ワートリ×ストレイドッグス   作:ささき96

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やっと書きたいところが書けました

コメントが嬉しくて何回も読んでます
ありがとうございます



04.迅悠一

 

 

01

 

ボーダー本部、幹部の集まる会議室は神妙な雰囲気で包まれていた。

厳かな雰囲気の中、この会議の議長である城戸司令が口火を切った。

 

「本日の議題は、ある隊員の副作用(サイドエフェクト)についてだ」

 

城戸司令がピ、と画面を操作する。中央に赤い髪のC級隊員の顔が表示された。

 

「彼は織田作之助。先日の入隊式で入隊したC級隊員です。トリオン量は8。現在のポイントは3814。今期としては異例の速さでポイントを貯めています」

 

忍田が説明を引き継ぎ、資料を読みながら言った。

 

「確かにそのトリオン量なら、サイドエフェクトがあってもおかしくはないのう。しかしなぜ会議にかけるようなことがあるんです?」

 

鬼怒田開発室長は怪訝そうにそう言った。ボーダーには何人か副作用(サイドエフェクト)を持っている隊員が所属しているが、今日のように会議にかけられた事はほとんどなかったからである。

 

「ただのサイドエフェクトではない。『未来視』だ」

「!」

 

会議室が驚きで満たされる。

未来視のサイドエフェクトは、玉狛支部の迅悠一が持っているランクSの超感覚だ。

 

「そ、それは確かなんですか?」

「検査を受けたわけではない。だが影浦隊員が確認している。影浦隊員のサイドエフェクトの前では、ヘタな誤魔化しやウソは通用しないだろう」

 

影浦の『感情受信体質』は、職員の間では入隊時から話題だった。

彼は自分に向けられた他人の意識や感情を肌で感じ取ることが出来る。

 経緯によれば、織田は『未来が見える』旨の発言をしたが、すぐに『冗談だ』と訂正した。

 しかし影浦は自らの感覚をもって、織田作之助の言葉にごまかしの感情を受信してしまった。それにより、未来が視えるという旨の発言が、冗談ではないと確信してしまったと言うのである。

 

「にわかには信じられませんな」

 

根付がそう言うと、忍田が会議室の一角に顔を向けて言った。

 

「慶、お前は1回織田隊員と戦っていたな?どんな様子だった?」

 

話を振られ、幹部たちの顔が入口近くに立っていた太刀川に向けられる。

太刀川は頭を掻きながら言った。

 

「あー、ここに俺と織田のランク戦のログって出せます?」

「可能だ」

 

忍田が資料と一緒に添付されていたランク戦のログを出す。

画面に、拳銃のアステロイドを持った織田作之助と、孤月を一本持つ太刀川が表示された。

 

「えーっと、ここ見てください」

 

太刀川と距離を取り、建物の裏に隠れた織田を、上空から奇襲する太刀川。

しかし織田は【太刀川には目も向けず、銃を上に向かって連続で撃った】。

次の瞬間には太刀川の孤月が割れていた。

 

「こっちを見てもいないのに正確に孤月を撃ってます。それも全く同じ位置に、連続で何発も。んで孤月が割れて、その隙を眉間に一発」

 

画面の中の太刀川の戦闘体にヒビが入り、緊急脱出する。

 

「こりゃあらかじめ(・・・・・)奇襲に気付いてないとできませんよ。それに射撃精度がかなーり正確です。動いている孤月に正確に当てれる奴はなかなかいない」

「…お前の見解は?」

「戦い方が迅に似てるんですよねー。先読みからの後出しジャンケン。未来視持ってるって言うなら納得ってモンですよ。でも…」

「でも…?なんだ?」

「確かに似てるんですけど、迅とは違うなとも思いましたね。迅は未来を長いスパンで見てて、避けたり反撃したりにかなり余裕を感じるんです。だけど、織田は違う。コイツはかなり、えー、サンパツテキ?に見えるんですよ」

「散発的か…」

 

忍田は五本戦っただけでここまで読み取った弟子に舌を巻く。

同じ未来視と言っても、サイドエフェクトは千差万別だ。迅と全く同じというわけではないのかもしれない。

 

「なるほど。なんにせよ、結論は決まっている」

 

会議室のドアが、見計らったかのように開いた。

太刀川が振り返ると、見覚えのありすぎる顔が立っていた。

 

「迅悠一、お召しにより参上しましたー」

「迅、わかっているとは思うが、お前に任務がある」

 

城戸司令は目を細め、間髪入れず迅に言った。

 

 

「織田作之助を見極めてこい」

 

 

 

***

 

 

 

02

 

B級に上がることができた。

これで晴れて正隊員というわけである。

 

「織田作さん、正隊員になれたんですね」

「ああ」

「おめでとうございます。私たちもすぐ入って、追いつきますね」

 

華と葉子も、早くボーダーに入りたくて仕方がないらしい。

葉子は毎日毎日話をせがんでくる。そのせいで最近は「機密だ」が口癖になりそうだった。

 

B級に上がると、たいていはチームを組んで、防衛任務に当たることになるらしい。

チームを組まなくても、他のソロや隊と任務を組んでくれるらしいので、しばらくは困らなそうである。

 

「そういえば織田作さん、高校はどうするんですか?」

「高校か」

 

現在、私は中学校3年生である。学校では進路希望調査が頻繁に行われていた。

正直に言えば、私は高校について少し迷っており、明確な答えを出せていなかった。

 

「まだ迷っている」

「そうですか。なにかあったら相談にのりますよ」

「ああ。ありがとう」

 

私は頭の中で算盤を叩きながら、今後のことを考えることにした。

 

「華は高校決めてるのか?」

「多分、六頴館高校になると思います」

「そうか」

 

しっかり者の華らしく、中学1年生ながらもう進学する高校を決めているらしい。

 

「お前も従兄弟の家に居候してるんだろう。うまくやれてるか?」

「はい、仲良くやれてます。そういえば、入隊したらボーダーの寮に入るって言ってませんでした?」

「そのはずだったんだが…。香取家の人たちに引き止められてな。折れてしまった」

「葉子、織田作さんになついてますもんね」

 

華は苦笑した。

葉子が如何にして私を引き止めたのか、容易に想像できたのだろう。

 

「相談といえば、俺もボーダーのことなら相談に乗ってやれると思う。入隊して、わからないことがあったら聞いてくれ」

「はい。ありがとうございます」

 

そう大言を吐いておきながら、結局私が華の役に立つことは殆どなかった。華は戦闘員ではなくオペレーターになったため、門外漢だった私はなにも教えることができなかったのである。

 

 

 

***

 

 

 

03

 

『織田隊員は、○月*日15時に第14訓練場までお越しください』

 

B級に上がり、専用の端末を受け取った途端、上に呼び出された。

何かやらかしただろうかと頭をひねるが、隊務規定に反することをした覚えはない。

 

ともかく上には従うべきだろうと、私は早めに訓練場に向かうことにした。

 

 

 

 

「迷った」

 

早めに向かうという計画は早速頓挫した。

ボーダーはどこもかしこも同じ廊下で、非常に迷いやすい。防衛の観点から、迷いやすい構造にしてあると言う理屈はわかる。

しかし私は自分がどこにいるかさっぱりわからなくなってしまった。

 

「引き返すか、誰か通りかかるのを待つか…」

「おい」

「!」

 

背後から声をかけられ振り向くと、小柄で短髪の、鋭い瞳の少年が立っていた。

ちょうど廊下にあったドアから出てきたところのようである。

 

「織田作之助だな?こんなところでなにをしている」

 

私のことを知っているらしい。

これはちょうど良いと、私は少年に道を尋ねた。

 

「第14訓練場に行こうとしてたんだが、迷ってしまってな。どう行ったらいいか知らないか?」

「第14訓練場は開発室の方だ。ここは反対方向だぞ」

「そうか。すまない。引き返す」

「……。いや待て。案内してやる」

 

少年は親切にも私を案内してくれるらしい。

彼は私の返事を待たず、足早に先を歩き出した。

 

「ありがとう。知っているかもしれないが、俺は織田作之助という」

「知っている。俺は風間だ。風間蒼也」

「風間か。よろしくたのむ」

 

少年は無口な性質(たち)らしく、道中は無言が続いた。

しかし私はなぜ彼が自分の名前を知っていたのか気になり、話しかけることにした。

 

「風間はどうして俺の名前を知っているんだ?」

「太刀川とソロランク戦をしていただろう。そのログを見た」

「なるほど。いや恥ずかしいな。負けた試合を見られてしまったのか」

「負けた?なにを言う。1本勝っていただろう」

 

風間は怪訝な顔をしてこちらを睨め付ける。

私は苦笑した。

 

「一本だけだ。そのあとはボロ負けだった。癖を読まれたらしい」

「……」

 

彼はまた不可解なものを見る目でこちらを見やったが、何も言わずに歩き出した。

目的地は案外近かったらしい。程なく到着してしまった。

 

「ここが第14訓練場だ」

「ここだったのか…ありがとう。感謝する」

「それと織田。もう一つ言っておくことがある」

「なんだ?」

「俺はお前より三つ年上だ」

 

「………」

「………」

 

「申し訳ありません、風間さん」

「わかればいい」

 

風間さんは小柄なだけで、すでに18歳だったらしい。私は見た目で年下と決めつけた自分を恥じた。

しかし過去を変えられるわけでもない。誠心誠意頭を下げたのである。

 

「あれ?風間さん?なにしてんの?」

「迅か」

 

訓練場のドアが開いて誰かが出てきた。私はつられて顔を上げる。

 

「…?」

 

サングラスを首にかけた青い服の男だった。薄い茶色の髪色で、上げた前髪から飄々とした印象を受ける。

私はその男を見た瞬間、なにか違和感のようなものを覚えた。 

 

「年下に頭下げさせちゃって。カツアゲ?」

「違う。年上に対する口の利き方を教えていただけだ」

 

男は風間…さんをからかったあと、私に目を向けた。

 

「よく来たな。とりあえず中に入りなよ」

 

訓練場の中に(うなが)されたので、私は素直に従った。

訓練場は白い無機質な空間で、天井が高く、荷物は何も置いていなかった。

ちなみに風間さんもなぜか俺の後ろに続いて入ってきた。

 

「君が織田作之助だな。俺は迅悠一。玉狛支部の実力派エリートです」

「織田作之助です。どうも」

 

握手を求められ、手を握る。

 

「!?」

 

【握った迅の手からスコーピオンが飛び出してきた。腕を切られた。追撃を避けようと動いたが、そのまま私の胸にスコーピオンが吸い込まれていった】

 

未来の映像が流れ込んできた。俺は慌てて手を離そうとした。

 

【スコーピオンが生えてくる前に手を離した。すると俺の軸足に向けて、地面からスコーピオンが生えてきた。足を切られて、そのまま転倒した】

 

「!?」

 

【私は手を離した瞬間に大きく後退して迅の射程外に出る。拳銃を生成して迅の腕を撃とうとした。すると拳銃に向かってスコーピオンが投擲された】

 

 

 

 私はこの現象に見覚えがあった。

かつて私は、私と同じ未来視の能力を持った者に会い、戦ったことがあった。

私が見た未来を変えると、それに合わせて相手も未来を修正(・・・・・)する。

そして私もその未来を修正する。相手も修正する。そうして未来を見る時間が無限に長くなり続けていく…そんな現象が起こるのだ。

 

「っ、」

「っと、これは…」

 

結局、私たちはどちらも攻撃しなかった。

お互いに弾かれたように手を離し、距離をとる。

私はすばやく拳銃を構え、迅に向けた。

 

「お前…」

 

確信を込めて、私は言った。

 

「もしかして、未来が見えるのか」

「そういう君も、未来が見えるみたいだね」

 

冷や汗を流しながらも、迅悠一は軽薄そうな笑みを浮かべてみせた。

そして大声で叫んだ。

 

「鬼怒田さーん!こりゃ本物だ。未来視のサイドエフェクトだよ」

『なんじゃとー!?』

 

放送のような声が上から響く。

どうやら全て見られていたらしい。

 

「おい迅。どういうことだ?」

 

風間さんが背後から低い声で尋ねる。

彼から見ると、私たちが手を握ったと思えば、いきなり距離をとって銃を向けた形になる。

意味のわからない光景だっただろう。

 

「どうもなにも。コイツは未来視の副作用(サイドエフェクト)を持ってる。

 今、俺は作之助を攻撃しようとして、それを読まれて未来を修正された。今度はそれを俺が修正して…って頭の中でイタチごっこになってたんだよ」

 

 な?と話題を振られて、私は困惑した。

そして迅に尋ねた。

 

「さいどえふぇくと?とはなんだ?」

「あ、そこから?」

 

迅はあちゃーと頭を掻きながら苦笑した。

 

「じゃあお前には色々と説明しなくちゃなんないな」

 

場所を移そう、と迅はイタズラっぽく笑った。

私は訳もわからず、開発室とやらに連行されることになったのだった。

 

 

 

「そういえば、お前のことなんて呼んだらいい?」

「…織田作で。みんなそう呼びます」

「オーケー、織田作ね。あ、タメ口でいーよ」

「?わかった」

 

 





実際は、迅と織田作の未来視は似て非なるものなので、ジイドほど能力が喧嘩しないとは思うんですが、どちらにせよ二人が戦う時は未来視は使えないので、単純な腕勝負になると思います
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