ワートリ×ストレイドッグス   作:ささき96

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お待たせしました。
短めです


22.模擬戦①

 

前回のあらすじ

ランク戦で負け続ける香取隊

その弱点を気づかせるため、香取・三浦VS織田作(ハンデあり)・若村の模擬戦をすることとなった。

 

 

 

01

 

・試合は、香取・三浦と、織田・若村に分かれ、2対2で行う。

・お互いオペレーターの支援はなし

・戦闘開始前に30分の作戦会議時間を設ける。

・織田作之助はハンデのため、突撃銃一丁しか使わない。

 

以上が織田作之助が模擬戦を行うについて述べたルールであった。

 

「織田作はシールドもなし?不利すぎない?」

 

葉子は唇を尖らせてそう言った。

どこか不満そうなのは、織田作はハンデとして、トリガー構成をメインに設置した突撃銃(アステロイド)のみにすると宣言したからだ。

 

「問題ない。今回は香取隊の改善点を教える試合だからな。これでいいんだ」

 

対して織田作は、いつもの様子と変わりない。華から受け取ったトリガーで換装し、手の中に突撃銃を出現させる。

 

「華は外から見ていてくれ。客観的に戦闘を見ていて欲しい」

「わかりました」

 

 華は隊員同士の通信を分ける処理を終えると、タイマーをセットした。

 

「じゃあ、今から30分測るわ。葉子と雄太の隊は緊急脱出ルームで、織田作さんと麓郎くんの隊は廊下で。それぞれ作戦会議して。それでは、開始」

「「「「了解」」」」

 

葉子と三浦は緊急脱出ルームに向かい、扉を閉じる。

視界の端には華が設定したタイマーが表示されていた。

 

「それで、どうする?」

「どうするって言われてもなあ…」

「突撃銃だけっていっても織田作にはあの(・・)サイドエフェクトがあるんだから、大抵の攻撃は通用しないでしょ」

「それは…そうだね」

 

とはいえ今回、織田作にはシールドもない。攻撃を防ぐ手段がないのは、トリオン体では致命的なはずだ。

トリオン能力が低い相手からであっても、トリオン体への被弾は致命的だからだ。

 

「油断はしない。弱い駒から落としましょ。二人で麓郎を討ってから織田作にかかる。それでいい?」

「うん、それがいいと思う。織田作さんはシールドがないから、防御の要であるろっくんがやられちゃうと、サイドエフェクトがあってもキツいと思うし」

「でも織田作は銃の腕が良いし…。慣れない武器でも当ててくるでしょうね」

「そうだよねえ…あっちの方がリーチが長いし、なんとか近づかないと。…あ、それなら、俺に撹乱用のメテオラ、入れてもらう?」

「……そうね。そうしましょ」

 

 一度華に三浦のトリガーをカスタムしてもらった後は、織田作のサイドエフェクトをどのように突破し討ち取るかについて議論が集中した。

 そうこうしているうちにあっという間に30分が経過し、再び戦闘員四人が同じ部屋に集まった。

 華は30分のうちに滞りなく訓練室の設定を終えたらしい。

 

「一般的な市街地設定にしてあるわ。普通の個人ランク戦と同じように、向かい合ってスタート、どちらかのチームの全滅で終了…でいいですか?織田作さん」

「ああ。始めよう」

 

四人は無言のまま訓練室に入る。香取隊の三人は、どこか緊張した面持ちだ。

 

『全員中に入ったわね。じゃあ所定の位置に分かれて。私の合図で戦闘を開始してください』

 

 華の声が訓練室に響く。マップ上に示された通り、二部隊は道路上で大きく離れ、向かい合った。

 

『3、2、1、はじめ』

 

 

 

02

 

 

 開始した途端、三浦と若村はほぼ同時にシールドを展開した。

 織田作が突撃銃を、葉子が拳銃を抜き、お互いシールドに守られながらの撃ち合いが始まったからである。

 

『雄太。シールド重ねて。割られないでよ』

『わかった』

『突撃銃相手じゃ火力負けするわ。一旦壁際に下がって射線切るわよ』

『了解!』

 

 三浦と葉子は近接主体のため、近づかなければ有効打が入れられない。対してあちらはどちらとも射程の長い突撃銃。

 じりじりと距離を離されれば削り殺されるのはこちらである。

 葉子側はシールドを張りつつ後退し、ブロック塀を背に射線を切った。

 アステロイドの弾が少しずつ塀を削っていく。

 

『やっぱり織田作さん、いつもより不慣れな感じするね』

『いつもなら派手な撃ち合いするときはシールドの隙間縫って弾飛んでくるのに、それがない…』

 

 いくら織田作とはいえ、やはり不慣れな突撃銃では精密な射撃は難しいのだろうか。

 

(とにかく今は近づかないと。削り殺されて終わっちゃう)

 

『雄太、メテオラ』

『了解!』

 

 葉子と攻守を後退し、三浦は撹乱用のメテオラを出現させた。

 

『タイミング、合わせなさいよ』

『わかってるよ!葉子ちゃん』

 

 三浦は分割したメテオラをアステロイド飛び交う道路(・・)と若村のシールド(・・・・)に大きく放った。

 爆裂音と共に、射撃音が一旦止まる。

 

『今!』

 

 その瞬間葉子は飛び出していた。

 射撃の止まる一瞬を狙い、素早くグラスホッパーを駆使して飛び出した。

 予定通り、若村を狙って。

 

「うおっ!」

 

(ちっ…)

 

 若村は驚きながらもスコーピオンをシールドで防いでみせた。

 しかし若村を盾に織田作の射線を切ることはできた。仲間()ごと葉子を撃つことなどできないはずだ。

 

『雄太!』

『メテオラ!』

 

 メテオラなら、シールドも予知も関係なしに、二人とも至近弾で吹き飛ぶ。

 葉子は若村を切りつけ、シールドを使わせつつ、ついでにメテオラの盾にする。

 そうすれば葉子はノーダメージで二人にダメージを与えられるはずだ。

 葉子は、そう考えながら視界の端でちらりと織田作を捉える。

 

「はっ?」

 

 織田作はこちらを見ていなかった。

 仲間が葉子(エース)という危機に狙われているというのに見向きもせずメテオラを見ている。

 壁に隠れようとも、若村を助けようともしていない。

 

(…待って、もしかして…っ)

 

 そこにきて、葉子は嫌な予感が思い浮かんだ。

 

(マズっ…)

 

 織田作は手慣れた(・・・・)様子で肩で突撃銃を構える。照準を合わせるような仕草をしたのちーー軽く引き金を引いた。

 

「は…あっ!?」

 

 三浦が放った無数のメテオラに、空中で突撃銃から放たれたアステロイドが被弾し、爆発した。

 葉子は驚愕の声を上げながらも、冷静にスコーピオンで若村の左腕を切り落とす。

 

(なんっで素人がメテオラを空中で全部撃ち落とせんの!?麓郎より上手いんじゃ…ふざけんなエセ素人!)

 

『葉子ちゃん!今のっ…』

『雄太予定変更!麓郎は私が落とすから織田作にプレッシャーかけ続けて!』

『了か…葉子ちゃん!』

 

「あ!」

 

 葉子は驚愕した。

 予定を変更した途端、突然麓郎がフルガードしたからだ。球状に張られたシールドにスコーピオンが阻まれ、激しい音が鳴る。

 

(フルガード!?クソ!予知さ(読ま)れてる!…なら!)

 

『雄太!ノーガード!挟み撃ち!』

『了解!』

 

 咄嗟に三浦と葉子は、織田作を挟むように動いた。

 葉子は、片手で拳銃を抜いて若村越しに織田作を狙う。

 若村がフルガードしているうちは、織田作は無防備だからだ。

 

(エセ素人でも!シールドない状態で挟み撃ちされれば!)

 

 ダメージが入る!

 織田作はメテオラを構える雄太を見ていてこちらを見ていなかった。

 

「もらった…!」

 

 葉子の拳銃が織田作の背中へ火を吹く。

 織田作の突撃銃も、三浦に向かって容赦なく放たれた。

 

 

 

 

「え?」

 

 なぜか、織田作の背中に放たれたアステロイドがシールドでガード(・・・)された。

 香取葉子(・・・・)の腹に風穴が空いたのも、それと同時だった。

 

「はあ…っ!一本取ったぞ葉子!」

 

 スコーピオンで切られながらも、若村麓郎は叫ぶ。

 

 ーー葉子は若村にフルガードを維持させるため、スコーピオンで若村を攻撃しつつ、ノーガードの織田作に拳銃を向けた。

 葉子は器用にも二つの攻撃用トリガーを同時に扱っていたのである。

 

 しかしその瞬間、メイン・サブ共にトリガーを使用していた葉子は、無防備なノーガード(・・・・・)状態だった。

 

 若村麓郎は葉子に切られる前提で、フルガードを解除した。そして織田作を守り、葉子を撃ったのである。

 

『『戦闘体活動限界』』

 

『葉子、麓郎くん、戦闘不能』

 

 華の無機質な声が頭に響く。

 

「くそっ…」

 

 葉子はその場で悪態を吐いた。

 

 

 

 

 

 一方、三浦雄太はというと、織田作を葉子と挟み撃ちにした際、織田作に突撃銃を向けられつつも、分割したメテオラを放とうとした。

 

(シールドもある、葉子ちゃんもいる!僕が失敗しても大丈夫…!けど…!)

 

 雄太は放ったメテオラが空中で撃ち落とされるのを警戒し、背中に弾を残しつつ織田作にメテオラを放とうとした。

 そう、放とうとした瞬間である。

 

「えっ…」

 

 確かに(・・・・)、織田作は被弾前にメテオラを撃った。

 そこまでは予想通りだった。

 ーーしかしながら彼は、三浦が放とうとしている直前の弾を撃ったわけである。

 

「し、シールド!」

 

 結果、織田作に放たれるはずだったメテオラ達は誘爆した。

 普通は誘爆に巻き込まれ緊急脱出するところだが、三浦は咄嗟にしゃがみこんで固定シールドを張ったため、生き延びた。

 

「うわっ」

 

 しかし三浦は固定シールドを解除することができなかった。

 一点を外からしつこく狙い撃ちにされたからである。

 

「えっ、ま、まって…」

 

 突撃銃から放たれるフルオート射撃が、容赦なく、三浦の張っている固定シールドの一点に当たる。当たり続ける。

 いくら防御性の高い固定シールドとはいえ、一点に集中的にアステロイドが当たり続ければ、ピキ、とひび割れる。

 

「そ、そんな漫画みたいなこと可能なの…!?」

 

 ちなみに一点とは本当に一点(・・)である。

 織田作は固定シールドの外側から、本当に全く同じ位置を突撃銃で撃ち抜いているのである。

 振動がある程度抑えてあるスナイパーライフルではなく、振動の激しいフルオートの突撃銃で。

 

「ごめん葉子ちゃん!」

 

 半泣きの声と共にシールドがパキンと割れ、三浦の眉間にアステロイドが撃ち込まれた。

 

『雄太、戦闘不能。麓郎くん、織田作さんチームの勝利』

 

 

 

 

 

 

03

 

 さて、麓郎・織田作チームはというと、作戦会議中にこんな会話をしていた。

 

「麓郎には、葉子を仕留めてもらう」

「えっ俺が、ですか!?」

「そうだ」

 

 てっきり、エースである織田作をサポートする形になるだろうと思っていた若村は驚愕した。

 なによりあの(・・)葉子を若村が仕留めるという作戦が、成り立つとは思えなかった。

 

「ハンデがあるとはいえ、葉子も雄太も俺を警戒している。最初は麓郎を狙ってくるだろう」

「それは…そうでしょうね…」

「ああ。麓郎がいなくなれば、俺はシールドが張れなくなるからな。麓郎は集中砲火されるはずだ。…だからそこに付け込もうと思う」

「付け込もうったってーーあの、葉子に集中砲火されて生き残れる自信、正直ないんですけど…」

「大丈夫だ。俺のサイドエフェクトが、防御をサポートする」

「!そうか…」

 

 若村はそこでようやく、織田作のサイドエフェクトが、味方になれば、本当に頼もしいことに気がついた。

 なにせ攻撃が来る5秒前に仲間に知らせることができるのだ。

 

「まず最初に言っておくが、俺は突撃銃を多少扱ったことがある」

「…えっ!?」

「葉子たちには、最初は慣れないふりをして油断させる。ーーせっかちだから、そうすれば突っ込んでくるはずだ。麓郎、お前の方に」

 

 若村はその言葉にゴクリと喉を鳴らす。

 エースとしての葉子の強さは、若村が一番把握していたからである。

 

「なるべく俺と距離を開けないようにしろ。戦いながら指示するが、葉子に大きな隙を作るから、相打ち覚悟で撃て」

「っ、了解です」

 

 一緒に戦っていてわかったが、織田作の指示と言うのは本当にひっきりなしに来る。

 

『シールド重ねてガードしてくれ』

『左から葉子。シールド』

『合図したら、球状にしてフルガードしろ』

『葉子に俺を狙わせる。葉子が撃つのに合わせてフルガードを解除して葉子を撃て。シールドはこっちに張ってくれ』

 

 織田作の未来視というのは、本当にこんなにひっきりなしに来るものなのだろうかーー。そう内心汗を垂らしながら、若村は指示に従った。

 するとどういったことだろう、絶対に勝てないと思っていた香取葉子を相討ちとはいえ、討ち取ることができたのである。

 

(未来視もすげーが、それをこんなに上手く扱ってる織田作さんはもっとすげーんじゃ…)

 

 若村なら、どんどん訪れる未来視に混乱し、状況判断などできないかもしれない。

 

(この人がチームに入ってくれたら、すげえ頼もしいんだろうな…)

 

 とはいえ、今のままでは勝つのは当分先になりそうだと、麓郎は一人ため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 織田作が突撃銃を扱えないわけがない。
 突撃銃はP90みたいな見た目で格好いいですよね

 長いんで前編後半に分けました。
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