というなんともシンプルな作戦だった。

細かい交戦の流れは決めていない。

葉子はどんなときでもアドリブが効くエースであったし、他の二人には染井華のサポートがあったからだ。

 

『雄太。どうにかして織田作のことビルから落とすわよ。メテオラ準備しといて』

『了解。じゃあ正面のフェンス切るね』

『よろしく』

 

内部通信越しに話をする。

その後すぐに交戦が始まった。事前の打ち合わせ通り、三浦は素早く旋空孤月を放つ。

織田作之助を落とす方向を絞るため、正面のフェンスを大きく切断する。

 

『麓郎くんは下で待機して。奇襲場所をマークしておいたわ』

『了解、華さん』

『織田作が想定通りに落ちないかもしれないから、すぐ動けるようにしといて』

 

2対1で、ここまでの猛攻をかけているというのに、織田作の余裕は崩れない。焦りもない。

葉子は内心、焦りがあった。これまでの数十回の敗北。ここまで自分たちの作戦通りに進んでいるというのに、本当にこの男を仕留めるところまでいけるのか、自信が持てないのだ。

 

「! 雄太!」

 

唐突に織田作の動きが変わった。

 

(バイパー!)

 

三浦狙いに切り替えたらしい。葉子に向かって撃たれたアステロイド…ならぬバイパーが迫る。

咄嗟に、葉子は三浦の前にシールドを張った。急所は避けられたが少なくないトリオンが漏れている。

 

「っ、葉子ちゃん!」

 

三浦の焦る声が響く。

ぐいと後ろに手を引かれ、葉子はたたらを踏んだ。

入れ替わるように三浦が前に出る。

 

(ハウンド!?)

 

バイパーにより気を引いて、三浦狙いと思わせてからの、葉子への奇襲。

気づいた時には、ハウンドにより三浦の脇腹に穴が空いていた。

 

『葉子ちゃん、ごめん!

 

織田作さん削れてないけど、作戦実行しよう!』

 

内心悪態を吐きながら、葉子は弾かれたように走り出した。

 

『っ、了解!麓郎!』

『おう!』

 

「メテオラ!」

 

 打ち合わせ通り、切られた正面フェンス側から飛び降りる。

 直後にメテオラによる大爆発。

空中で体勢を変えながら、自分より上空にいる織田作之助を見やる。

華が若村のいる場所をレーダーに出してくれた。

 

落ち着け、と心に言い聞かせる。

東さんの言っていたことが頭をよぎった。

 

『織田に勝てるビジョンが湧かない?

 

はは、確かに、相手は未来視だもんな。

 

でも、別に勝つ必要はないんだよ

未来が見えても、避けられない罠にさえ嵌めればいい』

 

 グラスホッパーを2枚重ねる。

シンプルだけど思いつかなかった。

織田作之助に見える未来は、5秒。【たったの】5秒だ。

たとえグラスホッパーで吹き飛ばされる未来が見えていても、グラスホッパーを撃って1枚目を相殺したとしても。

 この未来だけは視えないし、変えられない。

 

織田作之助の体が、吹き飛んだ。

 

「よし!」

 

思わずガッツポーズする。

 

「麓郎!」

 

指定通りの場所に吹き飛び、民家の壁に激突した織田作之助に向かって、若村が引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

02

 

 

 

 

 

 引き金を引いた瞬間、若村の銃から飛び出したのは黒い弾丸だった。

 

 すなわち、【鉛弾(レッドバレット)】である。

 

 織田作之助がシールドを張ったとしても避けられない、シールド無視の弾。

その分、トリオン消費が大きいし、射程と弾速は落ちる。

 しかし射程の有利を失っても、ここで織田作之助の動きを封じる必要があった。

 織田作之助の未来視を支えているのは、あの軽い身のこなしと、着弾する弾を撃ち相殺できるほどの銃の腕前だ。

 鉛弾ならば、その強み両方を殺すことができる。

 

 炸裂音と共に突撃銃から飛び出した黒い弾丸が、織田作之助の身体に迫った。

 

 

 

「はっ?」

 

 織田作之助を貫くかと思われた鉛弾は、

 しかしながらその目的を遂げなかった。

 

 地面から、織田作を守るように()が生えたのだ。

 

 若村は知らなかった。

 それは、【エスクード(・・・・・)】と呼ばれるトリガーだった。

 エスクードは実体のあるトリガーであり、シールドと違って鉛弾を透過しない。

 若村が放った鉛弾は、織田作には当たらずエスクードに吸い込まれ、100キロの重石をつけるだけに留まったのである。

 

『麓郎くん!避けて!』

「なっ!」

 

 染井華の声に身を強張らせる。

 エスクードの向こうから、若村に向かってハウンドの雨が降り注いでいた。

 若村は慌てて鉛弾を解除してシールドを広げる。

 

「くそっ!」

「麓郎!」

 

 焦りの混じった葉子の声がした。

 次の瞬間、ハウンドに混じって飛んできたアステロイドにより、広がっていたシールドが割れる。

 無防備な左足にアステロイドが被弾して伝達系が破壊された。

 トリオンが漏れ出す。これで若村はもう走れないだろう。

 

『わりぃ葉子。失敗した…もう走れねえ』

『見りゃわかるわよ!』

『…なんで作戦がバレてるんだ?』

『東さんにはバレてる前提で行けって言われたでしょ!』

 

 とは言っているが、実際はもう一人の未来視(迅)のせいである。

 若村が顔を上げると、織田作之助はすでにエスクードの後ろから体を出し、こちらに銃を向けていた。

 

『麓郎、プランBでいくよ』

『……若村了解』

 

『頼んだ麓郎。私ごと撃って(・・・・・・)

 

葉子の内部通信に、麓郎は顎を引く。

間髪入れず、香取隊は予備の作戦に移行した。

 

 

 

 

 

 

03

 

 

香取隊の二人と織田作之助は睨み合うような膠着状態に陥っていた。

香取隊に銃口を向ける織田作之助。

トリオン体が損傷した若村麓郎。

五体満足の香取葉子。

 

先に動いたのは葉子だった。

弾丸のようなスピードでグラスホッパーで飛んでいき、スコーピオンで切り掛かる。

 

織田作はスコーピオンをシールドで防ぐこともなく銃口を向ける。

二発続けて放たれたアステロイドは、スコーピオンの剣先をあっさりと破壊した。

 

「おらー!」

 

 しかし葉子は咄嗟に膝にスコーピオンを再生成。懐に迫って腹を突き刺すように蹴りを入れる。

 織田作之助は、今度はシールドを使ってそれを防ぎ、一瞬の鍔迫り合いののち、二人は反発するように離れた。

 

 葉子は止まらなかった。再び距離を詰め、スコーピオンを首に振るう。

織田作之助は無表情のまま一歩下がり、避けながら距離をとって素早く照準を合わせた。

 

「っ!」

 

銃声と共にスコーピオンを構えた葉子の右腕にアステロイドが被弾する。

すぐにシールドを張ったが無視できないトリオンが漏れてしまった。

 

 しかし葉子は冷静だった。

 再びグラスホッパーを出し距離を詰める。

 離れてはだめだ。離れるとアステロイドが飛んでくる。

 ここでやられるわけにはいかない。

 

『葉子!準備できたって』

 

華から通信が入る。

 

『遅い』

 

文句を言いながらも、葉子は口角を上げた。

 

『麓郎!』

 

二人が交戦している間に隠れていた若村が、織田作の背後から銃を構えた。

 射線上に葉子がいるというのに、麓郎はあっさりと引き金を引いた。

 

 若村の突撃銃が、味方もろとも敵を滅さんと火を吹いた。

 

 

 

 

「……。

 

 

 流石に警戒されてるか…」

 

 見えていたかのように、織田作之助は背後の若村麓郎に銃を向けた。

 そこから放たれたアステロイドが、あっさりと、若村の腹に命中した。

 

『警告 トリオン漏出過多』

 

 無機質な人工音声と共に、若村の頬にヒビが入る。

 

(くそ、…でも目的(・・)は達成する!)

 

若村は最後の土産とばかりに、もう一度引き金を引いた。

 苦し紛れの突撃銃から放たれたのは数多くのアステロイド…ではなくハウンドだった。

 ハウンドは弧を描くように織田作と葉子の頭上を超え、付近の民家に着弾した。

 

「!」

 

途端、ドン!という衝撃音が上がる。

それは若村が緊急脱出した音でもあり、建物(・・)が爆発した音でもあった。

 

「メテオラ…」

 

 視えていたこととはいえ、織田作が声を上げる。

 若村はハウンドによって、民家に仕掛けていたらしい、メテオラの置き玉を誘爆させたのである。

 建物が大きく崩れ、瓦礫が降り注ぐ。

 このままでは下敷きになる、と織田作はすぐにこの場を離脱しようとした。

 

 

 そのときだった。

 

 はっきりと未来が見えた。

 

 

【 爆発ともに、建物が崩落する。

 目の前でスコーピオンを構えていた葉子の頭上に、 巨大な瓦礫が降り注ぐ

 葉子の体ごと、 下敷きになる 】

 

 

「っ、!」

 

 足が止まった。

 

 頭によぎる大規模侵攻の日。

 瓦礫に足を挟まれた母。家に押し潰された父。

 

 血。遺体。爆発。

 

 子供たち。

 

 咄嗟に体が動いていた。

 戦いのことは忘れていた。

 気がつけば葉子の体を抱えて瓦礫を避け、爆発の範囲外に飛んでいた。

 ズドン、と背後で瓦礫が落ち、アスファルトが割れる音がした。

 腕の中の葉子が無事なのを見て、織田作はほっと息をついた。

 

「危なかった…大丈夫か?葉子」

「捕まえた」

 

 が、と腕を掴まれた。驚きで口から息が漏れる。

 香取葉子は、織田作に銃口を向けていた。

 

「優しすぎんのよ、アンタ!」

 

 咄嗟に織田作は身を捩ってシールドを張った。

 しかし銃声とともに飛び出してきたのは、六角形の重石。

 

 【鉛弾(レッドバレット)】だった。

 

シールドを突き抜け着弾し、信じられないほど足がズシンと重くなる。

 織田作之助は体勢を崩して地面に倒れ込んだ。

 

そこでやっと、織田作之助は迅悠一の忠告を思い出した。

 

『織田作はさー、まだ香取ちゃんたちのこと敵だと思ってないでしょ』

『だからまだ容赦があるよね』

『東さんはそういうところも容赦なく突いてくるぞ』

『アイツらはそれだけ本気なんだ。本気って意味わかるか?なりふり構わないってことだ』

 

『用心しろ』

 

 

 織田作之助なら香取葉子を助ける。

 それを予想していたとでもいうのだろうか。

 どちらにせよ、用心が足りていなかった。

 地面に手をついたまま織田作が顔を上げると、トドメを刺すために葉子がスコーピオンを構えていた。

 

 

 

 香取葉子は、笑っていた。

 

(この距離なら、私のほうが早い!)

 

銃が構えられないほどの至近距離。相手の機動力は奪った。

 これなら殺せる!織田作之助に手が届く!

 葉子は目にも止まらないスピードで織田作之助の胸にスコーピオンを走らせた。

 

 

 

 『トリオン供給機関破損』

 

 

 

「……っ?」

 

 スコーピオンは確かに、織田作之助の胸に突き刺さった。

 無機質な警告音声も鳴り響いた。

 トリオン体にも、大きくヒビが入る音がした。

 

 びきり、

 

しかしながらその音は、ほぼ無傷であったはずの香取葉子(・・・・)からもしていた。

 

 葉子の胸にスコーピオン(・・・・・・)が生えていた。

 

「え?…は?

 

 ふざ、けんじゃないわよ…」

 

 

緊急脱出(ベイルアウト)

 

 

その言葉を最後に、二人は緊急脱出した。

 

 

 

 

香取隊 v.s 織田作之助

 

相打ち

 

 

 

 

 






織田作之助なら絶対に助ける。


織田作之助の本日のトリガーセット

メイン
アステロイド(拳銃) 
バイパー(拳銃)
シールド
バッグワーム

サブ
アステロイド(拳銃)
ハウンド
エスクード
スコーピオン

欲張りセットすぎるしどっかのぼんち揚臭すごいな
東さん対未来視はギリギリ未来視に軍配があがりました
未来視が二人いると流石にね…
でもそこで相手の心理読んで作戦立ててくるの怖い



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。