友情回
ビーストとか小説版見てると、織田作って本当めちゃくちゃ強いですよね。マジ化け物。
自分の中の織田作は化け物級に強いので、この小説の中にもそれを反映しています
01
高校の合格証が無事に届き、自由登校になった頃、防衛任務帰りにボーダーからまた呼び出しがかかった。
サイドエフェクト絡みだろうかと思っていたのだが、向かった先には迅がいた。
「風刃の起動テストだよ」
「ふうじん?」
「風刃ってのは、使う人を選ぶトリガーでね。織田作が起動できるかどうかテストするために呼んだの」
「使う人を選ぶトリガーなんていうのもあるのか…」
生憎私はトリガーについては無学だったため、言われるがまま鞘に入った小刀のような黒いトリガーを受け取った。
「じゃあそれ持ったまま、風刃、起動!って言ってみて」
「ああ。『風刃、起動』」
途端、私の体はトリオン体に換装された。
小刀のようだったトリガーが途端長刀に早変わりし、無数の光の線が溢れ出す。
美しい刀だった。
「成功か。ありがとう。解除していいよ」
「ああ」
迅に風刃を返すと、呼び出しの件はこれで終わったらしい。鬼怒田開発室長に報告を終えると、すぐに訓練室から退室した。
「そういえば高校入学決まったんだって?」
「おかげさまで。三門第一になった」
「じゃあ春からは後輩だな」
「……後輩?」
「あれ言ってなかったっけ?俺も三門第一なんだよ」
「そうだったのか」
迅は一つ上のため、私が入学する頃には、高校ニ年生ということになるだろう。
「で、呼び出した理由なんだけど、1つ…いや2つ3つお願いがあるからなんだよね」
「お願い?風刃が理由じゃなかったのか」
「それもあるけど、本題はこっからだから」
人気のない自販機の前で立ち止まり、迅は三本指を立てた。
「1つ、太刀川さんがチームに誘ってくると思うけど、それを断ること。これ絶対ね」
「わかった」
「2つ、これはちょっと先だけど、織田作に弟子にしてくれって頭下げにくる人がいると思うから、弟子にしてあげて」
「ああ」
「最後にトリガー構成のことなんだけど、ハウンドとバイパー入れて欲しいんだよね」
「ハウンドとバイパー?」
残念ながら私はアステロイド以外の弾トリガーを知らなかった。
迅にとっては予想通り…いや予知通りだったのか、じゃあ玉狛支部に行こう、と言ってきた。
「どうしてハウンドとバイパーを?」
「織田作に強くなって欲しいから」
シンプルな理由だった。
地下の連絡通路を抜け、警戒区域を抜ける。
「織田作の戦闘スタイルって、二丁拳銃による正確な射撃と、未来予知による後出しジャンケンでしょ?」
後出しジャンケンと言われるとよくわからないが、私は予知を見てからそれに対応するように動いているため、あながち間違いではない。
「確かに織田作の射撃は、他の人に真似できないくらいすごい。けど、射撃の腕がどんなに良くても、シールドがあれば防がれちゃうからね。織田作には、もっと
「搦手か…」
前世では、シールドを張れる人間はいなかったため、まともに当たればそのまま撃破できた。
しかし、風間さんと戦ってわかった。
シールドは激しいトリオン差がなければアステロイドを防ぎ切ってしまう。シールドを突破するには広範囲に撃って薄く広げさせるか、何度も同じ場所に打ち込むか。後者では時間がかかりすぎる。
それに前に使っていた弾とは違い、アステロイドは跳弾しないため、相手の意表をつくことができない。
「そんなわけだから、後出しで出せる手をもっと増やそうってわけ」
「後出しジャンケンか」
「…そーいえばおれと織田作ってジャンケンしたらどうなるのかな」
「……想像したくないな。あいこが一生続くか、お互い予知で頭がパンクするんじゃないか?」
誰も幸せにならないからやめておこう、ということになった。
迅に協力するにあたっての懸念点は、私自身が迅が持っていきたい未来を大きく変えてしまうことだった。
人間は色々な行動をするが、いつ、どこでどんな行動をすれば最善の未来に行くのかは、迅悠一にしかわからない。
そのため迅は、私に時々こうしてああしてと指示を送ることにしたらしい。
それはなんでもない行動のときもあるし、結構大変な作業(迅と防衛任務を交代するなど)もあった。
結果的に言えば、私はトリガーを扱う腕を上げることができたので、迅には感謝している。
「ただいまー」
「お邪魔します」
玉狛支部に来たのは初めてだった。
川の間に建つ特殊な建造物で、外観に比べ内観はかなり綺麗に整備されていた。
「あ!迅。今日帰るの早くない?」
玄関に黄色い声が響く。
中学生だろうか。見たことのない制服を着た少女が顔を覗かせた。
「ああ、小南。ゆりさんいる?」
「ゆりさんなら下。それよりそいつ誰なの?」
いきなり来てしまったからだろう。
小南と呼ばれた少女は半眼でこちらを睨んだ。ーーなにか警戒されることをしただろうか。もしかしたら人見知りなのかもしれない。
「織田作之助だ」
とりあえずは自己紹介だろうと、名前を言う。
「織田作之助…?ってアンタもしかして太刀川に勝ったとかいう銃手!?」
「いや、勝ってはいない」
「……え?じゃあ人違いなの?」
「ああ。太刀川には勝ったことがない。人違いだろう」
「じゃあ同姓同名ってこと?なーんだ」
どうやらボーダーには私以外にも織田がいるらしい。
私は太刀川に4-1で負け越しているため、その織田という人物とは別人だろう。
「ぷくく……織田作、この騙されやすい子が、玉狛支部の攻撃手の小南桐絵。仲良くしてやってくれ」
「騙されやすいってなによ!」
小南は毛を逆立てた猫のように怒りを露わにした。
「よろしく頼む。小南」
「……ふーん、織田作ね。…玉狛になんの用なのよ?」
「ハウンドとバイパーを教わりにきた」
「はぁ?迅に?スコーピオンじゃなくて?」
小南は首を傾げ、不思議そうな顔をした。
そういえば迅はスコーピオンを使っていたなと私は思い出した。
「じゃ、俺らは下いくから。小南も見に行く?」
「見に行ってやってもいいわよ」
「そうか。ありがとう」
地下に降りると、そこは本部のように白い壁の空間だった。
上階の家庭的な印象に比べ、無機質で冷たい印象を受ける。
「ゆりさん。訓練室使いたいんだけど、今大丈夫?」
「迅くん?今日は早いのね」
長い髪を背中に垂らした女性がディスプレイの前に座っていた。彼女がゆりさんらしい。
なにか作業をしていたのか、机上にノートとペンが散らばっていた。
「平気よ。どんな感じで作る?」
「建物がいくつかあるやつ。住宅街みたいな。あと的を用意お願いします」
「了解。じゃあ1号室に準備するわね」
程なく準備が完了したらしい。
ゆりさんが画面から顔を上げた。
「はじめまして、私は林藤ゆり。ここの支部長の姪っ子なの。玉狛支部でオペレーターをやってるわ」
「はじめまして。織田作之助です。本部で銃手をやっています」
「本部の子だったのね」
今日はどうしたの?とゆりさんが聞いてきたので、私は先程と同じように答えた。
「ハウンドとバイパーを教わりにきました」
「…えっ?迅くんに?スコーピオンじゃなくて?」
「?はい」
ゆりさんも小南と同じような反応だ。
迅はそんなに有名なスコーピオン使いなのだろうか?
「まーまー、そんなわけだから俺と織田作のトリガーにハウンドとバイパー、入れてくれます?」
「え、ええ了解。少し待ってね」
「あ、私はここで見てるから。飽きたら戻るから」
小南は外で待っているらしい。
ハウンドとバイパーをセットし終え1号室に入ると、そこには仮想空間が広がっていた。
前に風間さんと戦った空間よりもシンプルな住宅街で、空も設定されていない。
大きなドームの中に住宅展示場があるみたいだった。
「じゃあ最初に聞きたいんだけど、織田作ってランク戦で銃手とか射手と当たったときってどうやって戦うの?」
「基本的にはどこに着弾するかが『見える』からな。避けてから当てるか、相手が撃つ前にこっちが撃つか…あと射手だと、キューブを狙って撃つと混乱してあらぬ方向に飛んでいくことが多かった」
「全方位攻撃される場合もあるよね?そのときは?」
「包囲される前に逃げていた。
…だが俺の未来予知は、未来を見た段階で既に罠に嵌っていればそれを避けることはできないんだ。例えば、俺が咖喱で食中毒を起こす未来があったとしても、それは未来予知の範囲外だから回避できない。もし俺を殺すなら、毒殺が一番効果的だ」
「いやいや殺さないから」
物騒だなと迅は笑う。
確かにそうかもしれないが、経験則で言っていることだ。
「大体わかった。今のレベルじゃ、A級の射手や銃手と戦うときは、相打ちになっちゃうな。あの人たち、嵌め技大好きだから」
そう言って迅は手の中にキューブを出現させた。
「これがハウンド。対象を自動で追尾する誘導弾」
迅はハウンドをいくつかに分割すると、住宅街に設置された的に放った。
弾は弧を描くように住宅街の間を抜けて行き、的に命中した。
直線的なアステロイドとはまた違う軌道を描くようだ。
「こんな風に弾トリガーは弾速や方向を結構自由に操作できるのが特徴ね」
「銃声がしないんだな」
「それもある。だからこんなふうに…」
【突然私の足ががく、と折れた。下を見ると、迅の足元に置かれていたハウンドが私の右足を貫いていた】
私は左に飛び、ハウンドを引きつけてからブロック塀の後ろに隠れた。
いくつかのハウンドが壁に着弾し、コンクリートを削った。
「今のが置き弾。地面とかに弾を設置して任意のタイミングで発射できる」
「いきなり撃たないでくれ。驚いた」
「って割に余裕で躱すんだもんなあ。シールド使いなよ」
「そうだった。忘れていた」
私は両手で拳銃を使う関係上、あまりシールドを使わない。
見れば躱せるし、躱せない攻撃は攻撃が来る前に止めるからだ。
あと単純にシールドの存在を忘れていた。前と同じ感覚で戦っているせいだ。
「じゃあ次はバイパー。こっちは銃にセットしてもらったよね?この弾は、弾道を自由に設定できるんだ」
迅が拳銃を生成して弾を撃つと、バイパーは的に向かって真っ直ぐ飛んでいった…と思えば、直前で大きく曲がりその後ろの的を撃った。
「お前は未来予知で何処から誰が奇襲してくるかがわかる。バイパーがあれば奇襲してくる伏兵を逆に奇襲したり、正面から戦うときシールドを避けて攻撃もできる。使い方は任せるけど、お前にピッタリのトリガーだと思うよ」
「搦手というやつか」
「そうそう」
トリオン体は、結構簡単に損傷する。
もし戦闘中に腕がなくなって銃が撃てなくなったとしても、ハウンドがあれば攻撃できるし、音がしないから奇襲にもなる。
バイパーは練習が必要だろうが、相手が奇襲してくる前に仕留めることができるようになれば便利だし、バイパーでシールドを散らさせ、アステロイドを確実に命中させることができるようになれば、手数が更に増えることになる。
「大丈夫。お前は絶対これを使いこなせるようになる。俺のサイドエフェクトが、そう言ってる」
そういうわけで、高校入学までの一か月、私は玉狛支部に入り浸ることになった。
02
ボーダーは、戦闘員のほとんどを未成年に頼っている。トリオン器官の成長は、未成年のうちが一番著しいからだ。
戦いの中に身を置いているからか、同年代に比べ大人びた少年少女が多く、戦略を練ることに余念がない。
しかしながら、やはり子供は子供。
ボーダーの中では、人から人へ伝聞を重ねた、根も葉もない噂というものが、非常に広まりやすいのだった。
【織田作之助は、迅悠一の弟子になったらしい】
現在、一番のトピックは上記の通りであった。
とはいえ、根も葉もないというわけではない。
織田作之助が非常に強い大型ルーキーであったこと。
迅悠一と急に親しげになったこと。
織田作之助が玉狛支部に入り浸っていたこと。
それらが合わさり、【あの】迅が目にかけるということは、やはり弟子なのでは!?とまことしやかに囁かれるようになったのである。
「チッ…」
いつも通りのランク戦ブースで、影浦は相変わらず不機嫌な様子で足を組んでいた。
それもこれも全部織田作のせいである。
影浦は織田作に遅れてB級に上がったのだが、最近彼が本部にいないせいで、ランク戦ができていないのだ。
それなのに噂だけは一丁前に広まっており、あの織田作之助と仲がいいらしいと、影浦にもチクチクと好奇心が刺さってくる。
「影浦、北添。遅れてすまない」
「あ!オダサクー久しぶりー」
その声に影浦は顔を上げる。
待ち合わせをしていた織田作がやっと来たのだ。
防衛任務帰りらしい。換装を解いた状態だった。
「遅くなったが、B級昇格おめでとう」
「やっとって感じだよー。ね、カゲ」
「うるせえ。さっさと行くぞ」
言うなりズンズン歩き出す影浦を追いかけ、三人は並んで歩き出す。
「それにしても織田作がご飯をご馳走してくれるなんて嬉しいなあ。どこに食べに行くの?」
「咖喱だ。印度咖喱。二人が苦手でなければそこにする」
「別に問題ねえ」
三人揃ってボーダーを出発し、雑談しながら玉狛近くのインドカレー屋に向かう。
無論、先日織田作が迅に連れて行ってもらった店である。
「いい店だねー、玉狛にこんな店あるなんて全然知らなかったよ」
「俺も知らなかった。迅さんが紹介してくれてな」
「迅さんと仲良いってホントだったのか」
二人は織田作の勧め通りチキンカレーセットを頼んだ。
先に運ばれてきた飲み物片手に、織田作は口火を切った。
「そういえば、二人は高校は決まったのか?」
「うん。ボーダー推薦で一高になったよ〜。カゲも一緒」
「奇遇だな。俺も三門第一だ」
「え!?そうなの?ゾエさんてっきり六頴館かと…」
「いや、今のところ大学に行く気はないからな」
影浦は顔には出さなかったが少々驚いた。ボーダーは三門市立大学と提携しているため、行こうと思えば行けないことはないはずなのに。
しかしそれを口に出すことはなかった。
代わりに別のことを聞いた。
「おい、織田作。テメェ迅さんの弟子ってのはホントなのか」
「俺は迅さんの弟子なのか?」
「いやいや、それオダサクの台詞じゃないでしょ」
噂を知らなかったらしい。やっぱり弟子ではないのだろうかと北添は考える。
織田作はすぐには答えられないのか、首を傾げていた。
「弟子かどうかはわからないが、強くはしてもらった。バイパーとハウンドについて教わったな」
「スコーピオンじゃねえのかよ」
「意外だね〜」
「皆そう言うが、迅さんはそんなに有名なスコーピオン使いなのか?」
「スコーピオン使いっていうか、迅さんって確かスコーピオンの開発者の1人だよ」
「……!」
驚いた顔である。
「すごい人だったんだな」
「え?仲良しなんじゃないの?」
織田作は仲良しだぞ、と
二人は訝しげな顔をした。織田作之助と迅悠一の繋がりがいまいち見えなかったのである。
「玉狛に入り浸ってんのはホントなんだろ?」
「ああ」
「一体どういう経緯で仲良くなったの?」
「どう、と言われてもな。握手して、俺が銃を向けたら仲良くなった」
「ホントにどーゆーこと!?」
「迅さんも俺にスコーピオンを向けようとしたからお互い様だ」
と織田作は至極冷静な様子でコーヒーを啜った。
「ランク戦、とかじゃなく?」
「初対面でやられた。アレは驚いたな」
「どうやったら初対面で
「それは多分、俺のサイドエフェクトのせいだな」
「へー、サイドエフェクトの………
ん!?」
「ア!?」
「…ん?言ってなかったか?」
「聞いてないよ!え?言う機会いくらでもあったよね!?ねえカゲ!」
テメェ詳しく説明しろ!と影浦ががなり声をあげる。
言えないような事情があるのだろうと思っていた。……まさか忘れていただけとかいう馬鹿な理由とは思わなかった。
「…すまない影浦、北添。俺のサイドエフェクトは…」
織田作之助は、しおらしくも説明を始めた。
「はー、なるほどねぇ。同じサイドエフェクト同士だから仲良くなったのか」
「そういうことだ」
「『近未来視』か〜。奇襲効かないっていう点だと、カゲのに似てるね」
「影浦の?」
織田作が影浦を見やる。彼は舌打ちをするだけで説明する気は無さそうだった。
北添は苦笑して代わりに説明した。
「カゲはさ、自分に向けられた感情が、肌にチクチク刺さっちゃうサイドエフェクトなんだ。だから狙撃とか奇襲が効かないんだよ」
「そうか。…副作用だとそういうこともあるのか」
織田作は影浦にメニュー表を手渡した。
「好きなもの食べていいぞ」
「だー!やめろそれ!フワッフワしたもん刺してくんな!殺すぞ!」
「すまない」
織田作は自分なりに気を遣ったつもりだったのだが、的外れだったらしい。
「お待たせしました。チキンカレーセット3つです」
頼んだメニューが運ばれてきたため、話は一旦中断となった。
**
「いやー食った食った。美味しかった〜」
「インドカレーもたまには悪くねーな」
散々飲み食いしたあと、三人は帰路についていた。
ヤケクソになった影浦がもう1セットカレーを頼んだり、北添が間違って激辛を食べて死にかけたり、織田作が食べきれなくなった影浦のカレーを消費したりはしたが、概ね平和に終わった。
「オダサク、そーいえば今日はなんでご馳走してくれる気になったの?」
「ア?そういやそうだったな」
尋ねられた織田作は、不思議そうな顔をした。
「二人がB級に上がったからな。祝いたかった」
「ええ!?そんな!ありがとう」
「……チッ」
影浦は舌打ちだけして足早に夜道を進んでいく。
織田作と北添は、少し歩幅を広げて横に並んだ。
「おい織田作」
「なんだ?」
「テメェのB級祝いもまだだろうが。今度うちの店来い」
「いいのか?」
「俺とゾエが奢ってやる」
「……ありがとう」
余談だが、後日改めて行われた織田作B級昇格祝いでは、影浦が作ったオリジナルメニュー、『カレーお好み焼き(命名:織田作スペシャル)』が出されたせいで、織田作は「かげうら」の常連に名を連ねることとなる。
商魂たくましい
織田作のトリガー構成はホントに迷いました
物語の展開的に変えることもあるかも
あと小南は織田作の名前 織田作・之助だと思ってます
かわいいね